確実に可笑しくなっているであろう彼女との戦闘シーン、個人的に楽しく書けました。
それではどーぞ。
191日目 晴
チャリで来た。そんなフレーズが大昔の日本であったような気がする。仮にそうだとしたら、俺はWWⅢ以降初めてこの言葉を使った人間になるのだろう。
そんなことはどうでもいいとして、今丁度狩人の居る拠点に到着した。道中は義眼と光学迷彩マントをフル活用したので見つかることは無かった。ただ自転車が一台ひとりでに動いてる光景は少々シュールかホラーなところがある。
警備もそれなりに居るのであまり呑気にしてられない。今から建物の中へ入っていこう。
AR-15は無事だといいのだが。
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不気味なほど静かな屋内、俺は銃を構えて進んでいく。外の警備は随分と多かったが内部は違った、少なすぎる。何かの罠なのだろうかと疑うぐらいに鉄血の人形に会うことが無い。
これじゃ何処かで見たホラー映画よろしく何かしらのホラーイベント染みた事になりそうな気がする。ホラー映画と言えば、G11は確かゾンビ映画が好きだったな。俺が彼女を拾ってからというもの、いつの間にかゾンビ映画のディスクやら録画データが増えていた。俺が知らぬ内にお小遣いで勝手に買ってたりしていたのだろう。因みに俺も結構見てる。その作品たちの中には面白いものだとか、訳のわからないハチャメチャなものが沢山あった。変わり種にゾンビシャークとかあったな。
今の時代、ちょっと汚染区域にでも行けばE.L.I.Dとかいうゾンビみたいなのは幾らでも見ることが出来るのに、そんな事は関係無しにゾンビ映画は増えている。それは監督の執念なのか何なのかはわからない。というか分かっても理解しきれないだろう。
閑話休題。俺は思考を切り替えて奥へ進んでいく。時たま頭を潰されたリッパーや体内の配線をぶちまけられたスカウトやらプラウラーが居たのだが何があったのだろうか?
本当にゾンビというかミュータントでもこの奥に居るのかね。
だとしたら勘弁して欲しい限りだ。AP弾が有るにしても分が悪い。Super-Shortyもあまり役に立たないだろう。E.L.I.Dとは得てしてそうだ、人間がちょっと変容したゾンビならともかく、異常進化したミュータントを相手にした時にはもうやってられない。爆弾か大口径の銃を持ってこないと死ぬ。よくもまあ正規軍はあの化け物とずっと戦っていられるものだ……いや、うちの社長も正規軍のE.L.I.D撃滅部隊に居た訳だし、それを考えたら正規軍もE.L.I.Dと連日戦えるんだろうな。
また思考が逸れたな。落ち着け、俺が今やるべきは狩人の居場所を突き止める、そしてAR-15と合流することだ。最悪の事態は避けたい。AR-15が破壊されてしまうとかな。SOPやM4、ペルシカリア、何処にいるか分からないM16に地獄のはてまで追いかけられて殺されちまう。
「……ここか」
ふと、一番奥の行き止まりに扉が有ることに気が付く。それは半開きになっており、床には血を流しながら何かを運んだのか引き摺った跡が出来ていた。まんまホラーじゃねぇか、狩人は一体何をしてたんだコレ……。
勇気を出してその内部へと入る。中は薄暗くどうなっているかまでは見ることが出来ない。だが、血の臭いがする。鼻が捻切れそうな位臭い立っている。流石にこの中にAR-15は居ないよな?
ううむ、想像したくはないが、随分と趣味の悪いことをしてる。
とはいえこのまま引き返すのも駄目だろう。任務の放棄はするべきでない。もう少し進むとしよう。
「人の部屋を漁るとは感心しないな」
ぞわりと、身の毛がよだつ。
反射的に後ろを振り向けば、そこには白髪長身の女、狩人が立っていた。その顔は薄暗い部屋から彼女を見ているせいか、逆光で見えない。
だが直感的にこの女は怒りに満ちた顔をしていることが分かった。
「まあいいさ、少々予定は早まるがやっとお前を殺せる」
彼女は俺に近付いてきた。俺は彼女から一切目を離さずに銃を構えた。
「この部屋で暴れるのは少し憚ってしまうが、まあいい」
突然、照明が着いた。明るくなった部屋は存外広く、そして目に入った光景はどう考えても尋常な風景じゃない。
数多くの髑髏が、人形の頭が飾られるように並べられていた。中には脊髄ごと引っこ抜かれたものもあり、思わず目を背けたくなる。正気の沙汰じゃないぞ。
この壮絶な光景に思わず俺は言葉を失った。
狩人が両手でハンドガンを構えて底冷えするような声色で言う。
「処刑人の仇、討たせてもらうぞジャベリン」
……どうやら俺はとんでもない化け物の腹の中に居たようだ。
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だだっ広い室内、だが見渡す限りの頭蓋や人形の頭部が散乱している上に血の臭いが充満して決してなんの変哲もないとは口が裂けても言えない。そんな所で激闘は起きている。
そこでは一人の眼帯を着けたタクティカルベストの男を白髪で背の高い女が追いかけていた。その手には日本刀のようなものがあった。
「死ねッッッッ!!!!」
「断る!!!」
俺は此処彼処を駆け回りながら、襲いかかってきた狩人にAP弾をぶちこむ。それを狩人は避けては此方に急接近してくる。
不味い状況だ。
俺の目の前に居る狩人はとんでもない奴でしかない。
俺が発砲したのを見てから回避なんて何処の某狩ゲームだ。まさか『狩人』にあやかって身体改造でも施したのか?
そうでもなきゃ華麗なステップで銃弾を避けてるのに説明がつかないぞ?それに加えてこのハイエンドモデルは何処から取り出したのか日本刀のようなもの振り回してきてるしこれはもう黒だ。
兎に角、コイツを俺の近くに近付けたら即上半身と下半身がオサラバするだろうから絶対に寄せ付けない。
だからといって残弾の関係上矢鱈に撃つわけにもいかないから牽制と攻撃も兼ねて単発撃ちをしているが、それも何時まで続くかわからない。というか弾切れ起こしたら狩人への決定打が無くなってしまう。サイドアームのMP412REXはワンチャン、Super-Shortyは散弾だから牽制程度にしか使えない。
というか何で狩人が刃物持ってるんだ。君処刑人とは違って集団戦法特化だろ!!というか寧ろそっちのほうが俺としてはやり易かったぞ!?
心の中で叫びながら此方に向かってきた狩人へ引き金を引いた……が、何時までたっても弾が出ない。
「っ!!クソッ、弾切れかよ!!!」
「もらったァ!!!!!!!」
「やらせるか!!!」
ここぞとばかりに狩人が斬り込んで来たが、俺は咄嗟に腰のSuper-Shortyを構えて撃った。
無理な体勢で撃ったせいでバランスを崩して倒れてしまったものの、散弾をモロに受けた狩人は吹き飛ばされたので御の字だろう。
何とか距離を離すことが出来た上に彼女へダメージを与えることが出来た。Super-Shorty、お前の事を舐めていたよ。
SCARのリロードを行う。その間に狩人が起き上がりこちらを睨んでいた。
……少し大人しいな。ちょっと気になることを聞いてみよう。
「狩人、お前何で俺に執着するんだ?」
「何を分かりきったことを聞く?処刑人の為に決まっているだろう」
狩人はさも当然のように話す。
いや、確かに敵討ちなのは分かるんだが、そうじゃない。
鉄血のハイエンドモデルは素体のバックアップがあるだろうに、たかだか一回破壊されるだけでここまで怒る理由が分からないんだ。俺はそこを聞きたい。何でバックアップがあるのに復讐なんて事をしてくるのか。
狩人は俺の質問に対して驚きと呆れが混じったような顔をした。
「お前……いや、知らないのなら教えておこう。確かに体のバックアップはある。だがな、その記憶のバックアップはないんだ」
「オイ……本当に言ってんのか?」
じゃあ今恐らく畑で野菜の世話やら猪の世話をしているアイツらは全くの別人ということになるのか?
でも俺の事を知ってたし、しかも小屋の場所も特定なんてしてた。もし俺の事を知らなかったら説明がつかない。
どう言うことだこれは……少し確かめてみる必要がありそうだ。
狩人は俺を嘲笑する。
「本当だとも。もうこの“私”を覚えている処刑人は居ない。これを死んだも同然と言って何が可笑しい?」
「お前……」
確かに、そうだろう。何処かで聞いたことが有るが、人が本当に死ぬ瞬間とは誰の記憶からも忘れ去られた時とも聞く。今の処刑人は目の前の狩人にとって赤の他人、つまり死んだ友に良く似た何かということか。
狩人はその手に持った刀を構える。覚悟を決めたように。
「これはあの時の“処刑人”のためだ。間違っても今の処刑人のためじゃあない」
彼女の顔は、悲しみに耐えるような、そんな顔だった。
「だから、だからこそ、ジャベリン。お前を殺す」
「……そうかよ」
俺は眼帯を外した。俺も覚悟を決めてやってやる。
死ぬわけにもいかない、あと知りたいこともある。
義眼を起動させて俺は彼女を見据えた。
「大盤振る舞いだ。脳味噌溶けようがお前を破壊してやる、狩人」
瞬間、狩人の視界から俺は掻き消えた。
この狩人なんか時計塔の狩人と宇宙人の狩人が混ざってますね……どうしてこうなった。
因みに真面目な終わり方してますけどこの後はシリアスがシリアルになります。AR-15登場しますから……あの子この作品じゃポンコツな所ありますし。
さて……狩人との決着、次回で終了です。どうぞご期待ください。(狩人戦の後どうしようかという顔)
この作品への感想及び評価は心の支えです。バンバンどうぞ!それではまた今度!