ポチらしきダイナゲートを追いかけていたジャベリン、気がつけば部下のスピアとUMP45が銃を向けあっていた……。
それではどーぞ。
リフィトーフェンと別れた俺は、ポチらしきダイナゲートを追いかけている内に信じられない光景に出くわしてしまった。
「お、おいお前ら、何してるんだ?」
「……ジャベリンか。見れば分かるだろ」
見れば分かるって……勘弁してくれ。何がどうしてお前らが銃を向け合うような事態に陥ったんだよ。スピア、お前がそんな殺気立てている事なんて初めて見たぞ……45、お前も何か言ってくれ。
「んー、残念だけどこればかりは無理ね」
「ええと、穏便に済ませられないのか?」
「無理だな、コイツは殺されるべき理由が存在してるんだ」
殺されるべき理由なんて穏やかじゃない……それ以前になんでお前たちはここに居る?
「任務だよ。詳しいことは言えないがとある情報の奪還でな」
「はぁ!?」
そ、それはどう言う……45、本当なのか?おい、不敵な笑み向けないで正直に話してくれよ。
とてつもなく不安になるじゃないか。
空気が重くなる、いや既に重いか。スピアと45は銃を下ろす素振りなんて一つも見せてくれない。兎にも角にもスピアに事の詳細を詳しく話すように頼む。
ちゃんと話して貰わなければ正常に判断なんて出来ないからな。
「…取り敢えずだなスピア、もう少し詳しく話してくれないか?」
「チッ……どうしてもか?」
「隊長命令だ」
「クソッタレ……」
渋々、といった感じでスピアは銃を下ろした。45も銃を下ろすように目で合図を送れば、すんなりと従ってくれた。
スピアは語り出す。先ほど言った鉄血工造にある情報等を奪還するために潜入した事、そして中央制御室で撃ち殺した男が何かを起動させたかと思えば共に来ていた仲間もろともUMP45とUMP40に襲われて何とか撤退したこと、そして暴走した鉄血製の自律人形に襲われてスピア以外が死亡してしまったこと。
そして作戦失敗と判断して早急に帰還しようとしたら、UMP45に遭遇して今に至るという訳らしい。
再度スピアの顔と45の顔を交互に見る。嘘をついているような顔じゃなく、余計に信じられない。混乱するばかりだ。
ふと、あることに気がつく。
「そういえば、UMP40はどうしたんだ?スピアの話だと一緒に来ていたようだが……」
「撃ち殺したわ」
「……は?」
「だから、撃ち殺したのよ。下手したらマイドマップを消される可能性があったの、だからそれを防ぐために裏技を使ってこうなっただけ」
「…………」
45が淡々と、それでいて寂しそうな顔をして言う。
思わず天を仰いだ。この世界の神様というのは、バッドエンドがお好みらしい……。救いが無い。
スピアが俺に声を掛けた。
「ジャベリン、これで分かっただろ」
「……そうだな」
「それで、話は纏まったようだけど、私の処遇はどうなるのかしら?」
「そうだな……取り敢えずは____________________________________」
ふと、UMP45の背後で銃を構えている鉄血製の人形が見えた。
「_________________お前ら伏せろォ!!!!!!」
SCARライフルを構えて撃つ。銃弾はその人形の頭へ命中し、人形は倒れた。
スピアと45は咄嗟の事ながら伏せてくれた上にすぐさま武器を構えて臨戦態勢に移る。
周囲から足音が大きく聞こえてきた。非常に不味い。ここに長く居すぎたのだ、鉄血の人形達がここに集結してきているのだろう。
「スピア、45!!話は後にしよう!!今は生き残るぞ!!!」
「邪魔しやがって……了解!!」
「分かったわ」
45がスモークグレネードを周辺に投げていく。煙に覆われ始めたところに俺たちは走っていく。銃弾が飛んでくるが幸いに当たることはなかった。だがその銃弾の数が多すぎる。後ろの追いかけてきている人形は数えるのが億劫になるぐらいの量なのだろう。
走りながらスピアに脱出する術は無いのか問う。
「スピア!!何か乗り物とかないのか!!?」
「あぁっぶねぇ!!車ぁ!?もう少し走りゃ脱出用のものを用意してる!!」
「ナイス!!フラッシュバン投げるぞ!!45はスモークを前方へ!!!」
「了解!!!」
持ってきていたフラッシュバンを後方へ投げる。大きな音が鳴って、多少は銃撃が止んだようであった。だがそれも束の間、銃撃の嵐はまた始まる。
45の投げたスモークグレネードが煙を吐き出して前方を真っ白に包み込む。そこを迷わず走り抜け、前方にジープがあることを視認した。より足に力を込めて駆ける。あと数m。
「ぐおっ!!?」
「スピア!!」
そんな時に、スピアが突然転けた。45が彼に駆け寄って様態を確認する。その間に俺はフラッシュバンをありったけ追いかけてきた人形たちに投げつけながら、銃を撃ち続ける。
「…捻挫してるわね」
「はぁっ!?お前なんでそんな大ポカやるんだ馬鹿野郎!!!」
「うるせぇ!!!俺だって好きでこうなった訳じゃないんだよ!!」
「肝心な時に変なことをやらかす癖は入隊当初から変わってねぇな!!!!えぇおい!!!?」
「黙れこの全方位人たらし不幸製造機め!!!!お前は他人を巻き込みすぎなんだよ!!!!」
「そのセンスの無い罵倒を言う努力を他に回したらどうだ紅茶狂い!!!!」
「言ったなこの対物性愛者!!!ポチでマスでもかいてやがれ!!!」
「お前本当にイギリス生まれか!!??生まれた場所アメリカと間違えてんじゃなかろうな!!!あとポチを引き合いに出すんじゃねぇ!!!!!」
戦場に似つかわない怒鳴り合いが発生する。UMP45は若干引きぎみだ。とはいえもちろんそれどころじゃなく、自分の顔スレスレに鉛弾が飛んで来た瞬間に冷静となってスピアを担ぐ。45に援護されながらジープにスピアを投げ込んで、最後のフラッシュバンを敵が来ている方向へ投げた。45にもスモークを投げてもらい、素早くジープに乗ってエンジンを点ける。幸いにエンジンは正常に始動してくれた。
「ぶっ飛ばすぞ!!追いかけてきたら頼んだ!!」
「任せて!!」
「チッ……了解」
アクセルを踏み込んで発進する。ジープには装甲がついてるのか、乗った瞬間に蜂の巣にされるという悲劇が起きることは無く、みるみるうちに距離が離れていく。
後方を見ていた45が口を開く。
「ハイエンドモデルが追いかけて来ないわね……どうしてかしら?」
「言われてみれば……いや、やってくれたんだな」
「どういうこと?」
「リフィトーフェンってやつがな……そうだった!!」
俺は何かを思い出したかのように急ブレーキを踏んだ。後部座席に座っているスピアがつんのめって頭をぶつける。
「っつぅ……急に止まるなよ!?」
「す、すまん。それよりも!!リフィトーフェンとポチを助けないと!!」
ハンドルを回そうとする……が、それを45に止められる。思い切り彼女を睨んでしまったが、それに怯まず彼女は言う。
「落ち着いてジャベリン。いま私達が行っても殺されるだけよ」
「だけど」
「だけど、じゃ済まされない。それにそのリフィトーフェンって男、ハイエンドモデルと渡り合えたのでしょ?なら大丈夫よ。ポチだってどうにかなる筈よ」
「……畜生、分かったよ。」
45の手が離れる。俺はそのまま転回せずに、真っ直ぐ車を走らせる。 先ほどとは違って嘘のように穏やかな道を行く。
静かな車内、スピアが煙草を吸い始めた。
「……45の処遇はどうする?」
「あぁ?…………なんだかどうでもよくなっちまった」
「……そうか」
煙草の香りが充満していく。
肝心の45はずっと窓の景色を眺めていた。彼女も何か思うところがあったのだろう、俺を説得した後は無言を貫いている。
会社にどう報告しよう……?
そう無理矢理に意識を切り替えて、ジープを走らせ続けた。
鉄血工造から我が家に帰還した俺は、部屋に入って早々ベッドに沈みこんだ。オスカーが「にゃおん」と鳴いて近寄ってくる。オスカーはヘリアントスさんに任せていたのだがコイツいつの間にこの部屋に入って来たのだろう?
というかヘリアントスさんオスカーの世話ちゃんとしてくれてたんだな……。
オスカーを撫でる。気持ち良さそうに喉を鳴らすこの猫を見て、何だか涙が出てきた。オスカーを抱いて、俺は死んだように寝た。
翌日、インターホンの音で目が覚める。誰だと思いながらゆっくりとした足取りでドアに向かう。
ガチャリとドアを開けると目の前には髭面の大男。
「ジャベリン君、任務だ」
頼むから休ませてくれよクルーガー社長……。
なーんか広げた風呂敷畳みきれてない感ある……()
次で終わりますよ!!流石にやり過ぎるのは宜しくない。
というかシリアス……なりきれませんでした。
さて、ジャベリンくんはまた任務を言い渡されます。その任務の内容とは……?
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