傭兵日記   作:サマシュ

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彼は、ちょっとだけ過去の話を話してくれるようだ。

※今回はドルフロ要素ほぼ有りません。社長の過去話を知ってみたい人はどうぞ。そして星が付いている通り、他ドルフロ二次作品のオリキャラも出ます。


☆武器庫の日常―社長はかく語りき―

 

「ジャベリン、武器庫の管理してるこの土地がなんて呼ばれてるか知ってるか?」

 

「ん?」

 

 

 

 とある日、弓部隊副隊長『スリンガー』からそんな質問が飛んできた。

 今日はちょっとした日課となりつつある“家族”の墓への近況報告をしていたので、何を突然……と思いつつ記憶の中で思い当たる言葉を口に出してみる。

 

 

「“人間の楽園”……だったか?」

 

「正解。人形よりも人間が社会で活躍して、殆どの成人が職に就いているからそう呼ばれてるらしいぜ」

 

「何処の情報だ、それ」

 

「俺情報」

 

 

 さも当たり前の如く、私が調べた情報ですと宣うスリンガー。

 多少の呆れは入ってしまうものの、彼は一応武器庫諜報部の長である。そんな下らない噂の信頼性ですら高いと言っても過言じゃないくらいこの男の情報収集能力は高い。

 

 しかし何故突然そんな事を聞いてくるのか。

 

 

「そりゃなジャベリン。気になるだろ、社長が正規軍を辞めて武器庫を設立した理由」

 

「それお前が調べれば済む話だろ」

 

「そうしたいのは山々だけど、正規軍のサーバーのプロテクトが強固だったもんで。真面目に突破しようとしたら常備してるコーヒー粉が無くなっちまうよ。ならさっさと社長から聞いた方が早いだろ?」

 

「あー……そうか」

 

 

 社長は正規軍時代、対E.L.I.D撃滅部隊で陣頭指揮を行いながら多大な戦果を上げていたと聞く。当時、彼の指揮下に居たクレイモアの話では、部隊の誰よりも多く迫り来るE.L.I.Dを徹底的に鏖殺せしめたと言う。流石に武器を使ってるけれど。

 本当に人間を辞めている感じが拭えないが、軍にとっては重要な存在だっただろう。

 

 

「社長ってやっぱり謎が多いな、スリンガー」

 

「剣の奴らよりも人間辞めてるって言われてる位だ。過去に肉体改造でもされてそうだぜ、社長は」

 

「そりゃ違いねぇ」

 

 

 スリンガーが本当に有り得そうな事を言ったので、ちょっと笑った。

 一先ず、墓へ花を供えておいて武器庫へと戻る。スリンガーが言うには、社長は武器庫社内のカフェで暇を潰しているはずだと。

 カフェか……あの社長が珍しいこともある。早速聞きに行くとしよう。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

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――

 

 

 

 

 

 

 

「社長!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!KSGとMG4を採用してくれてありがとうございます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「もう少し声を抑えてくれないかマカロヴァくん。スピアに摘まみだされるぞ」

 

「失礼しました。このエーリカ・マカロヴァ、彼女達の美しさに感極まりまして……本当に真面目でかわいくて守ってあげたくて……ヘヘヘヘ」

 

「……そうか。KSGとMG4達の所へ戻ったらどうだ?」

 

「はい。失礼しました、社長」

 

 

 武器庫には、有志によって作られたカフェがある。

 そこでは紅茶が出されたりコーヒーが出されたり……店番を誰がするかによってメニューが度々入れ替わる。

 今日は我らが槍部隊副隊長スピアが店番のようだ。スコーンとサンドイッチとアールグレイを注文しておいた。

 

 肝心の社長はカウンター席で事務員のマカロヴァと話していた。が、ちょうど会話が終わったのか、マカロヴァがその場を後にした。

 

 

「社長、おはっさん」

 

「ん、スリンガーか。それにジャベリンも。今日は何か企んでもいるのか?」

 

「そんな訳ないさ社長、ジャベリンはただの巻き添え。ちょいと聞きたい事があってね。時間空いてる?」

 

「E.L.I.Dを殴り殺せるぐらいはな」

 

 

 意味の分からない……まぁ社長なりの冗談を聞き流してスリンガーと共に彼の隣へと座った。

 丁度目の前に注文した品が出されたので紅茶を一口飲んで、サンドイッチを食べる。カラシがいいアクセントになっていてとても美味しかった。

 

 

「それで、聞きたいことってのは?」

 

「社長が正規軍を辞めた理由」

 

「ふむ」

 

 

 スピアのサンドイッチに舌鼓を打つ俺を横目に話を始めるスリンガー。

 カフェ内は静まり、心なしかここにいる全員が社長の言わんとしてることに耳を傾けているように感じられた。

 社長は 、別に隠してる訳じゃあないんだがなぁと呟き、話を始める。

 

 

「彼処を辞めた理由なんて、ただ勢力争いに負けただけだぞ?」

 

「……アンタが?」

 

「あの時……第三次世界大戦中に色々あってな」

 

 

 恐らく、カフェ内に居る全員が疑問符を浮かべたと思う。社長を決して買い被ってる訳じゃないが、彼が権力闘争に負けるビジョンが想像出来なかった。

 固まっていたスリンガーが正気に戻り、続いて質問をする。

 

 

「その勢力争いって……」

 

「E.L.I.Dを技術的に使用するか、根こそぎE.L.I.Dを殺し尽くすかだな。あの時……2050年初め辺りだったな。正規軍もかなり消耗してたんだ、藁にもすがる思いで居たんだろ」

 

「その話なら俺も噂程度には聞いたことがある。自然に立ち消えしたと思ってたけど、違うのか社長?」

 

「立ち消えしてなかったら俺は未だに正規軍だろうよ」

 

 

 社長は皮肉を言ってコップに入っていた水を飲んで一息ついた。

 E.L.I.Dを技術的に利用って中々狂ってる気がしてならないが、それほどまでに追い詰められてたのだろうか? 俺としちゃこのおっさん一人居れば何とかなりそうだと思うけど。

 

 

「俺はその時断固として技術利用は反対したよ。飼い慣らすにしてもE.L.I.Dの細胞を体内に打ち込むにしても、絶対に何処かで綻びが発生するってな」

 

「でも賛同する奴は少なかった」

 

「そうさな。俺の部下は兎も角、お上は其処のところは理解してくれなかったもんで……あいつらも何思ったんだか、俺を辺境に飛ばしやがった」

 

「ん?ということは、社長って昔は過激的だったのか?」

 

「まぁな。行き急いでたんだろ、昔の俺は」

 

 

 いや今も過激じゃね? という言葉はスコーンと共に飲み込んで、俺は社長を見た。彼の顔は別に過去の事を気にしているような表情を浮かべている訳でもなく、寧ろ自ら笑いの種にしているようだった。

 

 

「ま、その後は正規軍に愛想尽かせて退役しただけだよ。それに俺が居なくとも問題は無さそうだったしな」

 

「というと?」

 

「何、優秀な同僚後輩先達が沢山居たのさ。多少俺程度が居なくなってもE.L.I.D共は殺せる」

 

 

 程度……程度って何だ。社長レベルが何人も居たらE.L.I.Dなんてすぐに全滅しそうな気がしてならないが。社長が現役時代の正規軍どうなってんだ。

 

 

「俺が居た頃はなぁ……同僚に紫電の梟(ブリッツオウル)って呼ばれてる奴が居たりとかしたなぁ……アイツの戦い方は用意周到でテクニカル、生き残ることを目的とした戦法……力押しな俺とは正反対だけどああいうのは大好きなんだ。見習いたいぐらいにな」

 

「ブリッツオウルか、そいつなら俺も聞いたことがある。戦果は兎も角、損耗率が限りなく低い部隊を率いてた敏腕軍人だろ?」

 

「そうそう。羨ましい限りだった。何せ部下が死ぬことが少ない。俺の部隊は決死隊みたいな側面もあったし一回出撃する度に何人か死んだりE.L.I.Dになっちまう事が多かった……詳しいことはクレイモアなり他の剣の奴らに聞いてくれ。俺が話すとちと長くなる」

 

「了解。しかし面白いな、正規軍……ところで社長、重大犯罪特務分室は知ってるか?」

 

 

 どうやら社長の昔話は退役した理由から他の同僚やらの話に移ったらしい。

 お代わりの紅茶を飲み、スリンガーの言った重大犯罪特務分室について聞き耳を立てた。

 社長はその言葉を聞いて、腕を組んで考え始めていた。

 

 

「はて……あー、又聞き程度だな。宗教関連だったかオカルト関連だったか、警察みたいな事をする所だろ?正規軍も変わった組織を作ったもんだ」

 

「彼処は面白い組織だったよ。社長が言った通り、宗教関連とかで政府や正規軍の足を引っ張る輩を消していくのを生業にしてたらしい。実際にメンバーとは会った事が無いが、その組織のリーダーのカプリチオって呼ばれてる奴がえらく顔の良いって事は知ってる……興味本位だが会ってみたいもんだ。なぁジャベリン?」

 

「は?」

 

 

 いや俺に話を振るなよスリンガー……そうさな、そのカプリチオって呼ばれてる奴は強いのか?

 

 

「強いよ。変わった体術を使ってる……あぁでも、見たいのは山々なんだけど、そういえばあの組織無くなってたし皆行方が分かってないんだったな……残念」

 

「いや勝手に話を終わらせるなよお前……」

 

「まぁまぁお前ら、取り敢えず話の本筋に戻ろう」

 

 

 スリンガーの物言いに少々ムッとしたものの、社長の一言で鎮まった。

 危ない危ない。喧嘩でも始めたらスピアに足蹴にされてカフェを出禁にさせられる。スピアの作る紅茶は美味いんだからそんな事されたらひとたまりもない。

 

 

「後進……といっても俺が退役した後だが、意外にも俺のコードネームは知られていたらしいな。この前ウチと演習をしたスイートキャンディ……コリンズ指揮官は元正規軍だった彼女も俺の事を知ってたし。あぁ……コリンズ指揮官といえば、彼女とジャベリンの格闘戦は見てて滾るものがあったな」

 

「社長の退役後か……そういや女たらしの借金王なんて呼ばれてた隊員居たな」

 

「ん?女たらしの借金王……俺が退役する前も似たようなあだ名の奴が居たぞ。もしかしたら同一人物だったりして」

 

「そんなまさか、ハハハ」

 

 

 借金王……凄い聞き覚えがあるぞ。 絶対お前だろ、ジョージ・ベルロック。今度会ったときは話の種にこの事話すかな…。

 アイツとは昔よく飲んだ仲だが最近会えてない。さてさてアイツは人形と結婚したなんて言ってたが……どうなっているのやら。後でメールするか。

 そしてコリンズ指揮官……彼女は結局投げ技を会得出来たのかな。今思えば随分な意地悪をしてしまった気がする。

 リベンジマッチ……とは行かないが、お詫びにとびきり甘いロイヤルミルクティーでも何時かご馳走しようかな。

 

 

「後進といえば、正規軍の情報筋から俺と同じような戦い方をする機械義肢の男がいるって聞いたなぁ…いつか会いたいもんだ」

 

「ほー……そんな奴もいるんだな」

 

「優秀な隊員がいるようで何よりだ……っと、そろそろ席を外す。書類整理の続きをしないとな」

 

 

 社長がお金をカウンターへ置いて席を立つ社長。暇つぶしじゃなくて休憩だったのかよ……。

 社長が歩いていく際に、すれ違いざまにスリンガーがまた質問を投げかけた。

 

 

「そういえば社長、何で貴方は未だに正規軍の委託業務を受領しているんだ?」

 

 

 スリンガーのその問いに社長は笑った。

 

 

「金は多く貰えた方が良いだろ?会社を存続させるため、社員の食い扶持を稼ぐため。お前らの為なら泥水啜ろうと地面を舐めさせられようと喜んでこの身を犠牲にすることを厭わないつもりだ」

 

「……全く素晴らしいな貴方は」

 

「見習ってもいいぞ?」

 

「だってよジャベリン」

 

 

 俺に話を振るんじゃねぇ。まだサンドイッチ食ってるんだぞ。

 しかし……いや、俺はすでに社長の事は見習ってる。己を顧みない、それは諸刃も同然だが、同時にそれだけ多くを守ることが出来ると考えている。彼はそれをやってのけてる……と思ってるさ。

 社長はその言葉残した後にカフェの出入り口まで向かう。

 彼の背後に対し、スリンガーはまた言葉をかける。

 

 

「あぁ社長、お礼にいいことを教えとこう」

 

「なんだ?」

 

「ブリッツオウル、どうやら何処かでグリフィン指揮官やってるらしいぞ」

 

「………本当か?」

 

「飽くまで噂程度だけどな、探してみるのもアリなんじゃないか?」

 

 

 社長はその言葉に、ちょっと目を見開いて、みるみるうちに喜色に富んだ顔に変わっていった。

 

 

「そうか…そうか、アイツにはおあつらえ向きだな……そうか…ふむ……今度会いに行こう、積もる話もあるだろう。クルーガーなら知ってそうだ」

 

「社長秘蔵のスコッチウイスキーも持ってか?」

 

「俺の秘蔵コレクションを知ってることにはこの際言及はしないがそうする。待っててくれ、戦友(とも)よ」

 

 

 社長はそう言ってカフェを後にする。

 ……何も一悶着無いように願いたいが。何しでかすか分からんな……場合によっちゃ俺も社長に着いて行くか。

 

 ま、そんな事より飯だ飯。サンドイッチ追加注文だ。

 

 

「社長はどこですか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!いやこの際スピアでもジャベリンでもスリンガーさんでもいいや!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!KSGちゃんとMG4ちゃんが可愛い過ぎるんですが!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 誰かあのKSG&MG4スキーをどうにかしろ。

 嫌だぞ俺は静かにこっち来るな待て待ってヘルプ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 助けて!!!!!!

 

 

 

 

 

 





この後マカロヴァ氏による語りが延々と続いたらしい。


≪今回出させていただけたドルフロオリキャラ組の出典≫

佐賀茂様
タクティス・コピー(紫電の梟(ブリッツオウル)
『戦術人形と指揮官と』: https://syosetu.org/novel/178032/

あだぐるま様
ノア・クランプス(カプリチオ)
『冬のお化けと人形のお話』: https://syosetu.org/novel/204895/

笹の船様
シーラ・コリンズ(スイートキャンディ)
『女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん』:https://syosetu.org/novel/184136/

塊ロック様(両作品とも現在非公開中)
ジョージ・ベルロック
『借金から始まる前線生活』: https://syosetu.org/novel/182529/
パトリック・エールシュタイアー
『水没から始まる前線生活』: https://syosetu.org/novel/194486/

皆さま、以上のキャラクターを快く貸していただいて本当にありがとうございました!
コラボフラグをバラまいてしまったよう書いてしまって本当に申し訳ない……煮るなり焼くなり好きにしてください。

さて、次回からコラボ消化していくぞ……。
感想、および評価は心の支えとなります、どうぞよろしくお願いします!それではまた今度!!

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