傭兵日記   作:サマシュ

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コラボ回。今回はoldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』
https://syosetu.org/novel/180532/ )より、リホーマーとアサルターが武器庫へ売り込みにやってきます。愉快?な二人組に武器庫は一体どうなるか!!それはどうぞ!!





☆傭兵、売り込みだってよ。

 

 

『全隊員に告ぐ、今すぐ装備を整えて基地防衛へ努めろ。これは演習じゃない。繰り返す、これは演習じゃない』

 

 

 嫌な社内放送で目を覚ました。

 小雨の降る少し湿った空気の中でボディアーマーを着込み、銃を提げ、ヘルメットを被りポチを抱えて武器庫正面ゲートまで走る。

 周囲は騒然としており、会社の防衛用砲台や銃座にも人が集まっていた。

 

 

「ジャベリン!」

 

「スピア!ランス達は!?」

 

「槍部隊は弓と鎚で会社周辺の防衛だ!検問所に剣と盾が迎撃に向かってる!」

 

「了解!民間人の避難は!!」

 

「四割は避難させた!!」

 

 

 正面ゲートまで走っていると、スピアが声を掛けてきた。彼も急に起こされたのだろう、寝巻きに使っているジャージにプロテクターとボディアーマーを着ていた。

 一体全体何が来てしまうのか。剣や盾が向かうレベルだ。相当の脅威じゃなかろうか。

 全く剣の奴等が会社に残ってなかったらてんてこ舞いになってたぞ。

 

 

「隊長!」

 

「パイク!現状報告!!」

 

 

 正面ゲートには既に部隊が展開されており、其処にはトライデント、パイク、鎚部隊のMG4とKSGが居た。既に土嚢やセントリーガンが置かれている。

 

 

「今のところは誰も来てないんすけど、どうやら検問所付近で剣と盾が包囲したそうです!一応相手は抵抗はしてません!!」

 

「OK!!MG4とパイク、トライデントは援護射撃。KSGはスピアと俺とで敵がやって来たときに前に出ておくぞ、いいな?」

 

「「「了解!!」」」

 

 

 幸いなことに脅威はまだこちらへと来ていなかった。だがどちらにせよ警戒は続けるべきである。

 

 

(頼むから、さっさと投降してくれよ……)

 

 

 俺はそう願いながら余念なく銃を構えて正面を見据えるのだった。

 

 

 

 

 

 

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―――

 

 

 

 

「ややぁ……突然驚かせて堪忍なぁ。最近物騒なもんですけん、ウチも割かし過激な護衛も必要だったんですわ!」

 

「全くだ、ワイルダーさん。あんなものを連れてこられてしまえばこちらもおちおちと眠っていられない。今度来るときはあのロボットは座らせて置いてくれ」

 

「ホンマ堪忍なぁ」

 

 

 ここは社長室。俺は盾部隊のイージスと共に目の前でのやり取りを見守っていた。

 今回の騒動はただこちら側の勘違いに終わってしまった。ただのくたびれ儲けだったもんだから、やっと活躍できると息巻いていた鎚部隊は意気消沈していて何とも可哀想だった。

 

 現在、俺の丁度右斜め前に居る女性は随分と聞き慣れないような方言?で社長と会話をしている。

 彼女は『リホ・ワイルダー』氏、Hermes&Reform社という会社の社長を務めており、今回の騒動を起こした張本人だ。どうやらうちへ商談に来たらしい。

 

 

「しかしここに商談に来るとは…一体何を売りに?」

 

「よくぞ聞いてくれました!今日ここにもってきたんのはな、その名も『インビシブル型ゴリアテ』や!こいつはなぁ、すっごい機能を持っとるんやで!!」

 

 

 水を得た魚の様にさっきまでとは打って変わって随分と明るい口調になるワイルダー氏。

 まぁ商売しに来てる訳だしそりゃ明るくなるよね。社長は随分と興味深そうに身を乗り出していた。

 

 

「ゴリアテ……かの旧約聖書に出てきた巨人の名を冠する物を売り込みに来るとは素晴らしいな。その機能は一体?」

 

「社長さんも乗り気やね、よぉくその耳の穴かっぽじって聞き!このゴリアテ、全面に熱光学迷彩を装備してるんやで!!!そして静穏性、並のライフル弾でも弾くその堅牢さもウリや!!」

 

「ふむ…続けてくれ」

 

「任せとき!」

 

 

 ふと、社長が手で“下がれ”と自分たちに合図をしていたことに気が付いた。彼女の事を安全と判断したらしい。

 俺は隣のイージスと顔を合わせて社長室から出ることにした。社長室を出てから暫くして、イージスが口を開き、こんなことを言ってきた。

 

 

「リホ・ワイルダー……あの方、人形ですね」

 

「藪から棒にどうしたんだイージス、確かにあの人は人形みたいに綺麗だったけど」

 

「そういう意味では有りませんよジャベリンさん。そんな事言うから偶に人を勘違いさせるんですから……それは兎も角、あの方、所作は人間そのものですが……何かが違うんですよね」

 

「アンタらしいな。流石医療班の長だ」

 

 

 彼女は、ワイルダー氏の事を人形と判断した。

 それは恐らく長年の感というものだろうが、俺にはよくわからん。いや待て、イージスって俺より年下だったよな……まぁいいか、話が脱線する。

 さて、今度は少し整備士たちの所へと向かおう。確かワイルダー氏の護衛を務めていたというロボットが居ると聞く。解析をされているそうだが、大丈夫だろうか。

 ちょっと急ごう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……見れば見るほど変態染みてるなぁこの構造」

 

「誰が作ったんでしょうね?」

 

「さあなウェルロッド。少なくとも、技術力が並じゃないのはよく分かるぜ」

 

 

 所変わってここは整備士たちの作業場。今は鎚部隊と整備士二人組が、中央に鎮座している大きな人型の機械……昔本で見た日本の鎧のような物を着こんだような外見のロボットを見て何やら色々としていた。

 このロボットの名前は『突撃者』というそうで、見た目も相まって強そうだ。

 

 

「…………」

 

「……イージス、あのロボットって喋れるのかな?」

 

「私に聞かれましても……話し掛けてみますか?」

 

「そうしよう。えーと、突撃者?」

 

「……?」

 

 

 ガゴーッ、ガシューガシューと如何にもロボットのような音を立てて此方を向いた突撃者。

 身ぶり手振りで「何だ?」とでも言いたそうな所作をしている。声は出ておらず、喋れない事がよく分かった。

 

 

「少し呼んでみただけだ、許してくれ。アンタ、ワイルダー氏の護衛務めてたそうだな」

 

「……!」

 

 

 そうだ、と肯定の意を示すように首を縦に振る……彼? あー、便宜的に彼と称しよう。見た目的にもそれっぽいし。

 彼は色々とジェスチャーをしてくれているのだが、何を伝えようとしているのかは分からない。

 はぁ、ポチを連れてくれば良かった。ポチならこういう意志疎通は得意そうだし……。

 

 

「ふむふむ……少し聞きたいんだが、いいか?」

 

「……!!…」

 

(ジャベリンさん……相手が何言ってるのか分かってませんね……)

 

 

 相手が何言ってるのか分からない以上、取り敢えず話を別の話題へと向けるのも一つの手だろう。

 俺はイージスが先程言っていた疑問に付いて聞くことにした。

 

 

「アンタの雇い主のワイルダー氏、彼女の正体に付いて教えてくれないか?」

 

「ちょっ、ジャベリンさん?」

 

「まぁまぁ…別に疚しいことは無いって」

 

「…………!」

 

 

 俺の質問に対して突撃者はバッテン印を作る。あまり聞かれたくないモノらしい。

 イージスがほらみろと肘で俺を小突いた。

 

 

「いてっ……あー、嫌ならそれでいい。失礼した」

 

「……!」

 

 

 サムズアップで答えた突撃者。結構感情豊かだな……。

 もう他には特に聞くことも無い為、イージス達と別れて武器庫の中庭へと出た。緊急事態では無くなった今、特にすることもない。確か今日もスピアはカフェで紅茶を淹れてる筈だし、そこに行こうかな。

 

 

≪あ、ご主人≫

 

「ん?ポチ、散歩でもしてたのか?」

 

≪はい。部屋に居るのも何ですから……ご主人は?≫

 

「俺は暇つぶしさ。今からカフェにでも行こうと思ってな」

 

 

 いざ俺が歩きだそうとした時に、ポチが近づいてきた。ポチもどうやら暇なようで、俺に付いてきた。とてとてと歩いてくるポチを見ていると何だか心が癒される。やはりポチは可愛いの塊だ……。

 っと、それはさて置き、大きなトラックが整備士たちの作業場へ向かっているのが見えた。あれは恐らくHermes&Reform社の物だろう。運転席にホクホク顔のワイルダー氏が見えた。商談は上手く行ったようだ。

 

 

≪……うん?≫

 

「どうかしたか、ポチ?」

 

≪いえ、あのトラックに積んである物に見覚えが……≫

 

 ポチがとあることに気が付く。

 トラックの荷台から見える……なんだアレは?団子?

 

「何だアレ」

 

≪ゴリアテ……ですね。鉄血の兵器ですよ≫

 

「はい?」

 

 

 少々聞き捨てならないことを聞いてしまった。

 鉄血の兵器だと? あの人何をしようとしてるんだ……。

 

 

≪あぁでも、あのゴリアテ少々特殊なようです。多分よっぽどの事がない限りは自爆しないと思われます≫

 

「えっ……そういやそれっぽい事言ってたな。ならいいか」

 

 

 少し眺めていると、作業場から突撃者が現れてゴリアテを運び始めた。ワイルダー氏がやり切ったような顔をしている。

 俺とポチがその様子を見ていたら、彼女が此方へと気がついた。

 

 

「お、社長室んとこにおったにーちゃんやないか!ほんまおーきになぁ!あの社長結構ノリノリやったさかい、商談ポンポン進んでったわ!取り敢えずはインビシブル型ゴリアテ買うてもろうたで!!正価で!!感謝感激雨あられや!!!」

 

「そ、そうですか……」

 

 

 相当嬉しかったのかどうかは分からないが、矢継ぎ早に俺へと謝辞を送ってきた。特に何もしてないのに……。

 彼女の勢いに気圧されて視線を遠くへと向けると、其処には搬入を終えたのであろう突撃者がワイルダー氏に向かって何かを伝えていた。

 

 

「っとと、突撃者も搬入終わったっぽいな。そんじゃにーちゃん、あのシスターのねーちゃんにもよろしくなぁ!」

 

「あー、はい。お気をつけて」

 

≪あの女性にも何か見覚えが……≫

 

 

 トラックへ乗り行くワイルダー氏を眺めていると、ポチがそんな事を口走る。俺は他人の空似じゃないのかとだけ返したが、あまり腑に落ちていないようだった。

 突撃者が飛び立つ音と共に、トラックも動き出して武器庫正面ゲートへと向かう

 

 

≪あーーーーー!!!!!!!!!思い出しました!!!!!!!!!≫

 

「どおっ……どうしたんだポチ」

 

≪あの人、いやあの人形!!!!!!ハイエンドモデルの改造者(リホーマー)ですよ!!!!試作機どころか作られても無かったのに何で!!?≫

 

「なんだって?」

 

≪いや、あの、お父さん……リフィトーフェンさんがですね!?私を改造するときに見せびらかしてたりしてたんですよ!!!設計者の分からない設計図!!あれに確か載ってたような……?≫

 

「そこで疑問系になるか」

 

 

 いやしかし……リフィトーフェンは流石に作ってないな。恐らく蝶事件後に作られたのだろうか? 少なくとも俺が鉄血工造に居た時は彼女のような存在は居なかった。というか居たらあんなにキャラの濃い人形なんて忘れはしないだろうて。

 真相を調べるにしても肝心のワイルダー氏が乗ったトラックはもはや遠くへ行っている。

 

 

「ポチ、あまり考えすぎるのも駄目なんじゃないかな?」

 

≪ですが……≫

 

「相手は飽くまでこちらに害意もなくただ商品を売りに来ただけだ。あの社長が彼女と交渉を成立させた。それ以上でもそれ以下でもない、何かあったらその時だ」

 

≪……了解しました≫

 

「それに、俺のこと知らなかったし何かしらの理由で鉄血を離反したのかもなぁ」

 

 

 彼女は少なくともこちらへ危害を加えようとはしなかった。これが答えではなかろうか。

 ……さて、何もやることが無くなった。スピアのカフェにでも行こう。

 

 

「誰か整備士共を止めろー!!!!あいつ等ゴリアテの中に入ろうとしてやがるぞーーーー!!!!」

 

 

 ……これを片付けたらな。

 

 あぁ全く、本当に今日は色んな事が起きやがる。明日は平和であってくれよ!!

 

 

「行くぞポチ!」

 

≪ほいさっさ!!≫

 

 

 





緊急放送裏話

イージス「社長!!!!!」
社長「イージス、どうしたんだ」
イージス「私が貴方様を守る盾となります!!!!!!!」
社長「お、おう?そうか、頼む」
イージス「はい!!!」

以下、ジャベリンも連れられてリホーマーとの商談シーンへ。



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関西弁これで大丈夫か……?
実はリホーマーの試作機云々、偶々生まれてしまったオリジナル設定です。傭兵日記の世界線に合わせていたら生まれてしまいました。ジャベリンくんとポチ鉄血工造一回行ってるからね……。
リホーマー、アサルターをお貸しいただいた上にこのオリジナル設定も認めてくれたoldsnake様に最大限の感謝を。本当にありがとうございました。

コメント及び評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いします!!それではまた今度!!!

次、季節ネタです。

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