ロキファミリアにコミュ障の少年が居るは間違っているだろうか? 作:モフモフ毛玉
長々とお待たせしてすいません
17層『嘆きの大壁』
階層主ゴライアスが出現するその場所で、とあるファミリア同士が協力関係を結び、ゴライアスを倒す為に入念な準備をした上で足を踏み入れた。
バキバキ…バキバキ…
そんな音と共に、ゴライアスは壁の中から出現した。
雄叫びを上げたゴライアスは、手始めにとその腕を振り上げた。
冒険者達は手筈通りのフォーメーションを組み、迎え撃たんと武器を構えた。
しかし、ゴライアスの腕が振り下ろされる事は無かった。
「オォォ…!?」
「なんだありゃ…!?」
その腕は『見た目が真っ暗』な点を除けばただの人程度の大きさの腕でしかなかった。ゴライアスにとっては少し体を動かせば振り解ける程だ。
しかし、問題はその数の多さと長さだ。
壁から無数と言える程の数であり、更に長さは人のそれではない、例えるならば先端が手の形になっているとても不恰好なロープという具合だ。
その腕は生きてるかのようにゴライアスの振り上げた腕を掴み、足を掴み、首を掴んだ。
冒険者達は動く事すら出来なかった。その腕が自分達に危害を加えるかも知れない、という恐怖心があったからだ。
そのまま腕はゴライアスの頭部を包むように、ワラワラと囲み始めた。ゴライアスは抵抗しようと四肢を動かす。腕は呆気なく千切れるが、まるで予定してあったかのように千切れた先が地面や壁の近くに行けばピタリと張り付き動きを制限し、壁に残された腕は千切れた箇所からまた手を生やして、ゴライアスへと向かう
そうして、ゴライアスは叫び声を上げながら頭部全てを腕に包まれた。
ゴキリ
そんな音と共に、腕に包まれたゴライアスの頭部は首の可動域を超えて曲がった。
そのままズシン…と
「退避ぃぃ!!」
冒険者達は何とか回避するも警戒するように『宙に浮かんだままの首』と『その身体』を交互に見つめる
しかしその身体はピクリとも動かない
その事に安堵した冒険家達は『壁や地面に残っている腕』に警戒しつつ、早くこの階層から抜け出そうと18層へ続く方へと歩き始めた。
すると首を持っていた腕が、興味を無くしたようにパッと消える。
そのまま苦悶の表情のままのゴライアスの首が、降って来た。
「お前ら走れぇぇぇぇ!!!」
冒険者達はギリギリ、ゴライアスの首に潰されて死ぬ。という事を回避した。
しかし落ちたゴライアスの目から、黒くてドロっとしたタールのようなものが溢れ出す
『ソレ』はゴライアスの目だけではなく、口や千切れた首、巨体からもドクドクと血のように湧き出す。
「に、逃げるぞ!こんな所に居てたまるか!!」
そんな1人の声を聞き、我先にと18層へと続く方へと走り出す
しかし、その目前という所で先頭を走っていた冒険者が見えない壁があるかのようにバン!という音と共に後ろに倒れた。
「なんでだよ、なんで進めねぇんだ!」
「それは貴方達を逃してしまうとこちらが困るからです」
その罵倒に対して透き通るような美声が答えた。
冒険者達は反射的に振り返る。
そこには美しく長い銀髪に黄金の瞳、そして絶世と呼べる程の美しさの少女が、薄い外套一つで佇んでいた。外套がはためけば、白い素肌がチラチラと見える。
男性冒険者は興奮により息を荒げて頬を染め、女性冒険者はそんな彼らに侮蔑の目を送る。
「我らが主は贄を求めています。貴方達はそれに選ばれたのです…とても、とても喜ばしい…」
ニコリと少女は笑いながら、パチパチと手を叩く。
すると溢れていた黒いタールのようなモノが意思を持つように冒険者達へと波を起こしながら迫った。
うわぁぁぁぁぁぁ!?
そんな叫び声が、冒険者達の最期の声だった。
冒険者が対抗する間も無く飲み込んだタールのようなモノはゴポゴポと泡を立てて、その場に留まる。
少女はニコニコと笑いながら、まるで指揮者のように指を動かす。
「さぁ起きなさい、骸達。我らが主が貴方達の無念を晴らす機会をお与えになったのです。そして主の為にも、地上へ向かうのです…」
すると、ゴポゴポと音を立てていたタールのようなモノから様々な者達の腕が生えて来る。
『それら』は続々と腕を出し、もがくように空を切る
そして、ズルズルとタールのようなモノから『それら』は這い出て来た。
『オォ…ァァ…』
『コロス…コロス…』
『アイツガ…アノガキガァ…!』
死んだはずのダンジョンのモンスター、またそのモンスターに殺された冒険者。あるいは仲間によって、またあるいは誰かの手によって理不尽に殺された冒険者。それらがタールの中から無尽蔵に溢れ出す。
その肉体は所々腐敗し、武器はボロボロ、正しく『動く死体』と呼べるそれらは怨嗟の声を上げながら少女の言葉を待つようにその場で止まった。
「さぁ、貴方達は今から『死の濁流』となるのです。全てを呑み込み、その全てを
苦虫を噛み潰したような表情になった少女は吐き捨てるようにこう言った。
「我らが主を見放した、神々どもを…殺すのです!」
オォァァァァ…!!!
その少女の一言を皮切りに『死の濁流』は17層から上へ向かう場所へと殺到した。
前にある誰かを潰し、あるいは引き千切り、我先にと『死の濁流』は血肉を撒き散らしなから階段を登って行く
そんな姿を見た少女は、口が裂けそうな程に口角をあげて笑い声を上げる
「あぁ!主よ!今は眠りし我らが主よ!必ず!あの忌々しい神々を殺してみせます!そして、貴方様を必ず…目覚めさせますから…!」
カラカラと笑う少女は笑顔のまま、タールへと沈んだ。
そして少女が沈んだ後、17層には何も残らなかった。
神々がこのダンジョンの異変に気付くのは、この事態が発生した2週間後の事だった。