私はとりあえず、E-EXのレア艦掘りも含めて完遂出来ました。
今回もシリアスさんが張り切っています。それでは、どうぞ
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「蘭銅が・・・・・・」
未だに追いすがる敵艦隊を牽制しつつ、退却を続ける伊勢達。背後では蘭銅が、彼女達の母艦が、燃えさかりながら沈んでいく。
深海棲艦にとって、大型船舶は極上の獲物だ。ここまで、よく保った方だろう。
それを背に、飛ばそうとしたその時である。
「前方に艦影! 敵よ!!」
「先を急ぐわ。左五点回頭、全艦最大戦速! 強行突破するわ!!」
遠方にずらりと並ぶ、黒い影。深海棲艦隊の一部が待ち伏せしていたのだ。
伊勢は即座に転進を指示し、全速力で突破を図る。しかし、こちらに制空権が無い今、敵の攻撃は更に激しさを増してきていた。
上位種のル級による正確無比な観測射撃によって針路を塞がれ、リ級の中距離砲撃が次々と叩き込まれていく。その内の一発が、伊勢の左側の主砲に直撃した時。彼女は、覚悟を決めた。
「ここまでみたいね・・・・・・。皆は先に行って。私が殿をやるわ!!」
「ですが、伊勢さん一人だけでは!!」
「これでも、呉事変まで『単なる戦艦』でいられた身よ。そうそう簡単には沈まないわ。それに、小沢囮艦隊の時と比べたら・・・・・・このくらい・・・・・・!!」
そう言いつつ、伊勢は精密射撃体勢を取り、残された主砲を発射する。
獲物が観念したとばかり思って突出していたリ級の一人が、足に命中弾を受けて転倒。派手に転がって僚艦の射撃を妨害する。
「熊野。次席旗艦として、指揮をお願いね」
「伊勢さん・・・・・・」
「さあ、早く!!」
「くっ・・・・・・ご武運を!!」
指揮を熊野に託した伊勢は、さらに主砲を一斉射。ル級と、何隻かの軽巡型に損傷を負わせたところで、砲術妖精が弾切れを報せて来た。
「さて、どうしたものかしらね・・・・・・」
目の前には敵の大群。しかも、これで全部とは、彼女は到底思っていなかった。だが、ここを抜けられれば、被害は彼女達にまで波及する。
細かいことは抜きにして吶喊しようとした、その時だった。
数機の九九艦爆が彼女の頭上を飛び去り、敵艦隊目がけて爆弾を投下したのだ。
「やっと、追いつけました」
それを放った主は、紅色の着物に、やや長めの洋弓を持った艦娘―龍鳳だった。
集中攻撃を受けたのか、胸当ては割れ、戦闘装束のあちらこちらが破れて煤けている。加えて、上半身はすでに片袖を脱いでいる状態だ。
「龍鳳、無事だったのね!!」
「何とか大丈夫です。熊野さん達は?」
「先へ行かせたわ。悪いけど、手を貸してもらえるかしら?」
「喜んで。ですけど、少し厳しいですね」
「でしょうね。でもま、今は心強いかな」
そう言って伊勢は、腰に差した軍刀を抜き、龍鳳は九九艦爆用の矢を弓につがえる。
「私達の首は、そうそう安くは無いわよ!!」
「最後まで、足掻かせてもらいますから・・・・・・!!」
そう言って彼女は敵戦列へと斬り込み、白刃を振るう。それによってル級の首が
その一方で、龍鳳はありったけの艦爆を発進させ、それを援護した。片道切符となってしまう妖精達に謝罪しながら、彼女は次々と矢を放っていく。
ぶつかり合いによって主砲が脱落し、破損した飛行甲板と弓を投げつけながらも、彼女達は修羅の如く暴れ回った。
得物が刃こぼれし、中途でへし折れたら、それをそのまま敵の首筋に突き立て、喉笛を掻き切る。
刃物が無くなれば、主砲の砲身や
「がっ・・・・・・はっ・・・・・・!!」
「伊勢さん!!」
武器を投げ捨てた一瞬の隙を突かれ、リ級の爪が伊勢の脇腹に深々と突き刺さる。それを合図に、駆逐艦や軽巡が彼女の体に次々と食らいついた。
〈私の悪運もここまで、か・・・・・・。日向・・・・・・貴女は、こんなつまらない所で、死なないでよ・・・・・・〉
朦朧とする意識の中、彼女の脳裏に最後に浮かんだのは、遠く離れた地にいる自らの姉妹艦の顔であった・・・・・・。
――――――
伊勢らの死を覚悟しての足止めにより、艦隊は先ほどよりも大きく距離を稼ぐことができていた。しかし、状況は好転したわけでは無い。敵の包囲は、まだ終わっていなかったのだ。
「くっ・・・・・・やったなっ!!」
ト級の砲弾を受け、小破しながらも川内は両腕に装備された14サンチ砲を撃ち返す。
しかし、距離がありすぎる上に川内は元々射撃は得意な方では無いのもあって、砲弾の大半は外れてしまう。
「どうするのよ!? これじゃジリ貧だわ!!」
「確かに、拙いね・・・・・・」
このままでは、逃げるどころか、伊勢が無駄死にになりかねない。そう考えた鈴谷は、川内の方を見やる。
視線を向けられた事に対し、頷く彼女。どうやら、同じ事を考えていた様だ。
「熊野と曙は、先に行ってて」
「今度は私達が食い止めるから」
「二人とも、何を!?」
「冗談じゃ・・・・・・無いわ・・・・・・!!」
それに真っ向から異を唱えたのは、曙だった。
「なんで・・・・・・なんでよ! どうして自分から死にに行く様なことするのよ!!」
泣きじゃくりながら、川内の腹をポカポカと叩きつつ彼女は言う。かつて単なる『駆逐艦』だったころから、目の前で立て続けに仲間を失ってきている彼女にとって、自分だけが生き残る事は耐えられないのだろう。
だがそれに対し、川内は笑顔で応えた。
「死ぬんじゃ無いよ。これは、生きるための戦いなんだから」
「でも・・・・・・!」
「あー、えっと、何と言うかさ・・・・・・そう・・・・・・リレーだよ!」
「リレー・・・・・・?」
「そ、リレー」
頬に突いた煤を手で拭いながら、彼女は続ける。
「次の走者にバトンを渡せば、その走者の役目はそこで終わり。だけど、その人の『思い』は、次の人へ、また次の人へと受け継がれていく。だからさ・・・・・・私と鈴谷の『思い』、託すわね」
そう言った彼女の笑顔はとても眩しく、そして頼もしく、曙の目に映った。
「川内・・・・・・」
「こう言うときは、さ。熊野みたいに『ご武運を』って、言うもんじゃ無い?」
「・・・・・・言わない」
「曙さん?」
「そんなことは言わないから、また私を夜戦に誘いなさい!! 絶対によ!!」
「良いよ、約束だからね」
互いに再会を誓い合い、彼女達は二手に分かれていく。遠ざかっていく一つは、熊野と曙。そして、その場に留まったのは・・・・・・
「はぁ~・・・・・・テンション下がる~」
「まあ、良いじゃん。この状況、鉄底海峡を思い出すよ・・・・・・!」
「こっちはあの辺りに碌な思い出無いんだよねぇ・・・・・・。しょうが無い。腹をくくって、貧乏くじと行きますか」
「そう言うこと。伊勢だって、そのつもりで残ったんだろうし」
鈴谷と、川内の二人だった。
二人はそれぞれ、短刀と長刀、そしてありったけの主砲と魚雷を構える。そして、海面を蹴って跳びだした。
「さてさて、突撃いたしましょう!!」
「夜戦じゃ無いけど・・・・・・付き合って貰うよ!!」
☆★★☆
皆、私達の為に死地へと残った。
いくら伊勢さん達が勇猛果敢であっても、あれほどの数に加えて、個々の能力に至るまで、一部は私達を上回る者さえいる。あれでは、三人はもう・・・・・・。
「はぁっ・・・・・・はぁっ・・・・・・もう・・・・・・駄目ぇ・・・・・・」
「敵の追撃も、止んだみたいですわね」
もうどれくらいの距離を。それも戦闘機動で走ってきたのか。とりあえず、敵は振り切ったと見るべきでしょうね。
「曙さん、現在地は判りますか?」
「無茶言わないでよ・・・・・・。観測しようにも、この曇り空じゃ無理だわ」
よくよく考えてみれば、今の私達は完全に孤立している。弾薬はもちろん、全速力で移動した所為で燃料も残り僅か。今、他の深海棲艦に襲われたら一溜まりもありません。
「そうでしたわね・・・・・・。とにかく、ここを離れましょう」
それから更に、先を急ごうとしたその時です。不意に砲声らしき音が、周囲に響き渡る。
「何!? 誰が撃ったの!?」
「・・・・・・向こうですわね!!」
周囲には艦影らしきものは見当たらない。ですが、聞こえ方からしてそうそう遠くへはいないはず・・・・・・!
「曙さん、行きますわよ!!」
「っ、わかったわ!!」
もしこれが友軍の物ならば、一刻も早く合流しなくては!! 残された力を振り絞り、私達は再び走り出す。
それから数刻もしない内に、前方に艦娘らしき人影が二つ、見えてきました。
「あれ、味方かしら?」
「だと良いんですが・・・・・・! もし、お二方!」
近づいて呼び止めた所、その二人の艦娘―装備からして、駆逐艦型でしょうか?―が振り向いた。
「何者だ? 所属は何処だ!?」
「落ち着いてくださいな! 私達は味方です!」
「・・・・・・失礼した。私は、佐世保鎮守府第十八戦隊所属、駆逐艦磯風だ。で、こっちが・・・・・・」
「浦風じゃ。よろしゅうね」
「第十七戦隊、次席旗艦の熊野ですわ」
「特型駆逐艦、曙よ。所属は同じ」
「磯風さんと、浦風さん・・・・・・と仰いましたわね。第十八戦隊は、どうなりましたの?」
とるも取り敢えず、まずは情報を集めるのが先ですわね。互いに自己紹介を終えて、私はすぐ黒髪の駆逐艦―磯風さんに問いかけました。
「第十八戦隊は・・・・・・全滅した」
「えっ・・・・・・!?」
「いきなり艦橋に直撃弾もろぉたけぇのぉ。提督さんも、その時に・・・・・・」
「そんな・・・・・・嘘でしょ・・・・・・」
ですが返ってきたのは、私達と同様でした。
青髪の駆逐艦―浦風さん曰く、所属する艦隊は崩壊し、ここまで命からがら逃げてきたと言います。
「ヌ級じゃゆぅて思うとったら、見たことも無い深海棲艦がおったけぇのぉ。空母どころか水上機すらんうちらは、一溜まりも無かったんじゃ・・・・・・。加えて他の駆逐艦娘が錯乱して、もう大変じゃったんで」
「そうでしたの・・・・・・」
「・・・・・・!?」
「曙さん、どうしましたの?」
「何かこっちに向かってるわ!」
拙いですわね・・・・・・。私達を付けてきたのかしら? それとも、他の深海棲艦の群れでしょうか? 何にせよ、今の私達では水雷戦隊とも渡り合える状態では無い。
「やるしか、なさそうですわね」
「ああ、そうだな」
「まっ、待って! アレは味方だわ!!」
そう思っていたら、曙さんが止めに入って来ました。
目をこらして見たところ、どう見ても深海棲艦では無い一団が海面を滑走してきている。やはり、味方の様ですわね。
「つ、着いた・・・・・・」
「もうへとへとです・・・・・・」
「あれ? 他の連中はどうしたの?」
赤い袴の艦娘―装備からして、恐らく空母でしょうか?―の方に聞かれたので、私はこれまでに磯風さんから説明された事をそっくり話しました。
それを聞いた三人の反応は、三者三様に悲観的で絶望的な物でした。
「と言うことは、第二十二戦隊も?」
「ええ。戦闘のどさくさで、瑪瑙ともはぐれちゃったし・・・・・・どうしようかしら」
空母―飛鷹さんはそう言って、頭を抱えてしまってます。随伴してきた駆逐艦の村雨さんと春雨さんも、どうするべきか考えがまとまっていない様です。
こう言うとき、殿村提督ならどうするのでしょうか・・・・・・。
『東郷徹心を頼れ。アイツなら、何とかしてくれる』
そうでしたわ・・・・・・。提督はあの夜、そう仰ったではありませんか・・・・・・!
「皆さん、私の考えを聞いて頂けますか?」
「何か策でもあるの?」
「ええ。今から、パラオへ向かいましょう」
「パラオって・・・・・・懲罰艦隊じゃない! そんなところへ行ってどうするわけ!?」
私の述べた考えを聞いて、他の皆さんに対し動揺が走る。
飛鷹さんの仰った通り、パラオは半ば非正規部隊とも言える艦隊であることに間違いはありません。
ですが、あそこの。パラオの東郷中佐なら、きっと良い知恵があるはず。殿村提督はあの時、そう言うことを仰ったはずですわ。
「それは重々承知しております。ですが。いえ、だからこそ、パラオへ向かいましょう」
「・・・・・・そこまで言うのなら、理由を聞いても良いか?」
「それぞれ艦隊は全滅し、生存者も絶望的。となれば、今の私達は幽霊みたいな物ですわ。パラオは艦娘の吹きだまりの様な所ですし、今更一人二人増えたところで変わりはありませんわ」
「・・・・・・私は、熊野さんに賛成だわ」
そう言って、村雨さんが私に賛意を示してくれました。
とにかく今は、生きて戻ることが先決です。あの時と同じ、逃避行がまた始まりますの。ですが今の私には、こんなにも頼れる仲間がいる。もう、一人ではありませんわ。