傭兵日記   作:サマシュ

29 / 131
Gamewithっていうとこのエイプリルフールネタに出てたクルーガー社長のスペックがそのままE.L.I.Dと殴り合いができるレベルについて。なんだクルーガー社長もうちの社長と同レベルじゃないか(?)



ジャベリンくんは仕事先へと向かいます。
はてさて何が待ち受けているのか……。

五話ぐらいを予定しているのでどうぞお楽しみに。
それではどうぞ。


傭兵、護衛だってよ。
そのいち


91日目 晴

 

オスカーを家に居る416たちに任せて俺は任務に赴いた。

 

とりあえず俺の胃腸は守られた。UMP姉妹の他に来てくれた戦術人形は二人、MP5とWA2000という戦術人形だ。MP5は銀髪の可愛らしい少女で真面目、WA2000は赤毛の長髪の美人、だいぶ天の邪鬼なところのある人形だった。トライデント的に言えばツンデレか?

そんな二人が来てくれたので俺はUMPサンドにされることなんて無かった…………訳ではない。

 

輸送車両で移動中はずっとUMP姉妹に両隣へ居座られた。ポチも連れてきたんだけどWA2000にずっと抱かれている。ポチは困惑ぎみだったが仕方ない。初対面で性格もよく分からない相手に甘えるからだ。MP5もポチを触りたそうにしているがWA2000はポチを離さない。ははっ、微笑ましいなぁ……。

 

現実逃避をしててもなかなか現実は俺のことを逃がしたくないようで、45が俺に絡み付いてきた。やめて……。「ジャベリ~ン……よろしくね?」と、耳元で囁かれる。彼女の声は無駄に魅惑的だ。精神がゴリゴリ削られていく。それに加えて9も俺に引っ付いて来てさらに削られていく。WA2000とMP5に助けを求めようとも二人はポチに夢中。

最後には運転手に視線を送ったら中指を立てられた。世知辛い。

更に不幸なことに突然MP5から純粋な目で「そういえばジャベリンさんってプレイボーイなんですか?」とか言われた。心が折れた。こんな可愛らしい娘もあの社内報読んでたの……?

色々とこみ上げてきた俺は項垂れか細い声で違います……と言っておいた。UMP姉妹の面白がる声やらMP5の謝罪の声、運転手の笑い声、WA2000の猫なで声と耳に入ってくる。

悲しみにくれる俺はそんな喧騒の中、目的地まで向かうのだった。

 

 

 

 

_________________

___________

_____

_

 

 

 

 

 

「凄い!凄いよジャベリン!!本物の馬!!」

 

「そうだな……」

 

「私……こんな綺麗なところ初めてです!ジャベリンさん凄いですよここ!!」

 

「おう……」

 

 

清々しい青空に視界一杯に広がる草原、そしてのんびりと草を食んでいる馬や牛。今や写真だけの存在としかいえない風景が眼前に広がる。MP5やUMP9がはしゃいでいる。

ここは現代の世界でほぼ唯一の大規模な農場と言って良いかもしれない。奇跡的に崩壊液の被害を免れた地域だ。今や多くの人形や人間が働いており、貴重な人間の働き口にもなっている。この大農場の持ち主であるジャガーソン・コーマック氏は俺が『武器庫』に入ったばかりの時から知り合いで、俺は時たま仕事でここに来る。仕事で行く度に彼から跡を継ぐ気はないかだのまた槍部隊の皆さんを連れてきてくれだのと言われる。

 

アンタには息子が居るだろうが……そいつに手伝わせろ馬鹿野郎。なんて毒づく。未だ車内での出来事を引きずっているためか、口が悪くなっている気がした。

 

 

「むむむ……」

 

 

ふと向こうを見ると、UMP9が馬に近付いて撫でようとしていた。恐る恐る手を出している。MP5が固唾を飲んで見てるが、なんだか微笑ましい。

しかし噛まれなきゃいいんだけどな……。

 

 

「お、おぉ…………あっ」

 

「ジャ、ジャベリンさーん!!」

 

 

あーあ……腕甘噛みされてフリーズしてる……今助けるぞー。

 

 

「ほーらポチちゃんおいで~よーしよしよし」

 

「酷い顔ね」

 

「なっ……何よ、文句ある?」

 

「いぃやぁ?別にぃ?」

 

 

なんで向こうは剣呑になってるんですかねぇ……ポチやってしまいなさい。悪い子にはお仕置きだ。

信号を受け取ったポチは45にダイレクトアタックをして45に馬乗りとなる。驚く45にそのままどすんと彼女の胸に座り込むポチ。WA2000は何だか羨ましそう。とりあえず嫌な雰囲気は霧散したかな?

 

それにしてもこの馬なんで意地になって離さないんだ。駄目だろ人を困らしちゃ。よしよしいい子だ、そのまま9から離れ………………あれっ?なんで目の前が急に真っ暗に?

 

 

「わ、わー!!!ジャベリンさんが食べられてるーっ!!?」

 

「……ハッ!ジャベリン!?」

 

 

おーうお前ら落ち着いてくれ、どうどう。何か痛いけど何も問題ないからなー。

 

とりあえず俺の頭を噛んでいる馬の顎を掴む。そのまま力任せに引き抜こうとするが全く動かない。

 

 

「ぐ、ぬぉぉおぉ……!!」

 

「が、頑張って下さい!」

 

「ねぇ、あれ大丈夫なの?」

 

「さぁ?」

 

 

俺を噛んでいる馬は随分と諦めが悪く、俺がどんなに粘って外そうとしても噛み続けている。いや、なんでこの馬は噛みたがりなんだ?

四苦八苦しているうちに馬もムキになってきたのか噛む力が強くなってくる。そろそろ腕が疲れてきた。俺が根負けしそうであったときに、一人の人物が俺たちに近づいた。

 

 

「来るのが遅いと思ったら……離れなさい、ジェシー」

 

 

女性の鋭い声とともに、ジェシーと呼ばれた馬が離れていく。

視界が元に戻った俺は声のした方向に顔を向ける。そこにはメイド服を着た目付きの悪い女性が佇んでいた。45たちはその女性を見て驚いている。

あー、確か彼女は人形だったかな……?

 

 

「G36がどうしてここに……?」

 

 

WA2000が信じられないといった風に口を開く。G36と呼ばれた女性は、少し訝しげにした。

 

 

「G36……確かに私と同じ外見の戦術人形は存在していますが、私は違いますよWA2000様。私は民間モデルです」

 

「んなっ、なんで私の名前を!?」

 

「客人のお名前を把握するのはメイドの務めですから。ささ、皆さん、どうぞこちらへ」

 

 

そう言い残し、すたすたと彼女は案内を始める。呆然とする面々を見て、俺は思わずため息を吐いて彼女に声をかけた。

 

 

「みんな吃驚して固まってるぞ。自己紹介ぐらいしたらどうだ?」

 

「おや、それは失礼致しました。私はこの農園にある屋敷でメイドを務めております、ローゼ、と申します。どうぞお見知りおきを……おや、まだ固まっていらっしゃいますね。ジャベリン様、後は頼みました」

 

「えぇ……」

 

 

くるりと、こっちを向いてスカートの裾をあげて礼をし、自己紹介をしたかと思えば俺に仕事を丸投げした人形、ローゼはまた歩き始めた。君本当変なところで面倒くさがり屋だよね。とりあえず固まっている面々を起こして移動させる。

 

移動中、未だ納得がいってないのかWA2000が俺に質問してきた。

 

 

「あれ、本当に民間用?何故か私の認識システムがずっと戦術人形だって言ってるんだけど」

 

「民間用だよ。恐らく戦闘能力はないはずだ」

 

「恐らくって何よ恐らくって……」

 

「ローゼさん……でしたっけ、ちょっとお聞きしたいことが」

 

「ロゼでよろしいですよ。なんでしょうかMP5様?」

 

 

俺がWA2000の質問に答えている中、MP5がローゼに何かを聞こうとしていた。

 

そういえばUMP姉妹は……ポチと遊びながら着いてきてる。ポチ、そいつら気に入ってたんだな……。

 

 

「この農園はとても大規模だと聞きました。一体どんなものをご収穫なさってるんですか?」

 

「そうですね……貴女様の言うとおりここは大規模ですので、収穫物は多岐に渡ります。ジャンルで言えば野菜、果物、家畜、穀物にあと材木でしょうか。そのなかでも小麦や野菜全般が収穫量の1/3を占めていますね」

 

「おぉ!凄いですね!」

 

「はい、何せここはヨーロッパの食糧庫とも云われていますからね。貴女様がお勤めになさっているG&K社にもこの農園の名は伝わっているでしょう?ふふっ」

 

「……随分と饒舌ね」

 

「許してやれワルサー、ローゼは自分が仕えているこの農園に誇りを持ってるんだ」

 

「ふぅん……私の知ってるG36とは大違い。とても幸せそうね、彼女」

 

 

まぁ、民間用だからな。というかそんなにWA2000のところのG36って殺伐としてんの?怖っ。

そうこう話しているうちに、大きな屋敷が見えてきた。見た目は最早歴史の教科書にでも乗ってるようなデザインで、彼処だけ中世に戻ったような雰囲気が醸し出されている。まぁ内部は近代的システムの塊だけどな。

 

 

「おぉー!45姉見て、すっごい大きなお屋敷だよ!!」

 

「確かにそうね、タイムスリップでもした気分だわ」

 

 

9がはしゃぎ、45が感慨に浸ってる。MP5は感動するばかりで口を半開きにしながら屋敷を見ている。WA2000は興味無さげに見えるがその視線は屋敷に釘付けだ。素直じゃないなぁと心の中で苦笑する。ポチをけしかけておいた。

 

俺たちはそのまま屋敷に入り、応接間に案内をされる。ローゼがてきぱきと紅茶を用意して高そうな椅子に座らされた皆に配膳した。その後はご主人を呼びに行くということで退室した。

MP5が陶器の花瓶を触ろうとしている

 

 

「これってどのくらいの値段なんでしょうか……」

 

「MP5ー、それ壊したら給料三年飛ぶぞー」

 

「ひぇっ!!き、気をつけましゅっ!」

 

「なーにからかってんのよ馬鹿」

 

「あたっ」

 

 

MP5が目にも止まらぬ早さで手を引っ込める。そしてWA2000に俺は叩かれた。

 

全く、嘘は言ってないんだぞ嘘は。俺もぶっ壊して一緒に居たスピアともども弁償する羽目になって三年半ぐらい給料9割持ってかれたからな。社長からも大目玉くらうし大変だった。

UMPがテーブルの側にあったチェスで遊んでた。確かあのチェス象牙ってやつで作られてたよなぁ……。このご時世、並の富裕層でも手に届かないレベルの代物だったはず。つくづくここが凄いところだと思い知らされる。

 

 

「ご主人様をお連れ致しました」

 

 

ふと、ノックの音と共にローゼの声が聞こえた。すぐにドアが開き、壮年の整えられた金髪で落ち着いた雰囲気の男性、ジャガーソン・コーマック氏その人が現れた。来やがったな催促野郎……。俺はちょっと身構える。

 

 

「ようこそ!グリフィンの皆様、私がここの主、ジャガーソン・コーマックだ、よろしくぅ!」

 

「ご主人様、お声が大きいですよ。お客様方が驚いております」

 

「まあまあいいじゃないかロゼ!!これくらいのほうがいあだぁ!!!?」

 

 

彼が快活そうに喋り始めたかと思えばローゼが綺麗なローキックをくらわせた。そうだよな、皆驚くよな……俺も驚いたよ。

驚き固まっている数名を尻目に、足を痛そうに押さえながらジャガーソンは向かいの椅子に座る。襟をただして再度こちらを向いた。

 

 

「んっん、改めてようこそ。君たちが私の娘を守ってくれる騎士たちだろう?歓迎するよ」

 

「あ、はい……?」

 

「ははっ、まあ変に思うのも仕方ないか。ジャベリン君、君に伝えるから後で彼女たちにもよろしく!」

 

「普通に入ってくればよかったのに……どうぞ」

 

 

本っ当にお茶目だよなぁアンタ……。とりあえず詳しく仕事の話を頼むぜ。

 

 

「実はだな、君たちがグリフィンから聞いた通り、私の最愛の娘が命の危険に晒されている」

 

「……俺が言うのも何ですが、別に“お嬢”なら問題ないと思いますよ?」

 

「まぁまぁ、そう言わずに。娘を心配するのは父親の性だ、私の息子だって彼女を心配してるんだぞ?」

 

「あぁ、そうですか……そういえば脅迫状が届いてるって聞きましたが、どんなもので?」

 

「ロゼ」

 

「承りました」

 

 

ローゼがまた部屋を後にする。固まっていた面々が通常状態に戻り、紅茶を飲みながらジャガーソンの跡継ぎ話(くだらん話)をいなしていると、ローゼが一枚の手紙を持って入ってきた。

 

 

「どうぞ」

 

「えーと、どれどれ」

 

 

45たちと一緒に覗きこむ。

この手紙に書かれていた内容なジャガーソン氏に対する恨み辛み、その娘に対する下品な言葉の羅列やら警告のような文句、そして呪いの言葉ばかりであった。WA2000が顔を歪ませる。

 

 

「鳥肌がたつぐらい気持ち悪いわね……全く何でこうも怪文書が書けるのかしら」

 

「だろう?娘は大丈夫だと言ってたがやはり怖くてな……」

 

「それで、とりあえず俺たちは何をしておけばいいんです?」

 

 

俺の言葉にジャガーソンはそうだったというような顔をして俺たちに話し始める。

 

 

「なに、簡単なことだ。娘を暫く見守っておけばいい」

 

「……それだけ?」

 

「そう、それだけ。君たちの部屋は用意してあるし、好きなように生活して構わないよ。送り主の特定は手伝ってもらうがね」

 

「……了解」

 

 

なんだか拍子抜けをしたがまぁいい。一応仕事がそれなりに楽ということが判明した。俺たちはローゼに宿泊する場所に案内される。なお、俺が扉から出ようとした時、ジャガーソンに一つ頼まれた。

 

 

「ジャベリンくん」

 

「はい?」

 

「明日、餌やり頼むぞ」

 

「……別で給料貰いますからね」

 

「嫌と言わないあたり本当頼りになるよ。やはり跡t」

 

 

バタンと、彼が言い切る前に閉めた。

やっぱりそれが目的だったな畜生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ……凄い……」

 

「普通にホテルよ、これ……」

 

「これが来客用なんて誰が言うのかしらね」

 

「ジャベリン、ホールの中央に凄い銅像があるよ!!!」

 

 

四者四様と言うべきか、明らかに一流ホテルのような内装に皆驚いていた。俺は何度か来てるから何も驚くことはない。ローゼから鍵を貰った。そうだポチ、お前もオスカーのお土産がわりにここら辺の写真を撮ろう。

 

各々が割り当てられた部屋に行き始めた最中、ドタドタと足音が聞こえてくる。……来たか。身構える、足音がどんどん近付いてくる。何かが飛んできた。

俺はすかさずその物体を背負い投げの要領で向こうへ投げ飛ばす。

 

 

「ジャベリン!かくうおああぁああ!!!???」

 

 

ドンガラガッシャーン!!なんて昔の漫画よろしく彼方へ飛んで大きな音が聞こえた。他の奴らが慌てて出てきた。ローゼは呆れている。

 

 

「な、何事よ!?」

 

「敵襲ですか!?」

 

 

大丈夫だWA2000、MP5。これ俺が来る度に起きることだから……。ローゼが物体の飛んでいった方向に歩いていっている。

 

 

「やっぱり不意討ちも駄目かー……」

 

「お嬢様、毎度の事ですがジャベリン様に決闘を挑む様なことはお止めください。いい加減諦めたらどうですか?」

 

「ロゼ、それは聞き入れたくないなぁ」

 

「お嬢様?」

 

「うっ……分かったよもう」

 

 

あれを不意討ちと申すか。もう少し静かに来てくれよ。

 

お嬢様と呼ばれた物体、いやブロンドの髪をポニーテールに束ねた女性は俺たちに近付いてくる。45が俺に聞く。

 

 

「ジャベリン……あの娘が?」

 

「ああ」

 

 

服に着いた埃を払いながら、目の前の女性は声高らかに自己紹介をする。

 

 

 

「ようこそグリフィンの皆さん!!私は貴方たちが守ろうとしている対象よ!名前はメグ・コーマック!よろしくね!!あとそこの小さな可愛らしい妖精さん、私と遊びましょ?」

 

「えっ、わ、私ですか!?」

 

「お 嬢 様 ? ? ?」

 

 

 

ちなみに彼女は可愛いものが大好きである。

 

 




ここでキャラ紹介。


メグ・コーマック

大農園の主、ジャガーソン・コーマック氏の愛娘。18歳。性格は快活で所謂お転婆。可愛いもの好き。戦闘力が高く、ジャベリンと白兵戦で拮抗するぐらい。頭もよく回り、時たまとんでもないイタズラをやらかす。その度にメイドのローゼにシメられる。ジャベリンとは幼なじみと言える。フラグは立ちません(重要)


ローゼ

この大農園に仕えるメイド人形で愛称はロゼ。数年前からここにおり、多くの農園での仕事を請け負っている働き者。メグのお目付け役でもある、完璧なメイドさん。けっしてスカートからグレネードは撒き散らさない。彼女は民間モデルと自称しているが実は……?


MP5

今回の任務でジャベリンと組んだ戦術人形。このチームの良心そのいち。まだ新米ながら事前の模擬戦闘では優秀な成績を修めている真面目な娘。何にでも好奇心を持っており、見た目相応な可愛さも持ち合わせている。いつか魔改造します。


WA2000

ツンデレわーちゃん。今は鳴りを潜めているが後々発症。何処の例にも漏れず可愛いもの好き。ポチにやられた。良心そのに。彼女はそれなりの場数を踏んでいるベテラン。MP5のお目付け役というか面倒を見るために派遣された、姉みたいな娘。


なんでキャラ紹介したって?メインストーリーで絡ませるからだよ!!
とりあえず続きをどんどん書いていきますよー。
それでは、感想及び評価は作者の執筆の支えです!どうぞどうぞお願いします!!それでは!!


4/3 違和感のあった部分を修正

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。