しかもクオリティは高いのか低いのか自分でも解らないと言う・・・。
それと、今回はオーバードライヴさまの小説、『艦隊これくしょん―啓開の鏑矢―』から一部用語をお借りしています。
☆★★☆
あ号艦隊決戦から二週間ほど後。着任して以来、最大の艦隊決戦を終えた自分達パラオ艦隊はと言うと、新たな仲間を加えていた。
熊野、曙を筆頭に、磯風、浦風、村雨、春雨、飛鷹の旧攻撃艦隊と、叢雲、浜風、谷風の旧トラック泊地艦隊の一部を指揮下に編入する事を許可されたのである。五十鈴と古鷹も勧誘はしてはいたが、こちらは流石に許可は下りなかった。
「それにしても、ここまで大所帯になるとはな・・・・・・」
「駆逐隊が四個、一五隻に、巡洋艦が九隻と、母艦級が五隻。戦艦級こそ二隻だけですが、機動部隊も水上部隊も行ける均整の取れた艦隊になりましたね」
傍らに立つ鳥海と共に、今は新たに編入した艦娘達の指揮系統などの擦り合わせを行っているところだった。これ以外にも、鞍馬を投錨させる場所や乗組員用の住まいの確保など、やることはまだまだ山積している。
「私としては、こっちの方も気になりますけどね」
そう言って、鳥海が取り出したのは、昨日付の新聞だった。
その一面には、『沖ノ島の奇跡!! 若き提督の奮戦!』と、でかでかと書かれた見出しが。
「色々書いてますよ。“奇跡の東郷”、“軍神の再来”、“今半兵衛”に、“連合艦隊の諸葛孔明”。こっちの英国紙は“
「そう言うのはあまり好きでは無いのだがな・・・・・・。それはそうと、駆逐隊は確か訓練中だったな」
「はい。今は対水雷戦隊演習をしているそうです」
「・・・・・・無事に終わると良いな」
「そうですね。訓練と行っても、危険はやはりありますから・・・・・・」
だがこの時、自分も鳥海も知らなかった。まさかその訓練が切欠で、また一騒動起きることになることは・・・・・・。
★☆☆★
「一班は、もっと手早く動いてください!! これが実戦なら、今ので一発貰ってますよ!!」
徹心と鳥海が少し心配していたその頃。演習場では、拡声器越しに神通の檄が飛んでいた。
「構え、狙い、撃つ。この動作を行う時間の長短で、全てが決まります! 気を引き締めて!!」
「『はいっ!!』」
かつては第二水雷戦隊の旗艦として籍を置いていた前世があるだけに、彼女の指導にも熱が入る。しかし、その様子を岸壁から見ていた熊野は、ある種の不安感を覚えていた。
「大丈夫、なんでしょうか・・・・・・?」
「あ? 何が大丈夫なんだ、熊野?」
「何というか、こう・・・・・・不安なんですわ」
その様子を見て、側にいた摩耶が問いかけてくる。
「旧二水戦は最新鋭の駆逐艦と、練度の高い乗員が優先的に配置されたと聞きます。ですが、今のパラオは古くは睦月型から、新しきは陽炎型まで。それこそ艦暦で換算すれば、干支が一周回ってくるくらいの世代差がありますわ。提督も艦隊行動の時を考慮して、できる限り同型艦で組ませていますし」
「まあ、確かにそうだな。けどよぉ、取り敢えずは大丈夫じゃねぇか? 神通は
「それなら良いんですが・・・・・・。って、あら?」
「? 何か、動きが悪いな・・・・・・。何かあったのか?」
反航戦の訓練をしていたのか、互いに向かい合う形で隊列が接近し始めた時の事だ。
不意に、駆逐艦の誰かがよろめいた様に見えたので、途端に不安感が高まる二人。そして、次の瞬間。
「えぇっ!?」
「おいおい、マジかよ!?」
真ん中辺りで交差しようとした瞬間、派手な音と共に小規模な爆発が隊列で発生する。尋常でない事態を前に、二人は慌てて艤装を取りに格納庫へ向かって駆け出した。
★☆☆★
「もっときびきび動いて! 叢雲さん、足並みが乱れてますよ!!」
「わかってるわよっ・・・・・・!!」
ったく、教導担当だからってギャンギャン言われなくても解ってるっての・・・・・・。
まさかここまでキツい訓練をやらされているだなんて、夢にも思わなかったわね。まあ、私―叢雲が所属していたトラック泊地は、正規部隊の拠点で、こっちは元は懲罰艦隊、さらに昔は最前線基地だったから無理もないことだろうけど。
そして今行っているのは、フル装備状態での実戦を想定した反航戦。通称、“逆落とし戦法”の訓練なんだけど、そこで事件は起きた。いや、起きるべくして、起きてしまった。
「春雨、大丈夫?」
「はっ、はい、大丈夫です・・・・・・」
私のすぐ前を行く春雨の体が、右側に傾きかけていたのだ。
「予備の弾薬や主砲が入ってますから、ちょっとバランスが・・・・・・」
「・・・・・・しょうがないわね。神通に言って、外させてもらったら?」
「だっ、だめです! 私一人の所為で、皆さんにご迷惑は・・・・・・」
「・・・・・・!? 春雨、前っ!!」
「えっ・・・・・・!?」
速度の加減を間違えたのか、春雨が前を向いたときには、その前にいる曙の後頭部が彼女の目の前に迫っていた。
「きゃぁっ!!」
「いったぁっ!?」
鈍い音と共に、追突する二人。曙は何とか
痛む鼻を押さえながらよろける春雨。運の悪いことに、武装コンテナ代わりにしているドラム缶の重さの所為で体勢を大きく崩してしまう。さらにそこへ・・・・・・
「わっ、止せぇっ!!」
「えっ・・・・・・?」
最大速度で反対側から来た列。その先頭にいた長月と正面衝突してしまったのだ。
艤装と艤装が派手に接触し、金属同士の摩擦で火花が散り、衝撃で主砲の砲身が折れ曲がる。さらに運の悪いことに、弾薬の一部の弾頭が薬莢から外れ、中の炸薬がこぼれてしまう。
発火性のある物質と、火花。ここから出る答えは一つ。爆発だ。
火花で炸薬に引火し、派手な炎をまき散らしながら倒れる春雨。加えて、爆発の衝撃でドラム缶を固定していた鎖が千切れ飛び、誰かの顔面に直撃する。
「おい、大丈夫かぁっ!?」
「怪我はありませんの!?」
岸壁から、熊野と摩耶が慌てた様子で飛んできたが、二人の言葉が殆ど耳に入ってこない。訓練は一転して、艦娘同士の凄惨な事故現場となってしまったのだ。
☆★★☆
「・・・・・・」
「・・・・・・」
執務室の中を、重苦しい空気が支配する。
椅子に座る徹心の前には、先ほどまで訓練を見ていた神通が俯き気味で立っていた。
「一応、釈明があるなら聞いておこうか」
「・・・・・・」
その彼だが、珍しく怒っていた。激高するのでは無く、静かに、沸々と怒っていた。
「響と初霜がそれぞれ中破。春雨と長月に至っては大破して現在入渠中。原因は、無理な方法での訓練だったと叢雲から聞いているが・・・・・・そこの所はどうなんだ?」
「あの・・・・・・あの・・・・・・私は・・・・・・」
「過ぎたことだ、とやかくは言わない。自分からは以上だ。下がって良いぞ」
「・・・・・・了解しました」
一礼し、その場から辞した後も、神通は俯いたままだった。普通であれば、他の軽巡への引き継ぎなどやらなければならない事は多々あるが、それすらも考えられないくらい、彼女の気持ちは消沈していた。それこそ、昼食が喉を通らなくなるくらいに。
「あ、あの・・・・・・神通ちゃん。前、良いですか・・・・・・?」
「名取さん・・・・・・どうぞ」
「あ、ありがとう・・・・・・」
彼女が漸く顔を上げたのは、名取が相席をお願いしてきた時だった。
「その・・・・・・く、訓練のことだけど・・・・・・あの、摩耶さんから・・・・・・」
「聞いていたんですね・・・・・・」
「う、うん・・・・・・その・・・・・・」
「情けないですね、本当に」
「えっ・・・・・・?」
「『あの時』とは何もかも違うのに、それでも二水戦と同じやり方をしてしまいました・・・・・・。転属してきた時からもう、解っていた筈なんですけどね・・・・・・」
「神通ちゃん・・・・・・」
南京米混じりの麦飯を口に運びながら、彼女は続ける。
「焦っていたかもしれません、私・・・・・・。新しく所属する人達もだいぶ増えてきて、お手本にならなければと。それで結局やったことは、美保関の焼き直しの様な愚行・・・・・・。これじゃ、川内姉さんにも那珂ちゃんにも顔向けができませんね・・・・・・」
「うぅん、そんなこと無いよ」
「名取さん・・・・・・?」
「神通ちゃんは、一生懸命やっただけなんだよね。私にも・・・・・・そうだった時期があるから・・・・・・」
そう言って名取は、自らが覚えている範囲での過去を語り始めた。
「元々私も、訓練指導をやってたんだけど、練習航海の途中で敵に襲われて・・・・・・。一応、戦えていたんだけど、後ろから撃たれて・・・・・・それで・・・・・・」
「名取さん・・・・・・」
名取の話に思うところがあったのか、彼女の手を取る神通。
「ふえっ?」
「ありがとうございます。少し、楽になれました」
「そっ、そんな! 私は、何も・・・・・・」
「言霊と言うのは、何気ないことでも大きくしてくれるんですよ。それじゃあ、失礼しますね」
そう言って、食べ終わった食器を手に離席する神通。その後の名取の胸には、彼女の言葉が残っていた。
★☆☆★
私があの事故を目の当たりにしてしまった、その次の日の朝。朝食を摂っていた私に、名取さんが再び話しかけて来ました。
何でも、さきほど提督から、駆逐班の教導を担当する様指示されたと言います。そして、せっかくなので訓練を見に来て欲しいとも。今日は特にすることも無かったので、そのお誘いに乗らせて貰いましょうか。
「A班とB班は左右に展開、C班の突入を援護してください!」
「『「了解(っぽい)(です)(じゃ)!!」』」
名取さんの指示に従って、駆逐隊の皆さんが展開。仮想敵役の長良さん達の弾幕をくぐり抜け、設置されている標的を撃ち抜いていく。
時折命中弾を受けそうになりますが、そちらはバルジを持った駆逐艦が前に立って防いでいる。
私のやり方とは違う。むしろ、雲龍さんが艦載機でやっている二機一組機動の応用の様にも思えます。
「やっている様だな」
「あ、提督」
ふと振り向くと、私の後ろに提督の姿が。肩には真新しい大佐の階級章が陣取っており、提督が本当に昇進なされたことを示していました。
「神通、君の目から見て、名取の教導はどう思う?」
「そうですね・・・・・・。水雷戦隊としては、あまり褒められないですね」
「と言うと?」
「十字砲火を作れる点は評価出来るんですが、万一雷撃が逸れたときに味方に当たる危険があります。この陣形で確実を期するなら、尚更練習が必要かと存じます」
「確かにその通りだ。だが神通、『艦娘として』見るならば、これは模範的だぞ」
「模範的、ですか?」
そう言って彼が取り出したのは、一冊の本。手垢にまみれ、表紙の一部が剥げてしまっています。表題は・・・・・・『艦娘戦術』・・・・・・? 教本か何かでしょうか?
「これまで艦娘の運用は、通常の戦闘艦艇の運用を人間大にまで縮小したものだった。何せ、駆逐艦級は魚みたいな動き方ばかりだったからだ。それ故、チ級以降の人型の深海棲艦が現れてからは新たな対処法を生み出す必要性が出てきた」
本の頁をめくりつつ、提督は続けます。
「この本の筆者が目を付けたのは、艦娘の『体』だ」
「かっ、体ですか!?」
「・・・・・・やましい意味じゃないぞ。艦娘はその名の通り、『艦の力を持つ娘』、つまりは人型をしている。白兵戦の概念が今や世界中に伝わっているのは知っているだろう?」
「はい。駆逐艦や軽巡型の深海棲艦に噛み殺される艦娘が増えてきたから、ですよね?」
「そうだ。だからこそ、小さな所では艦娘に格闘術を身に付けさせ、大きな所では専用の武器を妖精達と協力して作り上げた」
そう言われて、腰に差してある短刀を見やる。
刃渡り三十
「それらを効果的に活かす戦術を考えるのも、今の自分達艦娘艦隊指揮官に科せられた課題じゃないかと思っている。それは、旗艦であっても変わらない筈だ」
「提督。まさか、それを教えるために・・・・・・?」
「さてな。それはさておき、ヘマをやらかした誰かさんに汚名返上の機会だ。対水雷戦隊を想定した合同演習を行うことが決定された」
「演習? どことですか?」
「第十一艦隊第三戦隊、第一、第二水雷班とだ」
「えっ・・・・・・!?」
提督の出した単語に、私は耳を疑う。
第十一艦隊。舞鶴の第十艦隊、佐世保の第十二艦隊と並ぶ、連合艦隊艦娘部隊の中でも頂点に立つと言われている最精鋭部隊。かつて、全盛期の第一機動艦隊に属していた正規空母だけでなく、阿賀野型や陽炎型、夕雲型と言った新型艦ばかりで構成された水雷戦隊を擁する艦隊だと言うことは、私も知っていました。
その第十一艦隊が、どうして・・・・・・?
「今勢いのある自分達とぶつけて、恐らくは練度の確認をする腹づもりだろう。だが・・・・・・当て馬にされるのも、癪だろう?」
私の方を向いて、笑顔を見せる提督。それよりも・・・・・・。
「沖ノ島の件、結構根に持っていたんですね」
「持つべきものは何時までも持つが、必要なくなったらあっさり手放す主義だからな。期待しているぞ」
「はい・・・・・・!」
提督がもう一度、私の事を信じようとしている。
なら、私が出来るのことは、それに応えるのみ。必ず、果たしてごらんに入れます・・・・・・!!
★☆☆★
沖縄宜野湾警備府。国内における、連合艦隊の最南端の拠点では、いつもとは違う様子が見て取れた。
警備府と銘打ってはあるものの、固有戦力はほぼ無く実質観測基地に近いこの拠点で、第十一艦隊と第四十四戦隊麾下の水雷戦隊同士の演習が行われるとあって、近隣。特に佐世保鎮守府の艦娘達が見物に訪れていたからだ。
「あら、ハグロン! ハグロンじゃありませんか!」
その見物人の中には、羽黒とちょっとした因縁のある三隈の姿もあった。
「お久しぶりですわね」
「三隈さんも、お元気そうで何よりです。それより、出向が終わったんですか?」
「ええ、先週ようやく。今日は確か、そちらの水雷戦隊の方達が演習でしたわね?」
彼女が視線を向けたその先には、今も装備の点検を入念に行っている神通達の姿が。
その神通の背中には、いつもの長刀ではなく、軍刀が背負われていた。
「もう新装備が配備されましたの? 私達はまだ短刀と長刀しか持ってないのに・・・・・・」
「ごっ、ごめんなさい! 私達なんかが・・・・・・」
「もう懲罰艦隊ではないのでしょう? なら、謝られる理由はありませんわ」
「あ、ありがとうございます。そう言えば、三隈さんは第十一艦隊の事は知ってますか?」
「ええ、噂はここまで届いていますわ」
羽黒のこの問いかけに対し、少々苦い顔をしながら答え始める三隈。
「最精鋭部隊と言えば聞こえは良いですが、以前の椛山提督の頃と違って、秋満提督に代わってから着任した艦娘達は、明らかに傲慢になりましたわね」
「傲慢、ですか?」
「ええ。私と初めて会ったときの態度、と言えば解るかしら? それを誰に対しても崩すことが少ない、と言った具合ですわ。全員が全員そう言う訳では無いでしょうが、そう言われているのも事実ですの」
「そんな・・・・・・」
第十一艦隊の良くない話に、彼女は戸惑いを見せる。
これから開始される演習の結果とそれによってもたらされる未来がどうなるのか、彼女には思いも付かなかった・・・・・・。