名無しの英雄~パラオ艦隊戦記~   作:レイキャシール

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今回は長いので、分割してあります。前編と合わせてどうぞ。


第八話:俊足対神速・後編

 

――――――

 

 

「各艦、被害状況はどうなっている」

「被害は長良が大破。響ちゃんが中破。後はみんな小破以下の軽い損傷よ。こっちの戦果は、駆逐一隻を大破、一隻を中破させたわ」

 

 休憩時間の間。足柄からの報告を、徹心は複雑な面持ちで聞いていた。

 当初の目論見としては、手始めに北上を無力化し、統制のとれなくなった残りの艦娘達を分断して各個に撃破する、と言うものだった。

 しかし、それには失敗し、更には島風という不確定要素まで現れたために目算が狂い

、結果として夜戦に持ち込まれることとなってしまった。

 

「とにかく、過ぎたことを論じても仕様が無い。現状での趨勢(すうせい)は五分と言えるが、最優先目標だった北上が健在である以上、戦術的にはこちらが不利だ。そこで、次の作戦だが・・・・・・」

 

 そう言って徹心は艦娘達に手招きし、集まった彼女たちに耳打ちで作戦を伝える。

 

「う、上手く行くんでしょうか・・・・・・」

「私は賛成です。提督、勝ちに行きましょう」

「私もよ。賭けてみましょう、その可能性に」

「私も、頑張ります!」

「ダー」

「異存は無いようだな。では、時間になるまで各自待機するように。作戦説明は以上だ」

「『了解!』」

 

 

――――――

 

 

「ではこれより、夜戦段階を開始します!! 行動可能な艦娘は、所定の位置に移動してください!!」

 

 それから数時間後。太陽が水平線の下に隠れてから少し経った時刻に、夜戦演習の開始が告げられる。

 これを受けて、指定された夜戦用の開始場所へと移動していく双方の艦娘達。その彼女たちの腰には、訓練用の短刀が新たに差されていた。

 

「でもやっぱり・・・・・・失敗するんじゃ・・・・・・」

「何弱気なこと言ってんのよ。私たちの指揮官の見識を、信じなさいな」

「そうですよ! でも、足柄さんも着任したのはここ最近ですよね?」

「・・・・・・言ってみただけよ。けどまぁ、正直な所私も不安なのよね」

 

 索敵行動の最中。弱音を吐く名取を励ます足柄だが、彼女も内心では思うところがあったらしい。

 

「『敵は練度も高く、個々の能力も決して低くは無い。だが、昼間に突出していた駆逐艦を見ればわかるが、陣容が薄い。風祭中佐も、普段は恐らく彼女を持て余しているだろう。そこに隙がある』、って言われてもねぇ・・・・・・」

「でも今は、提督を信じましょう。あの人なら、勝算の無い策を弄するとは考えにくいですから」

「随分買ってるのね、彼のこと。その根拠は何かしら?」

 

 そう言って、魚雷発射管の点検をする神通。それに対する足柄の問いかけに、彼女はただ一言。

 

「・・・・・・勘です」

 

と、答えるに留まった。

 

 

――――――

 

 

 一方の北上達、タウイタウイ側はと言うと、パラオ側が策を仕掛けているとは知らずに索敵行動を続行していた。

 

「阿武隈っち、そっちはどう?」

「ダメです、見当たりません。北上さんは?」

「こっちも目に見える範囲にはいないよ。さてはて、どこに行ったのやら・・・・・・」

「ぶぅ~・・・・・・」

 

 夜は視界が悪いため、目視での索敵は困難になる。故に不意打ちを避けるため、こうして少しずつ探していくしか無いのだ。

 しかし、このペースで事を進めることに、島風は不満を募らせていた。かつては艦艇として、今は艦娘として日本最速を誇り、何事にも『速さ』を求める彼女には、慎重策を取った北上の行動は間違いと映っていたのだ。

 

「おっそーい!! さっさと見つけて、さっさと終わらせようよ~」

「そうは言ってもさぁ、島風っち。見つけないことには何にも・・・・・・」

 

 ついつい思っていることを口に出してしまう彼女を北上が窘めようとした、まさにその時だった。

 

 

―ズガァン!!

 

 

 まるで雷でも鳴ったかのような、しかし明らかに自然発生的なものではない音が、演習海域に響き渡る。その音に、戦意を漲らせていた島風が食いつくのは、ある意味必然と言えた。

 

「!! 島風、突撃しまーす!!」

「待って、島風!! 罠かもしれないわよ!」

「だったら、罠に掛かるよりも速く倒せば良いもん!!」

 

 三体いる連装砲ちゃんを、二体は両脇に抱え、残りの一体は自身の頭に掴まらせると、音のした方向に向かって突進していく島風。制止する漣の声も聞かず、あっという間に障害物として配置されていた廃船の陰へと消えていってしまった。

 

「で、どうするの北上さん」

「こうなりゃ仕様が無いね、最大戦速で島風っちを追うよ。見捨てるわけにも行かないし。念のため、阿武隈っちは反対側から行って。挟撃するよ」

「わかりました」

 

 こうなった以上、次善策をとるしかない。そう考えた北上は、阿武隈に指示を出し、二手に分かれて行動を開始した。

 

 

――――――

 

 

 島風が移動を開始した頃と時を同じくして、パラオ側は廃船の陰で相手を待ち伏せる体勢を取っていた。その際に、徹心の立てた作戦の肝となる“ある物”を仕込んだ上で。

 

「てきかん、きました! そうたいそくどからはんだんして、れいのくちくかんと、おもわれます!」

「一隻だけで・・・・・・? まぁ、ここまでは提督の予想通りね。五月雨ちゃん、響ちゃん、仕込みは終わってる?」

「何時でもいけるよ」

「こっちも、大丈夫です!」

「承知。それじゃぁ、散開!」

 

 足柄の指示で、付かず離れずの位置に隠れる彼女たち。

 その一方で響は隠れず、島風が視界に入ると、まるで今頃になって気づいたかのように逃走を図る演技をする。

 

「ふふ、あなたって遅いのね。動きも、考えも!」

 

 そんなことは露程も知らず、一刻も早く戦いを終わらせるべく一人突撃してくる島風。彼女が、廃船の横腹に空いた穴の前を通過しようとした、その時だった。

 

「お”ぅっ!?」

 

 不意に島風の足下で水柱が上がり、それによって彼女は体勢を崩してしまい、速度が緩む。その時間自体は、ほんの一瞬だった。だが、パラオ側にしてみれば、その一瞬で十分すぎた。

 

「撃て、撃てぇっ!!」

「撃ちます!!」

「当たってくださぁーい!」

「ウラー!!」

 

 その隙を突くべく、響は反転し、足柄と神通、名取は一斉に飛び出して砲撃を開始する。対する島風も持ち前の速度を活かして回避していくが、その足取りは、僅かに鈍くなっている。

 それもその筈、先ほどの水柱を起こした原因によって、島風は足回りに損傷を受けていたのだ。

 仕掛けはこうだ。まず、比較的大口径の主砲を持っている足柄と神通がそれを空撃ちし、敢えて敵に居場所を知らせる。海の上など、距離が離れている相手に自らの存在を知らせるには、声よりも音の方が効果的だと言われており、徹心はこれを利用したのだ。

 そして、発砲音と言う撒き餌を嗅ぎ付けた敵を、今度は手負いの駆逐艦娘と言う食わせ餌でこちらの土俵へと引きずり込む。そして食わせ餌―響に気を取られている隙に、今はこの場にいない五月雨が目標の通過に合わせて魚雷を発射。動揺を誘った上で十字砲火を浴びせて撃破する、と言う物だった。

 結果として、作戦は成功。敵の足は鈍り、こちらの攻撃も命中しやすくなりつつある。そして、その誘い込まれた敵である島風に、遂に攻撃が命中したのだ。

 本来は昼間と同様に、敵艦隊を分断し包囲する作戦だったのだが、撹乱役である彼女を誘い込めただけでも、上々と言えるだろう。

 

「はぁ~。この私が、やられるなんて・・・・・・」

 

 ここへ来て、ようやく己の失策に気づいて後退しようとする島風だが、もう遅すぎた。穴から飛び出した五月雨が、背後から接近していたのだ。

 

「たぁーっ!!」

「ひゃんっ!」

 

 両手に持った12.7サンチ連装砲を乱射しながら突撃する五月雨。そのまま回避不能距離まで接近すると、右手の主砲を投げ捨て、空いた手で腰に差してあった訓練用の短刀を抜刀。すれ違いざまに振り抜いた。

 刃は島風の脇腹を掠め、斬られたことを示す赤い塗料が彼女の体に付着する。

 そしてそのまま返す刀で、相手が振り向くよりも速く、さらに一閃。今度は背中を斬り付けられ、海上で蹈鞴(たたら)を踏みながらも何とか反撃を試みる島風。とっさに、五月雨の右手を掴んで短刀をはたき落とそうとする。しかし・・・・・・

 

「無駄だね」

「おぅっ!?」

 

 取っ組み合いの隙を突いて、響が発砲。模擬弾が額に命中したため、船員妖精により島風は撃沈判定を受けてしまった。

 

「さて、一先ずは完了ね。被害状況は?」

「ほぼ無傷だよ。被弾も無い」

「私も、大丈夫です」

「うぅ~、何発か掠っちゃいました」

「問題ありません!」

 

 島風が回収されていくのを確認して、他の面子に問う足柄。返ってきた返答を見る限りでは、皆無事のようだ。

 

「良々。でも、油断は禁物よ。最重要目標がまだ・・・・・・」

「足柄さん、後ろっ!!」

「え? 後・・・・・・ッ!?」

 

 そして、彼女達が次の行動に移ろうとしたその時だった。足柄の丁度真下から水柱が立ち上り、その衝撃で中破判定を受けてしまう。

 

「足柄さん!!」

「私のことはいいから、ここから離れて! このままじゃ挟撃されるわ!!」

 

 包囲されることを避けるべく、足柄は神通達に移動を指示すると、自らは後方から向かってくるであろう敵を待ち構える体勢を取った。

 

「さあ、第二幕よ・・・・・・!!」

 

 

★☆☆★

 

 

 正直なことを言うわ。私、足柄はこれまでで二度死んでいる。

一回目は重巡洋艦として、バンカ海峡で単独航行中に雷撃されて沈没。二回目は横須賀鎮守府所属の艦娘として、敵巡洋艦隊との白兵戦の末に戦死。

 重巡リ級が右手を振り上げて、私目がけて振り下ろしてきたところで記憶が途切れているから、たぶん頭でも割られたか、首でも切り落とされたんでしょうね。

 それはともかくとして、『横須賀の妙高型四姉妹』の勇名は比肩なき物とされていると聞いたことがあるわ。

砲撃、雷撃、白兵戦はもちろん、指揮も補佐もそつなくこなす妙高姉さん。

艦娘として以前に武人として、自他共に認める模範とされていた那智姉さん。

経験こそ浅いものの、その実力と人柄で駆逐隊の子達に慕われていた羽黒。

そして私、足柄。自慢じゃ無いけど、レイテ戦役では敵の分艦隊を撃破したこともあるのよ。その私の三度目の人生は、パラオ泊地所属の艦娘として始まった。

 最初は、私の華々しい経歴に傷が付いたと思っていた。もちろん、そこが重要拠点であることも、にも関わらず戦力は単なる寄せ集めでしかない事も知っていたし、建造されるのはどこの拠点になるか、私たちに選ぶ権利が無いこともわかっていたわ。

 それでも、すぐには『納得』できなかった。『勝利に導いてあげる!』、なんてでかい口を聞いておきながら、ね。でもその後、訓練や軽い出撃を繰り返していく内に、認識が少しづつ変わっていったわ。

 皆過去に、何かがあった子達ばかり。人員整理のため、やむなくここへ来た子。一人だけ生き残った末、流れてきた子。正しきを守るために動き、飛ばされた子。私と同じように、建造でここへ来た子。色々と接していく内に、見方も変わっていったわ。

 そして今、私は今の上官、東郷中佐のために演習に臨んでいる。横須賀時代の提督を蔑ろにするつもりは無いけれど、今の提督のためにも、負けるわけにはいかないのよ。

 

「さて、雷撃の距離から判断して、軽巡と駆逐が一隻づつ。鬼が出るか、蛇が出るか、ね・・・・・・」

 

 状況から見て、北上(こうげきもくひょう)がいるとは考えにくい。恐らくは、あの駆逐艦を追う過程で挟撃を狙うつもりだったようだけど・・・・・・

 

「そうは問屋が卸し金、ってね!!」

 

 まだ生きている右肩の主砲を照準、うっすらと見える敵影目がけて発砲する。使われているのは模擬弾とはいえ、直撃すれば艤装を機能不全に陥らせる程度の破壊力はある。

 特に魚雷発射管と空母の飛行甲板は壊れやすいし、現に私の両腰に付いているそれは既に使い物にならない。早々に雷撃は諦めて、主砲で距離を詰めてからの白兵戦しかないわね・・・・・・!

 

「それに私の、いいえ。妙高型の十門の主砲は、伊達じゃ無いわよ!!」

 

 さっき撃った主砲も含めて、使用できるのは二基四門。過半数が使用不能になっているけど、駆逐艦の12.7サンチ砲や軽巡の14サンチ砲とは破壊力が段違いの20.3サンチ連装砲が二基。中破しているとは言え、負けるつもりはないわ!

 

 

☆★★☆

 

 

「足柄さん、大丈夫でしょうか・・・・・・」

 

 足柄さんが魚雷を受けた少し後。私達は廃船から離れるべく、最大戦速で移動し始めていました。

 あの駆逐艦と交戦してから幾分か時間が経っているから、そろそろ敵の本隊が合流して来てもおかしくないはず・・・・・・

 

「やあやあ。また会ったね、神通っち」

 

 ちょうど出口にさしかかったその時、横合いから発せられた聞き覚えのある声。間違いない・・・・・・!

 

「ご無沙汰でしたね、北上さん。数時間ぶりでしょうか」

「まあ、そんなとこかねぇ。・・・・・・さって、と。砲撃も雷撃もたぶん見切られてるだろうし、ここは、これかな?」

 

 そう言って、艤装に担いでいた長刀―四式近接戦闘長刀を抜く北上さん。一騎打ちの気配を察したのか、隣にいた漣ちゃんが一歩下がるようです。

 

「神通ちゃん・・・・・・」

「大丈夫です。この打ち合い、負ける気はありません。皆を、下がらせてください」

 

 心配する名取さんに声を掛け、私も応じる構えを取ります。この間合いなら・・・・・・。

 

「魚雷で・・・・・・!!」

「行きますよぉっ!!」

 

 水面を蹴って魚雷を回避し、北上さんは上段から長刀を振り下ろす。魚雷を躱された私は、短刀を抜いてそれを受け止める。金属と金属のぶつかり合う音が、周囲に響き渡った。

 

「くっ・・・・・・!」

「神通っちを悪く言うつもりは無いけどさ、こっちにだって意地があるんだよね。昨日今日提督になったばかりの人なんかには、負けるわけにはいかないし、ねっ!!」

 

 得物の差で、じりじりと追い詰められているのが判ります。その圧力をいなして反撃を試みますが・・・・・・。

 

「甘いっ!」

「っ、あぁっ!」

 

 逆に顔を石突きで殴られ、転倒する始末。ですが、これで良いんです(・・・・・)。なぜなら・・・・・・

 

「油断しましたね・・・・・・」

「うん?」

「次発装填済みです・・・・・・ッ!!」

「!?!?」

 

 逆転への布石は、既に打っていたんですから・・・・・・。

 

 

☆★★☆

 

 

「次発装填済みです・・・・・・ッ!!」

 

 神通が殴られ、端から見ると大げさに転倒した直後。北上の足下から二つ、水柱が盛大に立ち上る。

 両腰の魚雷発射装置には魚雷の姿は無い。あの時彼女の打った逆転の布石。それはこの水柱を起こした、魚雷そのものだったのだ。

 殴られる寸前、刹那の間に神通は魚雷発射管の次発装填を行っており、転倒すると同時に射出したのだ。

 もっとも、彼女からしてみればこれは半ば賭けに近く、失敗した時のことは考えていなかったと、後に語っている。

 命中した魚雷は二発。内一発は、北上の背面艤装を吹き飛ばし、もう一発は左手の魚雷発射管を損傷させていた。

 北上、もとい重雷装巡洋艦と言う艦種は、圧倒的な魚雷火力の代償に砲戦火力と防御力、そして継戦能力が大きく低下している。主砲も半分はお飾りの様なもので、艦娘であってもその能力バランスに例外は無く、一部では、『無傷か大破の二択しか無い艦』や『艦隊の鉄砲玉』と揶揄されているくらいだ。神通は、その可能性に賭けたのだ。そしてそれは、見事に的中した。

 艤装だけで無く、戦闘装束、はては本体にまで損傷が及んだのか、北上の船員妖精が戦闘不能になったことを示す白旗を掲げている。敵旗艦の戦闘不能。即ち・・・・・・。

 

「私たち・・・・・・勝ったの・・・・・・?」

 

パラオ艦隊の、勝利が決まった瞬間である。

 

 

――――――

 

 

「一言で言うなら、中の下だな」

 

 演習が終わった翌日。パラオ泊地へと帰ってきた艦隊は反省会を行っているのだが、勝てたのにもかかわらず、会議室内には重苦しい空気が充満していた。

 

「最重要目標の早期無力化の失敗、単艦で突出してきた敵に対する対処の遅れ、果ては戦術的に価値の無い一騎打ち。これが実戦なら、艦隊が全滅してもおかしくは無いものばかりだ。自分たちは今、戦争をしている。日本の。否、人類の存亡を賭けた戦争をだ。一回の戦闘に全力を注いで、仮に勝てたとしよう。だが、その次はどうする? それにも勝てたとして、さらにその次は? 万一負けたときの対策は? 消耗した物資と戦力はどう補う? 考えなければならないことは山積みだ」

「でも提督、勝てたから良いじゃない」

「そうよぉ。胸を貸してもらった形だけど、面目は保てた筈よ」

「いや、自分が言いたいのはそうじゃない」

 

 苦言を呈する徹心に反論する足柄と如月だが、それを制して彼は続ける。

 

「重要なのは、戦術的勝利はどれだけ積み重ねても、それ以上の意味が無いことだ。戦略的にも勝てなければ、それは十全な勝利とは言い難い。そのことを含めて、よく考えて欲しい。指揮官としての見解はこの位にして、士官としての総評だが・・・・・・。よくやってくれた。反省点も多々あるが、貴重な一歩を刻めたことは、実に喜ばしいことだ」

 

 軍帽を脱いで襟元をを正してそう言った徹心。その顔には多少ながらも、笑みが浮かんでいた。

 

「嘘・・・・・・」

「?」

「提督さんが笑ったところ、初めて見るっぽい!」

「仏頂面以外の顔もできるなんて・・・・・・!」

「失敬な。自分は何も、木や石の中から生まれたわけでは無いんだ。喜怒哀楽の感情は、最低限持ち合わせているつもりだ」

「それでも最低限、にゃあ・・・・・・」

「ふふっ・・・・・・。でもこの感じ、久しぶりですね」

 

 その様に驚愕する一部の艦娘に突っ込みを入れつつも、場の雰囲気が和やかなものになるのを感じ取ったのか、徹心は懐から何枚かの一円札を取り出して五月雨に手渡した。

 

「さて、反省会はこれで終了とする。これで何か、美味い物でも食べてくると良い。自分の気持ちだ」

 

そしてそう言って、会議室を後にする徹心。その足取りは、着任当初と比べると少しだけ、軽くなっていた。

 




「っ、あぁっ!!」

「射程が・・・・・・違いすぎる・・・・・・ッ!」


次回、『戦艦』。
それは、強者であり、王者。
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