傭兵日記   作:サマシュ

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新たなる章へ突入しました。
ジャベリンくん、君は一体どうするのかね……。


傭兵は進む。
傭兵、事情聴取だってよ。


 

 

 

331日目 天気不明

 

冷えた硬いベッドの上で目が覚めた。

始めは何処だここと少し焦ったが、そういえば昨日グリフィンの治安維持部隊にグリフィン本部の独房に連れていかれた事を思い出した。

あの時は大変だったな……急に銃を突き付けられるわ直ぐに拘束されるわ……ボディチェックも入ったが幸いにもこの日記は取られることは無かったので良かった。ポチは念のためと別室へ送られてしまったが。

……ポチは大丈夫だろうか。ダイナゲートだからって変なことされてなきゃいいんだけれども……まぁ、連れていったのがトンプソンだったので問題は無さそうだったけれど。

さて、俺はこのままどうなるのだろうか。考えられるのは事情聴取だとは思うが、もしかしたら一時的な保護かもしれないし……どちらにせよ暫くはこの硬いベッドと鉄格子の世話になりそうだ。

 

しかし……アイツに義眼が潰された。あの夜、あの時…不味いな、あまり思い出さないでおこう。

俺の義眼が使い物にならなくなった以上、ペルシカリアの所に行かなきゃならない。そこまで急な事では無いにせよ、片目が見えないのは少々不便だ。ここから解放され次第、連絡を入れて向かうとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

332日目 晴

 

まさか昨日から朝までぶっ通しで根掘り葉掘り色々話す羽目になるとは思いもしなかった。

こんな事態になった理由として、鉄血ハイエンドモデルが目撃された上にグリフィンの管理地区全域で指名手配されているリフィトーフェン“が”通報したからである。ご丁寧に挑発もしたらしい。何考えてんだか。

それは兎も角、いざ大仰 (それでも鉄血ハイエンドモデル2体相手にはまだ足りないようなレベルだろうが) な部隊編成で現場に到着したら、そこは既にもぬけの殻で一人の男とダイナゲートがぽつんと佇んでいただけ。そりゃ聞きたくなるな。グリフィンの警備体制を揺るがす事態だ。鉄血ハイエンドモデルに侵入されるわ指名手配の男には逃げられるわで散々だろうて。

しかし、少しでも尻尾を掴もうと躍起になるのはいいんだけど……悲しいかな、俺は何も知らない。俺が出来たのは多少のぼやかしをしながら状況をこと細やかに話すことだけだった。

尋問官もガッカリだったろうに。何にせよ、俺は無実で多少の監視期間を設けてからの解放である。一応武器庫やら取引先には事情を伝えてあるようだ。良かった。

取り敢えず、今日はもう寝るとしよう。色々有りすぎて疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

333日目 雨

 

変な夢を見た。代理人と暮らす夢だ。不思議と恐怖を感じることもなく、寧ろ安心感さえ感じられた夢だった。夢の中の彼女の姿はボヤけていて、普通なら誰なのかわからない筈なのに、それでも代理人と直感出来たのである。

夢の中での俺は小さな子供で、何をするにも大変そうだった。そんな俺に対して代理人は仕方なさそうに俺を助けてくれていた。これでもかという慈愛を以て。

 

……ここまで書いてて思うが、もしかしなくてもあの時代理人が浮かべていた怯えているとも受け取れる表情を見たことに引っ張られていてはなかろうか。

我ながら馬鹿らしい事が起きてるもんだ。少なくとも、俺はアイツに特別な思い入れはない。あの時彼女の浮かべた表情がよほど衝撃的なだけだったのだろう。

俺の記憶……といっても16歳からの記憶しかないが、その記憶の中には代理人と類似した存在なんてお嬢のとこで仕えてるローゼという民間人形……今は戦術人形か。そいつ位しか居ない。

いや、待てよ? 16歳以前の記憶だとどうなるんだろうか? 人間、何かしらの衝撃的な出来事は案外覚えてて、ふとした拍子にその記憶が呼び覚まされることがあると聞いた。もしかしたらそのような事が俺に起きたからかもしれない。

 

いや、あまり考え過ぎるのも駄目だな。余計な邪推してしまうから、ここで筆を止めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

334日目 雨

 

監視期間……といっても案外緩いもので、外出する旨を伝えれば監視として一人付くだけで社内限定ながら歩き回る事は可能であった。まぁその監視役がスプリングフィールドという戦術人形だったのが運のツキだが。

この戦術人形、トンプソンと同僚であるのと同時に……まぁ、なんだ、我が槍部隊副隊長スピアとも仲が良い人形である。たまにお茶に誘うんだとか。アイツは攻められるのに弱いらしい。ちょっとつついてやると可愛い反応をするようだ。

意外な一面である。スピアは結構遊ぶ男だ。それ故女関係なら能動的にも受動的にも対応出来る男だと思ってた。いや、単純に彼女を恐れているのかもしれないが。

 

閑話休題。

 

彼女、結構人を誘導するのが上手いもので、話している内に、気が付けばカフェに誘導され気が付けばコーヒーを飲み気が付けばポチとマフィン片手に独房へ戻されていた。油断していた俺が悪いが、幾らなんでも話術が達者過ぎやしないか? 戦術人形でもここまで話の上手い奴なんて見たこともないぞ。

 

とはいえポチが戻ってきたのでそれは水に流すとしよう。久しぶりの再会なんだし。

一応ポチに異常がないかどうか調べても特に問題は無かった。

……久々にポチの体を磨いてやるかな。

 

 

 

 

 







スプリングフィールドという戦術人形。スピアくんを狙っているようです。詳細はまた描くであろう槍部隊副隊長の受難にて。

感想、及び評価はブーストになってくれるので、是非ともよろしくお願いします。それでは!!

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