それではどーぞ。
170日目 曇
逃亡生活6日目、また処刑人との追いかけっこだ。そろそろ足に限界が来た。一旦義眼を起動させてM4たちと隠れる。
処刑人が俺達を探している間に作戦会議を始めた。今のところ二択に別れている。処刑人と戦うかこのまま逃げるか、だ。
どっちにしても処刑人からは逃げ切れないしリスクは変わらない。
まあまだ見つかってないしもう少し考えるとしよう。
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「もう少し考えるとしよう……ってな」
「あの……何をなされてるんですか?」
「え?日記だけど」
「なんでこんな時に……」
「M4、気にするな。ウチの隊長はこうしないと精神的に死ぬんだ」
「何だとトライデント」
馬鹿野郎、日記書くのは最早趣味になってんだよ。お前だって暇があるときは凄く上手い絵を描いてたりするだろ?
それとこれとは話が違う?似たようなものだって。
今、俺達は処刑人が作り出した瓦礫の影に隠れて作戦会議中だ。だが途中で俺が日記を書き始めたから一旦打ち止めになっている。ただまあ、もう逃げるって事で固まり始めてるから問題はない。
「……何というか、逞しい人ですね。姉さんも気に入る訳です」
「そうでもなきゃ傭兵、しかも隊長なんてやってられんさ。君も見習え」
「ええっと……はい」
≪ご主人褒められて舞い上がってますね≫
「こいつ調子に乗ったらすぐ偉そうにするからな」
「お前ら……」
まあいい。大方の方針は決まったんだ。早く逃げるぞ。
そうやって俺達がいざ動こうと立ち上がった瞬間_______________
真後ろの瓦礫が吹き飛んだ。
「やーーーっっと見つけたぜジャベリン、それとM4ォ。お前達が一緒に居てくれて本当に助かった」
土埃の中から見慣れた顔、処刑人が現れた。その顔は台詞とは裏腹にとても歓喜に満ち溢れた顔であった。彼女はまた手に持っているブレードを構えて切り振ろうとする……がその瞬間。
「早く逃げるぞ隊長!!!!」
「っ、おう!!ポチ、煙幕!!」
≪分かりました!!≫
トライデントが何の迷いもなくMG4の引き金を引き、処刑人へ銃弾の嵐を浴びせた。俺とM4もトライデントに続いて発砲しながらポチの蒔いた煙幕の中へ入っていく。一先ずは基地の方面へ。とにかくジャマーの範囲外に出て救難を出しておかなければならない。最悪M4とトライデントを帰らすのだ。ポチは悪いが地獄まで付き合ってもらう。
トライデントが下がった後で今度は俺が煙の中から矢鱈めったらに処刑人の居る方向へ撃ち続ける。
「くっ……ふ……ケヒッ……良いねぇ!!それでこそジャベリンだ!!!やっと!!やっと俺の渇望していたモノが満たされる!!さあ、俺と遊ぼうぜ!!!!!」
こいつも狂ってやがる!!!!というか俺が撃ったこと分かったのか!?あ、俺だけ7.62だったわ!!!抜かった!!!でも変態染みてるわ!!!
一マガジンほど撃ちきってトライデント達の後へ続く。処刑人はまだ高笑いをしており、追いかけてくる様子は無い。もう一生笑ってろ頼むから。
M4と、走りながらリロードしているトライデントに追い付いた。
「弾の余裕は!?」
「後三マガジンほどです!!」
「こっちは今装填したので最後だ!!」
「トライデントなんでお前それで派手にドンパチしようとしたの!!??」
「油断さ!」
「一生嫁さんにケツ蹴られてろ!!!」
凄いどうでもいいことなのだけど、トライデントは最近事実婚に近いことをした。しかも結婚式を挙げる予定だったのが今回の任務で延期になってしまっていた。だからこそ俺はこいつを生きて帰すつもりだ。フラグじゃねえぞ?フラグじゃねえからな!?
いや、軽口なんて叩いてる余裕なんて有るわけないな。真後ろから獰猛な笑みを浮かべる処刑人がやって来ている。
「ジャベリィィィィン!!!俺は楽しい!!楽しいぜ!!!!確かお前が鉄血工造に来てた時も同じようなことしてたな!!あの時よりも楽しいぞ!!!ケヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」
「そりゃ何よりだ!!!頼むから早くどっか行け!!!」
「断るゥ!!!!!折角満たされてるんだからいいだろォ!!!!」
「ジャベリンさん援護します!!」
M4が処刑人に向かって的確な射撃をする。流石AR小隊だ、関節部分や頭など、凡そ十分にダメージの見込めるところを撃っていた。だが処刑人はそれをものともせずに肉薄してくる。大きく跳躍したかと思ったら直ぐに目の前だ。不味いと思って反射的にSCARを盾にした。処刑人が拳を突き出す。
とんでもない衝撃が俺を襲ったが何とか耐えて彼女の腹を蹴る。処刑人は後ろに飛び退いてまた近付こうとしたがそれをトライデントのMG4が阻む。
ってSCARの側面歪んでる!?なんて力だこいつ!?
「クヒヒヒヒヒ!!!隣の大男も随分と俺を楽しませてくれるなぁ!!!!」
「そりゃどうも」
≪グレネード行きますよ!!≫
ポチが榴弾をしっちゃかめっちゃかに撃つ。それを処刑人は避けたり時には榴弾を切っていた。ポチがぶっぱなしている間に彼女へまた鉛弾のプレゼントを送るが、あまり効いてないように見える。ヤバいって。ハイエンドモデルってこんなに硬いの?それとも処刑人が痛覚でも切ってるのか?
そんなどうでもいい事を考えていたせいで、突然の地面を抉って煙幕を張った処刑人を見失う。
何処だと周辺を見渡しても何も居なかった。
ふと俺達を覆うように黒い影が現れる。
見上げるとそこにはブレードを振り上げた処刑人の姿があった。
「ッッ!上だ散開ィ!!!」
「了解!!」
「何てヤツ……!」
俺達が散らばった瞬間にその場へクレーターが出来る。土埃が舞うそこを銃を構えて睨み付けていたら、斬撃を飛ばしたような衝撃波が俺へ飛んできた。咄嗟に真横へ避ける。そして直ぐに起き上がったら処刑人が突進してきているのが見えた。両手でブレードを構えてる。
「くらいやがれェェェ!!!!!!!!!!」
「こいつマジかよッ!!!!」
≪ご主人!!!≫
「ガッ!!?」
「ナイスだポチ!!」
突進してきた処刑人をポチが榴弾を撃って彼女を迎撃する。直撃した処刑人は吹き飛んで地面に倒れた。瞬間彼女をまた銃弾の嵐が襲う。一頻り撃ち終わった後、様子を見る。もうM4以外は弾が残っていない。もしもまた彼女が動き出したらそれこそ詰みだ。
息を整えながら処刑人に近付いてみる。顔を覗きこんでみたら、まだ意識があった。M4に指示を出して何時でも撃てるようにさせる。
「……クソ、負けちまったか」
処刑人は残念そうに呟く。その顔は悲しそうな、だけど満足してそうな顔をしていた。
俺は何を思ったのか彼女の側に座る。トライデントとポチが少し不安そうだ。
「……警備任務の時のよしみだ。最後くらい何か言え」
「はっ……お前、随分と余裕だな?」
「そうさな、お前達がトラウマになってるとしてもやはり心の何処かで思うところがあるんだろうて」
その言葉を聞いた処刑人は、ちょっとだけ嬉しそうな顔をする。だけど直ぐに小馬鹿にしたような顔になった。
「は、はは、は……お前、そういうこと思うからいつも油断するんだな」
「言ってろ。俺は何時までも甘ちゃんでいいんだよ」
今度は呆れたような顔をする処刑人。
「いつか、何か失うぜそりゃ」
「片目が無くなってるから問題ねぇよ。あとこれ以上失うつもりなんて全くないからな」
「そうか……なあジャベリン」
「?」
何か納得をしたような彼女は輝くような笑顔で笑う。
「楽しかったぜ」
「……」
何も言えない。
M4に彼女の頭を撃ち抜いてもらう。もう完全に動くことはないだろう。トライデントは何故か薬莢を彼女に掛けてた。……三途の川の料金代わりになのかな?
それにしても……嫌な予感がする。
こういうのはよく当たるもので隣のM4が遠くを見て渋い顔をしていた。
「ジャベリンさん、悪い知らせです」
「だろうなぁ……」
「鉄血の軍団が接近してます。逃げましょう」
「うん」
≪煙幕まだ残ってますよ≫
「いい子だポチ。後で沢山愛でるからな」
さあ逃走だ。疲労の溜まった足を見てため息混じりに走り出そうと後ろを向く。
その瞬間、何機ものヘリコプターが俺達の上を通り過ぎた。
だが神は俺達を見捨ててないらしい。
通信機から元気な声が聞こえてくる。
『ハァーイ、ポチとジャベリンにトライデントさんと黒髪の女神様。助けに来たよ!!』
「へ?女神……様……私ですか?」
『そそ!帰ったら私とお茶しよ!!』
「え、えっと……」
「M4、ナンパだから気にするなよ?」
お嬢の守備範囲って何処まで何だろうか……?
何処かの丘。。。
狩人「……処刑人、殺られたか」
狩人「この借りは必ず返すぞ、ジャベリン、そしてM4A1……」
ちょっとした裏話。このお話、処刑人がトライデントくんの片腕切り飛ばしてしまいジャベリンくんが責任を感じて精神的に参る、もしくは鉄血に対して冷徹になる予定だったんですけど思いの外ダークに成りすぎて作者の能力の限界を越えてしまいました。あとほのぼのさせたいからね(ぇ
次回はジャベリンくん、トライデントくんの結婚式とか行ったりします。……の前にジャベリンくんのSCAR、直して貰わないとね!武器庫のガンスミスは激おこでジャベリンくんのSCAR直してくれなかったよ(?)
さてこの作品への感想及び評価は執筆の栄養源です。どうぞ、よろしくお願いいたします!!それではまたこんど!