名無しの英雄~パラオ艦隊戦記~   作:レイキャシール

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第二章・第十四話:あ号艦隊決戦・2~海原の死闘~

 

 

――――――

 

 

「てきえいほそぉーく! いちじのほうこう、きょり4700!!」

「内訳は!?」

「けいじゅん10! くちく40! すいらいせんたいです!!」

「わかりました。駆逐班各位、私に続いてください!!」

「い、行きますよ!!」

「『「了解(です)(ぽい)(じゃ)!!」』」

 

 出撃した艦隊、その最前列に立つ神通ら水雷班の索敵妖精が真っ先に敵影を捕らえる。

 それと時を同じくして、直掩の艦戦が彼女達の上空を通過していき、敵の制空隊と巴戦を始めるのを見ながら、彼女達は敵の水雷戦隊目がけて突撃する。

 

「おどりゃぁっ!!」

「そこっ!!」

「撃って撃って、撃ちまくれ!! 弾幕を集中させろ!!」

「いっけぇっ!!」

 

 その中でも特に気合の入った攻撃を見せているのは、磯風ら旧攻撃艦隊の面々だ。

 弾幕による熱烈な歓迎を紙一重で回避しながら、磯風はまず左手に持っている機銃を発砲する。

 吐き出された銃弾は大半がロ級に命中するが、それだけでは撃沈に至らず、逆に主砲で反撃を試みるロ級。だが、磯風はそれを待っていたのだ。

 

「喰らえっ!!」

「!?!?!?」

 

 発砲しようとしたその刹那。彼女は、艤装につり下げられていた対潜爆雷を投擲。間髪を入れずに右手の連装砲で撃ち抜いて起爆させる。

 至近距離で起きた大爆発に面食らい、敵から目を背けてしまうロ級。それが、彼の命取りだった。

 

「えぇ感じじゃな、っと!」

「――――!!」

 

 いつの間にか側面へと回っていた浦風が、彼の目に主砲の砲身をねじ込み、ゼロ距離で放ったのである。

 距離による減衰をほぼ受けずに放たれた砲弾はロ級の中枢部分を貫き、そのまま反対側の目から飛び出していく。

 

「良し、次だ!!」

「了解じゃ!」

「やりますね。では、こちらもっ・・・・・・!」

「あぁら、よっとぉっ!!」

 

 浜風、谷風も合流し、連携によって次々と敵を屠っていく旧第十七駆逐隊の面々。彼女らだけでなく、旧第二駆逐隊も負けてはいなかった。

 

「五月雨、行くわよっ!」

「はいっ!!」

 

 村雨と五月雨が左手に持っているのは、本来なら旗艦が使用する盾―増設バルジだ。片手がふさがるだけで無く、場合によっては動きを制限することにもなるこの装備だが、防弾能力は高い。

 流石に上位種や黄色く光る個体が相手では少々心許ないが、それでも軽巡程度であればそれで十分すぎた。

 

「さあ、素敵なパーティしましょう!!」

「砲戦、始めます!」

 

 その隙間を縫う様にして、夕立と春雨が発砲。怯んだ相手目がけて、四隻がかりで砲火を集中させる。それによって今、一隻のチ級が蜂の巣にされていた。

 

「ヒキョウモノ・・・・・・メ・・・・・・!!」

「卑怯で結構! これが駆逐隊の戦い方よ!!」

 

 怨嗟の声と共に沈んでいく彼女を最後まで見ること無く、再び駆け出す四人。その一方で、中衛。第一、第二戦隊の戦闘も苛烈を極めていた。

 

「撃て、撃てぇっ!!」

「喰らえぇっ!!」

 

 巡洋艦に乗せられる最大口径である20.3サンチ連装砲と、扶桑の35.6サンチ連装砲が火を噴き、前衛で切り結んでいる水雷戦隊の頭上を越えて砲弾が敵艦隊に降り注ぐ。

 同様に、ル級を始めとする深海棲艦の主力部隊も負けじと主砲を撃ち返し、前衛をかいくぐって一部の敵艦が突撃を敢行してくる。

 

「ひゃあぁっ!!」

「!?!?」

 

 側面から斬り込もうとしたリ級の足に、砲弾が命中した。それの主―熊野は冷静にそれを確認すると、再び照準、発砲。

 砲弾は今度は、のど元に命中。首から上を吹き飛ばされ、爆沈するリ級。だが、それによって空いた穴にまた別の深海棲艦が合流。瞬く間に埋められてしまう。

 

「ねえ!!」

「あん!?」

 

 主砲で弾幕を張りながら、足柄は摩耶に怒鳴る様にして話しかける。

 

「キリがないわね、これじゃあ!!」

「そうだなっ、っと・・・・・・!! なあ、扶桑!!」

「何かしら!?」

「榛名達は、まだなのか!?」

「通信圏外だから、わからないわ!」

「ったく、このままじゃ保たねえぞ・・・・・・!」

 

 一方で摩耶は、扶桑に榛名達別働隊の動きを聞くが、彼女の方にはまだ連絡が届いていないらしい。

 敵の攻撃がさらに苛烈さを増す中で、艦隊の間には焦燥感が漂い始めていた。

 

 

☆★★☆

 

 

「・・・・・・っ、はぁっ・・・・・・!」

 

 拘束を離れ、艤装に取り付けられた増糟が音を立てて海中に沈んでいく。

 もうどれだけ走ったか判らない。もう何回、こうして額の汗を拭ったか判らない。

 本隊から先行する形で鞍馬から出撃した榛名達は今、こうして戦場を迂回しながら移動している最中です。

 もう本隊は戦闘を始めている頃でしょうか。榛名達がそちらにたどり着く時期は、早すぎても遅すぎても駄目。

 早すぎればこちらが危険に晒されますし、逆に遅すぎれば本隊にかかる負担がそれだけ重くなります。

 

「妖精さん、増糟はあとどれくらいありますか!?」

「さきほどのが、さいごの1こです!!」

「榛名、そろそろ索敵を警戒した方が良いわ!」

「はい・・・・・・!」

 

 ふと遠くを見ると、空の上に黒い雲が浮かんでいるのが見えます。もしかしてあれは・・・・・・

 

「長良さん! この辺りの天気はわかりますか!?」

「確か、今の時期は雷雨の予報が出てたはず!」

「やっぱり・・・・・・!」

 

 長良さんの言うとおり、あれが雨雲なら空母の目を誤魔化すことが出来るはず!

 

「皆さん、あの中を突っ切りましょう! いくら深海棲艦でも、雨の中までは飛べないはずです!!」

「『「了解!!」』」

 

『兵は拙速を旨とし、迅速を尊ぶべし』。今は覚悟を決めて、駆け抜けるだけです・・・・・・!!

 

 

★☆☆★

 

 

 日が傾きかける頃。強襲されたショックから敵艦隊が立ち直って来たため、前衛の進撃は緩慢なものとなり、戦況は膠着状態に陥っていた。

 一応、雲龍ら第四戦隊と所属する航空隊の奮戦によって鞍馬への被害こそ出てはいないが、それでも流れ弾の何発かが至近弾となって船体をゆらしている。

 

「艦隊の状況は、どうなっている?」

「第一戦隊は、扶桑と羽黒が小破。摩耶が中破。第二、第三水雷班は今のところは健在ですが、敵の長距離射撃によって足止めを喰らっています」

「航空隊の方は?」

「現状では、制空権の奪取で手一杯とのことです」

「そうか・・・・・・。さて、どうしたものか・・・・・・」

 

 香月中尉から挙げられた報告を聞き、徹心の顔が苦くなる。

 彼自身、楽な戦場では無い事は理解していたが、それでも実際に直面した現在では認識を改めざるを得なかった。

 

〈水雷班を強行突入させて、制空権は現状維持。残りを攻撃に振り分ければ、あるいは・・・・・・〉

 

 今、彼の頭の中では戦果と被害の軽重が天秤に掛けられている。これ以上手間取れば、敵がこちらの意図に気付く可能性もあるからだ。

 

〈いや、駄目だ。それでは犠牲は避けられない。榛名達が合流出来れば、まだ違うのだが・・・・・・〉

《こちら索敵艦橋! 敵艦載機、接近してきます!!》

「何だとっ!?」

「各部機銃、及び高角砲全門、迎撃急げ! 敵を近づけさせるな!!」

 

 不意に、伝声管を通じて入ってきた艦載機接近の報。彼は一時思考を中断し、迎撃の指示を飛ばす。

 それによって、鞍馬の船体の随所に取り付けられた20ミリ連装対空機銃がハリネズミの様な弾幕を張り巡らせ、8サンチ連装高角砲が届かない距離にいる敵機めがけて対空用の砲弾を吐き出していく。

 銃弾や、炸裂した砲弾の破片を受け、火の玉となる深海艦載機群。その一方で、弾幕をかいくぐった機体による機銃掃射や、撃墜された機体が鞍馬の船体に特攻したことで何人もの負傷者が出る。

 この戦闘に、高角砲の装填手として参加していたある一等兵は、手記に

 

『大東亜戦争の戦闘は記録でしか知らなかった。だが、場所と相手を変えて、それを体験させられた』

 

と残している。まさしく、激戦だったのだ。

 

《高角砲1番、射撃不能!!》

《右弦10番機銃、銃座が破損しました!》

「手の空いた人員は負傷者の救護に回れ!! 艦橋と機動甲板への被害は、何としても防がせろ!!」

 

 砲雷長として、射撃指揮の全権を担う小倉大尉は伝声管だけでなく、艦内通話用の電話も総動員して方々に指示を飛ばしていく。彼らもまた、戦いの渦中にあったのである。

 

 

――――――

 

 

「きゃぁあっ!!」

 

 その一方で、最前線で戦う本隊の戦闘は、さらに苛烈さを増していた。

 黄色く光るル級の砲撃によって、扶桑の左手に握られた航空甲板に風穴が空けられる。

 何とか戦線は膠着状態を維持してはいるものの、物量に劣るパラオ艦隊はそれが精一杯。むしろ、その程度で抑えられている事自体が奇跡的な状態なのだ。

 

「クソが・・・・・・ブンブンウザいんだよっ!!」

「くっ、しつこいっ!!」

 

 直掩隊の網をかいくぐって、鞍馬と同様に艦隊に襲い掛かる深海艦載機。

 艦娘達は機銃や高角砲で迎撃しようとするが、少しでも隙を見せようものなら遠距離から狙撃される危険もある。彼女達は、回避と攻撃の両立と言う、非常に難しい行動を迫られていたのだ。

 

「てっき、ちょくじょーう!!」

「くっ、回避ぃっ!!」

 

 深海艦爆が投下してきた対艦爆弾を、横っ飛びに躱す扶桑。だが・・・・・・

 

「あぐっ・・・・・・!!」

「扶桑!?」

「扶桑さん!!」

 

 その瞬間を待ってましたと言わんばかりに、リ級が発砲。右肩を貫かれ、体勢を崩してしまう。さらに不運なことに、それ目がけて雷撃針路を取ろうとする深海艦攻の姿が。

 

「くっ・・・・・・ここへ来て・・・・・・!!」

 

 覚悟を決めて、彼女が防御姿勢を取ろうとした、まさにその時である。彼女と敵機の間に、夕立が立ち塞がったのだ。

 

「させないっぽい!!」

 

 迷うこと無く、主砲を敵機目がけて発射。砲弾の直撃を受けた深海艦攻は、空中で魚雷諸共散華する。

 

「大丈夫!?」

「ええ、平気よ。だけどこのままじゃ・・・・・・!」

「ぽい・・・・・・」

 

 扶桑が視線を向けた先では、水雷班が敵の水雷戦隊と刃を交えていた。主砲の残弾を気にしているのか、既に何人かは短刀を抜いて斬りかかっている。

 当の夕立も、主砲弾の大半は消費してしまい、魚雷も、今発射管に装填されているのが最後の一射分だ。

 このままでは、艦隊はいずれ物量差の前に押し潰されてしまう。危機感を抱いた扶桑が、命令違反覚悟で僚艦に突撃を指示しようとした、その時である。

 

「!? 扶桑、危ないっ!!」

「えっ・・・・・・?」

 

 彼女の真横から接近してきていたリ級の上位種が、扶桑めがけて発砲。咄嗟に射線上に割って入る夕立。放たれた砲弾が、彼女の右腕をえぐった。

 

「がっ、ぎっ・・・・・・!!」

「夕立さん!!」

 

 あまりの痛みに主砲を取り落とし、顔をゆがませながら膝を折る夕立。それを見て勝利を確信したのか、再び主砲を向けるリ級。

 それを阻止すべく、扶桑が覆い被さる様にして夕立を守ろうとした、次の瞬間。

 

「!?!?!?!?!?」

「な、何・・・・・・!?」

 

 突如として別の砲声が鳴り響き、それと共に死角から撃たれたリ級が爆発四散したのだ。

 その光景に、目を白黒させている夕立。対して、その主に思い当たったのか、扶桑は通信妖精を呼び出した。

 

「妖精さん、艦隊に電文を送ってちょうだい」

「ないようは、どうしますか?」

「『メロスは帰ってきた』。繰り返すわ、『メロスは帰ってきた』・・・・・・!!」

 

 

――――――

 

 

「こちら第三戦隊、旗艦榛名! これより、戦線に合流します!!」

 

 榛名達が作戦海域に到着した時。それは、夕立と扶桑がリ級に撃たれようとしていた、まさにその時だった。

 彼女は、そのリ級目がけて主砲を斉射。距離がありすぎたため牽制になればと思って放ったのだが、その内の一発が彼女に直撃し、一撃で轟沈させたことは良い意味で予想外だった。

 

「全艦突撃! 榛名に続いてください!!」

「『「了解!!」』」

 

 思わぬ方向からの増援に面食らったのは、他ならぬ深海棲艦隊だ。

 彼女達はじりじりと戦列を伸ばしており、いずれは包囲する算段で行動していたのだが、その最中。一番脆くなる瞬間を偶然にも狙われてしまったのである。浮き足立たない方が可笑しかった。

 

「敵艦発見! 砲雷撃戦、用意っ!!」

「邪魔よっ!!」

「当たってぇっ!!」

「沈みなさいっ!!」

 

 彼女らが目標に選んだのは、戦列の最後尾。防弾能力に乏しい機動部隊だった。長良を含めた水雷戦隊が前衛に立ち、主砲を乱射しながら強襲する。

 ヌ級や、新種の空母達は、自衛のために艦爆と艦攻。そして、制空権を掌握するために艦戦も発進させて榛名達にけしかける。だがそれが、彼女達の運命を決定づけた。

 

「均衡が・・・・・・崩れた・・・・・・!!」

 

それに真っ先に気付いたのは、他でもない飛鷹だった。

 彼女は、補給のために着艦した零式艦戦を即座に収容し、入れ替わりに何枚かの紙人形を飛行甲板に並べていく。

 招喚されたのは、零戦や紫電改二よりも太くずんぐりとした機体。その側面には、稲妻を想起させる黄色い二本線が入れられている。

 開発略符号、『A7M2』。識別名、『烈風』。新たにパラオの技術陣が開発したそれが、飛鷹型航空母艦一番艦、飛鷹の切り札だった。

 

「さあ、丸川艦隊の仇を取るわよっ!!」

 

 発動機を唸らせ、空へと飛び立った烈風の編隊は、今まさに巴戦を続けている前線へと割って入っていく。

 

「それいけー!!」

「おらおらぁっ!」

「ひゃっはー!!」

 

 零戦はもちろんのこと、紫電改二すらも優に上回る運動性と機動性を持って縦横無尽に駆け抜け、次々と深海艦戦を撃墜していく烈風。

 それを見て奮い立ったのか、他の航空妖精達もみるみる動きが機敏になっていき、徐々に敵部隊を押し返し始めた。

 

「雲龍、隼鷹、今なら攻撃隊を出せるわ!!」

「・・・・・・妖精さん、行ける?」

「たいきちゅうのきたいは、ぜんきばくそう、らいそうずみ! いつでもばんぜんです!!」

「そう・・・・・・。稼働全機、発艦始め・・・・・・!」

「ぱぁーっと行こうぜ、ぱぁーっとなぁ!!」

 

 畳みかけるべく、雲龍と隼鷹も追加の零戦を発進させ、飛鷹の制空隊の援護に向かわせる。只でさえ、新型の乱入で混乱していた敵の航空隊に、再び立て直す余裕は残されていなかった。

 雲龍が隼鷹ら二人に伝えていた新戦術―二機一組機動も合わさって、みるみる数を減らしていく深海棲艦の艦載機群。

 そして遂に、一機の彗星が対空砲火をくぐり抜け、爆弾を投下。艦載機を発進させようとしていたヌ級の脳天に直撃し、木っ端微塵に粉砕される。

 それと同時に、激戦の合間を縫って潜行していた甲標的隊が魚雷を発射。新種の右脚が、それによって吹き飛ばされた。

 

《こちらうんりゅうかんさいきたい! せいくうけん、かくほぉっ!!》

《良し。司令部より、艦隊各位に伝達。これより、四式弾による支援砲撃を開始する。着弾地点付近の艦娘は、直ちに退避せよ! 繰り返す、着弾地点付近の艦娘は、直ちに退避せよ!》

 

 その報せを受けた徹心の命で、鞍馬の主砲―20.3サンチ3号連装砲が音を立てながら砲塔を旋回させていく。

 仰角が射程に合わせて調整され、主砲要員達の手で四式弾が装填される。

 

《砲身仰角、良し!!》

《四式弾装填、良し!!》

《目標、敵左翼艦隊! 第一、第二主砲、撃ち方始め!!》

 

そして、轟音と共に主砲が火を噴いた。

 放たれた砲弾は空中で炸裂、ばらまかれた大量の金属片や子爆弾が敵艦隊に驟雨の如く降り注ぎ、その内の何本かは、後方の空母達に突き刺さった。

 

「今が好機ね・・・・・・! 水上機隊、座標通信を!!」

《りょーかいです!》

《です!》

 

 それを見た扶桑は追加の瑞雲を発進させ、観測射撃の用意をする。

 足の遅い水上機だけでも撃墜しようと、空母達は航空隊を発進させようとするが、長良達に邪魔をされて発進針路を取ることができず、辛うじて発進出来た何機かもモグラ叩きめいて逆に撃墜されていく。もはや遮られる物は、彼女には無かった。

 

「伊勢・・・・・仇は取るわ・・・・・・。主砲、撃てぇっ!!」

 

 三基六門の35.6サンチ連装砲が一斉に放たれ、放物線を描きながら飛んだ砲弾は新種の頭に乗せられた帽子を弾き飛ばした。

 

「ぎょうかくさいちょうせい! じだんそうてん、いそげぇっ!!」

「そうてんよし!!」

「しゃかくちょうせい、よし!!」

「撃て!!」

 

 続けて、第二射。今度の目標は、先ほどよりも近い位置にいるル級だ。

 一発が脇に逸れる中で、二発目がル級に直撃。胸に風穴を開けられるだけでなく、続いて横合いから飛来した砲弾―榛名の放ったそれ―が左腕をもぎ取り、さらには頭を吹き飛ばす。

 

《敵戦艦、榛名が撃破しました!!》

「その調子よ、榛名さん。十字砲火で一気に行きましょう!」

《当然のことをしたまでです・・・・・・。榛名には、もったいないです》

 

 その一方で、前衛艦隊も勢いを取り戻しつつあった。足柄達重巡も水偵を発進させ、観測射撃で駆逐艦を始めとする装甲の脆い深海棲艦から屠っていく。

 仮に仕留め損ねても、攻撃隊によってトドメを刺され、海の藻屑と化していく。

 

「くそっ、弾切れか・・・・・・!」

「磯風さん、これを使ってください!!」

「むっ・・・・・・!」

 

 先ほどから主砲を乱射していた磯風だが、右手に握るそれが遂に弾切れを起こしてしまう。それを見た春雨は、背中の艤装にくくりつけていたドラム缶、もとい、ドラム缶型武装コンテナから予備の12.7サンチ連装砲を取り出すと、それを磯風に投げ渡した。

 

「ありがたい、これで戦える!」

 

 左手の機銃で敵を牽制しながら、磯風は主砲を掴み取る。そしてすぐさま、接近していた駆逐艦目がけて発砲、撃破した。

 

「皆さんも、弾が切れたら言ってください! 何丁かは持ってきていますから!」

「おーい、春の字! 弾くれ!!」

「はい、どうぞ」

「何でぇ、投げてくれないのか」

「投げるまでもないですし」

「かぁーっ・・・・・・」

 

 水雷戦隊もまた奮戦を続け、それによってじりじりと後退し始める深海棲艦隊。

 

「―――――!! ―――――!!」

「!? ―――!?」

「―――――――!!」

「―――――、―――――!!」

 

 だがここへ来て、最後衛、本来なら全体の指揮を執るべき空母達が、ル級と水雷戦隊の大半を引き連れて退却し始めたのだ。

 黄色く光るリ級の制止も聞かず、忽ちの内に距離を離していく空母達。

 地団駄を踏もうと脚を振り上げ、足下を見るリ級。その先には、真っ直ぐに自分目がけて突っ込んでくる白い航跡。それが彼女の見た、最後の光景だった。

 

 

 

 

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