傭兵日記   作:サマシュ

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ちょっとした物語の展開を進めようとする悪あがきです()
墓守の下に一人のとある女性が訪ねてきます。果たして……それではどうぞ。







思惑は動き出す?

静かなとある朝、灰色のロングコートを着た男性、『墓守』が箒を片手に霊園の入り口へと向かっていた。空はどんよりとした曇り模様でそろそろ雨も降りそうな雰囲気だった。

 

 

「……傘でも持ってくれば良かったか」

 

 

 墓守は独りごちながら入り口の掃除を始める。そこまで汚れているようには見えないが、墓守にとって其処は重要ではなかった。

 というのも彼は“寝惚けた頭を覚ます為”にこの掃除をやっている。一見意味の無いように思えて、その実彼は今日やることの整理だとか、来客の予定を思い出したりだとか、スケジュールの組み立ても行っているようだ。

 

「はてさて今日の来客は誰だったか…あぁそういえば自然保護区から一人墓参りにくるな。アイツは確か浄土真宗の墓だったか……緑茶の茶葉はあっただろうか」

 

 文字を描くように道端を掃きつつ、独り言を呟く墓守。

 頭の整理もついたところでそろそろ掃除も切り上げようかというところに、一人の女性が歩いてきた。墓守は彼女を一目見て、少し驚いたような顔を浮かべた。

 

 

「ほう、珍しい来客があったもんだ」

 

「久しいねハワード。最後に会ったのは何時かしら」

 

「俺が国家保安局に辞表叩きつけた時以来だったかなぁ、『アンジェリア』?」

 

 

 墓守に『アンジェリア』と呼ばれた女性は、青のかかった黒髪のアジア人であった。アンジェリアは墓守と面識があるようで、彼に対して砕けた口調で話しかけてきた。

 墓守は空の様子を見ながら彼女へ着いてくるよう促す。

 

 

「まぁ立ち話も何だ、お前さんにゃ積もる話もあるだろうて。雨も降りそうだ、屋敷に来てくれよ」

 

「言われなくとも。私は貴方に用があって来たのだから」

 

「プロポーズならお断りだぜい」

 

「分かってるよ、愛妻家め」

 

 

 整然と並ぶ墓群を抜けて、屋敷の裏庭へ入る両名。

 勝手口から墓守は屋敷の中へ、アンジェリアもそれに続く。勝手口はちょうどダイニングに続いており、そこでは葬儀屋とG41が食事を取っていた。

 葬儀屋が墓守達に気付き、会釈をする。その姿を見てアンジェリアは驚いた。

 

 

「へぇ…ハワード、人形嫌いの貴方がついに人形を雇ったの?しかも二人も!」

 

「馬鹿いうな、友人の忘れ形見だよ。葬儀屋、応接室を使うから紅茶でも用意しといてくれ」

 

「分かりました」

 

 

 葬儀屋はそう言ってまた食事に戻り、そのついでで口周りを汚していたG41を拭いてやる。アンジェリアはその光景に一種の微笑ましさを感じつつ、墓守の後を着いて行った。

 応接室はダイニングを抜けた先、玄関の右方近くにあって、防音もしっかりされているというのは墓守の談だ。重苦しい音を立てるドアを開き、対面する形に設置された少し色あせているソファへと二人は座った。

 その直ぐ後に葬儀屋が入ってきて、お茶とお茶請けを出して退室した所で話が始まった。

 

 

「それで、何の用だ。態々一人でこんな所まで来たってことはそれなりに理由があるんだろう?」

 

「話が早いね。もう少し知り合いと話そうとは思わないの?」

 

「午後から来客があるんだ。そんな勿体ぶっても無駄に時間を浪費するだけだぜ」

 

 

 墓守はティーカップに口を付けながらアンジェリアを見る。彼女はその軽薄な口調とは裏腹に、至極真面目な表情を浮かべている。

 墓守は、少し面倒な案件であることを直感した。

 

 

「ふふっ、貴方らしい。いいよ、さっさと話そう……ジャベリンって男は知ってる?」

 

「……知ってるも何も、俺の息子だぞ…詳しく言えば養子だが」

 

「あら、人形だけでなく息子まで貰っちゃって……随分と幸せそうね」

 

「皮肉かアンジェリア?」

 

「まさか。心の底から羨ましいよ」

 

 

 そう言って笑うアンジェリアに墓守は鼻を鳴らし、また紅茶を一口含んだ。

 

 

「それで、ジャベリンに何の用があるんだ?あいつぁ今マーカスに拉致されてどっかに行ってるぞ」

 

「別に急ぎの用事でも無いんだけれどね、少し重要参考人として身柄を引き渡して欲しいの」

 

「何?」

 

 

 墓守がお茶請けに伸ばした手を止め、驚いたような顔でアンジェリアを見る。そして同時にジャベリンがまた何かやらかしてしまったのかと考えた。

 真正面に座るアンジェリアはその墓守の様子を気に留めることなく話を続ける。

 

 

「はっきり言っておきましょう。武器庫所属、槍部隊隊長ジャベリンには蝶事件首謀者とされるフリッツ・リフィトーフェンの協力者という疑いが掛けられてるの」

 

「ジャベリンが?アンジェ、冗談も休み休みで言ってくれよ」

 

「私が冗談を言う人間に見える?」

 

 

 アンジェリアは相手を射貫くように墓守を見る。

 墓守は困惑していた。彼は掛け値無しにジャベリンの事を信頼していた故に余計に信じられない様子である。かといってアンジェリアが嘘を言っているようにも感じられない。

 

 

「そうだな…いや、だがねアンジェ。何故ジャベリンを召喚したいために俺の所に来たんだ?リフィトーフェンのバカの捜索はグリフィンも正規軍も国家保安局もやってる案件だ。武器庫に直接頼めばいいじゃないか」

 

 

 墓守の言葉にアンジェリアは少し呆れた風に首を振る。

 

 

「はぁ……出来るなら最初からそうやってるわよ。何故かは知らないけどね、武器庫に色々根回ししようとしたら、それを感知したかのようにリフィトーフェンが邪魔してくるのよ。あの男は自分の立場を理解してなのかちょっとだけ尻尾を出してはこっちを釣ってくるの。対象の確保が最優先な分、そっちの槍部隊隊長様のことは後回しになる訳」

 

「おいおい……それならスピアを通してみたらどうなんだ?」

 

「アイツはアイツでこっち案件の事は大体理由をつけて断ってくるのよ。あいつの監視代わりに置いたウチの戦術人形に感知されるのを嫌ってね」

 

 

 どうやらアンジェリアは相当苦労しているようだった。

 少し不憫に思ったのか、墓守は慰め程度にお茶請けのチョコレートを差し出すが、アンジェリアはそれを手で制して要らないという意思表示をする。

 

 

「私は貴方の孫じゃないんだから。大丈夫よ」

 

「そりゃ失敬……まぁ何だ。アンジェリア、俺が一つ言えることと言えば、ジャベリンを引き渡すのは無理ってことだけだな」

 

 

 その様子を見て問題なさそうだと判断した墓守は、はっきりとそう言う。

アンジェリアはそれを聞き、まるで最初から知っていたと言わんばかりに驚くことはなく、平然としていた。

 

 

「だと思った。貴方、身内には優しいし」

 

「んな訳ないだろ。こりゃ俺にはどうにも出来ないからそう言ってるだけだ。マーカスに報告ぐらいする」

 

「そう。ならいいわ、貴方の所の社長がいい反応を示してくれればいいんだけど」

 

「どうだか。期待はしておくなよ?」

 

 

 そう言って墓守は紅茶を飲み干し、そしてもうこの話は終わりだと言わんばかりに立ち上がりドアへと向かう。対してアンジェリアも特に何も言う事も無いのか、墓守へと着いて行く。すぐそばの玄関から外に出て、彼女を見送ることとなった。

 

 

「あんまり無理はすんなよ。お前、ジャベリンと似たもの同士だからな」

 

「またそんなことを言う。だから、私は貴方の孫じゃないんだから心配しなくていいのよ」

 

「ひでぇなぁ…身内には優しいんだぜ俺ぁよ。そんぐらい許したらどうだアンジェ」

 

「お気遣いどうも。何かあったら連絡頂戴、どうせそっちの諜報部通してくるでしょ」

 

「あい分かった」

 

 

 それじゃあ、と踵を返して帰路につくアンジェリア。

 墓守は彼女の姿を見えなくなった後に、懐からマッチと煙草、携帯灰皿を取り出した。

 すぐさま煙草に火を点けて、それを目いっぱい吸い込む。

 

 

「……ふぅ、面倒なことになりそうだ」

 

 

 墓守は小雨の降る空を見上げる。もう少しすれば本降りとなりそうだろうかと墓守は独り思う。

 

 

「ジャベリンよう……お前、本当碌な目に遭ってねぇよなぁ。もう少し平穏に生きていられねぇのかよ全く」

 

 

 墓守の呟きは吐き出された煙と共に消えた。

 それから打って変わって彼はスケジュールを思い出して次の来客の準備を行う。ジャベリンの事を心配するのは良いが、それよりも来客の相手が優先ということだろう。

 墓守はせっせとお茶請けの準備や未だ寝ているウロボロスを起こしたりと少し忙しい一日を過ごしていく。

 

 しかし、果たして先ほど彼の言った願いのような呟きは実現されるのだろうか。それを知る時は、まだ遠い。







ここでリフィトーフェンのフルネームと墓守おじさんの過去がちょっとだけ判明しちゃいましたねぇ……。なんか墓守もキーキャラになってない???
あと武器庫魔境すぎない?俺もそう思う。(セルフ問答)

さぁ出て来ましたアンジェリア。やはり蝶事件の事が絡んでいる分、外せない存在でしょう。
それにジャベリン君はやはりあの事件の渦中に居た訳ですから疑われてしまいますねそりゃ。
さて次回はコラボ回。とある義足おじさんのところへ……お楽しみに!!

それではまた今度!!
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