名無しの英雄~パラオ艦隊戦記~   作:レイキャシール

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俺提督「北上様こいっ!!」(250/30/200/30投入×4回)

結果
→\パンパカパーン/ \キョウシュクデス!/ \カコッテンダー/ \ナカチャンダヨー!/

俺提督「」OTL


第四話:建造

☆★★☆

 

 

「司令官。そろそろ建造してみたらどう? この前の出撃で、幾つか触媒が手に入っている筈だし」

 

 徹心がパラオ泊地に就任して、一週間ほど経ったある日。

 秘書艦業務が週ごとの当番制となることが決まり、その週の担当だった霞がそう提案してきたのは。

 

「建造か・・・・・・。そう言えば、ここの技術部にはまだ会っていなかったな」

 

 実を言うとここ最近のドタバタがかさんだせいもあって、徹心はここの技術部長に着任の挨拶が済んでいなかったのを思い出していた。

 

「確か、保住さんはアンタが来た日には本土に出張に行っていたわね」

「“保住さん”?」

「そ。ここの整備兼開発担当の人。泊地が出来たときから、ここで艦船の整備。今は艦娘達の建造と装備開発を一手に引き受けているわ。何でも、『魔術師』だとか?」

「魔術師か・・・・・・。そう言えば、艦娘は艦艇だったころの魂を呼び寄せているんだったか」

「私も詳しい事は知らないけどね。けどまあ、挨拶がまだならしといた方が良いわよ」

「言うまでも無いさ。ただ、遅れたのは事実だから、菓子折あたりでも持っていくか・・・・・・」

 

 

――――――

 

 

「ここか・・・・・・」

 

 数刻後。酒保でラム酒を買った徹心は、そのまま技術部のある区画へと足を運んでいた。

 場所は先日、主砲が暴発した初霜が担ぎ込まれた整備ドックのすぐ近く。赤いトタン屋根の大きな建物だったので、比較的早く見つけられた。

 

「失礼。今、保住という技術士官はいるか?」

「しれいかんどのですね。おはなしは、かすみさんからうかがっているであります!」

「ああ。案内してもらえるか?」

「りょうかいであります!」

 

 扉の横で見張りに立っていた妖精に案内され、徹心が通されたのは待合室のような部屋。お菓子の入った小鉢や雑誌の入ったスタンドがあるところを見るに、スタッフの休憩場所としても使われているようだ。かつての名残か、灰皿も置かれている。もっとも、中は空っぽだが。

 そして、扉を開けて一人の女性が現れる。

 淡い桃色の髪を黒いリボンで一纏めにし、赤い飾り紐の巻かれたセーラー服を着たその姿は、一見すると普通の女学生の様にも見える。

 だが、彼女の腰に付けられた道具袋とそれを固定するベルト。そしてそこに差し込むようにして配置されている工具類と、軍手。整備中だったのか、頬に付いた油汚れが、彼女の職能を一様に表していた。

 多少身なりは変わっていたが、その人物は、先ほど徹心がラム酒を買う際に応対に出た女性だったのだ。

 

「お待たせしましたーっ。って、あら? 貴方は先ほどの」

「まさか、酒保の販売員がここの技術士官をしているとは、予想外だな。自分は東郷徹心。地位は中佐、先週この泊地に着任した者だ」

「これは・・・・・・失礼しました。技術部長の保住夢穂(ほずみみずほ)です。よろしくお願いします。それで、今回はどういったご用でしょうか?」

 

 徹心の自己紹介を聞いて、少し驚いた表情をする夢穂だが、すぐに技術屋の顔に戻って質問してくる。そのあたりは、さすがプロと言ったところか。

 

「触媒が手に入ったから、建造を頼みたい。それと、できればその場面にも立ち会わせてくれないか?」

「了解しました。それと、建造について説明させて頂きますね」

 

 建造ドックまで移動する道すがら、彼女は建造の仕組みについて説明を始めた。

 

「一口に『建造』と言っても、艦娘の場合は従来の艦船の様に、ドックで一から組み立てている訳では無いんです」

「そう言えば、霞は『触媒』と言っていたが、通常とはどう違うんだ?」

「燃料と弾薬、鋼材にボーキサイトを使用すると言う点は変わらないんですが、触媒を用いることでその艦艇の魂を呼び寄せて造っていると言われています」

「むう・・・・・・よく分からないな」

「まあ、わかりやすく言うなら、『ガラガラポン』ですよ」

「良いのかその表現は・・・・・・?」

 

 そうこうしている内に、ドッグ内の製作室に着いた二人。

 部屋のあちこちに鉄くずなどのジャンクが転がっている中で、中央だけは何かに使うレールが引かれているのみで、そこだけは整然としていた。

 

「それじゃあ、資材はどのくらい使いますか? 量や割合によって出来る物に差が出ますので、よく考えてお願いしますね」

「とりあえず、それぞれ30づつで頼む」

「触媒はどうしますか?」

「そうだな・・・・・・この“魚雷発射管の筒”を使うとしよう。今は一人でも多くの巡洋艦娘が欲しい」

「了解しました。みんなー、出番よー!!」

 

 そう言って夢穂が集合をかけると、つなぎ姿の『文字通り』小さな女の子達がぞろぞろと現れる。艦娘用の艤装は細かい部品が多く、人の手では組み立てが難しいため、こういった妖精達が重宝されているのだ。

 

「この触媒に合いそうな子を喚んでね。それじゃあ、行動開始!!」

「「『あらほらさっさー!!』」」

「さてと。後は待つだけですね」

「これで終わりなのか?」

「はい。基本的に、建造そのものは専門の妖精に一任しているんです。後は、待つだけですね。この泊地、装備品だけは有り余っているので、新しく作る必要も少ないですし」

「ふむ・・・・・・『ガラガラポン』と言う比喩表現も、あながち間違っていないようだな。それより、以前から気になっていたのだが・・・・・・」

 

 建造完了までの時間つぶしに、再び応接間に移動する二人。そこに着いてから、徹心は着任当初から引っかかっていた話を切り出した。

 

「先任の司令官は、どのような人物だったのだ?」

「・・・・・・」

 

 その瞬間、夢穂の表情が明らかに険しくなる。まるで、触れられたくない禁句(タブー)に触れられた様に。

 

「アイツは・・・・・・御門邦正は、指揮官としても軍人としても、それ以前に人としても、最低でした」

「その口ぶりを見るに、悪い意味で相当な男だったようだな」

「悪いなんてものじゃありませんよ。先々任の興田提督が皆に慕われる人格者だっただけに、尚更悪目立ちしてましたから」

 

 高ぶった気持ちを一旦静めるかのように、彼女は水を口にする。

 

「これはあくまでも、私の主観の話ですので、ご了承を」

 

そして、一拍置いて再び語り始めた。

 

「三代前の、上南准将はご存じですか?」

「三代前と言うとまさか・・・・・・」

「ええ、秘書艦の子と駆け落ちした提督です。その直後は、今ほどでは無いにしても荒れましたからね。そんな時に、後任として派遣されたのが、興田提督でした」

「五月雨から多少は聞いている。定年まで責務を全うされたことも」

「ええ。彼は着任直後、艦娘達と心を通わせることから始めたんです。軍令部から任務遂行指示が矢の催促でしたが、それも最小限従うのみで、後は全力で艦娘達との交流を図ったんです。その甲斐もあって、三ヶ月くらい後には、この泊地は笑顔の絶えない場所になりました。あの霞ちゃんも、興田提督にはまともに接していたんですよ?」

 

『以外でしょう?』と言って、クスリと笑う夢穂。当時のパラオは和気藹々とした雰囲気だったのだろう。その笑顔だけでも、徹心はそう感じずにはいられなかった。

 

「半年くらい前、興田提督が定年を迎えられた際にお別れパーティをやったんですけど、それはもう大盛り上がりで、駆逐艦の子達なんかは最後に泣いちゃって、慰めるはずの比叡ちゃんまでもが泣き始める始末で。その人と過ごした時間は、今いる子達にとって、今でも宝物なんです。でも、その後は酷いものでしたよ」

「酷いもの、か・・・・・・」

「あんな日々をまた過ごすくらいなら、竹槍片手に突撃した方が幾分かマシでしたよ。もっとも、実際にそう言う目に遭わされていたのは艦娘の子達ですから、私からはこれ以上は言えませんけど」

「・・・・・・後で多摩か神通あたりに聞いてみるか」

「多摩ちゃんはともかく、神通ちゃんは厳しいと思いますよ?」

「? それはどういう・・・・・・」

「ほうこくします! けんぞうかんりょう、であります!」

 

 意味ありげな台詞を夢穂が発した直後。技術妖精が応接間に現れ、会話が中断される。

 

「ご苦労様。何かあったらお願いするから、引き続き保守点検を続けてちょうだい」

「りょうかいです!」

「さて、と。会いに行きますか、新しい仲間に」

「あ、ああ・・・・・・」

 

 彼女に連れられ、再び製作室へと足を運ぶ徹心。その最中でも、彼女の台詞が頭から離れなかった。

 

―――――――

 

 製作室へと到着した二人を出迎えたのは、『人型』が乗せられた担架の様な物だった。

 そこに乗せられていたのは、一人の少女。

 白い袖無しのセーラー服と同色の布製の篭手に、栗色の髪は襟にかからない程度のショートカット。比較的シンプルな色合いの多い中で、柿色のスカートと臙脂色のスカーフがアクセントとなっている。

 徹心は直感した。この眠り姫もまた、艦娘であることを。

 

「成功確認、っと。後は起きるのを待つだけですね」

「しかし、見た目がこうも変わっているとなると、どうやって判別するんだ?」

「一応、艦娘年鑑という形でありますよ。えっと、この娘は確か・・・・・・」

 

 

★☆☆★

 

 

 あれから、どれくらい時間が経ったのだろう・・・・・・。

 最後に出撃したあの日、あの瞬間。私に白い何かが馬乗りになって、大きな口を開けて噛み付こうとした時に、たまらなくなって目を閉じて、もう一度開けたら・・・・・・私は、何もない黒い空間の中にいた。

 最初は、皆を探して歩き回った。走り回った。私がいることを教えるために、空砲を撃ったりもした。だけど、誰も見つからない。誰にも見つからない。誰にも気付いてもらえない・・・・・・。

 皆・・・・・・何処行ったの・・・・・・? 一人は・・・・・・やだよぉ・・・・・・。

 

『・・・・・・を喚んでね。それじゃあ、行動開始!』

 

 あれから更にどれくらい経ったのだろう・・・・・・。一日かもしれない。一週間かもしれない。一ヶ月、もしかしたら一年たったのかもわからない。

 もうどうでもよくなった時に、あの声が聞こえた。

 誰かが、私を探している・・・・・・? 誰なの・・・・・・?私はここだよ、早く来て。誰でも良いから気付いてよ。

 声が聞こえてから少しして、小さな女の子達が降りてきた。もしかして、この子達が・・・・・・?

 

『いたいた、どうする?』

『このこにする?』

『ぎょらいのつつはあうかな?』

『おおきさはだいじょうぶだよ。・・・・・・たぶん』

『じゃあ、このこにけってーい!』

『しごとのじかんだ、いくぞがーでるまん』

『なにそれ?』

『きにしたらまけですよ』

 

 そう言って、私の手を引こうとする女の子達。話の内容は飲み込めなかったけど、この子達が言わんとしてること、やろうとしていることが、何となくわかる気がする。

 その子達に導かれ、私は真上に現れた白い光の中へ吸い込まれていった。

 

――――――

 

「・・・・・・」

 

 もう一度目を開けると、視界に入ったのは、トタン板でできた知らない天井。クレーンとか、工具とかが転がってるから、たぶんどこかの工廠の中・・・・・・なのかな?

 

「あ、提督。起きたみたいですよ」

 

 起き上がって、次に見えたのは、桃色の髪が特徴的な女の人。そして・・・・・・

 

「驚いたな・・・・・・。初めて立ち会ったが、これが艦娘の建造というものか」

 

 黒い髪に、ちょっと怖そうな目をした男の人。着ている服は、こうなる前から何度も見てきた詰め襟の白い制服。

 ああそうか。また、私が喚ばれたんだ・・・・・・。また、戦わないといけないんだ。

 

「初めまして、になるかな。自分は東郷徹心、ここの司令官をしている者だ。君の名を教えてくれないか?」

 

 なら、今度は・・・・・・今度こそ、頑張らないと。

 

「名取と言います・・・・・・。ご迷惑をおかけしないよう、が、頑張ります」

 




「演習、ですか?」

「お互い水雷戦隊で――」

「―よ。砲雷撃戦が得意なの」


次回、「演習」。それは、味方同士の許された戦い。
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