戦国†恋姫 if 井伊討鬼絵巻 作:通りすがりのガンダムユーザー
第一節 《仕合》
「例え殿がお認めになってもボクは認めないぞ!」
天人の夫発言にいきりたつ和奏さん。うるさいので遠慮してもらいたいのだが……
「控えよ、和奏。御前であるぞ」
壬月さんがすぐに窘めるしいっかな。
それで下がる和奏さんじゃないってことも知ってるけどね。
「でも
「その件については後にしろ」
「むー……」
「まぁ確かに佐々殿の意見も分かりますよー。雛もそう思いますしー」
「佐々殿。滝川殿の意見に
そんな和奏さんに同調するように雛さん、犬子さんが立ち上がった。ただ……犬子さん無理にしなくてもいいと思いますよ。
「犬子ちゃん、無理して言葉遣いを改めなくても良いですからね?」
「えへへ、ごめんなさーい」
うん、やっぱり犬子さんはこっちだね。
「という訳で、我ら三若は反対の立場ってことでー」
「そうそう!やっぱ雛も犬子も分かってるなー。さすが相棒だ!」
「まぁ、久遠さまがお決めになったことだから、認めるしか無いんじゃなあかなーって雛は思ってるけどね」
軽い……雛さん、それは流石に軽いですよ。
「何軽く言ってんだよ雛ぁ!久遠さまの夫と言えば、政戦領略で尾張にとって重要な位置にあたるんだぞ!それをどこの馬の骨とも分からない奴が、いきなり出てきて夫になるとか、そんなの認められるかー!」
「そうだーそうだー!」
「…というのが家中の意見ですが」
「せっかくだからな。鴻矢、お前はどう思う?」
「へ?」
……客将である僕にそれって聞いていいことなんですか?
「……僕が口出ししていい事じゃないと思いますが」
「いいではないか」
「……僕は反対です。織田殿は織田殿で考えがあるとは存じますが、それでもそのような何も分からずの男を家臣ならまだしも夫にするのは反対ですね」
少し考えて僕の意見を言った。僕としては至極妥当の意見を述べたつもりだ。
「ふむ、まぁそうなるだろうとは思っていたが。……おい和奏」
「はい!」
「どうすればこやつを認める?」
「ボクより強ければ認めてやります!」
即答……でも三河では見慣れた光景ですね。小競り合いの決着はいつも「強い方のいうことを聞けばいい!」とかで……
「え。結局それなの、和奏ぁ〜……」
「まぁ和奏だし」
僕の頭の中で和奏さんは綾那さんと同じ括りにしておこう。
「強ければ、か……ならば簡単だな。剣丞、和奏と立ち合え」
「………」
天人が「えっ」って顔をしてる。
「どうした?やらんのか?」
そこで織田殿と天人はなにやら内緒話を始めた。
(鴻矢くん鴻矢くん)
そんな二人に悟られないように雛さんがコソコソと話しかけてきた。
(あの剣丞って人のことどう思う?)
(……あってまだほんの少しですが……そうですね。あの服装から見るにどこかの国で裕福な暮らしをしていた……と見ていいでしょうね。それにしては体が引き締まっていますが……異邦人という可能性もあると思いますよ)
(やっぱりそんな感じか〜)
(やっぱりとは雛さんもそう思ったんですか?)
(滝川衆の頭領として一応ね)
そこで天人と織田殿の内緒話が終わったのでこちらも話を切り上げた。
「はあ〜……分かった。精一杯やってみるよ」
どうやら天人は織田殿に説得されていたようですね。
まあ、ご愁傷様です。三河武士とまでは行かなくとも織田家中の人たちって結構血の気が多い人がいるので……特に森一家。まだ会ったことはありませんが、血の気の多さでいうと三河武士を超えるとか。いやー、比較された三河武士によりますがあんまり関わり合いにはなりたくないですね。
「……あのー、ここじゃ狭いと思うんだけど」
「なら庭でやりゃいいだろ!」
「いや、庭も広いんだけど、障害物が多すぎて、戦いづらいというか……」
「文句の多い天人様ですね」
「そうだそうだ!もっと言ってやれ鴻矢!」
「や、さすがにそれはどうかと思いますが」
「ならば我の屋敷の庭にすれば良い。……ああ、この際だ。他に立ち合いたい奴が居れば進み出よ」
そこで各々に皆さんが声を上げ始めた。
壬月さんを始め、犬子さん、雛さん、あげくに麦穂さんまで参加すると言い始めた。
「じゃあ、折角なので僕も。僕がどれほどの武士なのか示すいい機会ですし」
まあ、僕は尾張に来てからずっと城内の散策や兵法書などを読んでいたので仕合とかしてなかったから好都合という面もありますが。
「麦穂に鴻矢もか?」
織田殿が少し笑いながらそう言う。
「私は剣丞どののことを認めておりますが、武士として一度お手合わせ願いたく……」
「僕は先程申し上げた通りです。それに田楽狭間の天人がいかような力を持っているか気になりますし」
「ふむ。良い。許す」
「ちょっと久遠さん……?そんな簡単に許されても、実際にやるのは俺なんだけど?」
「なぁにたかが六人だ。何とかせい」
「はぁ……まぁ頑張るけどさぁ……」
「まぁ、その中には三河の赤鬼が混じっているがな」
「赤鬼!?」
「字名ですよ。僕はそんな仰々しい存在じゃありません」
※※※
とにかく結果だけで言おう。
三若の皆さんは天人に負けました。
雛さんに至っては御家流使って負けてましたけどね……
「次は……そうだな。そろそろ嚆矢、お前が行け」
「わかりました」
僕はひよ子さんから刀を受け取り土を踏む。
「刀で良いのか?」
「槍を使うと勝つのが目に見えますので。それに一対一なら刀の方が良いかと」
軽くその場で飛び跳ね具合を確かめる。
……行ける。御家流を使っても大丈夫そうだ。
「次は君?」
「ええ、そうです。僕は井伊万千代直政、通称は鴻矢。松平葵元康様の配下ですが、今は経験を積むために客将としてここにいます。折角なので僕がなぜ《三河の赤鬼》と呼ばれているかご覧にいれましょう」
呼吸を整え体に氣を纏わせる。
僕が作り上げた御家流《赤迅踏破》
呼吸と空気中の氣の両方を操り体内にある氣を活性化させ一時的に神速の如き速さを得る。この際に体に纏った氣が赤く発光し僕の纏う藍色の甲冑が赤く見えることから赤鬼と呼ばれ始めるようになった。
井伊家の御家流は一対多を想定しているので、僕は一対一でも燃費のいいものを作り上げたかった。
それでできた御家流。
「それでは……行きますよ」
「な!」
素早く踏み込み一歩で加速し、刀を抜き払う。
天人はそれを何とか刀でそらした。
「早い……それも御家流?」
「えぇ。一応は。僕が編み出した御家流で《
「ぐっ!」
キン!
刀と刀が小さく音を鳴らす。
雛さんの時は殺気を感じて避けたようですが、僕の赤迅踏破は殺気よりもなによりも早く駆ける御家流。
今は対応出来てもその程度では……
「では、そろそろ準備運動は終わりですかね。体が温まってきました」
「準備運動……嘘だろ……」
「嘘ではありません」
その証拠に僕の速度は先程より格段に上がっている。
「くっ……」
息付く暇を与えず攻め立てる。この速度でもまだいなしますか……なら
「どうした?息が上がったのか?」
僕は加速をやめ赤迅踏破を解除する。
「参った!」
「なっ……あのままいったら勝てただろ!」
「確かに勝てましたが……それでは剣丞さんを殺してしまいそうになるので……今回は仕合であるが故に勝ちを譲りました。これが死合なら僕の勝ちでしたね」
「ほう……貴様なら剣丞の首を取ると思ったのだがな」
「首を!?」
「さすがにそこまではしませんよ。それに剣丞さんの技量を見極めるというのであれば殺す必要とありません」
僕はそう言うと元いた場所に戻った。
僕の後は麦穂さん、壬月さんの順で剣丞さんと戦っていた。
麦穂さんとの仕合は……うん。卑怯な手を使っていたとだけ言っておきます。
壬月さんは五臓六腑を使い剣丞さんを文字通り吹き飛ばした。
いやー圧巻でしたね。剣丞さんが五臓六腑を食らってもご自身の命の別状がないどころか五体満足でいるなんて。
これは認めるしかないですね。
いや、まあ、手合わせはその場の雰囲気に飲まれた行った節はありますが。あの速さを現段階でいなせるなら相当筋がいいと思います。
「鴻矢も良いな?」
「そもそも僕は織田様の家臣ではないので意見するのも何か違うと思いますが。まあ、いいと思いますよ。織田様の夫になる人でなければ三河に連れ帰りたいところです」
「そうか……鴻矢、剣丞の元で学ぶ気はないか?」
「……はい?」