傭兵日記   作:サマシュ

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UMP9はどこか狂っているが、何故か表だって現れることが少ない……が、今回はどうやらそのタガが外れてしまったようだ。彼女が家族だと言ってやまないジャベリンに、伝家の宝刀「ファミパン」を食らわす。さて、そのジャベリンの運命や如何に……。

それではどーぞ。







そのよん

 

 

「……んん?」

 

 

気がつけば、見知らぬ天井が目前に広がっていた。体を動かそうとするが全くと言って良いほど動かない。ベッドに拘束されている。どうにかこうにかそれを解こうと四苦八苦していると、ドアの開く音が聞こえた。

 

 

「あ、起きてる」

 

 

入ってきたのはお嬢だった。おい貴様現状を説明しやがれ、それとこの拘束をどうにかしろ。

 

 

「あー、まあ、ごめんね。ちょっと9ちゃんには刺激が強すぎたみたいなの」

 

 

お前本当に何したの?

UMP9は心の奥底に狂気を孕んでるような感じだったけど謎の均衡を保ってたし今日までどうにか出来たのに何をアイツにやらかしてそのタガを外させるような事態を招いたんだ。

 

 

「えっと、トライデントさんの漫画を少し……と、あとは私が家族の形は色々あって、互いに好きなようにできることが大事って言っただけ……かな」

 

「それでこうなるってどうなんだよ……ともかく早く解いてくれよお嬢」

 

 

彼女にそう頼むがなかなか行動に移そうとしない。それどころか悪いことでも思い付いたような顔になっている。悪い予感を俺は感じ取る。

 

 

「……お嬢」

 

「ジャベリンも罪な男だからねぇ……たまには痛い目見たほうが、いいんじゃない?」

 

 

彼女は早口にそう言うと、早々と部屋から退出する。

 

…………痛い目なんて何度も見てるんだけどなぁ。諦観もした気持ちで天井を見ていると、またドアの開く音が聞こえる。恐らくUMP9だろう。

 

 

「おはよう、ジャベリン」

 

「おはよう、9。早速だがこの拘束を解いてくれないか?」

 

「駄目だよ、解放したら逃げるでしょ?」

 

「クソ……それで、何で俺にこんなことをするんだ?」

 

「ジャベリンと家族になるため♪」

 

 

あーヤバイヤバイ、お目目のハイライト仕事してないぞ働け。

一生恨むからなお嬢とついでにトライデントォ!!!

 

ぎしりと、9が俺に跨がってまとわりつくように俺へくっつく。うーんなんだか扇情的、ピンチになればなるほど冷静になる自分に笑ってしまう。

まとわりつく9は嬉しそうにしている。

 

 

「子供は何人がいいかなぁ?名前も何個か決めてるし……あぁでも人形じゃ子供は作れないんだっけ?でもそういう時は孤児とか育てるのもいいかもね。ジャベリンと私の子供、楽しみだなぁ……えへへ。そうだ、お家とかどうする?慎ましやかな家か、それとも45姉とか416、G11も住めるくらい大きな家?あ、ポチとかオスカーも居たね、あの子たちだって家族だし一緒に遊べるくらい広い庭だってほしいよね?子供と目一杯走り回って疲れたらお家で休憩とかさ、そこでジャベリンとか私が飲み物とかお昼とか持ってきて一緒に食べてさ、ジャベリンに私があーんとかしたり、ジャベリンが私にあーんとかしたり、とにかく家族みたいたことしてみたいよね。そういえばお仕事とかどうする?ジャベリンって紅茶淹れるの上手かったよね、喫茶店でもやってみようよきっと上手く行くもん。だってジャベリンと私、あと45姉達だって居るしね。ねぇ、ジャベリンそのためにさ私と家族として大事なことしよ?私、戦術人形だけど、そういうことだって得意なんだ。だから、ヤろう?」

 

落ち着け????

 

 

うーんこれは重傷、この前のM16みてぇだ。てか待て待て待て、股チャック開くな俺のマグナムは正直なんだやめろ、やめっ、やめろ!!!!!!!!!!

 

 

「ジャベリンさん緊急じた…………い…………えっ?」

 

「あ」

 

「お、おおお邪魔しました!!!!!!」

 

「待って!!!!!!!!!!」

 

 

俺の貞操の危機だから!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何やってたんですかもうっ!!」

 

「ナニされてた……」

 

「ナニしてただけだよ?」

 

「ううぅ……破廉恥です……」

 

 

申し訳ねぇ……。

 

MP5に拘束を解かれた後、俺とUMP9は床に座らされて彼女に説教というか色々聞かれた。包み隠さず言うとまぁ、ナニされたとしか言えない。赤面をするMP5。なんだか先程の事を思い出すと目の前の彼女が天使に見えてくる。ぶっちゃけ今回のチームでWA2000に並ぶ良心だと思う。

 

まあ、それはともかく。

 

 

「そういえば火急の用にみえたけど、どうしたんだ?」

 

「え?あっ!!そうだった!!」

 

「メグちゃんが誘拐されたんですよ!!!!!」

 

「おい嘘だろ!?」

 

 

一瞬MP5のメグちゃん呼びの方にビックリしたがそれよりもっとお嬢が誘拐されたことに驚いた。さっき別れたばかりでしかもあのバトルジャンキーが不意を突かれたとはいえ下手な人間に誘拐されるなんて信じられない。直ぐに動くことにした。

 

 

「MP5はとりあえずお嬢を探せ!9、銃は?」

 

「はい!」

「ポチに持たせてるよ」

 

「了解。ポチ!!」

 

 

名前を呼ぶと待ってましたかのようにポチが俺の銃をもって扉から飛び出てくる。MP5はそのまま早足で部屋を出ていった。

俺は銃を装備して9とポチを連れて走る。一応9も任務に忠実だよなぁ。

 

建物、というかお嬢が寝泊まりしていた離れから外に出て走っている最中9と話す。

 

「9」

 

「何?」

 

「家族ってのは無理矢理なるもんじゃないぜ」

 

「……そうだね。私、ちょっと混乱してたみたい」

 

 

やっぱあれ混乱してたんだな……。

俺は更に彼女へ言い聞かせるように言う。

 

 

「だからさ、またゆっくりと話しながら互いに理解を深めよう」

 

「うん……」

 

「家族になるのはそれからだって遅くないからな、よろしく頼むぞ」

 

「……何だかプロポーズみたいだね」

 

「不味かったか?」

 

「いや……えへへ、むしろ嬉しいよ」

 

 

にへらと笑った彼女。俺はそれにサムズアップで答えて、走り続ける。ポチへ45かWA2000に合流するように信号を出して別れる。そしてローゼに通信を飛ばす。確か彼女は無線を持っていたはずだ。

 

 

「ローゼ、聞こえるか?」

 

『ジャベリン様!大変です!!』

 

「分かってる!お嬢がどこに連れ去られたか監視カメラでも何でも使って突き止めてくれ!!後で情報をくれ!!」

 

『承りました!一応万が一の為に従業員にも武装させておきましょうか!?』

 

「頼んだ!ジャベリンアウト」

 

 

一先ず俺たちは目ぼしいところを探し続ける。この農場は広い分、点々と従業員の宿泊用の施設があるため、ここから近い宿泊施設へ向かった。

 

 

「ジャベリン、9!!」

 

「あ、45姉!!」

 

 

途中、俺たちが走っていたら、UMP45と合流した。たまたま近くに居たようだ。彼女が珍しく真剣な表情をしている。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「今朝の奴らが銃をもってこっち来たのよ。何とか農場の人間が応戦して食い止めてるけど、どうなるか分からない。早く来て頂戴」

 

「何だと!?」

 

 

あのじいさんやりやがったな!!というか護衛任務始まってから行動起こすの早すぎだろ!?絶対前から計画してたな!!とはいえ多分あれは陽動だ、あの野郎のことだから裏があるはず。それと恐らくお嬢もじいさんのところに居るはずだし。親しい仲だからこそ騙しやすいってのもあるからな。

その事を二人に伝えて、UMP9を45と共に人権団体のところへ向かわせる。俺はスリンガーに通信を飛ばしておく。

 

 

「応答しろスリンガー!!」

 

『聞こえてる。ずいぶんとしてやられたな、羨ましい』

 

「てめぇ見てたな!?まあいいとりあえず聞け!!」

 

『分かってる。もう剣の連中を送った』

 

「ナイスゥ!!いつか俺ん家近くで見つけた焼き肉奢ってやるからな!!」

 

『言質とったぞ。スリンガーアウト』

 

 

スリンガーとの通信を切り、今度はローゼに連絡をする。

 

 

「ローゼ、どうだ?」

 

『丁度良かった。先程ドローンで確認したところ、お嬢様と執事長さまとボルゾイ、ゾルディとその他諸々が離れの方面へ向かっていました。急いでください!』

 

「行き違いかよ!!分かった、すぐ向かう!!」

 

『私とご主人様も向かいますので!』

 

「は!?」

 

 

えっ、ローゼはともかくジャガーソンさん戦えるのか?

驚く俺を無視して彼女は続けて言う。

 

 

『何を驚かれているのですか!ご主人様は元軍人で貴方ところの社長とは長い付き合いですし、元狙撃兵ですよ?』

 

「長い付き合いって……グリフィン?武器庫?」

 

『どちらもです!!それよりも早く行って下さい!』

 

『そうだぞー私は結構凄いんだぞーだからあだぁ!!?』

 

『ご主人様は黙って動く!!』

 

 

そのままプツンと通信が切れた。とりあえず、彼女たちと合流できりゃ御の字だがなかなか難しいだろう。俺は離れへ走っていく。

 

数分走った後、離れへと到着。離れは不気味なほど静かであった。少し怪しい気がしたがお嬢を一刻も助けるためにも急がなければならないため、ローゼたちと合流もせずに離れへと入る。鍵も掛かっておらず、また誰も居ないため抜けられたかと疑ったものの、声が聞こえて来たため、そちらへ向かう。声は一階の隅の部屋から聞こえており、扉越しに聞いてみると、お嬢とじいさんの話し声が聞こえてきた。たまに笑い声も聞こえてきた。

 

 

(……完全に騙されてるなこいつぁ)

 

 

壁に身を預けて一呼吸を置き、突入の準備をする。残弾を確認、そして思い切り扉を蹴破って中へ入る。

 

 

 

 

 

 

 

……その先には一つのスピーカーが有るだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……騙されたな」

 

 

そう呟いた瞬間に、俺の意識は途切れた。

 

 




ジャベリンくん二度目の暗転。どうなるのだろうか……。


更新のお話なんですが、基本不定期で土日は一話以上更新するという形に落ち着けそうです。土日に行くバイトが楽しくて心に余裕が出来たんですよ。良かった。


さて、次回もどうぞお楽しみにしててくださいね!この作品に対する感想や評価は執筆の支えです!どうぞお願いします!!それでは!!


4/7 違和感を修正

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