傭兵日記   作:サマシュ

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トンプソンとジャベリンの飲み回だぞ。
それではどうぞー。


傭兵、任務帰りに飲むってよ。

 

 

79日目 曇

 

俺たちの仕事が終わった。というかうちの社長によって終わらされた。どうやら社長は俺たちと同じクライアントに頼まれてこの化け物の調査及び排除を頼まれていたらしい。そしてなおかつ俺たちと合流するようにも言われていたようだ。しかもそのクライアントは正規軍と来た。なんだそれマジかよ。

 

……あれ?なんでクルーガー社長その事言わなかった?

社長に聞いてみれば、あいつの事だからサプライズみたいなことでも考えていたんだろうという答えを頂いた。

……すまねぇクルーガー社長、あんたの髭を毟る必要が出てきたようだ。お茶目なのはいいけど限度がありますよ……トンプソン、いいよな?

 

無言でそれを伝えるとメインのトンプソンが「それは止めておけ」と言った。ダミーは「いいぞやってやれ」なんて言ってる。本当正反対だなお前ら。

 

トンプソンに蛮行を諌められ、落ち着いた俺は対象の写真を何枚か撮って送っておいた。これでもういいだろ。

後はクライアントからの連絡を待つだけだ。それまでに社長から色々と聞くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

80日目 雨

 

……社長って何者なんだ。彼の話は至って普通の昔話だがその登場人物が濃いすぎる。

当時E.L.I.Dの解剖をよくやっていたが、今は鉄血工造で研究者をやっているマッドな同僚だとか、刀一つでE.L.I.Dの集団に突っ込む切り込み隊長だとか……いや、まあ、対E.L.I.D部隊がみんなそう言うわけでは無いらしいがいかんせん色々とな。トンプソンが凄い興味を持って聞いてる。絶対真似するなよ。真似するならさっき社長が話してた生存率が一番高かった部隊の真似をしろよ?万が一でも社長の真似したら死ぬからな。

 

俺がトンプソンの様子をはらはらしながら見ていると、丁度クライアントから任務成功の報を頂いた。社長もそれが届いたようで、そろそろ切り上げるらしい。数分で回収ヘリが来るそうだ。

 

……今日は飲まないとやってられないな。トンプソンも誘っておこう。

 

 

 

 

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(トンプソン)という戦術人形がたまに立ち寄る喫茶店は、夜になるとBARになる。いつもはダミーを本社に帰らせて、一人でしっぽりとウィスキーを飲んでは軽く酔っ払って帰るのだが今日は違う。

 

「仕事なんてクソ食らえだ……そうだろトンプソン?」

 

「くくっ、真面目なジャベリンらしくないな?」

 

私は任務でバディを組んだ男、ジャベリンとカウンターで飲んでいた。彼はもう出来上がっており、頬がほんのりと赤くなっている。何度か見た真面目だがさっぱりとした彼ではなくなり、仕事や上司の愚痴を言う、何だかパッとしない平凡な男になっていた。

普段とのギャップがあり、何処か可愛らしい。

 

「ばっきゃろいっ……俺だってな、愚痴の一言や二言は言いたいんだよぅ……急に仕事が増えやがったしよ……クルーガー社長が変なお茶目発揮したりよ……」

 

「おうおう、どんどん吐いてけ。溜め込んだら不味いからなー」

 

「うう……ありがとうなぁトンプソン……」

 

そう言いながら私に寄りかかってくるジャベリン。これじゃどっちが男なのか分からない。というか、手間の掛かる弟を持ったみたいだ。年齢は普通に彼の方が上だけれども。何となく自分の手が彼の頭へ動く。そのままわしゃわしゃと彼の頭を乱暴に撫でてみる。本当、いい歳した男なのに何をしているのやら……そう思いながらも自分の口角が上がっていることに気が付く。

 

「……まるでお前の姉みたいだな、私」

 

「んんー……お前が俺の姉かー……いいかもなー」

 

私の呟きに、彼は突拍子も無いことを言う。まぁ、冗談なのだろう。私の擬似感情モジュールが嬉しさを表示していたが無視をした。彼は未だ私の胸の中で気持ち良さそうに目を閉じていた。酒の力があるとはいえここまで私に気を許すのは意外だ。どれ程気が滅入っていたのやら。

 

「大変だったんだな、ジャベリン」

 

「そうなんだよなぁ……けどトンプソンに色々話したら結構楽になったよ」

 

「……そうか。また一緒に飲むか?」

 

「勿論」

 

彼の答えに、優しく笑いかける。グラスの酒を飲みきった後に、グラスを拭いている相変わらず草臥れた服を着たマスターに代金を渡す。ジャベリンが立ち上がろうとしたが足元が覚束なかったので肩を貸してやった。店から出て夜風にあたる。丁度いい涼しさの夜風は、私の酔いを醒ましてくれた。ジャベリンは酔っ払ったままなのか、ずっと私に体を預けている。

 

「ジャベリン、ちゃんと自分で歩こうぜ?」

 

「えぇ~そりゃねぇぜトンプソンの姉御~」

 

……ちょっとイラッときたから足を踏む。いてっ、と彼は言い、渋々動き始めた。それに合わせて私も動き始める。

 

「……何かさ、不安だったんだよ」

 

「ん?」

 

「急に仕事が増えたり、俺の部隊の奴らからちょっと距離が離れたり、はたまた知らない場所に住居を移されたり」

 

「…………」

 

彼の独白が始まった。

 

「まあ、何だ。期待されてるのは分かってたから頑張ってんだけど、中々ストレスが発散出来なくてな。日記を書くだけじゃ上手くいかないことも分かっちまった」

 

「そう、なんだな」

 

案外、ジャベリンという男は他人の評価を気にしたり、ストレス発散の方法が分からないという不器用な所があるらしい。そして、精神的に脆いところもあるようだ。彼に寄り添うのはちょっと難しそうだ。

 

「……槍部隊の隊長をやってるってのに情けないと思ってしまう」

 

「それは……大丈夫だと思う」

 

「何でさ」

 

「ジャベリンは今までしっかりと仕事をこなして来たんだろ?なら今まで通り、いつも通りでも誰も情けないなんて言わないはずさ」

 

でも、背中を押すぐらいはできる。私の言葉を聞いてジャベリンは驚いたような、そんな顔をした。でもすぐに元に戻って、ちょぴりニヤリとする。

 

「そうか……そうなのか……そうなのかもしれないなぁ」

 

「元気出たか?」

 

「出たよ、出た出た。助かったよ、トンプソン」

 

「お安いご用さ、ジャベリン」

 

二人で笑い合う。こっちの方が気持ちいい、しんみりとした空気なんてクソ食らえだ。ジャベリンが笑っていて、私も釣られて笑う。逆が有ればなお良い。

 

そんなのが、いいんだ。

 

「もう大丈夫」と、ジャベリンが自分から離れる。どうやらここでお別れらしい。

 

「俺はここで別れるよ。付き合ってくれてありがとうな」

 

「ああ。また愚痴が言いたくなったら私を頼ってくれよ?」

 

「そうするよ。今度は他のやつも誘って馬鹿騒ぎでもしよう」

 

「そうだな、それがいい」

 

「ははっ。それじゃあ、また」

 

「おう、またな」

 

後ろ髪を引かれる思いではあるが、仕方ない。どうせまた会える。根拠はないけど、途方もなく信じていられる。彼と別れて夜道を歩く。風はいつの間にか冷たくなり、だけど熱された体を冷やしてくれているようで気持ちがいい。空を見上げてみれば珍しく星が見えた。

 

 

煌々と、光り輝くその星は、いつもより綺麗に見えた気がする。

 

 

 

 




トンプソンちゃんと書けた……かな?ジャッジお願いします。深夜テンション怖い。
なんというか、お姉ちゃんキャラみたいになりましたね、何ででしょう。トンプソンに対する愛が足りないから??そして、この内容朝に出すものじゃないかな??まあいいか。
あ、ジャベリンくん休もうとしている所悪いんだけどまた任務あるんだよね、ちょっといいかな?
あ、電子ロック掛けられた……仕方ない、行け!UMP45!!

とりあえずトンプソンのあれこれ書けたので概ね満足です。今度はM16かなぁ……。感想、評価は心の友です。どうぞよろしくお願いします。それでは。

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