傭兵日記   作:サマシュ

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今はクリスマス…今はクリスマスだ……。
ということで季節ネタ。内容はタイトルの通りです、どうぞ!





番外編 傭兵と少女とクリスマス ― Please give me my name !!! ―  

 

「……寒いな」

 

「だね」

 

 武器庫へと繋がる大通り、クリスマス一色に彩られた商店街。寒空の中を俺はG11と二人、白い息を吐きながら歩いていた。

 商店街では何処か異国情緒溢れるようなクリスマスソングが流れていた。何処の店にも店頭にはクリスマスツリーやらサンタクロースの売り子やらと、皆この日を楽しんでいるようだった。

 

「プレゼント、どーすっかなぁ」

 

「一応メモ貰ったんでしょ、それ見たら?」

 

「そうだな…」

 

 俺は懐からメモを取り出した。

 実は俺はおつかいを親父…墓守に頼まれている。と言うのもあの男は墓園の管理のみならず、孤児院を運営している。だからそこの子供達のためにプレゼントを買わなければいけないのだ。不幸にも彼は腰を痛めたらしく動けない。更に葬儀屋は葬儀屋で子供達の相手をしなければなくて手が空いていなかった。

 そこでたまたま墓参りに来ていた俺に白羽の矢が立った訳だ。ポチ? アイツは良い奴だったよ、多分子供にもみくちゃにされてるだろうよ。

 因みに隣を歩くG11は休日だからと俺のところに顔を出しに来たからご同伴を願った。嫌な顔をしなかったのは結構嬉しかった。

 

「えーと…やっぱ今年も多いなぁ」

 

「やっぱりこの地区でも孤児って多いんだね」

 

「まぁな。うちが比較的豊かとはいえ親に捨てられる子ってのはやっぱり出てくる。その不幸な子を一人でも多く育ててやるのが墓守の孤児院さ」

 

「グリフィンじゃあんまり見ないよそんなの」

 

「そりゃなG11、武器庫管理区にとっちゃ人間ってのは資源に等しいんだよ。だから教育とか社会福祉をちゃんとしてやって働いてくれなきゃ困るんだよ」

 

「ふぅん、そっか」

 

 メモの中には沢山の品物の名前が並んでいた。この品目なら確か商店街の雑貨屋で全部揃うな。さっさと揃えて墓守の所へと帰ろう。

 

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――

――――――――――

―――――

――

 

「親……墓守、買ってきたぜ」

 

「ん、ご苦労さん。別に親父って呼んでもいいんだぞ」

 

「うっせ。何処に置いとけば?」

 

「あー、俺の書斎に頼む」

 

「了解」

 

 買い物を終えた俺とG11は墓守の居る墓園の小屋へと来ていた。

 彼は暖炉の前でコーヒー片手に雑誌を読んでいた。俺は彼の指示通りにG11と一緒に書斎へと荷物を置いた。

 荷物を置いた後はそのまま腰痛に呻いている墓守の下を去って社員寮へと向かった。途中、ポチが満身創痍で近づいて来ていた。

 

≪ご”主”人”~”~”~”何”で”私”を”あ”ん”な”地”獄”に”ぶ”ち”込”ん”だ”ん”で”ず”が”ぁ”あ”ぁ”ぁ”あ”!!!!?!?!??≫

 

「いや、ポチ……アレは必要な犠牲だったんだ。お詫びにラクダステッカーあげるから」

 

≪わぁい≫

 

「即落ち……」

 

 心の底から唸るポチを宥めた後、抱き上げてまた歩く。

 社員寮が見え始めたころに、ふと隣のG11が口を開いた。

 

「そういえばさ」

 

「ん?」

 

「ジャベリンの本名って何て言うの?」

 

「えっ」

 

≪あ、それ私も気になります≫

 

 突然何を言い出すかと思えば、俺の本名について聞いてきやがった。しかし困ったものである。俺の本名……一応名字は分かっているのだが、肝心の名前は全くもって分からん。

 それに仕事柄、互いにコードネームで呼びあってるので別に名前が無くとも何の問題も無かった。ある意味これが俺の本名が未だに無いという原因の一つじゃある。あと偽名もあったし。

 ……仕方ない、別に隠している話でもないし正直に話すとしよう。

 

「俺の本名なぁ……名字は分かってるんだ名字は。ナトリっていうんだけどね」

 

「ナトリ……何で名前は分かってないの?」

 

「名前が無くとも“ジャベリン”っていうのがあるから、困らなかったんだ」

 

「そっか」

 

 俺の言葉を聞き顎に手を当てて考え始めるG11。

 どうしたんだろうと彼女を見ていたら、思い出したかのように顔をこちらに向けた。

 何を言いだすのやら。

 

「一緒に考えようよ、名前」

 

「……んん?」

 

「ほら、ちょっとスピアのカフェまで行こ」

 

「お、おう?」

 

 これは何だか変な方向へ行きはじめたぞ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むむむ……」

 

≪なかなか決まりませんねぇ……≫

 

「……」

 

「ジャベリン、お前未だに考えてなかったんだな」

 

「五月蠅いぞスピア。俺だって予想外なんだよこういうの」

 

 

 またまた場所が変わって武器庫社内のカフェ。一人と一匹が紙の辞書を開いて唸っている。このご時世別に紙媒体である必要は一つもないが、まぁ偶々目に付いたからあんな風に悩んでいるのだろう。

 その様子を見ていたスピアが面白がって茶化すように俺に向かって言った。

 

 

「俺もお前の名前考えてやろうか?」

 

「お前は大人しくおかわりの紅茶を作ってくれ。丁度“愛しの”スプリングフィールドも居るんだからそっちと仲良くしたらどうだ?」

 

「…………」

 

スピアさん、三番席にサンドイッチとアールグレイを

 

「……分かったよスプリング。後で覚えとけよジャベリン

 

「あの女性に惚れられたのが運の尽きだ、諦めろ」

 

 

 困ったもんだなぁと呟きつつサンドイッチを作り始めたスピア。

 因みにこの副隊長、見て分かる通り俺もお世話になったあのスプリングフィールドにこのカフェを手伝って貰っている……というよりは押しかけられて有無を言わさず一時雇用の形になったと言った方が正しいだろう。

 本人は案外満更でもないようだ。さて、確かスピアはもう一組正規軍関係者にも追いかけられていた筈だが……どうなるんだろうなぁ。

 

 

「うーん、眠くなってきた……」

 

≪早くないですか!?≫

 

「だって今日外出したし疲れたんだもん……ぐぅ」

 

≪ちょっ、G11!?≫

 

 

 ……G11が寝始めた。

 どうせ起きないので俺はカウンターにお代を置いておき、彼女を抱き上げてカフェを出る。

 結局名前決まってないなぁと思いながら背中の彼女へと思いを馳せる。ここ最近、彼女とはあまり会うことが無かった。仕事の都合もあるが……こうやって集まるというのは久々だった。

 

 

「そういえばポチ、どんな名前が出てきたんだ?」

 

≪それいきなり聞いてきますか?≫

 

「そりゃお前、折角考えて貰ったんだ。気になるだろ?」

 

≪そうだとしても教えてあげませんよ!だってこれご主人に対するクリスマスプレゼントなんですから!≫

 

「嬉しいことを言ってくれるなポチ。まぁその名前が書いてあるメモは拝借してるんだがな」

 

≪ご主人!?≫

 

 

 ひらひらと一枚の紙をポチへ見せつつ、何としてでもその紙を取ろうとしてくるのを悠々と避けて部屋に着いた。ドアを開ければ「にゃおん」とオスカーが足へと纏わりつき、そして俺達を誘導するようにソファー付近へと歩いていく。俺はG11をソファーに寝かせてジャケットを掛けてやった。

 G11が未だ起きないのを確認しつつ、椅子に腰かけてメモを確認する。

 

 

≪ごーしゅーじーんー、返してくださいよー≫

 

「別に減るもんじゃないだろ?えーと……なるほどな」

 

 

 膝に乗って来たオスカーを撫でつつメモを読む。

 そこには様々な名前が記されていた。存外に多くのアイデアを出していたらしい。

 アルフレート、アドルフ、クラウス、ダニエル……響き的にはドイツ語圏辺りの名前か……ふむ、これにしておこう。

 

 

「よし、決まった」

 

≪……結局名前自分で決めちゃうんですね≫

 

「お前らが考えてくれたんだからそれでイーブンだ。ポチ、俺ちょっとカフェ行ってくるから、オスカーとそこの眠り姫をよろしくな」

 

≪…了解です≫

 

 

 とある名前に丸を付けて、序でに一つ書き加えておいた。

 これはある意味ささやかなクリスマスプレゼントにもなってくれるだろう。あいつが喜んでくれるのかは別としてな。

 

 さて、カフェでティータイムと洒落込もうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

「ん……」

 

 

 落ち着く香りに包まれてあたしは目が覚めた。

 上半身を起こして周囲を見渡してみたら、見慣れた景色が目に入ってきた。どうやらあたしはジャベリンにここまで連れてこられたみたいだね。ご丁寧に彼のジャケットがあたしに掛けられていた。

 

 

「んー……ポチ居る?」

 

≪んぇ…いますよ?≫

 

「ジャベリンは?」

 

≪カフェです。多分紅茶でも飲んでるんじゃないですかね≫

 

 

 足元に横たわってるポチが言うように、ジャベリンはあたしを寝かしつけた後にまたカフェに向かったようだ。

 むぅ……途中で寝てたとはいえ頑張って名前考えてたんだけどなぁ…ジャベリンも起こしてくれたら良かったのに。一緒に考えるのも吝かじゃなかったんだけどね。

 

 ぐぐいっと伸びをしてあたしは立ち上がる。ちょっとだけ肌寒いのでジャベリンのジャケットを羽織ることにした。勿論ぶかぶかだけど暖かいのは変わりない。

 

 

「……あ、メモ」

 

≪あぁ…ご主人が勝手に名前決めてましたよ?≫

 

 

 何だって? ジャベリンも中々酷いことをするね……後で文句でも言ってやろう。

 さてさて…メモにはなんて書いてあったっけ……あれっ?

 

 

「……アレクシス・ナトリ?」

 

≪えっ、ご主人そんなもの書いてたんですか?≫

 

「うん…ほら、ここ」

 

≪あっ、本当だ……おや、もう一つ書かれてますよ≫

 

 

 彼はこの名前を選んでくれたようだ。シンプルなのが好きなのかな?

 それはそうと、ジャベリンはまだ書置きをしていたらしい。丁度ジャベリンが選んだ名前の真下辺り、そこには『エルフィン(小妖精)』という走り書きと共に、あたしに向けたのであろう一つのメッセージが残されていた。

 

 

「『親愛なる家族へ、これは君が戦術人形になる前に送られるはずだった名前だ。あの時を覚えているだろうか、初めて出会った時を。あの小屋で見つけた君はまるで一人ぼっちの妖精の様だった。だからこの名前を送る。メリークリスマス、良い夢を』……か。ジャベリンも中々クサいことしてくれるね……」

 

≪そんなものが…あの人変にロマンチストですからねぇ……それで、どうするんですか“エル”≫

 

「…取り敢えずは”アル”の所かな」

 

 

 エルフィン……それがあたしの名前。G11という戦術人形に贈られた唯一無二の名前……か。

 流石に404小隊では迂闊に公言出来ないよね。416とか45とか……。これはあたしとジャベリンとポチとオスカーだけの秘密。家族だけしか知らない秘密……いいね。

 

 

≪じゃあさっそく行きましょうか≫

 

「うん」

 

 

 あたしは早速ポチ達とカフェへ向かう。ジャベリン……アルにあたしの名前を呼んでもらいたいから。

 きっと彼はカフェで待ってる。早く行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 親愛なる家族へ。あたしに名前をくれてありがとう。

 

 

 

 

 

 

 






なんやこのヒロイン。
とか思った貴方。実は私も思ったのよねクシシシシシシシ(インド人)

というのはさて置き、はい、G11が出したかったのでやりました。この子ジャベリン君との関係的にこういうの有ってもおかしくないと思いましてね……。
次回は武器庫訓練兵による各部隊長記録を書くか、やべーいゴリラの所へ行こうかで迷っております。しかし私はコミケへ行くので更新どうなるのかわかりません!!
まぁのんびりゆるりとお待ちくださいませ。

感想及び評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いします!!それでは!!!




目安箱的なサムシング作りました。こんな話が見たいとかありましたらどうぞ。ネタ詰まりが起きたらどれかを採用します。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=228986&uid=267431
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