名無しの英雄~パラオ艦隊戦記~   作:レイキャシール

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艦これアニメ、方々で賛否両論が巻き起こっている様で。

まあ、アレはアレで一つの『世界』と思いたいですが・・・足柄の扱いが・・・。


それと今回は、ある艦を遠回しに皮肉っていますので、不快な思いをされる場合があると思います。

それでは、どうぞ。


第二章・第二話:無垢なる戦艦・前編

 南西諸島海域、バシー島。

 複数の航路が交差する、謂わば『海の交差点』とも言える海域にぽつんと浮かぶ小島だが、実際には洞穴の類いが多数点在しており、海軍の物資集積所として運用されてきた拠点の一つである。海上交通の要衝と言うこともあってか、大東亜戦争中には激戦が繰り広げられていた場所でもあるのだ。

 ある日のこと。その沖合に現れた深海棲艦隊と、慣熟訓練の道中で物資の運び出しを行っていたパラオ艦隊との間に戦端が開かれた時のことだった。

 

「攻撃開始! 島への砲撃は出来るだけ避けて!!」

「『『了解!!』』」

 

 旗艦である鳥海の指示の下、一斉に主砲を発射するパラオの艦娘達。

 敵艦隊の中にはヌ級もいたが、航空隊は既に隼鷹によって無力化されたため、彼女らは砲撃戦に専念することが出来ていた。

 その戦列の中の一人が、背面の艤装に装備されている主砲を向けると、仰角を合わせ、発砲しようとする。狙っている的の背後には、持ち帰るために海岸へと運び出していた物資の数々が。

 

「各部主砲、斉射用意!!」

「ちょっと待って! 射線の確認は・・・・・・」

「榛名! 全力で参ります!!」

 

 鳥海が彼女―榛名を止めようとしたときには、既に手遅れだった。

 発射された35.6サンチの対艦弾頭は、何発かは射線に入っていたホ級に命中し、撃破した。だが大半の砲弾は的から逸れ、背後の海岸に着弾してしまったのだ。

 

「敵艦を撃破しました!!」

「・・・・・・ちょっと!!」

 

程なくして 敵艦隊を打ち払ったパラオ艦隊だが、結果に反して艦隊の空気は最悪と言って良かった。

 本人に悪気があるのか無いのか、ともかくとして戦果を誇る榛名に対し、柄にも無く鳥海は声を荒げた。

 

「どうして主砲にしたの!? あの程度の距離なら副砲だけでも仕留められた筈よ!!」

「・・・・・・? 敵を仕留められたのに、榛名は怒られる理由がわからないです・・・・・・」

「あれを見なさい!!」

 

 そう言って彼女は、海岸線の惨状を指さす。

 着弾時の衝撃によって弾薬は方々へ飛散し、燃料は引火して燃えている。インゴット状に加工されていた鋼材とボーキサイトは、熱でひしゃげて遠目から見ても使い物にならない事が見て取れた。

 

「あそこにあった分だけで、一個駆逐隊、五隻分の燃料と弾薬、修理用の鋼材があったのよ!? それを全部吹っ飛ばしたのよ!?」

「???」

「つまり、貴女は駆逐隊を丸々一つ行動出来なくさせたの!!」

「本当ですか!? なら、これで敵の動きを制限出来ますね!」

「っ・・・・・・!! もう良いです!! 作戦中断、一時帰投します!!」

 

 話が理解出来ていないのか、首を傾げる榛名を前に、鳥海の頭は沸騰寸前だった。それを何とか理性で押さえつけて、帰還の途に付く。

 今パラオ艦隊は、ある意味で苦境に立たされていたのである。

 

 

――――――

 

 

 事の発端は数週間ほど前にさかのぼる。

 ある程度資源に余裕が出てきたため、徹心はさらなる戦力増強を企図して戦艦の建造に挑戦していたのだが、結果は惨憺たる物だった。

 

「やれやれ・・・・・・」

「ごめんなさい! 私なんかの所為で、司令官さんに・・・・・・」

「あぁ、いや、そうは言っていない。羽黒は悪くないんだ」

 

 何度建造を行っても、出てくるのはその時に使った触媒だけ。多量の資材を用いるだけに、失敗した際のダメージは大きかった。都合五回ほどやって先ほどようやく成功したのだが、それで出てきたのが彼女、羽黒だった。

 妙高型重巡の四番艦である彼女は、言うなれば足柄の妹に当たるのだが、性格は全くと言って良いほど似ていなかった。

 いつもオドオドしており、ちょっとした物音ですぐに飛び上がるほどに驚き、何も悪くない(本人も周りも)にも関わらずペコペコと謝る。その所為で、足柄以外は彼女と接するのに苦労させられていた。

 

「それで、もう一回この配分でですか?」

「ああ、これで最後だ」

「了解しました。みんなー! 今回もお願いね!」

「『はーい!』」

「さて、と・・・・・・。保住主任、いくつか聞きたいことがあるんだが、良いか?」

 

 そう言って彼は、最後の建造を保住女史に指示する。

 彼女の号令一下、妖精達が資源と触媒を運び出し、艦娘建造ドックの奥へと消えていく。その最中で徹心は、保住女史に疑問を投げかけた。

 

「建造に失敗したと言うことは、既に艦は皆艦娘として活動していると言うことなのか?」

「ええ。概ね、その認識で間違いないかと」

 

 彼と羽黒の分のお茶を入れながら、彼女は説明を続ける。彼女によると、艦娘は基本的には同じ名前の物は二人と存在しないと言う。

 それについては理由は不明だが、海軍では艦名を決める際に、除籍してからある程度時間が経った艦の名前を使う例があり、それと同じ様に混同を防ぐためなのだろうと言うのが現在有力らしい。

 事実、足柄と今ここにいる羽黒は、足柄本人曰く『二回目』。つまり、艦娘になってから一度轟沈を経験しており、建造される艦娘は基本的にこちらになるとの事だ。

 

「ふむ、そう言うことか・・・・・・。まるで輪廻転生だな」

「深海棲艦みたいな化け物がいる世の中ですし、何が起きてもおかしくないですよ」

「おはなしちゅう、しつれいします!」

 

 そう言って、湯飲みを口に付ける保住女史。一口飲んで熱かったのか、息を吹きかけて冷まそうとした時、妖精の内の一人が報告しに現れた。だが、どうも様子がおかしい。いつもの一仕事をやり遂げたようなさわやかな表情では無く、『何か拙い物を見つけてしまった』と言わんばかりに緊張感が顔からにじみ出ていた。

 

「どうしたの、何かあったの?」

「えっと、さきほどよりもまえにおこなっていたけんぞうが、せいこうしました。ですが・・・・・・」

「・・・・・・?」

「せつめいするより、みたほうがはやいとおもいます」

 

 

☆★★☆

 

 

「これって・・・・・・!」

 

 建造を担当した妖精の並々ならぬ表情からも、何か普通では無い事は薄々感じ取れた。

 担架のような台の上に、建造されたであろう艦娘が横たわっている。これは、建造が完了した場面に立ち会った羽黒、名取と同じで変わっていない。

 修験者と巫女を足して二で割った様な白い服は振り袖状で、下半身には赤いスカート。膝上まであるブーツの上からも見える両脚はすらりとしているが、細すぎるわけでも無く、適度に鍛えられているようにも見える。そして艶のある黒髪を、金色の髪飾りで留めているのだが、問題は彼女の容姿ではない。

 

「・・・・・・めいかんにも、かこにはいぞくされたかんむすさんたちのめいぼにも、のってなかったので、ねんのためほうこくしたのですが・・・・・・」

「それよりも、何なの、これは・・・・・・!?」

 

 隣にいた保住女史の顔が驚愕の色に染められている。最初は、完成した艦娘に驚いているようだが、そうではなかった。

 

「こんな艦娘、『見たことが無い』わ・・・・・・!!」

 

 今日、彼らは文字通り『新たな艦娘』の誕生を目撃してしまったことにだ。

 

 

――――――

 

 

 彼女の建造から数日間。自分達はあらゆる伝手を使って、名も知らぬ艦娘について徹底的に調べ上げた。その際、以前所属していた戦艦型の艦娘、比叡と服装が似ていたことも踏まえて調べたところ、彼女の正体が段々とわかってきた。

 現在、連合艦隊に所属している戦艦型の内、金剛型で現在活動しているのは、横須賀鎮守府所属の金剛と、単冠湾泊地所属の霧島の二隻だけ。比叡は既に轟沈、除籍されており、現在はどこの拠点でも活動していない。が、もう一隻だけ、活動していない金剛型の艦娘がいた。

 榛名。金剛型の三番艦であり、これまでに集まった情報を総合すれば、彼女がそうなのだろう。

 だが、問題は『戦艦』の榛名は呉での解体作業が終わったばかり。それがなぜか、艦娘としてここへ現れたと言うこと、か・・・・・・。情報の数だけ、逆に判らないことが増えてきている様な気がする。

 

「あ、あれ・・・・・・?」

「? 保住主任、どうした?」

「ああ、それが・・・・・・金剛型の菊花紋章バッジがどこかへ行ってしまったんです。・・・・・・おっかしいなぁ、執務室に来たときにはまだ持っていたんだけど・・・・・・」

 

 不意に保住女史が何か探し始めたので聞いてみたところ、金剛型共通の装束に施されている、菊花紋章を模したバッジを紛失してしまったとのことだ。

 ん? まてよ・・・・・・

 

「主任、あの後、制作室へ向かったか?」

「ええ、最初の建造の前、整備作業をする時に汚しちゃいけないから作業台の上に置いて・・・・・・あっ!」

「思い出したのか?」

「しまったぁ・・・・・・もしかして、妖精さん達が触媒と間違えて持って行っちゃったかもしれないです」

 

 謎が一つ解けた。どうやら、榛名が出てきた理由はバッジ、ざっくりと言えば装飾品と言う断片的な情報だけで、活動していない金剛型が建造された可能性が出てきた。

 

「まあ、考えてもしょうが無いですよ。詳しいことは、彼女が起き上がってからゆっくり聞きましょう」

「それもそうだな・・・・・・。このことは、一応上には報告しておかなければな・・・・・・」

「ラバウルはいい顔をしなさそうですね」

「仕方が無いだろう。向こうを通さないと、軍令部はおろか国内にも伝えられない」

 

 彼女の言うとおりだ。とにかく今は、榛名から話を聞くのが先決だろう。それに加えて事は慎重に運ばないと、せっかくの新戦力をくだらない派閥争いで死蔵することにもなりかねないのだから。

 

 

★☆☆★

 

 

 夢を見ていました。日本の造船工廠で生まれ、たくさんの敵を倒し、たくさんの仲間達を看取り、最後は呉の海で力尽きた夢を・・・・・・。

 

『敵、急速接近!! 小型種が多数です!!』

『機銃でも何でも構わん!! 接近を阻止しろ!!』

『駄目です! 哨戒艇程度の火力では、効果がありません!!』

『なら体当たりをしてでも食い止めろ!!』

 

 私の中を、慌ただしく海兵の皆さんが行き来し、備えられた機銃で怪物を迎え撃つ。隣で迎撃していた艦の皆さんも、一隻、また一隻と怪物に倒されていく。沈没ではなく、着底で済んでいるのがせめてもの救い、なのかもしれません・・・・・・。

 

『戦艦伊勢、被弾!! 第三砲塔が破壊された模様!!』

『天城、傾斜回復不能! 横転しました!!』

『えぇい、呉の戦艦は第三砲塔に呪いでも掛かるのか!? 駆逐艦はどうなっている!』

『潮は応答ありません!! 響は現在も交戦中!!』

『青葉はどうだ!?』

『未だ健在ですが、被弾率が上がっているようです!』

 

 出撃する燃料も無く、弾薬も僅か。それでもなお、私と私の乗組員の皆さんは諦めませんでした。だけど・・・・・・。

 

『っ、どうしたぁっ!?』

『船体中央部に被弾!! 魚雷と思われます!!』

 

 当たった感覚からして、魚雷と似た何か。とても小さいはずなのに、とても・・・・・・痛い・・・・・・。

 雪風ちゃんは、この魚雷と似た何かの所為で、沈んだと聞いたことがあります。もう、だめなんですね・・・・・・。

 

『中央区画に浸水発生! 傾斜の恐れあり!!』

『やむを得んか・・・・・・。自沈弁解放、着底する!!』

『しかし・・・・・・!』

『もう良いんだ。こいつも十分に戦った。いい加減、休ませてやれ・・・・・・』

『っ、了解・・・・・・!』

 

 これが私の、最後の一日。

 夢は一旦ここで終わり、そしてまた最初に戻っては、また最期を迎える。もう何回も続くと思っていたそれが、やっと終わる。根拠は無いけれど、そんな気がします・・・・・・。

 

 

――――――

 

 

「・・・・・・」

 

 見知らぬ天井が見える。

 今まで、上を向いても空しか見たことが無かった私にとって、初めての光景でした。

 

「気がついたみたいですね。自分の手が見えますか?」

 

 傍らに立っていた桃色の髪の人が、何か言っています。手・・・・・・?

 

「・・・・・・!」

「落ち着いて聞いてください。今の貴女は、戦艦型の艦娘、金剛型巡洋戦艦の三番艦、榛名です。いきなり軍艦から人間の体になって戸惑うと思いますが、そこは落ち着いて、ゆっくり慣れていけば大丈夫です」

 

 言われてみれば、何だか違和感がします。天井もそうですが、今私のいる部屋が酷く狭いような気がします。目線も低く感じましたが、なるほど。私は、『カンムス』になったんですか・・・・・・。

 

「それじゃあ、落ち着いたら、提督の所へ挨拶に行きましょうか。私は保住瑞穂、よろしくお願いしますね!」

「・・・・・・はい」

 

 

――――――

 

 

 保住さんと名乗った女の人に案内されるがまま、私は工廠とされている建物を出て、中央の建物にある、提督の執務室と言う所へ来ました。

 

「失礼します。提督、榛名さんが目を覚ましましたよ」

「ああ、入ってくれ」

 

 中から男の人の声がしたので、私は保住さんと一緒に扉をくぐって入ります。

 部屋の両脇には本棚と、応接用の机と長いす。一番奥には、執務机の代わりでしょうか? 長机が置かれており、提督はそこに座していました。

 

「提督、また考え事ですか? お行儀が悪いですよ」

「あぁ、済まない。没頭してしまったようだ」

 

 保住さんに注意され、机から立つ提督。

 少し長めの黒い髪と、鋭い目。すらりとした長身の体を、第二種礼装に包んだ男の人。今まで榛名が見たことのある提督の皆さんと比べると・・・・・・ちょっと若すぎる気がしますが。

 

「それで、彼女が例の?」

「はい! 榛名さん、自己紹介をしてください」

「・・・・・・高速戦艦、榛名、着任しました。貴方が、その・・・・・・提督なんですか?」

「ああ。泊地司令官の東郷徹心だ。よろしく頼む」

 

 顔つきはちょっと冷たい感じがしましたけど、意外と優しそうです。何となくですけど、判る気がします。

 この後は、保住さんが泊地の中を案内してくれるとの事でしたので、部屋から出ようとしたその時でした。

 

「司令官、入るよ」

 

ドアを開けて、銀色の髪の女の子が入ってきたのは。

 見た目は背の低い、可愛らしい女の子。だけど私は、彼女を『知っている』・・・・・・。いや、彼女の事を『覚えて』いる・・・・・・!

 

「榛・・・・・・名? そこにいるのは・・・・・・榛名、なのかい・・・・・・?」

「響・・・・・・? 響なのね!?」

 

 あの日、呉の海で同じ空を眺め、最期まで怪物と戦って力尽きた、戦友(なかま)だった彼女を!!そう思った次の瞬間には、思わず彼女に抱きついていました。

 

「二人は知り合いなのか?」

「そうだよ。一応、記録の上では呉で奴ら相手に戦った。艦娘になる前にね」

「そうか。良かったな、仲間に会えて」

「スパスィーバ。榛名も、またよろしく頼むよ」

「ええ・・・・・・。榛名で良ければ、お願いします・・・・・・」

 

 もし神様がいたとしたら、榛名も、この巡り合わせに感謝したいです。

 そして願わくば、今度は生きて戦い抜きたいです。本当に、最後まで・・・・・・。

 

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