傭兵日記   作:サマシュ

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おわりおわり。
事件が終息していきますぞ。さあどーぞ。







そのごのおわり

俺は生まれてこの方任務の失敗ってのはやってしまったことが何度かある。とはいえそれはただ単純に些細なものだったり、相手方が予想外の行動を起こしたりして対象が死亡と、多少の信頼が落ちるとはいえそれが致命的なこと、とりわけ死にかけることになるという訳では無かった。生きてりゃ儲けとも言える。

 

 

 

今は違うがな。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「余り気分が優れていないようですな、ええ?」

 

 

誰のせいだこの野郎。

反抗的な目で睨み付ける先にはあの執事のじいさんと昨日じいさんと話していた男が居る。男の方は余程俺の視線が気に入らないのか殴ってきた。殴られた拍子で口の中が切れたのか鉄の味が口腔に広がる。

 

現状を説明し忘れてたんだけど、俺は今捕まって何もない部屋に監禁されている。縛られるのは今日で二回目だな、ははは。いや笑えないか。貞操の危機の次は生命の危機なんて誰が予想するかよ。というか俺を監禁する理由が見つからない………訳でもないな。じいさんにとっちゃカチコミかけたPMCで返り討ちにされてたし、その会社から定期的に社員、しかも隊長クラスがよく来てる訳だし。そりゃ要注意人物として扱われるか……。

 

 

「どうにも、ジャベリン殿は行動が早すぎるのですよ。私みたいにじっくり計画をして然るときに行動を起こすべきだと思いますがね」

 

「それでカチコミかけた所に返り討ちなんて笑えるな、じいさん」

 

「……はっはっはっ!こりゃ一本取られましたな」

 

 

じいさんは一頻り笑った後、隣の男に命じて、俺を殴らせる。何度も殴られる俺を見ながら満足気に部屋から出ていく。

 

 

「ま、こっちには人質も居ますからね……それでは」

 

 

扉が閉まる。男が殴るのをやめて、椅子へ座った。俺は男に話し掛ける。

 

 

「……なぁあんた」

 

「何だ」

 

「お嬢を人質にした理由って分かるか?」

 

「何をいきなり……まあいい、どうせお前は何も出来ないからな、いいだろう」

 

 

油断してんなぁ……中枢がしっかりしてても末端が駄目ならそこから崩れる可能性もあるのを知らないのかこいつ。俺が情報端末を隠し持っている可能性だってあり得るのに……まぁ持ってきてないけど。これは単純な好奇心とかそういう類。どちらにせよ剣部隊向かってるし直ぐにこの騒動終わるだろうけどな。

それから男が話し始めたが、内容は人類はもっと人形に代わって働くべきだとか、この農園は人形を多用していてけしからんだとか、まあ人権団体らしい事ばかりを言っていた。……そういや、じいさんがウチにカチコミかけた理由って何なんだ?他に思惑があるんだろうか……まあいいか。

 

 

「そもそもだ、人形ごときは人間に媚びておけばよいのだ」

 

「そうね」

 

「ん、誰うぐっ!?」

 

 

バチンッという音と共に男が倒れた。倒れた男の背後からWA2000とポチが現れる。……最高にツイてるぜこりゃ全く。

 

 

「無事?」

 

「何とかな。どうして俺の居場所が分かったんだ?」

 

「ポチが私と合流した後に突然何処か行きだしたのを追いかけただけよ。貴方、本当に愛されてるわね」

 

「そりゃどーも」

 

 

彼女が拘束を解いてくれた。そして、俺の銃を渡してくれる。どうやら探してくれていたらしい。感謝を彼女へ述べる。

 

 

 

「か、勘違いしないでよ!あんた、武器がないと困るから探してあげただけなんだから!!」

 

「いやそこでツンデレ発揮する??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ローゼー……聞こえるかー?」

 

『こちらローゼ、現在執事長をドローンで追跡中です。それより一人で行動しないでください、心配してしまいますから』

 

「そりゃ申し訳ない」

 

 

男を拘束して、離れから出た俺たちはローゼに連絡をした。どうやら現在追跡中らしい。

 

 

『兎に角、生きてて何よりです。今から迎えに行きます』

 

「間に合うのか?」

 

 

俺がそう言った瞬間に、真後ろで大きなブレーキの音がする。

 

 

「間に合いますとも」

 

「……そうだな」

 

 

後ろを振り向けば、装甲車の運転席から身を乗り出したローゼが。しかも肩にG36を引っ提げていた。WA2000がやはり懐疑的に彼女へ問う

 

 

「ロゼって本当に民間モデルなの……?」

 

「再三言いますが、民間モデルです」

 

 

取り急ぎ装甲車へ乗り込んでいく。車内には口笛を吹きながらSV-98にマガジンを入れているジャガーソンが居た。俺たちを一瞥しておどけるように口を開いた。

 

 

「ヒーローは遅れてやってくるとはこの事だね、ジャベリンくん?」

 

「馬鹿言わないでくださいよ……それより、戦えるんです?」

 

「これでも腕は落ちてないつもりさ。隣のワルサーくんにも負けないくらいだ、ん?」

 

 

ジャガーソンの挑発的な言葉に対してWA2000は少し乗り気になったのか、不敵な笑みを彼に返してシートに座る。俺も助手席へ座り、ポチを膝に乗せた。ローゼは全員座ったことを確認して出発する。アクセルを限界にまで踏んだ装甲車はすぐさまトップスピードでじいさんたちが乗っているであろう車両に追い付いていく。

俺たちの接近に気づいたのか、周りに居た車両から何人かが乗り出して撃ってくる。

 

 

「うおぉ……奴さん結構撃ってくるな」

 

「イラつきますね……ご主人様」

 

「任された。ワルサーくんもやるぞ」

 

「了解したわ」

 

 

弾が飛んでくる中、ジャガーソンとWA2000が応戦する。二人の正確な射撃は乗り出していた奴らを次々と仕留めていく。全員を無力化して、今度は運転席を狙ったようだが、防弾仕様であったせいか抜けなかった。

 

 

「随分と用意周到ね全く!」

 

「それだけ本気ということだ!!だが娘を誘拐された今、私にせよロゼにせよどうにかしてみせるぞ!さあロゼ、やってくれ!」

 

「承りました。ジャベリン様、少しハンドルを」

 

「お、了解」

 

 

ローゼに代わり俺がハンドルを握る。彼女は驚くことに装甲車の上へ登り、そのままぶら下げていたG36を構え、目の前の車へ引き金を引く。瞬間、走行中だった車二台が蛇行運転を始めたかと思えばそのまま横転していった。

……彼女まさかガラスに穴空けてそこへ更に弾ぶちこんだのか?WA2000は目を見開いて驚いているしジャガーソンさんも同様に驚いてるんだけど……。

 

 

「有難うございました、ジャベリン様。運転代わります」

 

「ええと、ローゼ。さっきのは一体……」

 

「あのような芸当もメイドの務めですから」

 

「えぇ……」

 

「やっぱり民間モデルじゃないわよ……」

 

 

WA2000が呟く。俺もその通りだと思う。ジャガーソンさんにしても首を捻ってた。まあ、それはともかく……これで邪魔者は居なくなったから距離を詰めることが出来る。ローゼがまたアクセルを踏み、じわじわと近付いていく。

 

 

「このままぶつけますよ!!」

 

「お嬢はどうすんだ!?」

 

「お嬢様ならこのくらい平気です!!」

 

 

このメイド正気か!?というか何でジャガーソンさん止めないの!?え?信じてるぅ!?信頼し過ぎだろオォイ!!ワルサーは!?ワルサーも!?

 

まともなのは俺だけか!!という言葉も置き去りに、車はどんどんスピードを増していく。というかこれどんだけスピード出るんだよ!?エンジン魔改造してんのか!?

装甲車は目の前の車まであと数メートルとなっている。ローゼが叫ぶ。

 

 

「さあ捕まっててくださぁっ!?くぅぅ!!」

 

「どぉっ!?」

 

 

と同時に目の前の車が急ブレーキをして止まったので、慌てて避けた。そしてローゼが巧みなハンドル捌きとブレーキで急停車する。片輪が浮いたものの、横転することなく停車。直ぐに装甲車から降りて向かう。車を包囲するように近づいて銃を構えた。

 

 

「何で急に停まったんだ全く……」

 

「何が起きるか分からないわ、気を付けて」

 

「了かオグッ!?」

 

「ジャベリン!?」

 

 

突然車のドアが開いて何かが俺の腹部に直撃する。俺は数m後ろに下がって倒れてしまった。

皆が駆け寄る中、腹部に直撃してきた物体を見る。

 

 

「なっ!?」

 

「執事長!」

 

 

飛んできたのはじいさんだった。白目を剥いて気絶している。今度は車からお嬢がゾルディくんとボルゾイくんの首根っこを掴んで現れた。彼女はしてやったりな顔をしていた。

 

 

「全く……私を誘拐しようなんて、甘すぎるよ!!!!!!!!!!」

 

 

うわっはっはっはっ!と高笑いするお嬢。その光景にふと俺は呟く。

 

 

「これって俺たちくたびれ儲けじゃ……」

 

「それは言わない約束です」

 

 

 

 

 

 

 

騒動は、それはそれは直ぐにあっけなく終了した。ちゃんちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談のようなもの。

じいさんやら縛った男は武器庫の治安部隊が連行していった。従業員と衝突していた集団というと、支援に来た剣の奴らと45、9、MP5の活躍のお陰で無力化、そして数人ほど拘束に成功したらしい。じいさんも浮かばれないよな……綿密に計画したはずの作戦がイレギュラーの発生で失敗、あえなくお縄に掛かってしまうってな。

 

あ、そうそう。あのゾルディくんとボルゾイくんに関してなんだが、武器庫とグリフィンの両方に雇われることになった。俺と同じ道を行くということだ。……何でかって?俺の手回しだよ。彼らはあの時の代理人無双を生き残った人間な訳だし、判断力やら何やらはあるはずだからな。正直牢屋に入れておくのは惜しい。一応、槍部隊に配属ということで、ゾルディくんは「パルチザン」、ボルゾイくんは「パイク」というコードネームが与えられた。彼らは暫く研修で各部隊長たちによる訓練をすることになっている。辛いだろうけど槍部隊は何でも屋だから仕方ないよね!

 

それと、ジャガーソンさんが卒倒する様なことが起きた。それはお嬢が騒動がある程度落ち着いて、遅めの夕食を食べている時に突然、

 

「私、グリフィンの指揮官になる!!!」

 

って言ったとのこと。その時俺は戦後処理やら何やらに追われてたからあまり預かり知らない。ただ、その彼女が指揮官になる理由が「こんな可愛い娘達をどこぞの知らん馬の骨みたいな男に指揮なんてさせるものか」っていうことだけは判明している。下心マシマシじゃねえかとか思ったよ。とはいえ彼女は必死に勉強を始めていたので何も言わない。

ジャガーソンさんめっちゃ渋りそうだよなぁ。というかお嬢がグリフィンに就職したら圧力とか掛けていきそうだなぁ……。

 

漸く、事態も終息してこれといった事もなくなった俺たちは、ジャガーソンさん達に見送られて輸送車で帰っている。相変わらず俺の両隣にはUMP姉妹が座り、WA2000とMP5がポチを愛でている。俺が運転手に助けを求めても中指を立てられる。やってられねぇ……けどまあ、疲れたしいいか。なんて思う。UMP9は今回の事があってかよりこっちにくっついてくるし、UMP45はそれに気づいてるのか気づいていないのか、ずっと俺に微笑みかけていた。ポチ……俺もう疲れたから変わって……変わりたくない?そりゃそうだろうな!UMP9が更にくっついてくる。

 

 

「えっへへ~♪」

 

「何があったのか聞かないでおくけど、ジャベリンも随分とたいへ……愉快なものよね」

 

「オイ何で言い換えた」

 

 

いや、俺の責任ってのもあるんだろうけどな……ややぁ……俺もたらしになってしまったのだろうか……。

そう独り考えながら前に広がる外の景色を見た。遠くには大きなビル群が見えており、もう暫くしたら到着するだろう。何とはなしに疲れを抜くように息を吐いた。

 

次の任務ってなんだろうなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 




警護ですよ(盛大なネタバレ)
指揮官候補が生まれましたねぇ……彼女はどこの配属になるんでしょうかね(すっとぼけ)

さて、未来の指揮官と、槍部隊に新顔が出てきました。パルチザンくんとパイクくんは槍部隊の面々と同じくちょいちょい出そうかと思ってます。なーんかどんどん風呂敷広げすぎた感ありますねぇ……。まあジャベリンくんが主人公だから大丈夫か!!
次回はようやっと鉄血工造での任務です。閑話を挟んで突入しようかと思っております。

それでは皆さん、感想及び評価は作者の執筆に拍車がかかります!!是非お願いします!!それではまたこんど!!
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