傭兵日記   作:サマシュ

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あの男の第一印象といえば、決して良い印象とは言えなかっただろう。

ジャベリンと名乗った男は鉄血工造の下級機械のダイナゲートを連れて私の前に現れた。簡単な自己紹介をやったあと、手を差し出してきたがそれを無視。
この任務は私だけでもできる、ということを伝えてやった。
だがHK416の派生銃であるHK417を装備していることは評価してやろう。

後でこの男のダイナゲートが私の足元にすり寄ってきたため、発砲。決して私が驚いて気が動転してしまったからではない。

私がこの男の隣で地図を書いている時には、あろうことか口出しをしてきた。もう少し簡易でもいいなどとのたまってきたが、正確であることに何ら問題はないだろう。

翌日、彼は戦場は初めてかなんて言ってきた。
私はこいつを今すぐ撃ち殺そうかと思ったものの、それを踏みとどまり、素直にそうだと認めた。
落ち着け、私は飽くまでも任務を完璧にこなすために今此処にいるのだ。目の前の人間に構っている暇なんてない。

だが目の前の男は隣のダイナゲートに何かを伝え、そのまま私へ講釈を垂れてきた。ふざけているのか?と最初は思ったものの、あまりに真面目な顔で話を始めたから大人しく聞くことにした。

正直に言うと、彼は私が知り得なかったことをしっかりと教えてくれた。ここで初めて私の未熟さが分かったと言えるのだろうか?気の急いていた私を客観的な立場で見直すことが出来たのだろう。
彼が教えてくれたことは生き残る上での大事なことやもしもの時の有効な手立てなど、とにかく生存率を上げる方法ばかりであった。彼曰く、生き残ることが任務を遂行する上で大切なことらしい。



…………この出来事によって、少しずつだが、私はジャベリンという男を認め始めてきたのだろう。








そのに

49日目 雨

 

ジェロニモの態度が軟化したのは何故だろうか。俺の講義が身に染みたとしたらそれは万々歳だ。

というか寒い。簡易テントで休憩をしながら書いているが、くしゃみがよく出る。少し雨に晒され過ぎたようだ。体が冷えてる。取り急ぎ体を暖めるために紅茶を作ってる。スピア程ではないんだが俺だってそれなりのものは作れるからな。ついでにこの前クライアントから貰った生姜と蜂蜜を持ってきたのでそれを入れてみよう。ジンジャーティーだ。

丁度ジェロニモが帰って来た。彼女にジンジャーティーを淹れてやる。

 

 

結論から言うと、結構好評だった。人形とは言っても体は冷えるようで、何杯か彼女は飲んだ。彼女が茶葉や蜂蜜の入手経路を聞いてきたので富裕層、しかも農園を持ってるクライアントから、任務の報酬ついでに貰ったと言っておいた。

彼女は「私もあなたの部隊に入ってみようかしら」なんて言ってたが、やめておけと忠告した。うちの部隊案外激務だし。

そろそろ休憩をやめて、外に出るとしよう。

彼女の無駄に精密な地図を持ってな。見易いのが逆に腹立たしい。

 

 

 

 

 

 

 

50日目 晴

 

俺が日記を始めてから記念すべき50日目には鉛弾が飛び交った。……原因を説明しよう。

監視地点を変更しようとジェロニモと移動していたら、突然襲われた。幸い近くに大きな岩があったため、すぐに隠れることができたが身動きが出来なくなった。一先ずジェロニモとどうするか考えていた時に、向こうから「抵抗せずに金目のものを出せ」だの「女を置いていけば見逃す」だの三下悪役よろしく言ってきたので、お返しにちょっと身を乗り出して棒立ちで得意気にしてた奴を撃ち殺したら銃撃戦に発展した、ということだ。

銃撃戦の間、ジェロニモが冷ややかな目でこちらを見てきたが無視。まずは生き残るのが優先なんだよ。

とはいえ多勢に無勢もいいところで次第に劣勢になっていく。ポチも弾切れ起こして大変だった。

 

ただ、捨てる神あれば拾う神ありなんて言葉があるように、俺たちは窮地を救われた。

相手方は多いしさあどうしようなんて思いながらリロードしていると、急に銃声が聞こえなくなったのだ。これはおかしいと注意深く岩の向こうを覗いてみたら、メイド姿の女性が佇んでいた。

 

一瞬頭の中がハテナで一杯になった。反射的に隣のジェロニモを見ると、彼女も同じように訳がわからないというような顔をしていた。荒野に佇むメイド服の女性なんてシュール以外の何物でもない。

 

声をかけようかどうか迷っていると、ポチが突然そのメイド服の女性へ近付いていったため、仕方なく彼女へコンタクトをとった。近寄るポチに気付いた彼女はそのまま俺たちに気付く。すぐさま銃を向けてこないあたり、敵対の意思は無さそうだった。

一先ずは自分達を助けてくれたことに感謝の意を伝え、そして何故こんなところに居るのか聞いてみた。

 

 

……なんと彼女は同業者だった。しかも戦術人形だ。その時俺はジェロニモに目配せをしたが、首を振る。どうやら彼女は鉄血工造製でしかもハイエンドモデルなのだろう。

彼女は俺たちにとりあえずは安全な場所へ行こうと提案してきたので、それに従うこととした。移動中はずっと警戒してな。

 

 

 

 

 

 

 

51日目 曇

 

メイド服の女性の拠点で色々話を聞いた。彼女は代理人(エージェント)という名前で、こちらと同じくこの空白地帯で察知された不穏な動きを確認するために別のクライアントから派遣されてきたらしい。何も珍しい話でもないな。仕事場が被ることはよくある。

 

ただその後の彼女の言葉には驚かされた。なんて言ったと思う?

「一緒に協力しませんか」

だなんて言われたんだよ。もちろん丁重にお断りした。メリットは十分に有るんだがいかんせん信用に足らない。助けてくれた恩は感じているがそれとこれとは別。その旨を彼女に伝えたら渋々、といった風に了承した。彼女の様子を見て、人形にしてはえらい人間味のあるやつだなぁと思ったものの、今まで出会った戦術人形たちも結構人間臭いところはあったからここに書き記すだけに留めておく。丁度隣の戦術人形ちゃんも人間味があるしな。クールそうに見えて意外と表情がコロコロ変わる。

 

そういやなんでこんなに人間に近いんだろうな、今時のやつってのは。隣を歩いてるジェロニモに聞いてみたらそれは疑似感情モジュールなるものから作られるらしい。はぇーすっごいなぁなんて呟いてたら彼女が何故か得意気な顔をしていた。

 

代理人と別れた後は予定していた地点まで向かい、到着したらキャンプを設営してまた暫く監視活動を続けた。早く原因を突き止めて帰りたい。

 

 

 

 

 

 

52日目 小雨

 

いつも通り監視を続けていたら、武装集団が俺たちの拠点の近くを移動していた。なんで徒歩なのかは謎。

気配を殺して聞き耳をたててみると、どうやら輸送車両の襲撃を計画しているらしい。不穏な動きってのはこれなのだろうか?

とりあえずはポチに尾行をさせて、ジェロニモに連絡をした。

 

ジェロニモがこちらに到着次第、追跡を開始するとしよう。

 

 

 

 

 

 

53日目 曇

 

集団を追跡していて分かったことといえば、彼らが不穏な動きの正体である可能性が高いということだ。そしてこの前の三下悪役の仲間と思われる。あとジェロニモが優秀であることも判明した。彼女、結構遠いところでもある程度は会話が聞こえるらしく、そのお陰で調査が捗った。

纏めてみると、彼らは俺が参加した人質救出作戦で交戦したテロリストたちの残党で、ここで力を蓄えるべく仲間集めをしたり輸送車両を襲ったりしていた。また俺たちが来たことを認識しており(奴ら俺のことを「黄昏の亡霊」なんて呼んでた。なんか嬉しい)俺たちを抹殺すべく戦力を増強していると、なかなか有益な情報が出てきた。

ポチも結構情報を集めていたようで、俺たちの拠点からおおよそ1km先にその武装集団の拠点があり、規模が大きく自立人形も稼働しているらしい。

 

これは不味いことになってきた。すぐにグリフィンと会社に連絡をしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

54にちめ あめ

 

奴らおれたちをしゅうげきしてきた。

今からにげる。

 




ジャベリンたちの運命とは!!
とりあえずその3で締める予定です。

というか代理人いいですよね。私好きなんですよ。スカートたくしあげて武装を見せつけるところとかちらりと見える下着とかガーターとか。
あの人には後々何回か登場してもらおうかと思っています。俺の妄想の犠牲者となってもらう。

ちょっとプライベートなお話になりますが、作者が自動車学校の予定を幾ばくかぶちこんでたりするので、更新が数日おきになりそうです。

なんにせよ更新を楽しみに待っていただけると幸いです。あと感想とか高評価とか……ください。(小声)

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