ロキファミリアにコミュ障の少年が居るは間違っているだろうか? 作:モフモフ毛玉
バキバキと音を立てて出て来たのは一匹のゴブリンだった。
ムイの丁度真横に居るゴブリンは、ムイを見てもまるで興味が無いように目線を男達へ向ける。
「ギギ…グギギャァァ!」
そう叫び声をあげて男達へ飛びかかる
「ちっ邪魔すんな雑魚が!」
手の空いていた男の斧で頭をかち割られ、呆気なくゴブリンは死んだ。
またバキバキと音が鳴る。…今度は男達の近くで
またしても生まれたのはゴブリンだった。そのまま男達へ飛びかかり、そして呆気なく殺される。
男達は薄気味悪さを覚えた。
この少女を襲おうとした瞬間に何故、モンスターが産まれているのだ。と
目線を辺りへ向ければ、少し先に真新しい装備に身を包んだ少年が居た。
その少年は髪が白く、肌も色白だ。ダンジョンという過酷な場所に居るにも関わらず、怪我も無く、ただじっと…こちらを琥珀色の目で見ていた。
男の1人が寒気を感じた。
このままではいずれ死んでしまう、と
どうすると男は思考する。
そして一つの結論に辿り着いた。
次にモンスターが出て来た時はこの少女を生贄にして退散しよう、と
男達は小さな声で相談し、そう決めた。
少女は未だ壁に打ち付けられたダメージが抜けず、ろくに動けもしない。これなら簡単にモンスター達の生贄に出来るだろう。
またモンスターが生まれる。
次はコボルトとゴブリンだった。
男達は抵抗しようとする少女を、モンスター達の方へ投げ込む。
しかしモンスターは少女を避けた。
モンスターが冒険者を避けるという事実に驚いたのも束の間、
反応が遅れた男の腕にコボルトの1匹が噛み付く。
痛みに顔を顰めれば、複数のゴブリンが体当たりをして男を倒す。
そのまま餌に群がるアリのように、男はあっという間にモンスターの山に消えた。
生き残った男の1人が叫び声をあげて逃げる。そのままもう1人の男も後を追う。
そのままムイの間を通り抜けて、男2人は仲間を置き去りにして去った。
嫌な音をたてて、時折うめき声やたすけてと声がした。
しかし助けられる存在は居ない。
少女は目の前の惨事に身体が震え動けない。
ムイはその場を動かずに見ていた。
そしてしばらくすれば、モンスター達がゆっくりと離れ始めた。
男は装備がボロボロになり、顔や体は引っ掻き傷や打撲でいっぱいだ。
モンスター達はそのままゾロゾロと男から離れると
うめき声をあげて爆ぜた。
そのまま血は飛び散り、肉が辺りに散乱する。
魔石が血溜まりに落ちたのが、現実であるという事を教えてくれる。
そしてその血溜まりを踏みしめて、ムイはズタボロな男と震える少女へ近付いた。
ーーーーーーーー
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!
仲間を置いて逃げ出した男の心境は悔しさ以外になかった。
何故自分があんな目に遭わなければならない
それもこれもあの少年だ、あの少年が悪いんだ。俺たちの邪魔をしたあの少年が悪いんだ!
男は偶々居合せただけの少年を原因と決め付けた。…実際にはそうなのだが
殺す、殺す、必ず殺してやる!
ここを抜け出して殺してやる!
仲間である男は待ってくれと男を呼ぶ
「うるせぇ!テメェもさっさと走れよ!」
幸いにも男達が居た場所は二層だ、少し登れば出られる。
一層へ登る階段を見つけた。
あぁ、ここを登ればあと少し…
そう思った男は
後ろからのグチャという音に意識を掻き乱された。
なんだと思いチラリと目を向ければ
足を斬られ、腹を貫かれて叫ぶ仲間と
その仲間に剣を突き刺している真っ黒な騎士だった。
その騎士の見た目は異様としか言えない。
暗い場所に居れば分からないと確信出来るほどその鎧や兜は黒く、仲間の返り血を浴びても赤くはならなかった。
顔も覆われており目しか確認する事が出来ない。
そしてその目も紫色に輝いているのみで、中身が人ではないという事が理解出来た。
男は仲間を見捨てて走る。
なんだあの騎士は
ちくしょう、後少しなのに
あと少し、あと少し
そして一層へ続く階段に足を置いた時
男の視界はクルクルと回った。
ーーーーー
「【悔い改めよ】」
そうムイは小さく呟く。
そのままムイは落ちていた少女のカバンに散乱したナイフと魔石を詰めた。
ポーションは割れており、中身はもう地面に染み込んでいた。
そのまま震える少女にさっとカバンを渡す。
未だ震えが止まらない少女はおずおずと受け取った。
そして呻く男を一瞥して、ムイは少女に手を貸した。
少女はおずおずと手を借りて立つとありがとうと礼を言う。
そのままムイは少女にポーションを渡し、確認も無しに背負った。
ひゃっ…!?という声は気にする事もなく、呻く男を置いてきぼりにしてムイはその場を去った。
そしてこの次の日、ムイはロキに呼ばれる事になる