ロキファミリアにコミュ障の少年が居るは間違っているだろうか? 作:モフモフ毛玉
【ロキ・ファミリア】
それは世界の中心と言われる、迷宮都市オラリオの中にあるファミリアの中でもトップクラスの強さと規模を誇るファミリアである。しかしそんなロキ・ファミリアには噂があった。
『ロキ・ファミリアには亡霊がいる』と
その噂はこんな物だ。
夜になるとロキ・ファミリアから見たこともない少年が出て来る。しかも髪も肌も真っ白で生きているようには見えなかった。
夜のダンジョンで一人で歩く子供が居た。しかもモンスター達が子供が通った直後に魂を抜かれたように崩れ落ちた。
夜店を閉めようとしたらいつから居たのか少年が店の前に居た。何かと思って出るとペコペコと頭を下げながら残った商品を指差した。その手にお金を握っており、商品を渡すとお金を置いて走って行った。
など数えるとキリがない。
しかし実態は
「なぁ、ムイたん。まだファミリアのみんなに会うの怖いんか?」
「……うん」
「なんだかんだで長い事ウチや幹部のみんなと居るけど、やっぱり慣れないんか?」
ムイと呼ばれた少年はコクリと頷く。
日の光が少し差すだけの暗い部屋の中、ロキ・ファミリアの主神であるロキは優しく言った。
「そうか…まぁゆっくりいこうな?頑張り過ぎてもいかんし、まだ慣れない事もあるもんな。それに最近は夜に外に出とるやないか、成長したな!」
そう言って嬉しそうに頭を撫でるロキ
「頑張って、買った」
そう言うと林檎を紙袋から取り出してロキに渡す。
「ん、ありがとな。みんなで食べるわ」
大事そうに林檎を受け取るロキ。
「それじゃあ、またな?ちゃんと寝なあかんよ?リヴェリアに前怒られたもんな?」
「……う」
ムイが夜外に出ようと階段を降りようとして足を滑らせ転がり落ち、リヴェリアが血相を変えて飛んで来た時は驚いたなとムイは思い出す。原因が睡眠不足と知るや否やリヴェリアに部屋まで付き添われ、寝るまでずっと見られた事は記憶に新しい。
「……分かった」
「ん、ほなおやすみ」
「……おやすみ…ロキ」
そしてその日の夜、ムイは目を覚まし、すっぽりと体を覆うローブを着込むとゆっくりと扉を開ける。
キョロキョロと周りを見渡し、誰も起きてない事を確認すると階段をゆっくりと音を立てずに降りると玄関の鍵を開けて外へ出る。
再び外から鍵を締め直し、夜のオラリオへと歩き始めた。
そして歩き始めて少しすると酒場が見えてきた。『豊穣の女主人』というオラリオで有名な酒場である。ムイがここに来た目的は簡単な事である。『頑張って商品を注文して食べる』事だ。
ムイは自分が人との関わりが苦手な事を自覚しており、こうして人が少ない時間である夜に外に出てなんとか克服しようと頑張っているのである。
「いらっしゃいませにゃー!」
「……っ!?」
どう入ろうかとオロオロしていると店員である猫人に声をかけられ、酒を飲んでいた冒険者達がなんだと振り返ってムイを見る。
「あ!噂の亡霊じゃねぇか!」
「本当に居たんだな…」
奇異の目で見て来る冒険者達。
「……ぅ、ぅぅ…」
冒険者達の目線に耐えかねたムイは帰ろうと決めると店員である猫人に頭を下げ、振り返って走り出した。
「なんだよ…亡霊って言うから怖いイメージあったけどなんだ、ただの怖がりだったみたいだな!」
「そうだな!亡霊も俺たちの威圧感に耐えかねたみたいだな!はははは!」
ムイを酒の肴にして話をする冒険者達。
そんな彼らの笑い声を聞きながらムイは静かに泣きながら走ってロキ・ファミリアに帰ると、騒音を気にせずに部屋へ戻り布団へと潜ると一晩中泣いた。
余談であるが騒音を聞いて何事!?と出てきたロキがムイが泣く姿を見て『ウチのムイたん泣かしたの誰やぁぁ!』とロキが暴れたが、リヴェリアとアイズに抑え込まれた。