ダンジョンに行かず本を読むのは間違っているだろうか 作:パッチェ
えー、次回の投稿は少し遅れます。理由としては、原作をちゃんと読むのと、新たな始まりが多い4月だからです。申し訳ない。
スキル紹介
【神々叡智(本)】
本からであれば、神の知識を彼は理解する。それは彼が神に愛されている証拠だ。
【無限本棚】
彼は自身に世界を持つ。それは本であれば、無限に入り、終わることのない棚である。
魔法【
その言葉は魔法の言葉。彼が望む本を呼び寄せる彼自身を表した魔法。
今日も今日とて彼のする事は変わらない。いつもの様に寝落ちから起きると、目をこすり、部屋に常備されている飲み物で喉の渇きを潤す。カーテンは開けず、薄暗い部屋を魔石で照らす。
その後再びベットに戻り、本を開く。ランダムで本を取り出すので今日のジャンルは何かと毎日の楽しみでもある。そう言えば、とそろそろ読んでいない本が100冊を切った感じがしているので、買いに行くか、ロキにねだろうと考え始める。
(……ロキはちょろいからいける)
一体誰に似たのか。
その元凶はどっかの部屋で二日酔いの頭痛に魘されてるだろう。
「……もう1週間…か」
地下から地上の部屋に出て時間がある程度たった。レヨンの日常は変化すらしない———筈であった。
「やっほ!レヨン、遊びに来たよ」
「……また来た。何暇人なの?大人しくダンジョンに行きなよ。あ、大人しくなかったねお前」
「うぅ…相変わらず毒舌だね」
あの試合後からティオナはレヨンに絡むようになった。
毎日毎日話しかけ、3日経ったくらいにまともな返事をレヨンは返してくれた。それまでは1文字か2文字の否定的言葉しか返ってこず、まさに興味無いと言わんばかりの態度だった。『好きの反対は無関心』とはよく言ったものだ。
故にまず、無関心を貫くレヨンにうざいほど話しかけるという行動で示し、どんなことでもいいから興味を持ってもらうことに徹した。これはロキの入れ知恵でもある。朝昼晩とずっと話しかけ、レヨンの読書の邪魔をしまくったティオナはついに3文字以上の返事が返って来た。
『……いい加減うざい。敗者なのによくそんなに元気だね』
皮肉気味に自分から離れさせようと狙った言葉だったが、ティオナはニコニコとした表情で会話できることに楽しんでる。
『あの時は負けたけど次は負けないよ!またやりたいね!そういえばレヨンくん本好きなんでしょ!あたしも好きなの、なんのジャンルが好き?あたしは特に英雄記が好きなんだぁ〜』
怒涛の語りに押し切られ、お…おう、としか言葉が返せない。
『あたしティオナ・ヒリュテ。種族はアマゾネス!ダンジョンに潜る事も好きだけど、本を読むのも好き!宜しくね♪』
そう自己紹介してから、今までと対照的にレヨンの対応が変わった。部屋に入れば何だかんだ相手はしてくれるし、自分の本を読ませてもくれる。更に呼び捨てでいいとも言った。
「……ふん、毎日来なくていい。来るなら4日に一度くらいで…」
「そこで来るなって言わないのが、レヨンの可愛いとこだよね〜。それで今日は何読ませてくれるの?」
「…うるせぇ……今日は天才と凡才の兄妹が神に挑む話。10巻セット」
「良いじゃん、面白そう!!」
そうやってダンジョンに行かない日はレヨンの下に行くのが、ティオナの日々にもなって来た。
(やっぱレヨン綺麗だよなぁ〜。良い匂いもするし……それにやっぱ似てるなぁ、アイズに)
隣で本を読むレヨンの顔を見るとティオナはいつもそう思ってしまう。
前にも同じような事をしたなぁ〜、とも。
レヨンを初めて見た時は、大人しい子供のイメージがあったが、話しかけて行くうちにある少女と重なった。表は何も無いような、虚無に見せかけて、内心は1番何か強いモノ、思いを持っている。彼女と同じだと。
あの彼女は
初めは無関心を貫くくせに、一度心を許すと甘くて、口が悪いのは、ただの照れ隠しと表現の仕方を知らなくて。幸福の湯船に浸かると戻れないから、わざとマグマ風呂に入ろうとする。無理矢理鎖で引っ張らないと、意地でも動こうしない。そして妙に押しに弱い。嗚呼、本当に…。
(———よく似てるよ君たちは)
だから、仲良くなろうと思った訳では無い。
ティオナ自身、レヨンと仲良くなりたかったのはあるが、中身を理解していく内に、心配になるのだ。ロキからアドバイスを貰った時に『仲良くなるのはええ。ただ手ーだしたら殺す!』と殺気増しましで、向けられた視線を今は理解できるし、段々と『守護らねば…』と脳裏に浮かぶ様になった。
「あ———」
気づけばティオナは本を3冊ほど読み終わっていた。読んだ内容は覚えているのに、読んだ感覚が無い。そんなに考え込んでいたか、と顔を上げようとした時———レヨンの瞳が目の前にあった。
「……面白く無かった…?」
「ウエッ!?いやいやいや面白かった!続き読みたいよ!!」
覗き込む様に下から、見つめて来るレヨンの上目遣いは中々の破壊力を持っており、これがロキやリヴェリアの親バカが加速している理由か、と感じる。
(あー……天然が入ってる部分もほんっとアイズとそっくりだわぁ〜)
そう思いながら、受け取った続きに目を向けるのであった。
どんなに
♦︎♦︎♦︎♦︎
部屋に充満した酒気が二日酔いの身体に染み渡る、とバカな事を言いながらグラスに注いだ酒をロキはゴクゴクと喉を鳴らしながら流し込む。
「プハァ、あー酒が美味い!体は酒でできている!なんてな」
「ロキ……飲み過ぎだよ。君、朝からトイレで吐きながら『もう飲みません、ごめんなしゃい』と言ってたばかりじゃないか」
呆れ顔のフィンは、間抜けな主神の今日の出来事を哀しそうに思い出す。
ここはロキの自室。ベッドと一つの本棚。仕事用の机もあるがその上には多様な形をしたボトルが何本も置いてある。飲むことが仕事と言わんばかりに。
「最近飲み過ぎだ。気持ちは分からんくないが、もうちょっとブレーキという言葉を使え……ヒクッ」
「お前さんも小一時間で3本空けといて…それを言うか」
「リヴェリア……君まで……」
「安心しろ。私はロキと違って仕事となれば、頭の切り替えはできりゃ」
完全に酔ってるようにしか見えないが、リヴェリアならできるので、これ以上は深く広げない。
ここに4人が集まっている理由は定時報告のためだ。近いうちに行く遠征の準備を報告し合う会議。の、筈なのだが、約2名の親バカのせいで話が全く進まない。故にフィンが無理矢理話を捻じ曲げて路線を戻す。
「レヨンが外に出て嬉しいのは分かったから、いい加減報告会始めるよ」
おう…と、丸椅子に座る3人とは違ってベットに横たわって飲んでいたロキは起き上がると、執務上使用する机の椅子に座る。
「そんじゃ話を聞こか」
明らかに酔っ払いから、主神としての話を聞く態度にロキは変わった。
「いつもその状態でいて欲しいけど……それじゃあ僕から行くけど、次の遠征ではあまり魔剣を用意できそうにない。これは確定事項と取ってもらって構わないよ」
「あー、やっぱあかんか〜。うちとしては幾らでも保険は欲しかったんやが…」
「仕方ない、としか言えないね。魔剣を作れるものは限られているし、値も張る。後、今回の遠征には理想数が合わないと言われたよ」
しゃーなしや、とこの話題は終わる。
「次はワシからじゃが、遠征に連れてくもんだが、レベル4以上にしようと思っとる。レベル3以上とも考えたが、実力的にキツそうなもの達が多い。今回は50階以上を、目指すからな。足手まといは出来るだけ少ない方がいいと判断した」
「すまない。その案は私的に反対だ。レベル4以上だと数が少な過ぎてフォローが間に合わないと思う。レベル3を全員とはいかんが、将来有望な者たちを連れて行くのはどうだろうか?特に私はレフィーヤを推したい。あの子の火力だけは私並み…いや、それ以上だ」
先程まで、酒で荒ぶっていた者とは思えぬ本質を突いた、反論によりガレスも考え込み始める。
「僕もリヴェリアに賛成かな。経験を積ませたいという思いはあるし、50階からは少数精鋭のアタックで行けばいいと思う。ロキはどう思うかい?」
「あー、うち?そやな………そこら辺はガレスに任せるわ。本人たちの実力を知ってんのはガレスやし、あんまり口出さへんわ」
「と、言うことみたいだけど、どうだいガレス」
「まぁ、確かに将来性のあるものもおる。よし分かった、近いうちに何人かピックアップしておこう」
一旦、必要な情報は言い終えた。
地味に報告作業というのは疲れるもので、一息つくためにフィンやガレスも一杯飲み始める。此処からが本番でもある故に。
「さて、と。本題に入ろうか。———レヨンはどうだい?」
それが今回の集まった意味でもある。
「そやな……。とりあえずうちらが予想した通りには進んでるわ」
レヨンがロキ・ファミリアに来て早五年。
引きこもり続けるのも考えものであった。確かに、レヨン自体がパンドラの箱みたいな存在ではある。故に一般教養をつけるまで監禁していたのも事実。それが間違った選択であったか、と言われると首を横に振る。しかし、そのせいで引きこもりに加速が入ったのも事実。
———だから計画した。
「目論見通り、ティオナとは仲ようやっとる。そこは想定内や。ただ想定外な……意外過ぎる事が起きてな…」
ロキは両手を頭の後ろに回し、そのまま天を見上げた。
「ほう、何があったんじゃ?お主がそこまで頭を捻る事とは」
「レヨンとティオネがすぐに仲ようなったんや」
「———ブフゥッ!!?」
丁度、酒を口に含んでいたフィンが驚きのあまり噴き出した。ガレスも口を大きく開け"嘘じゃろ、と飲み終わったグラスを落としかけた。
「それがなぁ〜マゎ〜ジなんよ。うちも驚いたわ。この前深夜に2人でレヨンたんと一緒に食事しとったんや。そしたら———」
『あら、レヨンじゃない。こんな時間に夜食かしら?え、私も食べるかって?遠慮するわ、この時間のカロリーは天敵ですもの』
「———ってな、楽しげに喋っとたんよ。うちを放ったらかしで!」
「あのレヨンが同じ食卓に付くことを許すとは……相当気に入っておるのか?」
「そ、そそうかもしれないね」
少々動揺が隠せないのか、フィンはグラスを震える手で椅子の横に置いた。
「何やフィン妬いてるんか?」
「ああ、そう言えばお前はレヨンに嫌われてたな」
「うぐ」
このアラフォーショタはレヨンに徹底的とまではいかないがかなり、嫌われている。一応ファミリアの団員と言うこともあって、命令であれば言うことは聞くのだが、プライベートになると暗黒化する。好かれている筆頭であろう、リヴェリアやロキと同じことをしても何故か、手を払われる。
「一体何故なんだ。僕はただ仲良くしたいだけなんだが……ガレスですら食事を許されるのに」
「どう言う意味じゃゴラっ!!」
「………多分そう言うとこやフィン」
何度嫌われる理由を聞いても教えてもらえないので改善のしようもないのだが。
「ママはどうや?なんかあったか?」
「誰がママだ!そうだな……フィンでは無いが、こちらも問題があった」
「あ、もしかしてレフィーヤと馬が合わんかったか!?」
「イエスともノーとも言える。何と言うか……いや、本当にくだらない事なんだが、先日レヨンとレフィーヤ2人一緒に授業をしてたんだ魔法の。そしたら———」
『だ・か・ら!私の方が歳は上なんですから、姉なんです!姉弟子なんです!!』
『……たかが歳だけで姉を名乗るなんて言語道断。ふっ、ボクよりレベル低いくせに』
『ああああ!鼻で笑いましたね!私はもうレベル4になれます!なれるんですぅ〜だから姉なんですぅ〜』
『……お前みたいなアホの姉はいらん。出直せ』
『何ですってぇぇ」
『……何か文句でも』
『『うむぅぅぅぅぅぅぅ!!!』』
「———ってな事があってな。…どうしたロキ、そんな手を顔に当てて」
「いや、かわゆす過ぎて、尊死しそう。現場で見てたら確実に天界に行ってた。あーもうマジ無理。てぇてぇ」
「……最近の神語録はよう分からんのぉ〜」
ロキは身体の奥底から溢れそうなマグマを我慢して(鼻にティッシュを詰める)話を元に戻す。
「まぁ、こんな感じや。ある程度みんなと仲ようなっとるし、このままいけば大丈夫やと思う」
「元々レヨンは感情豊かな子だ。出す所が無いだけでな。それが一気に爆発しているんだろう」
「それはええ事やねん。あの子はもっと人を知らなくちゃいかん。それがレヨンたんの為にもなる」
「これで一先ず目的は達成したかな」
「ああ、これで———」
———我々以外がレヨンを守れる
ロキ達の狙いはそこだった。
一人で魔法の定義を変えられるレヨンは、悪に利用される恐れがあった。だから、彼の噂が立たないようにと、人目につかない地下に住まわせた。だが、それも限界があった。3人は前線に居続けて長い。そろそろ夢へと向かおうとしているものもいる。ずっと前に居続けるのも良くはない。止まるは衰退と同じだ。変わらなくちゃいけない。それに後釜達も育ってきている。その中でこれからのロキ・ファミリアの為にも、レヨンという存在は必要であり、その中心には彼も居なくてはいけない。——だから無理矢理にでも外に出した。
それに彼等は仲間として家族としてあって欲しいという親心でもあるのだ。かつて啀み合ってきた自分らはその大切さを感じている。1人では出来ることが限られることも。
「レヨンには友というものを、家族というものを感じて欲しい。我々の様な冒険者はいつそれが出来なくなるか、無くなるか分からないからな」
「そやねー。これを機にレヨンたんも自分に素直になって、やりたいことを見つけて欲しいなぁ〜」
皆は無表情無表情と口を揃えるが、ロキやリヴェリアからすれば、昔より表情が動いてると感じる。それは昔を知るからだろうが。そんなしんみりと過去を懐かしむ話をしているとロキは思い出した。
「あれ?———アイズたんは?」
始め、3人は何の事か理解出来なかったが、だんだんとロキの言いたい事の意味が理解出来た。
「そういえば……あのアイズがまだちょっかいをかけてない」
「あの戦闘狂がレヨンを観て何もしないのはおかしいのぉ〜」
「何やろ……めっちゃ嫌な予感がするねん今」
「ああ、僕もだよロキ。この話に入ってから親指の疼きが治らない」
過去、悪神と名を馳せたロキの直感と、フィンの親指は当たる事が多い。嵐の前か……と誰が言ったのか分からない声が部屋に響き渡るのであった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「…………………チッ」
ティオナが帰った後、彼は本を読む。いつものごとく、いつものように本を読む。時計の針は2を指していて、物音すらしない程、今日はやけに静かな夜である。
「………………はぁ」
———鬱陶しい
その存在が、いい気分の心をかき乱してくる。
「…………入る。コソコソ見られるのは好きじゃない」
誰もいない筈の部屋でそう話すとドアが開き、そこには暗き空間を照らすような金の髪を揺らし、腰には一本の剣がさしてある。
「…気づいていたの?」
「……お前バカか。あんだけ毎日ジッと見られてたら嫌でも気づく」
2人の無表情すぎる会話に、どんどん空気が冷えていく気がする。アイズの一歩。その音が徐々に大きく鳴り響き、まるでカウントが始まっている様だ。
「……何の用」
「知りたいの」
「……何を」
「貴方がどうして強いのか」
アイズは素直に言う。回りくどく言っても時間の無駄だから。
「……知ってどうする」
「私の糧にする」
「…お前には無理だと言えば」
「頑張る。私はそうするしかない」
「…じゃあ嫌だと言うなら」
「—————ッ」
レヨンの前でアイズは止まった。
顔は俯き、レヨンの下から覗くような形でも長い髪のせいで表情は見られない。いっときの沈黙の後。
「教えてもらう。———力ずくでも」
彼女は腰の剣の先をレヨンの首元に置いた。
「……うん、そう言うの——」
彼等は笑った。
表には出さない
————嫌いじゃない
彼は誰よりも鋭感である。
自覚してないだけで、誰よりも持っているのだ。そして求めてる。この埋められないポッカリと空いた穴を。それを自覚した時彼は———