ダンジョンに行かず本を読むのは間違っているだろうか 作:パッチェ
戦闘シーン苦手。もっと上手く書きたいわ。
ロキ・ファミリアの本拠地である黄昏の館の廊下では紙が舞う———2人の髪が舞い踊っていた。追うのはアイズ。追われるのはレヨン。
「……【我が手に魔本を】」
浮いた本の上に仁王立ちして高速で移動しているレヨンの手から落ちた頁。その表面に描かれている魔法陣から矢型の閃光が向かって来る。
舞っていた紙は5枚。向かってくる矢は40、一枚から8発出ている計算になる。レヨンとの大体の距離は5メートル前後。その中で約20㎝程度の矢をアイズは捌かねばならない。
「……【
まず五発。超短文詠唱から風を纏わせた剣で払う。その時アイズは気付いた。
(感覚が——おかしいッ!?)
振った右手が痺れている事に。
「…ふむ。新作の【雷矢の魔本】は中々良き。痺れの付与もうまく発動してる」
まるで高みの見物。
アイズを実験台としか見ていない発言とも聞こえる。だが、そんな事に怒りを覚える暇もない。残りの35発を落とさなければならないのだ。右肩から五本の指先まで、痺れがある状態でいつものように振れない。その状態でどうするか、アイズはその答えをすぐさま導き出す。
(この痺れは剣が一つの原因。多分風から剣に感電した。………この攻撃で右手は捨てる!)
彼女は頭を前に倒して走るスピードを上げた。一種の忍者走りに移ると剣を前へ突き出す。振れないなら突けばいい精神。
「———リル・ラファーガ」
使う時に言えば威力が上がるとロキに騙されて未だ言っている技を使う。全身に風を纏わせ、加速状態からの圧倒時な突。シンプルで突破するには最適解。それがこの技だった。
その突は35発の雷矢を吹き飛ばし、前へ前へと突き進んで行く。飛ばされた雷矢は天井や部屋のあっちこっちに狙ったかのように刺さって行く。あまりにも多かった部屋は破壊尽くされてしまった。
「……あーあ、こーわーした」
向かって来るアイズを見ながら、壊れゆく物たちへと
たった一点。その一点に魔力を集中して攻撃を受ければ、レヨン程の耐久値と魔力の持ち主であれば、ガレスの7割のパワーを跳ね返せる。しかし、それは言うなれば、槍の先程の範囲であればの話。
今、目の前に見える巨大で強大な風の槍は、その広さをゆうに超えている。そしてアイズのレベルは5。ドーム状にしては魔力が散らばり破られる。ならば、巨大な槍の先端の部分を止めるだけの壁を張ればいい。そう思いレヨンは本を止め、破った頁を畳ほどの大きさの障壁として、突っ込んで来るアイズを受け止め——。
「……グフゥッ!?」
———きれなかった。
障壁をすり抜けた一撃はレヨンの腹に強い衝撃を与え、館の壁を破壊し、その凄まじい威力の一撃にレヨンは押し出されるように飛ばされた。レヨンは剣の突きと勘違いし、確かに剣の突きは止めれたが、その前にある魔力の激突はあっけなく通り過ぎた。
そして2人は中庭へと外に出た。
「…………痛い」
満点の星空を仰向けの状態で見上げながら言葉を吐いた。
「えーと、その………大丈夫?」
流石にアイズもやり過ぎたと思い心配の一言かける。それに後ろを振り返れば、外から見える部屋の明かりがつき始め、大なり小なり悲鳴が聞こえる。
(お、怒られちゃう……もうやめないと——ッ!?)
ズズズと耳障りな音がアイズの意識を変えた。第一級冒険者としての体に染み付いた勘が、戦闘態勢に入れ!と訴え、無意識的に左手で剣を構える。
「……久しぶりに傷ついた。いつ以来?ああ、駄犬以来か。あー、ムカつく……ほんとムカつく……なら」
———潰していいよね?
立ち上がったレヨンの頭の上には、いつからあったのか3冊の本が浮いている。その一つは見開いた状態で、中から巨大な茨が2人を中心に囲んだ。その茨は人の体ほど太く、高さはアイズの身長の三倍はあるだろうか。———隔離。その二文字が浮かんだ。
「……油断したのはある。でも…いたかった。そう…お前は僕に痛みを与えた。ならお前も痛みを得るべき」
完全に逝った目。
その冷たさと鋭さにアイズも息を呑む。だが、そこに恐れも、怖さも無かった。アイズの心を埋め尽くしたのは歓喜。その小ささとは裏腹に感じる強者の威圧感。先程まで辞めようとしたのを忘れるくらいアイズは集中している。
「…やれ【百一匹の燃狼】」
また一冊が開かれた。燃える灼熱の狼がその名の通り101匹アイズに襲いかかる。アイズは左手の剣で1匹、また1匹と斬り倒していくが、茨のせいで得意の足が使えず、数の暴力の前に押されていく。
(横に移動不可…後ろは茨……目の前を見るしかない)
未だ痺れある右手で風を纏った拳でも対応するが、それでもキツイ。
一見側から見れば、アイズは燃狼を捌いてるように見えるが、足や腕は肌が焼けており、噛まれた跡も増えてきている。
「うぐ…
身体を包むように竜巻を発生させ、燃狼の牙から身を守りながら何匹かは上空に打ち上げられ、消え失せる。残った数匹はレヨンの元へと一度帰る。
やっと一息つけたアイズはレヨンの強さに改めて実感する。レベルの差を補う魔力コントロール。圧倒できる程の数の暴力という手札を持ち、何があるか、何冊あるか分からない多彩さ。ロキとリヴェリアの秘蔵っ子と言うだけはある。認めなくては——この子は強者だと。
「…はぁ……はぁ…やっぱり君は強い。だから教えて…どうしたら強くなれるのか」
「……勝てたらね」
「絶対勝つ」
「…………くふ」
瞳の中にある黒い炎が一段と燃え上がる。それを感じ取ったレヨンは思わず、笑いが漏れた。
「何がおかしいの…?」
「……うむ、すまん。嗤った訳じゃない。お前のその歪んだ想いが面白くて面白くて、ほんとそういうの……ふふ、ボク———大好き」
「——なッッ!?」
「もっと……もっと観せておくれ!焼け焦がす黒き炎を。嗚呼、その目が!本気を物語ってる。さあ、もっと!もっと————
「え————ッ!?」
この時、アイズは2人の意味で驚いた。
一つは耳に聞こえた二重の声。ただそれは気のせいかもしれない。今はそこに気を取られらるにはいかない。
何故なら三つ目の魔本からレヨンに身長の三倍はあるであろう黒き大鎌が、手に渡ったのだ。
「……ふひひ、さあ!さあ!僕と舞会おうよ!」
「ッ目覚めよ!」
まさかが接近戦を仕掛けてくるとは思ってもみない事に、僅かな戸惑いが生まれそうだったが、アイズは反射的に前へと進み、共に襲いかかってきた燃狼の牙を身に喰らった。が、それ以上のスピードでレヨンの懐に入った。
そこはもう
「これで終わり」
だったが、レヨンは懐に入れる一瞬前に前転し、その反動を使い大鎌を振り、大鎌の弱点である懐に入ったと思わせて、そのタイミングで振り下ろすつもりだった。それに気づいたアイズだが、時すでに遅くレヨンは回転の体制に入っていた。そう、もう浮いている。
———だけだった。
「…あれれ、何で僕が出てきてるんだ?嗚呼、興奮し過ぎて繋がっちゃったのかな?全く僕に似て可愛い子だなぁ〜♪でもこれ振っちゃうと僕のレヨンが倒れるからごめんねー………ふえ?」
「————シッ!」
一閃がレヨンの胴体に決まった。レヨンは茨の付近まで飛ばされ、かなりの威力だったのかレヨンほ倒れているところは小さなクレーターになっている。そしてレヨンが倒れたことにより茨は消える。
「……ふぅ、勝ったぁ」
最近味わえなかった満足感に浸っていると何か違和感を感じる。地面を見ると部屋から漏れた明かりが、アイズの影を作っているのだが、それがやけにデカイ。そして影がどんどん増えていく。
後ろを振り返りたくな「こっちを向けアイズ」絶対に逆らえない声がした。ここは素直に振り返った瞬間。
「こんのバカどもが!!」
ゴチンと魔力の込められた拳骨がアイズの頭に落とさせれた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
ポーションを飲み傷を治した2人の無表情はロキ・ファミリアの主神および首脳陣。睡眠を妨害させた団員たちにみられながら正座をしていた。
「たく……どうしたらここまで破壊できるんだ」
館の5分の1を破壊した2人の戦闘に呆れしかリヴェリアは出てこない。
「違うのリヴェリア。これは——」
「…リア聞く。これは———」
『『
お互いに指をさし、自分は悪くないと言う。その光景にロキ達は苦笑い、リヴェリアは再び2人に拳骨を落とした。
『『痛い…』』
「当たり前だアホども!!」
「まぁ、まぁ〜リヴェリアもそう怒らんでええやん?ちょっとした子供のお茶目や」
「そ、そうだね。リヴェリアも一度ここまでなった理由を聞こう」
全員が2人を攻めると話が進まないので、ロキとフィンがフォローに入る。そして2人の答えは。
「…こいつが悪い。挑発してきた」
「む!君だって初めはノリノリだった」
「…最初はお前!いきなり首元に剣を向ける奴は常識ない」
「むむ!だったら君は体が痺れることをした」
「だからってあの一撃は無い。あれボクじゃなかったら死んでる」
「むむむ!それならあの燃える犬?は、物凄く熱いし、火傷した!」
このままだと永遠に平行線。額を合わせてムギギギと唸っている。
「…こうなったら決着つける」
「ふ、それは負け惜しみ。あれは私の勝ち」
「うぎ!?……違うもん…途中記憶ないからノーカン!」
「言い訳乙。素直に認めて」
「…やだ」「認めて」「……や」「認める」「……のー」「真実は一つ」「……うぅぅ」
「いい加減にせんか!!誰がまた喧嘩しろと言った!」
進まない話にリヴェリアの拳が火を噴く。そして頭を抑え唸る無表情組。
「はぁ…一から話せ」
その後、時間はかかったが、2人からの証言と破壊痕。2人の性格を考慮して導きされた結果は。
「アイズたんまず謝ろか」
「えぇ!?」
———アイズ、ギルティ。
「そらそうじゃろ」
「話を聞いてる限り、あんたが悪いでしょアイズ」
「ちょーと……援護できないかな…」
ガレスやアマゾネス姉妹もこれには援護不可。
何故なら、【アイズは剣で脅した】→【それに対してレヨンは手加減をした反撃】→【するとアイズの技で肋持ってかれる】→【ブチギレたレヨンは魔本を使って潰そうとする】→【お互いに半殺しにするまで終わらない戦闘が開始】→【なお潰されたのはレヨン】→【今】
これには闇派閥もびっくりの流れだろう。
「いや…でも「アイズ」……ごめんなさい」
「ほら、アイズたんも謝っとるし、レヨンたんも。な」
「………ごめん」
お互いに謝って、これにて一件落着。
「じゃあ私勝ったから、貴方の強さを教えて」
———とはならなかった。
「…このタイミングで言う??引くわー」
「えーーと?アイズたん?」
空気を読まない一言にドン引き。え?え?とアイズは戸惑っている。実際戸惑っているのは周囲の人々だが。これには団長のフィンも頭を抱える。
「アイズ……その約束は僕が預かるよ」
「な、何で!?」
「何でって、これだけホームを破壊して罰も何も無しとはいかない」
「そ、それは…………」
アイズもそれは分かってる。ここまで仕出かしたら、ちょっとくらい怒られるのはもう覚悟の上だ。だが……だが、それでも強さを求めたい。強くなりたいのだ。
「………」
落ち込み顔を伏せるアイズの姿をジーとレヨンは見ている。
「まぁ、預かると言っても僕としては一つの案を出すだけだ。まず2人は破壊した部分の修復。これは絶対だ」
「うぅ………うん」
壊したのは真実であり、言い訳できる物がないから縦に首を振る。
「二つ目、レヨンは今度の遠征についてくること」
「………はあ!?」
レヨンからしたら一つ目はまだ理解できる。しかし、二つ目これは何の関係もないだろうと抗議の声が漏れる。それに対しリヴェリアがフィンの言いたいことを事細かく説明し始めた。
「どうせアイズの事だ。強さが知りたいと言いながら、どの様に知るのか考えていない。最終的にダンジョンに潜るという選択肢しか出てこん。そうなるとお前ら2人で潜らせる訳にはいかん。なら我々やレベルが高いもの達が多い遠征に連れて行くのが監視もできて1番いい」
全くその通り、よく分かってるとアイズの心にいくつかの剣が刺さる。そう言えばと、自分がどうやって強さを知るか、考えてないことに今更気づく。
「そう言うわけだ。大人しく遠征に行くぞ。まぁお前があの戦闘を認めないと言うなら話は別だが」
「……むぅ〜。リア分かってて言ってる」
挑発的な言葉と表情に、言い返したいレヨンだが、返す言葉は何処にもない。と、いうより、人に言われてあの戦闘を無かった事にするのは気に食わないし、何故途中の記憶が抜けてるか原因は分かってるから、無かった事にしたいがしたくない。そこまで往生際は悪くないのだ。
「うんうん。2人の罰は決まりやな。それじゃあみんな解散!」
話に決着がつき、それぞれが睡眠のため部屋に戻り始める。残ってるのはロキと無表情組。
「そんじゃあ今日は寝よか。修復は明日からでええわ。幸い壊れた部屋は今すぐには使わんとこやし、別にええやろ」
「うん……ごめんなさいロキ」
「ええでええで。アイズたんの成長のために犠牲なったのが部屋くらいならまだええねん。ただいきなり脅す様な形で戦闘を仕掛けるのはブーやで」
うん、と返事をしたアイズは自室に戻っていく。かなり疲れたのか足取りは重くみえる。アイズが館内に入るのを見終わるとロキも自室に戻ろうとするが、引っ張られて前に行けない。
「ど、どうしたレヨンたん?何かあるんか?」
「……………て」
「なんて?よう聞こえんわ」
「今日は—————一緒に寝て…」
この一言にロキはにっこりと笑顔でええよ、と返すとレヨンの手を繋ぎ自分の自室に連れ込む。
こうして遂に関わり始めた2人は、戦闘面を知る、と言うとこから始まるのであった。
(ヨッッッッシャァァァァァ!!!レヨンたんと添い寝ゲットォォォォォ!)
今日1番の勝者ロキ。理由、落ち込み甘え状態のレヨンとの添い寝をゲットしたから。敗者、レヨン。理由、アイズにも負け、挙げ句の果てにロキにデレたから。
レヨン「アイズさん引く、わー!」
ロキ「なんやそれ。可愛ええな」
レヨン「胸の前でバッテンにして上を向くポース」
アイズは天然だから本気で言いそうな気がした()
本紹介は次回