傭兵日記   作:サマシュ

104 / 131
リフィトーフェンと出会ったジャベリンくん。
出会って早速殴り倒して捕縛しました。はてさてリフィトーフェンがやって来た理由とは……。


任務の完遂は突然に。

326日目 晴

 

リフィトーフェンという名の不審者を確保。こいつをグリフィンに引き渡そうとしたら突然、

「君の義眼には爆弾が仕込んである。ポチにもだ」

とかこの男ならやりかねないような台詞を吐いて来たのでそれを断念した。流石に怖いわ。

それにしても、こいつが来たということは確実に厄ネタを持ってこられた事と同義なので、何の用なのか尋ねてみる。すると、リフィトーフェンはちょっと困ったような顔をして、とある人形を探していると言ってきた。

俺がどんな人形か聞くと、彼はさらりとその探してる人形が鉄血のハイエンドモデルということ教えてくれた。やっぱりこいつが厄ネタ持ってきやがった。

リフィトーフェンはそれに加えてそのハイエンドモデルは俺が鉄血工造で見た、あの制御装置のような機械を守る役割を持っているらしい。

一応ハイエンドモデルの名前を聞いてみると、『夢想家(ドリーマー)』というらしい。ドリーマーは蝶事件以降に作られたハイエンドモデルで、彼女の他にも『裁判官(ジャッジ)』というハイエンドモデルも居るらしい。

どうしてリフィトーフェンがこの二体のハイエンドモデルを知っているのかというと、どうやらドリーマーもジャッジもリフィトーフェンが設計図を作成したかららしい。

俺は本気で驚いた。こいつ、窓際社員じゃなかったのか? とか思った。

俺が驚いていると、その思考を見透かしてなのか、リフィトーフェンは、

「リコリスに頼まれてやったんだ。“お前、技術ある割にはサボってるからたまには働け”とな。あの時私はポチのAIを作るのに忙しかったのに酷い男だった……」

とか朗らかな笑顔で言われた。もしかしなくても、そのドリーマーやらジャッジはリフィトーフェンの片手間で作られたのだろうか……だとしたらやるせないな。

まだ見ぬハイエンドモデル達を気の毒に思いながら、今回一番聞きたかったこと、彼があの保育園に現れたのか尋ねてみた。

 

どうやらドリーマーを探してのことらしい。それほどまでに幼い子供だったりするのだろうか。だとしたらリフィトーフェンという男はただの変態と言うことが判明してしまうな。おぉ怖い。

 

まぁその直後リフィトーフェンが唐突に子供の身体というのは実験に使いやすいぞ、とか至極真面目な顔で言いやがったんですけどね。口に含んでた紅茶吹いたわ。

何こいつ怖いこと言ってんの……いや本当に怖……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

327日目 晴

 

朝起きたらリフィトーフェンは居なくなっていた。しかもよりにもよって俺の楽しみだった高級なお菓子も持ち出してやがった。今度会ったらハグをすると見せかけてラリアット食らわせるとしよう。

 

しかし今日も暇な警備なものだ。不審者は見つからず、ポチも心無しか気が抜けているように見えた。

今は外で遊ぶ園児達を眺めながらこの日記を書いている。改めてこの保育園のグラウンドを見ると、遊具が沢山あった。ブランコやら滑り台やら、はたまた芝生の敷かれた山に大きな土管を入れてトンネルのようにしているものと、沢山ある。流石富裕層の子供が通っているだけはあるぞこれは。でも安全管理は大丈夫なのだろうか?

いや、人形達がちゃんと見てるからまだ大丈夫……なのか?

まぁ、深く考えすぎるのも良くないか。俺もこうやってのんびり出来てるってことはそれだけ安全だっていうことが証明されてるのさ。

 

おっと、園児達に呼ばれた。キリも良いしここで筆を置くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

328日目 曇

 

トンプソンから人権団体の拠点を摘発したとの連絡があった。どうやらその拠点、保育園の近くだったらしい。だから外がちょっと騒がしかったのか。

因みに俺はその時屋内で園児たちと一緒に粘土をこねて猫と形容して良いのかどうかわからない代物を作っていた。この猫、園児達に怖がられてしまった。眼力が凄いとかなんとか……オスカーのつもりで作ったんだけどな……。

 

しかし、拠点が摘発されたってことは俺の仕事も終わりか。たった2週間ほどしかここで任務を遂行してないが、色んな出来事が有りすぎた。謎の少女しかりリフィトーフェンしかり……。

結局リフィトーフェンはハイエンドモデルを見つけたのだろうか。出来るならさっさと見つけてどうにかこうにか無力化して欲しいもんだ。どうせアイツのプログラムの影響受けてるんだし……。

 

ま、面倒ごとにならないことを祈るばっかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

329日目 晴

 

保育園へ到着してすぐに園長に呼ばれた。何事かと思えば、ただ単に報酬の支払いをするだけだったし、その報酬が中々の量だったよ。具体的に言えばこの頃欲しかったキャットタワーが沢山買えるぐらい。あとは武器庫から支給される給料数ヵ月分。

普通に振り込みで良かったのに……とか思ってたら、保育士に興味無いかとスカウトに近い事を聞かれた。無論、断った。

もし俺が所帯とか持ってたら迷っただろうが、それ以前に傭兵稼業は好きだからな。危険が多い分発見やら出会いやら沢山あるし。とはいってもビジネスライクだけど。

 

園長は結構残念そうな顔をしていたが、仕方ない。人形で事足りてるのならそれでいいだろうに。

でも盛大にお別れ会されたのは卑怯だった。ちょっと思い止まったし。なんとか踏ん張ったけど。

 

さて、俺は晴れて任務を完遂出来た訳だが……まぁ一先ずあのアパートから出るのは明後日だな。明日は軽くここいらをバイクで走り回ってみよう。何だかんだ言ってグリフィン本社が管理している区域では俺の家付近ぐらいしか彷徨いてなかったりするから気になってたんだ。

面白いものがないか探してみるとしよう。

 







そろそろ頃合いだろうか。私は公園のベンチで絵本を読みながらそう感じ取った。
リフィトーフェンも私を探している。ましてやそれ以上に面白……厄介な存在も来ていた。十中八九ジャベリンが目的だろう。

「おーい、サムニムー」

ふと、仕事終わりなのか、少し疲れを孕んだ声色のジャベリンが私に声を掛けてきた。私は立ち上がり、すぐに彼へと駆け寄る。

「お疲れ様、ジャベリン!今日はどんなお話を聞かせてくれるの?」

「お前が持ってるその絵本を読むだけだよ。なぁ、ポチ」

≪えっ……あぁはい≫

何の躊躇いもなく座る彼とちょっとたじろいだダイナゲート、ポチ。このダイナゲートは私の正体をすぐに見破ったが、即座に私が上位権限で黙っておくようにしておいた。バレたらつまらないもの。

「えーと、今日の絵本は……赤ずきんか」

絵本を朗読しはじめるジャベリン。私は目を閉じてその声に耳を傾けた。

あぁ、それにしても楽しみだ。もしもこの男に執着しているあのメイドがこれを見たらどうなるのだろうか。楽しみで楽しみで仕方がない。あのメイドは私が流した情報を基にそろそろこの区域にやって来るのだろう。この男へ会いに。

あまりの愉悦感に私は心が踊る。足が自然と振り子のように振れ出した。

ジャベリン、早く私を楽しませて欲しい。一抹の夢が消え去る前に。






▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。