ちょっと長いですが、それではどうぞ!!!
「ボルゾイ、煙草ねぇか?」
「ねぇよゾルディ。キャベツでも食んでろ」
作戦が開始されて数十分、(代理人に担がれてすぐさま敵拠点に着いた)俺とポチは指定されていた場所に向かっていた。もう二度と代理人に担がれたくない。ジェロニモもグロッキーになってた。
目の前の二人はどうやらサボりでここに居るようで、もうしばらくで何処かに行きそうだ。というかゾルディって奴が本当にキャベツ食べ始めた。それ食って大丈夫なやつなの?だいぶ黒ずんでたよ?
…………あー、腹押さえ始めた。連れが何処かに連れていってる……若い奴って本当チャレンジ精神あるよな。
一先ずこれは好機と、俺はすぐさま目標の建造物へ急ぐ。敵はこっちが死んだと思っているのか警備が薄い。何の接敵もなく建造物の内部へ入る。ポチに先行させ索敵させる。一階には誰も居らず、二階には三人ほど机で酒盛りをしており武器は持っていなかった。
MP5Kにサプレッサーを取り付ける。壁に身を預け、一呼吸して室内へ突入した。向こうがこちらを視認した時にはもう遅い。引き金を引き、三人もろとも無力化させた。ポチからの信号を受けとる。三階、四階には誰も居らず、後は屋上のみとなった。
「代理人たちは上手くやってるといいんだが……」
リロードをしながらそんなことを呟く。多分あいつらは敵拠点正面ゲートで演劇でもやってる最中だろう。
一応、もしものためにさっき倒した奴らからマガジンを頂き、立て掛けてあった何処かのPMCのエンブレムが付いたAK-12を持っていく。
こいつらPMCの輸送車襲ったっぽいな?おぉ怖……どうなっても知らんぞ。
屋上に到着。ドアに簡易的なバリケードを作り、適当な柵にロープをくくりつけた。そして正面ゲート方面へ銃を向ける。スコープを覗いた先には複数の人間に囲まれて歩いている代理人とジェロニモの姿があった。
アイツらまんまと引っ掛かってんな。
スコープ越しに彼女たちを見ているとふと代理人がこちらに顔を向けて、何か喋っていた。
「た、の、み、ま、す、よ……か」
言われなくても分かってる。取り敢えず小さく手を挙げておいた。
さて、彼女たちが行動を起こすまで暇だな。バッグに確かチョコバーがあったはずだしそれを食べよう。
バッグを探りチョコバーを取り出して食べる。ポチが近づいてきたが食べれるものじゃないので手で制止した。空を見上げて、ふとM16と約束したことを思い出す。彼女、何の酒を飲むのだろうか、彼女は酔ったらどうなるのか、なんてとりとめもなく考え耽る。あと、彼女の連絡先知らないな……なんて考えもしたがそれはグリフィンに聞いてみればいいかと自己解決。グリフィンに問い合わせる勇気はないけど。
ボーッとしているうちに五分ほど経過した。向こうの様子を確認しようとして身を乗り出した瞬間………………
目の前の建物の一室が爆発した。
「何事!?」
急いで銃を構える。観察していると二階の窓から映画みたいな飛び出し方で代理人とジェロニモが出てきた。怪我はないようでそのまま正面ゲートへ走っていっている。
警報が鳴っている。彼女たちへ敵が集結していっている。さぁさぁ仕事の時間だ。
「アイツらの意識をこっちに向けないとな!!」
先ずは蠢いている集団を指揮していた奴へ発砲。鉛弾はそいつのこめかみへ綺麗に入っていった。突然倒れたそいつに気がついた集団がこちらへ制圧射撃をしてくるが、腕が悪いのか使ってる銃の状態が劣悪なのかそこまで効果がない。俺はとにかくその集団へ撃ち続ける。ポチにはドアを警戒させておく。何人かこちらに走ってきたが難なく対応、ふとジェロニモ達を見やれば正面ゲートに到達して車に乗り込んでいた。
俺もそろそろ出るか。
武器やなんやらを仕舞ってポチを背負う。だいぶ重くなったが仕方なし。急いでロープを伝って降りていく。先にポチを指定の座標へ行かせ、俺は走りながらジェロニモに連絡をする。
「こちらジャベリン、聞こえるか?」
『こちらジェロニモ、聞こえてるわ、どうぞ』
「俺もそっちへ向かう、お前たちは先に行っててくれ」
『了解、絶対生き延びなさいよ。まだ貴方に聞きたいことがあるんだから』
「あいよ。駄目だったらそのまま逃げてな」
『馬鹿言わないで、その時は引き摺っても連れて帰るわよ?』
「そりゃありがたい。ジャベリン、アウト」
目標地点へ急ぐ。追いかけてくる奴らの数は一歩進むごとに多くなっていき、煙に巻くことも出来なそうだ。敵から鹵獲したAK-12で弾をぶちまける。これだけでも効果はあるようで奴らの動きを少し止めることができた。すぐに腰のグレネードを投げる。敵が逃げたりするものの、人形はそんなことお構いなしに突っ込んでくる。そんな奴には9mmの嵐をくらわせる。これを何度も繰り返して何とか敵との距離を離した。
俺も俺で随分と映画みたいなことやってるなと焦り始めた頭で考えていたがこれがいけなかった。
「ぐっ!!?」
左の太股と腹部を撃たれた。もちろん支点を失った俺は倒れる。幸い弾は貫通していたようで生き残れば助かるはずだがどちらにせよ運が悪すぎる。
敵の声が聞こえてくる。急いでスモークグレネードを正面にありったけばらまいた。これで多少はどうにかできる。近くにあった岩によっかかり、止血をしてHK417を構えて待ち受ける。救難信号をジェロニモに出しておいた。これで俺が死んでも死体は持ち運んでくれるだろう。
敵の足音が聞こえる。ちょいと死にかけてるのになんでこんなに神経が研ぎ澄まされているのやら。
「全く映画じゃねぇんだぞ……勘弁してくれ」
姿が見えたやつからどんどん撃ち殺していく。人形、人間、蟻の大群が如く湧き出てくる。
なんだこいつら本当。そんなに俺に執心してもなにもでないぞ。精々血が出るぐらいなんだが。
最早意識と動作が解離し始めた。敵が多すぎる。どんどん撃っていくうちに弾も切れて疲労が溜まり始める。血も止血したとはいえ流しすぎた。意識が朦朧としてきた。煙幕も晴れ始める。絶対絶命。
(こりゃ無理だぜ、全くよ。映画のヒーローでもないのにこんなことやるもんじゃないわ)
目を閉じる。が、諦めた訳じゃない。
(とはいえ、このまま敵に捕まりゃ晒し首だな)
レッグホルスターからガバメントを抜き構える。
「殺せるだけ殺すぞ……」
迫り来る奴らに照準を合わせ指をトリガーへ掛けた瞬間、
敵が、
爆ぜた。
黒い影が躍り出て銃をぶっぱなす。
その光景を見て俺は一人ごちた。
「…………今なら神を信じれる」
「そうね、生きてるかしら?」
聞きなれた声が聞こえた方向を見やれば銀髪の少女が居て、俺に肩を貸す。目の前の戦場ではメイド服の女性は舞台で踊るかのように敵を蹂躙している。強すぎ。一人で軍隊とタメ張れるな。少女に肩を借りながら俺は安堵感に包まれた。ポチが足元に寄り添う。
なんとか、生き残ったな……。
「生きてるよ、ジェロニ「それと」……む」
彼女の言葉に答えようとしたが、そこに彼女が被せるように言う。
「今からは"ジェロニモ"じゃなくて、"416"って呼んで」
「……分かったよ、"416"」
ヘリのローター音が聞こえる最中、ジェロニモ……いや優しく微笑む416の言葉に答えた俺の意識は闇へ落ちた。
……俺は、やっと彼女に信頼されたんだな。
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side ジェロニモ
私たちが代理人と呼ばれる戦術人形と手を組んで敵の拠点へ殴り込みをするとなったときは、心の底から驚いていた。何せあの大集団に対してこちらは三人だ。ファンタジーと言っても差し支えは無かった。彼女の作戦を聞いた後に大それて「Copy that」なんて言ったが、作戦実行直前までは不安でしかなかった。
だが、それ以上に敵側も愚かなもので代理人が捕虜を連れてきたという言葉を鵜呑みにしていた。連行されている間、代理人がジャベリンが居るであろう建物へ唇を動かして何かを伝えていたが、周囲にバレるような事は無かった。
そのまま正面の建物へ連れ込まれる。一人の男が私に触ろうとした瞬間に代理人が周囲もろとも殺害。そのまま私の拘束を解き、代理人曰く重要なデータのある二階へ向かう。接敵はあったものの全て対応できた。
二階の部屋へ到着したら代理人がデータをすぐに抜き取った。が、爆発物が自衛に仕掛けられていたのを見つけ急いで部屋から出る。数瞬、大きな爆発が起きた。私と代理人は急いでその場から離れる。窓を突き破り地面へ着地し、走る。敵が追いかけてくるが、ジャベリンが支援を始めたのか直ぐに多くが彼の居る建物の方向へ意識を向け始めた。
正面ゲートにあった車へ乗り込む。ジャベリンから通信が入り、彼が軽い冗談とはいえ洒落にならないことを言ったので叱咤をしておいた。
代理人に追手を迎撃させながら車を目的地へ向かわせていると、突然ジャベリンから救難信号を受け取った。
一瞬怒りを覚えたが直ぐ鎮めて反対方向に引き返す。驚く代理人に事情を話しながらアクセルを踏み込んで車を目一杯走らせる。
願うなら早く間に合ってほしい。彼にはもっと聞きたいことがあるんだ。彼の会社の事や彼の持っている技術、好きなもの、休日はどんなことをしているのか、それを共有したい。私がより完璧に近づくために。何か邪な考えが出てきてしまったが関係ない。
途中、走っているポチを見つけ、代理人がすれ違い様に掴み上げる。
急ぐ、急ぐ。ふと遠くに不自然な煙が見えた。おそらく彼処にジャベリンが居る。気持ちが逸っていくが、何とかそれを押さえつけて、代理人に敵が居たなら心置きなくやってほしいと伝える。
あと10m、強い衝撃と共に代理人が前方へ大きく飛んでいく。数m、車からポチと飛び出し彼のところへ。
「…………今なら神を信じれる」
そう呟いていた彼へ声を掛ける。
「そうね、生きてる?」
あぁ、良かった。生きていた。私の中で歓喜が荒れ狂う。彼へ肩を貸す。彼の顔は安心しきった顔だった。
彼が私へ答える。
「あぁ、生きてるよジェロニ_______」
でも待ってほしい。私はその名前ではなく、無性に「HK416」として呼ばれたかった。だから彼の言葉に被せる。
「それと」
「む」
不満げな顔だったが無視。
「今からは"ジェロニモ"じゃなくて、"416"って呼んで」
私は、そういった。対して彼はちょっと驚きながら少しはにかんで言う。
「……分かったよ、"416"」
そして気絶した。少し焦ったが呼吸は正常だったため、安心した。敵を殲滅した代理人が戻ってきた。彼女も気絶したジャベリンを見て驚いたが直ぐに元に戻った。
味方の回収用ヘリの音が聞こえてくる。私たちを丁度見つけたようで、地上に降りてくる。パイロットに重症が一人居ることを伝えて直ぐに病院に行くように仕向けた。飛び立つヘリの中ではポチが心配そうにジャベリンの近くに居る。代理人はいつもの澄まし顔だが心配なのは変わりなくジャベリンの腕に手を置いていた。
私は…………彼の手を握っている。
私のAIがそうした方がいいと判断したからだ。
そういえば、私は最近分かったことがある。それはジャベリンに対する感情についてだ。私がジャベリンに向けている感情は、そう、"親愛"だ。一緒に居て楽しい、だとか友人のように接することができるなど、様々な理由が挙げられる。私たち戦術人形は人間に対してある程度の好意を持つように作られていると聞いたが、正にこれのことだろう。
「"416"……ね、ふふっ」
一人そう呟く。ただ代理人に聞こえていたのか「そうですよ416、随分と可愛らしいですね416。ええ、とっても可愛らしいです416」と弄られる羽目になった。
その弄りは病院に到着するまで続いた。
ただまぁ、こういうのも悪くないだろう。近付く病院を見ながら、私は思った。
あれ…………おかしいな?416がヒロインみたいになってるぞ……?
当初はG11をジャベリンとよく絡ませようと考えていたのですがどうやら予想外のことになりました。
収集は着くからまだいいかな!!!!
もう、勢いだけでやってたから仕方ない。書き貯め作るの無視してやってるから結構大変()
今度は流石に書き貯め作業入りますので三日後に更新予定です。
ま、何はともあれ、これからも書いていきますよー。
感想、及び高評価は作者の執筆の栄養になります。ですので遠慮なさらずどんどんください!!それでは!!