傭兵日記   作:サマシュ

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振って湧いたネタです。
怪文書入りまーす!ふるい落とされるなよ!!!



武器庫の日常―とある事務員の直談判―

 

「社長おおおおおぉおおおおおお!!!!!!この前えええええええええ!!!鎚部隊のおおおおおぉおおおおおお!!!!!!戦力うううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!増強おおおおおぉおおおおおお!!!!!!!するって言ってましたねえええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!本当ですかああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!もしよかったらああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!KSGっていう戦術人形とかああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!MG4っていう戦術人形とかどうですかああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!?!!!??!!???!!??」

 

 

「うるさいぞ」

 

 武器庫のある日の昼下がり、社長の執務室にて魂の叫びが響いた。何事かと事務員やら隊員やらがぞろぞろと集まってきたが、社長の机に身を乗り出している一人の事務員を一目見て、あぁついに爆発したか。とだけ思った後に各々の業務へと戻っていった。

 

「どうしてですか!?!!!??!!???!!??!?!!!??!!???!!??そんな事したらこの胸中に募る熱い想いは!?!!!??!!???!!??!?!!!??!!???!!??何処で発散すれば!?!!!??!!???!!??!?!!!??!!???!!??」

 

「今グリフィンの社内報読んでるんだ。静かにしてくれ、マカロヴァくん」

 

「それにKSGとMG4は載ってますか!?!!!??!!???!!??!?!!!??!!???!!??!?!!!??!!???!!??!?!!!??!!???!!??」

 

「ない」

 

「オォン…」

 

 片耳を指で塞いでグリフィンの社内報を読む社長の無慈悲な宣言と共にみるみるうちに萎んだその事務員の名は、『エーリカ・マカロヴァ』。

 少し色の暗い金髪を携えた二十代前半の女性。最近ウィスキーの味と、塩辛いおつまみの美味さが分かり始めた武器庫の事務職である。仕事はそつなくこなし、可もなく不可もなく。武器庫の隊員達にはありがたられている事務員だ。

 

「マカロヴァくん、確かに戦力増強はこの前の会議で暫定的に決めはした。だがな、予算も何の人形を追加するのも未定だ。それ以前の話としてこの戦力増強の話はたまたま去年の予算が残ったから持ち上がった話だ。もしかしたらこの話は無しになるかもしれない案件なんだぞ? 少し落ち着いてくれ」

 

「そうですか……ウォォン…」

 

「そこまで落ち込むかマカロヴァくん……一応理由を話してくれ」

 

 社長の目の前であからさまに萎んでいる彼女の仕事ぶりは、評価が高くこの前武器庫が雀の涙ながらも出しているボーナスを更に上乗せして貰えたほどだ。

 そんな彼女は執務室全体を湿っぽくなるようなレベルのオーラを放ちつつ、突っ伏している。社長はあまりの変わりように見るに見かねて何故そこまで息巻いているのか、理由を聞くことにした。

 

「いいですよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「静かに話してくれ」

 

 エーリカはその言葉を待ってましたと言わんばかりの元気はつらつな声を張り上げる。

 あぁ、一つ付け加えておこう。 

 

「えーとですね、何から話したものか……あっ、そうだ始めにその子達の魅力について話しましょう。まずはKSGっていう戦術人形なんですけどね、彼女はショットガンの戦術人形でとてもとても高性能な戦術人形でして彼女の性格は真面目で実直、とても素直な“THE 仕事人”というようなものでして、社長が欲しいであろう仕事に忠実な人材というお眼鏡に掛かった戦術人形だと思われます。でもやはり多少のジョークも分かってくれるでしょう。社長はたまによく分からない冗談を言いますから適任ですよ。え?仕事を覚えるのが遅いかもしれない?それは丁度良かった、彼女はI.O.P.屈指の高性能な電脳をもっております。故に…というよりか人形は基本皆仕事なんて覚えるのは直ぐですよ大丈夫ですご安心ください。それとKSGという戦術人形はトレーニングも好んでやるそうで、隊員達とも直ぐに仲良くなってくれるはずです。さて次はMG4という戦術人形の魅力について話していきますが、彼女もKSGと同じく高性能な電脳を持ち合わせている戦術人形なので仕事面に関しては何の文句もありません。彼女はLMGの戦術人形でして、真面目で控えめ、悪くいえば卑屈ですが其処のところは武器庫の職員達は気にすることはないので問題ないでしょう。というかそんなハブられる事があったら私が守ります。絶対に。いやしかし彼女は本当に良い人形ですよ、MG4もI.O.P.が誇る高性能な戦術人形ですからね。絶対にがっかりさせる様なことはありませんからね。そして彼女はLMG、つまり防衛戦であっても役に立ってくれる戦術人形です。是非ともよろしくお願いします。あぁそうそう、LMGとSGの戦術人形って相性が良いらしいですよ?何だかよく分かりませんが性能が上がるそうです。おや、気付きましたね?そうですその通りですつまりあの二人は互いに補い合える!後方でMG4が支援をしつつKSGが肉薄、何という素晴らしさ!社長も分かってくれるはずですもの。防衛戦では必ず役に立ちます断言出来ます信じてください。あ!!!言い忘れていましたね!!!この二人の一番のチャーミングポイント何ですけどね、何かと言いますとね、顔 が 良 い 。最早国宝レベル。二人とも白に近い銀髪ですがそれに映えるほどきめ細やかな肌で凛とした瞳に程よく膨らんでいる唇ですよ!まるでその姿は絵本から出てきたお姫様のようでもう尊いレベルですからね、もしそんな二人が一緒に並んでご飯とか食べてたり寝てたりしてたらもう死にますよ私。この世に未練なんて無くなりますよ。しこたま酒飲んで急性アルコール中毒で GO TO HEAVEN ですからねそれほどまでにあの二人は最高なんですよ是非とも社長!!鎚部隊の為にも!!お願いします!!!ご検討を!!!」

 

「何だって?」

 

 彼女は、俗に言う“オタク”というのに属する人間である。好きなものにはとことん嵌まり込む典型的なオタクなのである。

 現にさっき怪文書もかくやというような語りを披露して社長が聞き直すような事態を引き起こした。

 エーリカは社長のその台詞をそのまま受け取ったのか、またもや顔を輝かせた。

 

「もう一度話したほうが良いんですね!?じゃあ遠慮なくはーーーーー」

 

「いやいい分かった。君がそこまで熱意を持っているのはよーく分かった。だからもう話さなくていい」

 

 社長がこれ以上は駄目だと話を遮ると、エーリカは不満げな表情を浮かべて椅子に座ってくれた。取り敢えずは落ち着かせることに成功出来たようだ。

 社長は内心驚いていた。ここまで熱く語ることをエーリカがやってのけた事に対して。

 

「折角彼女達が如何にして可愛いのかみっちり教えていこうとしたのに……」

 

「さっきの語りで十分に伝わったよ。これ以上話されると何時解放されるか分かったもんじゃない」

 

「フルコースをお求めですか?」

 

「時間があればな」

 

 彼のエーリカへの印象というのは、真面目で仕事人間、必要以上のことは話さないというのであった。それがよもや剣部隊隊長(クレイモア)の延々に続く愚痴よりも気圧されるような語り口をするとは思いもしなかったようだ。

 

「ふぅ…まぁ、何だマカロヴァくん」

 

「はい!」

 

 社長はエーリカに向き合う。

 社長は思う。可愛い部下の為にも要望には出来る限り応えてやらなければいけない。それが社内で評価の高い社員なら尚更だ。と。

 

「マカロヴァ君の働きには大いに感謝している。他の隊員達だって君の仕事は評価しているからな。こうやって君が直談判してきたのは少々面食らったが、それがどうした。改めて考えてみれば、そろそろ君にも相当の報酬は必要だったのだろう」

 

「しゃ、社長、ということは!?」

 

 社長は言葉を一旦切って、にっかりと笑う。

 その笑顔は、最早決まったも同然だ。

 

「あぁ、俺が何とかしよう」

 

「……ヨシ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 エーリカはこれでもかと喜び飛び跳ねている。

 彼女が狂喜乱舞している傍ら、社長は内線で兵站部へと繋ぎ、とある事を伝えていた。

 

「おう、この前の人形教育係についての話なんだが……適任者が出てきた。後で情報を送るからよろしくな」

 

「これで彼女達のあんな姿とかこんな姿とか……グヘヘヘ……」

 

 欲望に目の眩むエーリカはまだ知らない。

 彼女が天国と地獄の両方を体験し、尚且つ何度も天に召されるような事態を引き起こす事を。

 

 余談として社長は後に語った。

「俺は悪くない」

 とだけ。さて一体彼女は目的の戦術人形に出会い、何を思い何を感じ……そして尊さのあまり死ぬのか。

 それが分かるのはまた何時かの事である。

 

 

 







このお話の裏話。
実はスピア君の受難もついでに書こうとしたけど思いのほか怪文書が長くなったのでまた次回となりました。
久しぶりにフォントで遊びました。楽しかった……。

次回は墓参りとなります。それでは!

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