今回も例にもよって分かれていますので、最新話リンクから来た方はご注意願います。
(PS.今回はアンケートを設置してあります。詳細は、私のユーザーページからご確認ください)
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私―水上機母艦の瑞穂がこの泊地へ配属になったのは、先任の西沢提督が定年で退任される三ヶ月ほど前の事でした。なので、上官としては上条提督の方が付き合いとしては長くなるのでしょうか?
今でこそ瑞鶴さんがいますが、昔は鳳翔さんが転属するまで唯一の母艦として活動していました。なので最初は、上条提督もとても頼りにされていましたし、愛宕さん達もそれは同じだと思っていました。
「クソッ、何だってんだよ・・・・・・!」
上条提督が着任されてから、そう経ってないある日のこと。木曾さんが悪態を吐きながら談話室に入ってきました。確か今日は、愛宕さん達の実戦力を確認するために哨戒任務が組まれていた筈ですが・・・・・・。
「ど、どうしたんですか、木曾さん? 貴女らしくないですよ」
「どうしたも何も、連中とんだ食わせ者だ! 俺の戦果を横取りしやがった!!」
いつもなら冷静沈着な彼女が荒れている理由は、その愛宕さん達にあったようです。
曰く、撃破寸前まで弱らせていたヌ級にトドメを刺そうとした時、横から突き飛ばされて仕留め損ねたとのこと。そのヌ級は、突き飛ばした張本人である愛宕さんが討ち取ったそうです。
「このことは、上条提督には・・・・・・?」
「もちろん言ったぜ。けどアイツ、猫を被って誤魔化しやがった。他の連中もとりとめて咎めやしない。嗚呼、くそっ! 思い出したらまた腹が立ってきやがった・・・・・・!! 酒だ、酒ぇ!」
「はいはい、飲み過ぎないでくださいよ?」
結局あの後は、上条提督が間に入って事なきを得ましたが・・・・・・それ以来、愛宕さん達とは決定的な溝が出来た様な気がします。そしてそれから一年ほど。それまでの間に配属された瑞鶴さんも、阪元副司令も奔走してくれましたが、それは埋まらないまま。
霧島さんは愛宕さん達を毛嫌いするようになり、木曾さんに影響されてか朝霜ちゃんも頑なになっていきました。
そして私は、あれ以来霧島さん達と同様に袂を分かつべきと言う私と、少しでも仲を修復したいと訴える私とで、ずっと悩んでいます。
もし彼女が、取り返しの付かないような事をしようとしていたら、全力で止める。同時にそれだけを、胸に抱きながら・・・・・・。
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「緊急の呼び出しか・・・・・・」
霧島と木曾が行方をくらませると言う事態は、表向きは睦実の言ったとおり大湊警備府から緊急の呼び出しがあったという事で処理され、その日のうちに徹心の下へもそう報されていた。
その事が第四十四戦隊の艦娘達に通達されたのは、明くる日の昼頃の事であった。
「霧島さんは第五艦隊で唯一の高速戦艦だから、仕方が無いわよ」
食堂にて、それについてふと呟いた長月に対し、向かいに座る如月は、朝食をつつきながら言う。
「だが妙じゃ無いか? アイツはここの総旗艦。いちいちこんな事で泊地を離れさせていたら、いざと言う時に危険だ」
「確かに妙だけど・・・・・・考えすぎじゃないかしら?」
「どうだかな・・・・・・」
ひとまず考えるのを中断し、長月も自身の朝餉に箸を伸ばす。
「それよりも長月ちゃん。次の出撃、決まったらしいわよ」
「本当か!?」
「ええ。飛鷹さん達が姫に襲われたでしょう? 司令官は、威力偵察をするつもりでいるみたい。多分だけど・・・・・・」
「多分、何だ?」
「きっと厳しい戦いになるわよ」
「そうか・・・・・・そう考えると、やはり穴は大きいな」
如月のこの一言に、長月は進んでいた箸を止める。
声色こそいつも通りだったが、顔には目に見えて不安の色が浮かんでいた。
「ホントね。それじゃあ、先に行っているわね」
「ああ、また後で」
いつの間にか食べ終わっていたのか、さっさと食器の載った盆を持って席を立つ如月。長月もまた、調整する時間を確保するべく、麦飯をかき込む手を早める。
だがこの時の彼女は。いや、この場にいる将兵、艦娘全員が、単冠湾泊地で何かが動き出そうとしていることなど、知る由も無かった・・・・・・。
――――――――
偵察行動のため“鞍馬”が単冠湾の港を経った翌日。瑞穂はその日も、宛がわれた士官室で執務を行っていた。
霧島と木曾が失踪してからも、彼女の職責は次席旗艦補佐である事に変わりは無かったのだが、日々の仕事に関しては明らかに増えていた。
何せ暫定とは言え、今の総旗艦と次席旗艦である愛宕と陸奥は外からやってきた艦娘。重要な決裁などはこなしてはいたものの、細かな実務はほぼ瑞穂に丸投げしていたのである。
黙々と書類に判を押し、旗艦以上の艦娘と副司令以上の士官への裁可が必要な書類と、そうでない物に分けていたのだが、流石に疲れたのか。一度手を止めて体を大きく伸ばしていた。
「はい、どなたですか?」
そんなとき、彼女のいる士官室の部屋の戸を叩く音が響く。居住まいを正し、彼女が入室を促すと、中に入ってきたのは金色の髪の艦娘。愛宕だった。
「瑞穂ちゃん。今時間あるかしら?」
「一通りの処理が終わったので、一応ありますけど・・・・・・どうされたんでしょうか?」
書類の並びを整えながら、瑞穂は問う。それに対して愛宕は彼女を見据えながら答える。
「実を言うと、さっき提督が探していたわ。何でも、重要な事があるとか?」
「重要な事? 何かあったのかしら・・・・・・?」
「詳しいことは解らないわ。私も、官舎に呼んでとしか言われてないから」
「官舎へ・・・・・・?」
「A棟の201号室で待っているって。今日は特に冷えるから、早めに行ってあげてね」
上官が。睦実が重要な何かを伝えるために待っている。
このことに些か不信感を抱きながらも、壁に掛けていた外套を手に取ると、その足で士官室を後にしていく瑞穂。
「さ、て、と。これで第二段階は完了ね・・・・・・うふふふ。軍艦だから今まで
その背中を見送った愛宕の顔には、悪魔のような微笑みが浮かんでいる。
これからあの艦娘の身に起こるであろう事を想像し、思わず高笑いしそうになるのを堪えながら彼女もその場を後にした。
――――――――
“官舎”、と言うものは解りやすく言うなら公務員の住まう寮のようなもので、程度にも依るが概ね若い公務員が住む事が多く、厳密には違うのだが、いつ何時出撃が掛かっても良いように拠点内に作られる兵員用の住まいも“官舎”といつしか呼ばれるようになっていった。
そして現在。深海棲艦が現れてからは、艦娘と、それに携わる軍人、軍属が寝泊まりしている。
その官舎の内の一棟、その一室の前に瑞穂の姿があった。
「提督、瑞穂です。お呼び出しにより参りました。・・・・・・提督?」
戸を二、三度叩き、中にいるであろう睦実に呼びかけるが応答が無い。不審に思った瑞穂は、戸を開けて中へと足を踏み入れた。
薄暗い室内。窓には分厚いカーテンが掛けられ、外光は殆ど差し込んでこない。そんな部屋の隅に、何やら動く物が彼女の視界に映る。
「木曾・・・・・・さん? 木曾さん!?」
その正体が、昨日霧島と共に行方不明となっていた木曾であると気付くやいなや、瑞穂は彼女の元へと駆け寄った。
「大丈夫ですか!? しっかりしてください!!」
「・・・・・・ぅ・・・・・・瑞穂・・・・・・か・・・・・・?」
「はいっ!!」
木曾の縛めを解きながら、瑞穂は問う。
「どうしたんですか、この前は!? 霧島さんと一緒になって脱走したと提督が仰っていましたけど・・・・・・」
「脱走だと・・・・・・? 馬鹿な・・・・・・!」
だが相手の口から発せられた事に、木曾は怒りを混じらせて答えた。
「俺達は、アイツらに・・・・・・愛宕の奴に嵌められたんだ・・・・・・!!」
「えっ?」
「あらあら。遂に喋っちゃった、か・・・・・・」
「それよりも、まだ息があったのが驚きだぞ」
相手の口から告げられた言葉が信じられず、瑞穂が間の抜けた声を上げるのと同じくして、部屋の戸が開けられて愛宕と日向が入ってきた。
「今、木曾さんが言ったのは・・・・・・本当ですか・・・・・・?」
「ああ、その通りだ」
投げつけられた問いに、日向は表情一つ変えず。刀の柄を叩きながら静かに答えた。
「さて瑞穂ちゃん、騙した事は謝るわ。そして失礼ついでに一つ、お願いを聞いてもらえると助かるんだけど」
「・・・・・・」
「聞くな、瑞穂・・・・・・! コイツ等は、お前を使って・・・・・・!! ぐっ!?」
「お前は黙っていろ。今、愛宕が話をしているんだ」
愛宕が瑞穂に、ゆっくりとした語調で話しかけてくる。まるで恋人との睦言の様に。それを木曾は止めようとするが、日向に殴られ、妨害されてしまう。
「とっても簡単な事よ。本当に簡単な、ね・・・・・・」
☆★★☆
ここの所、本当についていない。私―不知火は、つくづくそう思っています。昨日は調べ物をしていたら書棚が倒れてきた所へ巻き込まれそうになり、今日は艤装の整備不良の所為で、上条少佐から指示されていた哨戒活動に遅れが生じてしまいました。
少佐は昨日の事は心配してくれましたし、今日のことも笑って許してくれたのですが、その後の取り巻き四人衆からネチネチと言われたのには、流石にむかっ腹が尽きます。そもそも、整備不良は整備班の落ち度であって、不知火自身にはそれほど落ち度はないはずなのに・・・・・・。
それはともかくとして、です。あの後、改めて泊地所属の兵員達から情報。特に、愛宕さんが秘書艦になってからのものを集めていた所、面白い情報が手に入りました。
数日前の深夜、上級の艦娘が緊急出撃していったらしく、その際に総旗艦の戦艦霧島と、次席旗艦の軽巡木曾が泊地へ戻ってこなかったと言うのです。
「妙ですね。確か二人は、今大湊へ出向いている筈ですが・・・・・・? その足でそのまま向かったのでは?」
「それがあの後日向さんの艤装を診ていたらよ、主砲の隅っこに赤い汚れが付いてたんだズラ。きっと何か、トンデモねぇ事が起きてるゾナモシ・・・・・・!」
「ふむ・・・・・・ありがとうございます。これは少ないですが、取って置いてください」
「へへ、ドモドモ」
一通り聞き終えた私は、情報源―泊地の整備兵の男性に情報料を手渡すと、足早に自分の部屋へと戻っていく。
「ハチさん、丁度良いところに。この座標の周辺を、漁ってみてくれませんか?」
「ここ、って・・・・・・何かあるんですか?」
「ええ。実は、先ほど聞いた話なのですが・・・・・・」
そして、先に部屋でくつろいでいたハチさんにこのことと、それを踏まえた私の考えを伝える。彼女の縁なし眼鏡が、妖しく煌めいた。
「なるほど。それが本当なら、切り札にできますね」
「疑わしきは罰せよ。どうせやるなら、徹底的に追い詰めてやる」
さて、結果が楽しみですね。後は『奴ら』がどう動くか・・・・・・。
とにかく今は、静かに時を待つとしましょうか。
☆★★☆
不知火達が再び行動を開始してから、更に数日間。威力偵察を終えた“鞍馬”が帰還し、これまで、まるゆが行っていた夜間哨戒をハチが代わって実施するようになった事を除けば、単冠湾泊地は驚くほど静かだった。
しかしその間にも、不知火とハチは不運な事故や艤装の故障などに遭遇しており、今朝に至っては主砲の弾丸が抜き取られている、などと言った目にも遭っていた。
「―以上が、貴女方が発っている間に判明した事実です」
そんなある日の夜。不知火とハチの部屋に、来訪者があった。長月だ。
「このことは既に、東郷大佐のお耳に入れてあります。それから今現在、哨戒にかこつけてハチさんがその場所の周辺を洗っていますので、直に結果は出るかと」
「何から何まで、感謝してもしきれないな」
改まって礼を言う長月に対し、不知火はいつもと変わらないポーカーフェイスで答える。
「礼には及びません。これも、艦娘達の名誉の為です」
「名誉、か・・・・・・。ラバウルに居た頃は、燃えていたと言うのに、今では燃え滓同然だよ」
「そんなことはありませんよ。むしろ東郷大佐と戦っている時の貴女の方が、活き活きとしてすらいる」
自虐的に語る相手に、彼女は待ったをかけた。茶をすする不知火の目には、資料を見ただけでは解らない、“艦娘・長月”の人となりが伝わってきていた。
若竹型や神風型、峰風型ほどでは無いにせよ、睦月型はかなり古い方の駆逐艦だ。特型や初春型はともかくとして、彼女のような甲型駆逐艦と比べるとどうしても性能に開きのある部分が多い。
だがそれに腐心せず、日々の務めを真摯にこなす。その姿は、まさしく規範の表現が似合う物だった。
「適材適所、と言うわけではありませんが、こうして見ていると、運命の出会いと言うのは存外あり得ない話では無いですね」
「そうか・・・・・・そうかもしれないな」
長月が湯飲みを手に取り、口を付けるとのと同時。部屋の戸を叩く音が響く。
「失礼しますね。お二人とも、良いニュースと悪いニュース、どちらから聞きたいですか?」
「・・・・・・良いニュースから」
そう言って部屋に入ってきたハチから告げられた台詞に、不知火は眉間に皺を寄せながら答えた。
「例の座標ですが近くの崖に、侵食されてちょっとした洞窟みたいになっている場所がありましたよ。“お宝”もそこに」
「それは重畳。で、悪い方は?」
「瑞穂さんに不穏な動き有り、です。脅されたか、あるいは懐柔されたか・・・・・・」
「・・・・・・いや、これはもしかすると逆に好機かも知れません」
「えっ?」
だが悪い方のニュースを聞いたにも関わらず、彼女の口から転がり出てきた事に二人は首を傾げる。
「目には目を、です。私に良い考えがあります」
――――――――
草木も眠る丑三つ時と言うものは、その草木が殆ど見られない極寒の地にもやってくるものだ。
外では強風が吹き荒れ、海で冷やされた冷気が陸地に向かって吹き込んでくる。この日の天気は降雨や降雪が無いだけ幾分かマシだろうが、それでも寒いのには変わりは無い。
当然、部屋の窓は閉め切られ、人々は皆布団に深く包まって眠りに就いている。筈だったのだが・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・」
ゆっくりと戸が開かれ、足音を殺しながら人影が部屋の中へと入り込んできた。
ゆっくりとベッドへと近づきながら、懐へと手を入れる。再び取りだしたその手には、短刀が。
「・・・・・・・・・・・・」
そして人影はゆっくりと、短刀を逆手に持ち替える。目線の先には、顔まで布団に潜って寝息を立てて居るであろう部屋の主が。
少ない星明かりを反射して、妖しく煌めく刃。人影はそれを振り上げると、渾身の力を込めて布団目がけて突き立てた。
「・・・・・・!?」
切っ先が布を突き破り、中の布団綿を貫いてその者の心臓へと達する・・・・・・筈であった。しかし彼の者の手に感じられた手応えは、明らかに人体を。いや、肉を突いた感触では無かった。
「やはり口封じに動いているだろうとは予想していましたが、まさかこんな幼稚な手段に訴えてくるとは」
そしてそれを待っていたのか、部屋の明かりが灯される。
電球の光に照らされて現れたのは、扉の脇に立つ不知火とハチに長月。そして二段ベッドの前で膝を突き、右手に短刀を持つ瑞穂の姿。
後者の顔は、唯でさえ白いのが更に蒼白になっている。
「瑞穂、お前・・・・・・何故だ!?」
目の前の彼女の存在が信じられないとばかりに、長月は言う。
「何故こんなことを!? 私達に協力してくれていたのは、嘘だったのか!?」
「私・・・・・・私・・・・・・」
「長月さん、落ち着いてください。感情論だけで通じる話では無いので。・・・・・・さて。一つ簡単な質問をしましょう。至極簡単な質問です」
まくし立てる彼女を制したのは、意外にも今まで聞き手に徹することの多かったハチだった。
そのハチは、眼鏡を指で直しながら続けた。
「私達の誰か・・・・・・。いえ、私達『を』殺そうとした。これは、自分の意思ですか? 喋りたくないなら、首を振ってでも構わないので答えてください」
それに対し、首を縦に振る瑞穂。だが、その際の僅かな『間』を、ハチは見逃さなかった。
「貴女は・・・・・・嘘を吐いていますね」
「!?」
「艦娘というのは独特の体質でしてね。極度の緊張、特に、嘘を吐いたりした時なんかは目元にうっすらとですが、隈のようなものが出るんですよ」
「えぇっ!?」
「まあ、嘘ですけど」
「えええっ!?」
そう言われて瑞穂は、部屋に置かれていた鏡台で自身の顔をまじまじと見つめる。だが、幾ら探してもハチの言う隈らしきものは見当たらない。
その舌の根も乾かぬうちに、本人の口から冗談だったことが告げられ、さらに驚愕する瑞穂。
「ですけど、お馬鹿さんは見つかったみたいですね」
「!!!!」
「さあ、話してもらえますか? 本当のことを」
だがそれこそが、ハチの狙いだった。がっくりと膝を突く相手に対して、彼女は再び促す。
「はい。実は・・・・・・」
瑞穂は、それに応じた。そしてたどたどしくではあるものの、一言一言に真実味を持たせるかのように、話し始める。
霧島と木曾は大湊へ行ったのではなく、実際には二人を人質に取られていたと言う。
「その時、愛宕さんが言ってきたんです。『二人を助けたかったら、ネズミを三匹、追加で始末してきなさい』、と・・・・・・」
「なるほど。やはりそうでしたか」
「そうでしたか、って・・・・・・?」
「不知火さん、そろそろ私達の本当の目的を話した方が良いのでは?」
「そうですね、頃合いでしょう」
「本当の目的?」
頭の上で疑問符が飛び回っている瑞穂。それに対する答えを、二人は突きつけた。
「軍令部査察部、駆逐艦不知火です」
「同じく、ハチです。ここへは表向きは出向と言うことになっていますが、実は違うんです。瑞穂さん、例の電探騒動は知っていますか?」
「え、ええ。確か、高波ちゃんの電探が誤作動を起こしたとか何とか・・・・・・」
「元々はそれについて調べるべく、派遣されてきたのです。ですが蓋を開けてみれば・・・・・・それ以上の山でした」
「加えて、先の旗艦と次席旗艦が突然の出向・・・・・・。いえ、逐電と言っても良いでしょう。お陰で、あの四人の悪事を全て断罪する切欠を作れました」
「で、だ。私はアイツに煮え湯を飲まされた被害者の一人、と言う訳だ」
三人から告げられた真実に、瑞穂は目の前が真っ暗になる感覚を覚える。今まで仲間だと自身は思ってきた艦娘達が、鬼畜外道に堕ちていたなど、到底信じられなかったからだ。
だがしかし、彼女はその一端を。袋叩きにされた木曾を見てきている。それが彼女の中で、針を定めさせた。
「私を・・・・・・どうする気ですか?」
か細く。本当にか細く、瑞穂は問う。その声の裏に込められた物をくみ取ったのか、不知火は答える。
「本来なら、未遂とは言え味方を。それも通常時に殺そうとしたのですから、解体刑は免れないでしょう。ましてや、貴女は菊花紋章を持つ軍艦です。相応の厳罰は、覚悟した方が良いかと」
「それじゃあ・・・・・・」
「まあまあ、話は最後まで聞いてくださいよ。世の中には『疑わしきは罰せよ』、なんてことわざがありますが、私はこれにはもう一つ意味があると思っているんです」
そしてハチがそれに続くような形で、話を続ける。
「『疑われない限りは、罰せられる心配も無い』。上官の受け売りですが、こうとも取れるんじゃ無いかと。それから―」
「・・・・・・!」
そして彼女の口から告げられた提案に、瑞穂の目が見開かれる。夜はまだ、深まるばかりであった。