さて保育園警備任務、ジャベリンくんは仕事帰りに一人の少女と出会いました。さてさて彼女の正体とは……?
321日目 晴
仕事帰りの公園にて、一人の少女と出会った。というよりかは声を掛けられたといった方が正しいだろう。ポチと多分胃がやられてそうなスピアへの労いの品をどうするかについて話していたら、ひょっこりと彼女が目の前に現れたのである。
少女の外見は、12歳から15歳ぐらいで、長い黒髪にこれまた黒いワンピース、極めつけに肌が人形のように白かった。それでいて、鋭い目付き……というよりは見透かしたような目か?
とにかく余り見つめられたくない目である。そんな少女だった。
彼女、出会って数秒で俺の名前を口に出してきたもんだから警戒してしまったが、それは杞憂に終わった。どうやら彼女は大家さんの娘さんらしい。今時珍しくあのアパートに入居してきた俺の事が気になったそうだ。
どれだけ閑古鳥が鳴いてるんだあそこのアパート……。
この少女とは軽く自己紹介を終わらせた後、すぐに帰っていった。……名前が少々覚えにくかったので忘れてしまった。
確か……サムニム……だったか?
しかし、あの少女と話してる間、ポチが珍しく黙りこくってた。一体何だったのだろうか、まるで誰かに静かにさせられたみたいな……ポチにその事を聞いてもただ言葉を濁すばかりだった。
なーんか怖いなぁ……。
322日目 曇
仕事帰り、またあの少女と出会った。
この子、俺と出会うや否や突然
「ちょっと絵本を読んでくださらない?」
とか言ってきて絵本を渡して来たんだ。思わずビックリしたよ。まぁ、その時公園のベンチで何となく買ったチョコミントフレーバーの電子煙草を吹かしてたぐらいには暇だったから何の問題もなかったのだけれど。因みにこの電子煙草、ニコチン、タールゼロのカフェインマシマシの電子煙草だ。目がギンギラギンになる。
それは関係ないとして、彼女が持ってきた絵本は、円卓の騎士。大昔に実在したとされるアーサー王を主人公とした物語だ。聖剣エクスカリバーを片手に悪党を倒していく、まぁテンプレートの騎士道物語かな?
なんでこんな渋いもの読ませてきたのだろう。こっちも読んでて楽しかったからいいけれども。
それにしてもこの子、随分と辛辣である。ランスロットと愛し合ったグィネヴィアに怒ったアーサー王が軍を差し向けたお話で、彼女はアーサー王の事を「なんて魅力のない男」だと評した。戦いばかりに明け暮れて女のことは一つも見ていないとか何とか……辛辣というより理想主義、ロマンチスト?
まぁいいか。でもそう言う割には機嫌良く朗読に耳を傾けてくれるし、中々楽しかった。後で理由を聞いてみれば、余り他人に読んでもらったことが無かったらしい。
そうか、そうでもなきゃ絵本なんて渡してこないか。それに加えて、あんな物欲しそうな顔は反則すぎる。俺はあぁいうのに弱いんだ。現にG11やらSAAやら、あの子達にも色々買ってあげた事が何度かあるし。
……たまにはこういうのも悪くないな。
323日目 曇
保育園で読み聞かせをやらせてもらった。結果は割と好評。でも何故か居合わせていた園長から、筋は良いが荒が目立つとか辛口の評価をいただいてしまった。仕事ほっぽってないで働けと言わない辺り優しさを感じる。
そんな優しさを噛み締めながら今日の警備を終わらせて、ポチと他のダイナゲートについて話しながら帰路へとついた。今回も問題なし。まだ暫くは平和で有って欲しいもんである。
ポチがダイナゲートを統率出来るのかどうかで議論がヒートアップしていたところで、またあの少女、サムニムと出会った。彼女の手には白雪姫の絵本。俺を見つけるやいなや読んでほしいとせがんできた。
俺は二つ返事で承諾して、ベンチで右にポチ左にサムニムという形で絵本を読んであげた。
絵本を読んだ後は、このまま解散ということになったが、この時彼女へ一緒に帰らないかと提案すると、用事が有るから少し難しいとだけ返された。
なら仕方ないか。そう心のなかで諦めながらまたポチと帰る。またあの子と明日会ってしまったりするのだろうか、ちょっと期待を胸に膨らませながらもポチと話していたら、ふとポチがあの少女の事をもう少し警戒してほしいなんて言ってきた。
俺はそれに対して問題ない、何とかやるさと答えたのだが、ポチは何だか不服そうだったので、腹いせに抱き上げてこれでもかと撫でてやった。
大丈夫さ、きっと。
324日目 晴
トンプソンとまた出会った。今日は任務帰りのようで、SAAはお留守番。
その代わりなのか、彼女が率いる部隊に所属する『イングラム』という戦術人形が着いていた。
……イングラム、イングラムかぁ……ユノちゃんとこのイングラムは元気にしてっかなぁ……間違ってもトライデントのやつ食べようと未だに狙ってなんかないよなぁ……?
そういう心配をしながら公園でちょっとした世間話。どうやらトンプソンはこの前保育園を襲撃した人権団体の居場所を捜査しているらしい。今はその仕事途中のようだ。ここいらで良く不審者の目撃情報があるそうで、それをアテにしつつ怪しい奴を付け回したりしてるとかなんとか。
……これもしかしなくても俺じゃなかろうか。という考えが脳裏を過って口から出かかったものの、何とかそれを抑えることが出来た。今の俺は不審者じゃないぞ。絶対に。
まぁとにかく、トンプソン達は忙しいのでイングラムに追っ掛けられてるポチを助けつつ別れることにした。
そういえば、今日はサムニムちゃんと会えなかったな。まぁ彼女も学校とかそういうの有るんだろうて……。
325日目 曇
圧倒的胸囲の暴力。俺は今日それに晒されていた。今回は元『イサカ M37』と元『SPAS-12』の自律人形が担当する組にお邪魔したのだが、まぁ酷い。園児達が何の躊躇いもなく先生達に突撃するもん。まぁバルンバルンと……俺は足早に去ろうとしたら先生達に捕まってお歌のお付き合いをされた。皆元気だなー……本当になー……俺の性癖が歪むわ。何だってんだ。
これは不味いと急いでSAAとかG11の写真を見て精神バランスを保たなければ……なんでこの写真を持ってるかって?
俺が撮ったんだよ。記念撮影だ。G11は戦術人形になって俺と始めて出会った時に、SAAはブートキャンプのとき何となくトンプソンと一緒に並んで。子供は可愛いよ本当に……G11は何処か大人びているがそれもまた子供らしさよ。
何とかお胸の暴風雨を切り抜けてまた警備任務を再開すれば、一人の不審者が。勿論捕まえた。リフィトーフェンだった。UMP45の銃床で殴っておいた。
何でコイツが居るんだよ!!!!!!!!!!!!
「夢を見ながら、私は貴方と過ごしたい」
もし私が本を作るなら、そんな台詞を書くだろう。
だけれども、我ながらバカらしいと思ってしまった。変な感じだ。
私はビルの屋上で夜景を眺めながら手元にある絵本を読み進めた。絵本の題名は『ラプンツェル』。魔女に塔へ囚われた姫がとある王子と逢瀬を重ねていくお話だった。私はこの話をありきたりのように感じながら読んでいる。
とはいえ……もしこのビルがその塔だとしたら、私はそのお姫様で、逢瀬を重ねるのは一体誰なのだろうか。もしかしたらジャベリンという男なのかもしれない。
この話は、終盤で王子が魔女によって盲目にされて世界をさ迷うという展開がある。結局はお姫様と出会うのだが、まぁある意味救いもないものだ。
さて、ジャベリンは何時になったら私の正体に気が付くのだろうか。どんな驚き方をしてくれるのだろうか、私は楽しみだ。おとうさ……リフィトーフェンはジャベリンのことを面白い男だと言った。早く、私を楽しませてほしいものだ。
ドーモ、サマシュです。ジャベリンくんの絵を描いてたら気力が抜けてました。でも頑張ってます。
さて次回はまたのんびりとやる予定です(未定)
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