傭兵日記   作:サマシュ

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バーが赤くなってる……!?
ウッソだろお前!!ありがとうございます!!








ジャベリンはとても変わった男だ。
私が偵察から帰って来た時にジンジャーティーというものを淹れてくれた。
生姜と蜂蜜が入ったそれは冷えた私の体を温めてくれる。私がジンジャーティーを飲んでいる間に、様々な質問をされたり、あとは自分の体験談だとかそういうのを話した。
この時、普通では感じることのない感情が私のAIを一時支配した。
それと、彼にどうやってこれを入手したのかを聞いたところ、任務報酬で手に入れたと言った。私は彼の部隊に入ってみようかなんて言ってみたが彼にそれはやめとけと止められた。

この後の出来事と言えば波乱万丈と言っても差し支えはないだろう。例えば、ジャベリンが私たちを襲ってきた集団の一人を撃ち殺したことによってこちらがピンチとなったり、そこをメイド服の鉄血工造製のハイエンドモデルに助けられたり。
最後には私たちが監視しようとしていた武装集団に襲われ、逃げる羽目になった。

こんなことになっても、何処か楽しいと感じてしまった私には一体何が起きたのだろうか?何度演算し直してもその答えは見つからない。





そのさん

56日目 晴

 

なんとか逃げ延びた。幸い、雨でしかも夜だったため、敵に未だ追跡されているなんてことにはならなかった。今はジェロニモと交代して周囲を見張っている。ポチには悪いんだが奴らの拠点に潜入させた。上手く行くといいんだが。

というか、何故俺たちの居場所がバレたんだろうか?

周囲にドローンが居たとは思えないし、最大限の注意を払ってたんだがな……。

そろそろジェロニモが戻ってくる時間だ。見張りついでに襲撃されたせいでやりそびれたグリフィンと会社への報告をしておこう。

 

 

 

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満点の星空。

 

六等星まで見えるほど周りには明かりと言えるものはなく、もしも誰かがこの空を見上げたならば、皆口を揃えて綺麗だなんて言うのだろう。

そんな事を考えていながら俺は周囲を見張っていた。何も異常なし……と。ナイトビジョンのついた双眼鏡を下ろす。

 

「なんでこうなっちまったかなぁ……」

 

俺たちは逃亡中だ。監視をしようとしていた武装集団に襲われてしまったせいである。今は周囲に敵影がないかバディのジェロニモと交代で見張ってる。現在ジェロニモはスリープモードに入っており、暫く動くことはない。実質一人というわけだろうか?

 

「会社に報告しないとな」

 

俺は通信機の電源をオンにした。恐らく繋がる相手は夜勤の奴らだろう。ちゃんと繋がってくれるかどうか心配だったが、数回のコールの後に野太い男の声が聞こえてきた。

 

『こちらスリンガー、どうしたジャベリン』

 

「スリンガーか、ちょっと社長に繋いで欲しいんだが起きてるか?」

 

『ギリギリ起きてる。今から繋ぐよ』

 

「助かる」

 

今日の担当はスリンガーのようだ。こいつは話が早くて助かる。

数秒たった後に聞き慣れた男の声が聞こえてくる。

 

『ふぁ……こちら社長。ジャベリン、やっと定期報告か?』

 

「そうだよクソ社長。一大事だ」

 

『何?』

 

俺の一言に彼の声色が変わる。こういう仕事に対して真面目な部分は好感持てるんだけどな。それ以外でマイナス評価まっしぐらなのが悲しいところ。

一先ず今の現状とどうすればいいのかを聞いた。

 

「今回の騒動の原因と思われる武装集団と交戦した。一応奴らの拠点は割れてる」

 

『ほう。ところでお前は今何してるんだ』

 

「大勢に襲われてな。現在はグリフィンの助っ人と逃げてる」

 

『そうか』

 

「とりあえずどうすればいい?このまま帰るか?」

 

『ふむ……グリフィンと通信をする。少し待ってろ』

 

どうやらグリフィンと意見交換をやるようだ。長くなりそうだし、今のうちにポチからの情報の整理もしておこう。

ポケットから携帯端末を取り出し、起動する。通知には百件以上と表示されており、ポチが想像以上に頑張ってくれてた。バッテリー切れを起こしてなけりゃいいんだが。

まずは必要、不必要なものと分けていく。途中、自律人形やむさい男たちとじゃれあう写真が見えたがまさかポチは自分のポテンシャルを完璧に発揮しているのではないだろうか?

元来ダイナゲートは簡素なAIしか積まれていない下級人形の筈なんだが、あろうことかポチは自分の状況を瞬時に判断してそこから最適な答えを自ら出し、また学習をしているように思える。

まさか俺が購入したのは良い意味で不良品なのではなかろうか?はたまた単なる物好きがダイナゲートに高度なAIでも勝手に積んで俺に送ったのか。

そんなことを考えていると、意見が纏まったのか社長が話しかけてきた。

 

『色々と協議をした結果、お前らを回収することになった。輸送ヘリ派遣するから、今から送る座標へ明日の1600までに行ってくれ』

 

「了解。それと社長」

 

『何だ?』

 

「グリフィンから派遣された人形がルーキーだった訳だが、何か言い訳は?」

 

『あん?珍しい話じゃないだろジャベリン。頭でも打ったか?』

 

こいつ自分が言ったこと忘れてやがる。だから微妙に社員からの人望が薄いんだぞ。ハゲろ。とりあえず怒気を孕ませて強い言葉で言ってみる。

 

「忘れたとは言わせねぇぞクソ社長。一体!!!何処の誰が!!優秀な人形が来るって言ったんだろうな!!!!

 

『いや、実際優秀だったろ。彼女、真面目過ぎるところが玉に瑕だが、グリフィンの模擬作戦じゃ他の人形よりずば抜けて成績が良かったぞ?』

 

「…………」

 

『あと、座学でも成績優秀。何かしらの執念を感じられたがそこはよく分からないらしい』

 

実際そうだったな。俺の出した基礎的な問題は余裕で解いたし、応用的な問題、軽い作戦立案でも少し考えただけで最適解とは言えないがいい線いってたしあの三下とやりあったときだって銃の反動制御やら命中率が凄かった。

 

『んで、他に文句は?』

 

「……除毛剤ぶっかけてやるから待ってろ」

 

『……そうか』

 

通信が切れた。それと同時に座標が送られて、それを確認すると、ここから数百メートル先の地点を指していた。結構余裕がある。何とか帰ることができそうだ。

 

「そうだ、ポチにも帰ってくるように指示出さないとな」

 

ふとそんな事を思い、ポチへ指令を送る…………が、反応がない。

おかしいと思ってポチのAI状況を確認すると、

--------OFFLINE--------

という表示がでかでかと出されていた。

 

「……マジか」

 

案外あっけない最後だった。

 

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翌日、俺とジェロニモはLZに向かって歩を進めていた。

ジェロニモは何処かイラついており、逆に俺は沈んでいた。

 

「はぁ…………ポチが死んじまった……」

 

「ジャベリン……あなたいつまでそれを気にしているのかしら?ふざけてるの?」

 

まあ、俺が原因なんだが。まさかここまで精神にくるとは俺だって予想外なんだよ……。

 

「ふざけてなんかないぞジェロニモ……ポチはな……俺の家族みたいなもんだったんだよ……」

 

「あなたねぇ……!」

 

彼女の怒りのボルテージがマックスになりそうだ……というかもうキレてる。彼女が俺の襟首を掴んだ。

 

「戦場で弱気になった奴から死ぬなんて言ったのは何処の誰よ!?あなたの状態は今まさにそれよ!!」

 

「いや、確かにそうなんだが……」

 

「分かってるなら!!!すぐに!!!気持ちを!!!切り替える!!!」

 

「……分かった」

 

彼女の剣幕に気圧されたが、そのお陰で逆に頭が冴えた。先ずは生き残ることが最優先だ。今敵に襲われてしまったら確実に殺される。それを防ぐためにもしっかり気を持たなければ。

 

俺の状態が良くなったことを確認できたのか、ジェロニモが俺の襟首を掴んでいた腕を下ろす。

 

「まったく……」

 

「ジェロニモ」

 

「なによ」

 

「助かった」

 

彼女が少し驚いたような顔をしたが、すぐに表情を柔和なものに変え、誇るように俺に言った。

 

 

「私は完璧よ。これくらい何の造作も無いわ」

 

 

そう言った彼女の顔はこの上なく眩しくて、美しかった。

 

 

 

うわやっべぇクラッと来た。

ジェロニモ……なんて恐ろしい子!!

 

「さ、そろそろLZに着くわよ」

 

「お、おう」

 

「……どうしたの?」

 

「いや、何でもない」

 

ふぅん、と呟いた彼女。あの顔に魅せられた今ではその仕草さえ魅力て…………落ち着こうか。流石にチョロ過ぎない俺?

久々に取り乱しちまったぜ……女性経験が無いのは本当にデメリットでしかない。確実に俺は色仕掛けに負ける。これは確信できる。

俺は知ってるぞ、思わせ振りな態度をとっていざ近付くと距離を取られるんだ。トライデントがそう言ってたから間違いない。あいつの部屋にあった可愛らしい絵が描かれた表紙の小説でもそんな風に書かれてた。

 

何とか自分を落ち着かせていたら、味方と思われる輸送ヘリがこちらへ飛んできた。

手を振ってこちらの居場所を示すと、それに気付いたのか空中で停止し、そのまま高度が下がっていった。

いやはや、なんというか……

 

「襲われはしたけど、呆気なかったな」

 

「そうね、もう少し長引くかと思ってたんだけれど」

 

「とりあえず、会社に着いたらポチのお墓作らないと……」

 

「あなた、そんなにあのダイナゲートが大事なのね」

 

「さっき言ったように、ポチは家族みたいなやつなんだ。俺の窮地を何度か救ってくれた存在なんだ」

 

「ふうん……私もそんな存在が居たらどうなるのかしら?」

 

「さあな?」

 

そうやって話をしながら着陸するヘリへ乗り込もうとした瞬間_____________________________

 

 

 

 

 

________爆発と共に、ヘリが爆散した。

 

「ッッッ!!!??」

 

俺とジェロニモは空中に放り投げられる。何度か回転したあと、地面に激突。一瞬何が起きたのか分からなかったがすぐさま状況を確認する。

周囲は炎に包まれており、恐らくパイロットは死亡しているだろう。ジェロニモの姿を探すと、すぐ隣で銃を構えて臨戦状態だった。俺も武器を構えて警戒していると、目の前から複数の人影が現れた。

 

「これで会うのは二度目ですね、亡霊(ゴースト)、いや、コードネームジャベリン」

 

「お前は__________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_________________代理人(エージェント)……!」

 

 

人影の正体は、にこやかな顔で立つ代理人(エージェント)と俺たちを襲撃した武装集団の奴らであった。

 




ジャベリンくん意外とチョロいね。
というか、まさか代理人が敵になってしまうとはなー悲しいなー(棒)

本当書くの楽しすぎて予定より大幅に字数が増える……。
あと、書き貯めが尽きたので、貯蔵と生成を兼ねて数日おきの投稿に移行します。何かしらの感想をいただければインスピレーションが起きて筆が進むんですけどねぇ(ダイマ)
かくいうこの展開も皆様の感想のお陰。
評価、及び感想は執筆の励みとなるのでどんどんください。そして、私にアイデアをください。
それでは!!

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