傭兵日記   作:サマシュ

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家族とは特別な存在だが、いかんせん俺にはその家族の記憶がないが故に今一つ分からない。今回の墓参りで何かわかるのだろうか?






傭兵、墓参りだってよ。

343日目 晴

 

俺の勤めるPMC『武器庫』裏手の丘には、戦死者や無縁仏を弔う霊園が存在する。いくら人外魔境なこの会社だって死人が出ることはある。剣しかり盾しかり。鎚は戦術人形のみだし、弓は仕事の性質上死人が出ることは少ない。槍は最近作られたから今のところは関係無い。いや隊員を死なせないつもりではあるけれど。

この霊園には様々な文化や宗教に合わせた様式の墓がある。キリスト教やイスラム教、仏教、神道……はたまた何処かの土着信仰まで。色々な形の墓が集まっているので、社員の誰かが墓の博物館なんて言っていたな。

そんな霊園を管理するのが俺の養父、墓守である。元正規軍特殊部隊隊員だとか同僚だった社長から話を聞いた。E.L.I.D関連のかなと思ってたけどそうでもなく、人を相手とする特殊部隊とかなんとか。

 

今日はそこの霊園に新しく建てられた“家族”の墓へ墓参りをした。何の変哲もないキリスト教式の墓だ。その墓には「リン・ナトリ」だの「フレデリック・ナトリ」だのと四人ほど記されていた。どうやら俺の本当の親父は婿入りだったようだ。

これと言って特別な感情が合ったわけではない。記憶もないからな。そして意外な事に俺は長男坊だった。弟と妹が一人ずつだ。

墓守が教えてくれた。彼はこの家族について色々調べていたようだ。“親父”は何処かの軍属、俺の“母”とたまたま出会って恋に落ちて結婚、子供を三人授かった……っていうのを教えられた。何が起きて死んだのかは不明らしい。調べようにも何故か情報が秘匿されていた。まぁこの御時世良くあることだ。キナ臭いことこの上ないが元々興味もない。

 

それにしても……ナトリか。ジャベリン・ナトリー……響きが悪い。

墓守が言うには、日本の苗字というのは基本地名が語源となることが多かったらしい。俺のそのナトリも何処かの土地の名前なのだろうか。出来るなら行ってみたい。

墓守はなんとも微妙な顔をしていたがどうでもいい。

取り敢えずは花束と線香を供えておいた。暇があればここに来て手入れやら近況報告でもしてやろう。記憶は有らずとも家族は家族だ。俺の事を話してやるのもある程度の供養にはなるだろうて。

 

あ、そうそう。墓守がこの前連れていた女性……『葬儀屋』と呼ばれていた彼女だが……戦術人形だった。道理で随分な美人な訳だ。『AUG』という戦術人形で、墓守の友人の忘れ形見。友人の遺言に従い引き取ったとのこと。

何故AUGが『葬儀屋』と呼ばれているのかと言えば、彼女は実際にそういう埋葬やら葬儀の仕事に関わっていたからである。戦術人形であるはずなのに、戦うというよりは弔うという、随分と特殊な立ち位置に居たようだ。

彼女が来たお陰で墓守も仕事の効率化と丁寧さが上がったらしい。

葬儀屋は物腰柔らかな暗殺者……というのが第一印象だ。一体何年稼働して何年戦っているのやら。そんじょそこらの戦術人形よりよっぽど強いような気がしてならない。墓守は葬儀屋には喧嘩を売らないようにと俺に言ってきた。やるわけないだろうに。

 

……暫くは会社泊まりか。暇潰しになるものがあればいいんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

344日目 曇

 

何か会社に居るのも何なので墓守の住んでいる所にポチとオスカーを担いでお邪魔した。彼の住む家は霊園の丁度隣に位置しており、案外デカい。一人で過ごすには大きすぎる位だ。

そうであるが故なのか、葬儀屋や……彼は他の戦術人形も引き取っていたらしい、『G41』という狐のような犬のような猫のような戦術人形も住んでいた。墓守が言うには、何処かのグリフィンの指揮官の埋葬を行っていた時、ひょっこりと現れてその指揮官の墓を守るようになったようだ。初めは警戒心マシマシだったが時間を掛けて何とかこの家に住まわせるように出来たとか。

彼女はオスカーとポチを一目見て「おじ様!この子達よしよししていいですか!?」って目を輝かせてポチとオスカーをぶんどっていった。南無。

それにしても、懐かしいな。俺が武器庫に引き取られた時はよくこの家で色々と教えてもらってたもんだ。しかし俺は一体何処で墓守に勉強を教えて貰ったのやら……記憶が正しければ西側一階の使われていなかった部屋か……探しにいこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

344日目 続き

 

鉄血ハイエンドモデルが出てきたので殴って投げた。

オスカーとポチは帰ってきた。すっげぇテカテカしてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

345日目 晴

 

墓守は絶対に許さない。頼むから一言言ってて欲しかった。だっていきなり襲ってきたし。

俺が昨日投げ飛ばした鉄血ハイエンドモデルは、『ウロボロス』というヤツで、えらい自信に満ち溢れた人形だった。まぁボロボロなんだけど。恐らく彼女がグリフィンに鹵獲されたっていう鉄血ハイエンドモデルだろう。

ウロボロスはグリフィンから命辛々逃げ延びて、どうやってグリフィンの警備を潜り抜けたのか分からんがこの霊園まで辿り着いたようだ。

墓守は何を考えて彼女を拾ったのか分からなかったが、それはすぐに判明した。何せ墓守と葬儀屋がウロボロスを訪ね、墓掃除に連れていったからだ。

多分、丁度いい労働力だったんだろうなぁ……社長が何を言うのか分からんが、グリフィンやら社員達との折衝でてんてこ舞いになるのは確実だろう。ざまぁねぇ。

 

しっかし鉄血ハイエンドモデルか……アイツら今何してるんだろ……。何時か顔を出しに行くとしよう。

まぁ呑気に畑弄りとか猪〆たりしてるんだろうなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

346日目 曇

 

何か墓掃除にアルケミスト居るんだけど。

 

 

 

 







「墓守……彼は」
「ん?」
「彼からは少し嫌な臭いがします」
「どういうことだ」
「死と生が混ざったような…中途半端ですね」
「ほう、お前がそんな事言うなんて珍しいな。そうさ、あいつは少し揺らいでる。自分の事で精いっぱいなのに他人へと構おうとするから何もかも中途半端。見てて不安になっちまう」
「……よく彼の事を見ていますね」
「親だからな。いくら十年ぐらい会ってなくともなんとなくは分かる」
「社長もそう言うでしょうか?」
「マーカスはなぁ……というよりあいつに近しい奴らは絶対気づくだろうて。問題は……」
「その周りがどうするか…でしょうか」
「だな。もどかしいもんだ」
「……私が母になれば…?」
「葬儀屋???」
「冗談ですわ」






どうもサマシュです。なんか出来ました。ウロボロスとアルケミストが出ました。どうなるんだコレ……いや元々予定に有ったのでどうにかなります。します()

じゃあ次回はですね、ジャベリンくんの義眼を直しに行きますよ。それではまた今度!
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