※ちょっとだけ無課金系指揮官様作『何でも屋アクロス』が登場してます。
ジャベリンが任務で居ない日にて、彼の自宅にある銃の整備室で、彼のペット兼相棒であるダイナゲート『ポチ』とたまたま休日で彼の自宅へ来ていた戦術人形『G11』が何かを取り付ける作業をしていた。
普段ならこの部屋には入らない二人(一人と一匹?)だが、今日は何やら様子が違う。ポチのみとはいえ随分とテンションが上がっていた。
≪あー……めっちゃ手際良いですね≫
「うぇぇ……面倒でしかないのに何でこんなことやらせるのさ……」
≪良いじゃないですか、ご主人が喜びますよ?≫
「そうだけどさぁ……」
今G11がポチに取り付けているのは小さなソーラーパネルだ。実はジャベリンがいつか着けよういつか着けようと考えていたらいつの間にか忘れ去られた代物で、それを見つけたポチが惰眠を貪っていた彼女を叩き起こして取り付けさせている次第である。
G11は最初、死んでもやるものかというような気迫で寝ていたが、ポチのとあるセリフで動き出した。それというが、
≪これ、ご主人がいつか着けようかとしてたものなんですけどね……残念です。あー、残念だなー、ここで11が私にこれ取り付けてくれたらご主人に言って色々させてもらえるように出来るんですけどねー、ザンネンダナー、アーザンネンザンネン≫
とのことだ。G11は我ながら結構簡単に騙されたな、なんて思いながらポチへの取り付け作業を行っている。ポチは気持ち良さそうにしてるので何だか憎たらしい。ちょっとポチを小突いて作業を完遂させる。
「ほら、終わったよ……はぁ、まさか前職で学んだ技術が役に立つなんて思いもしなかった……」
≪あはは、11は武器庫に居るとき沢山のこと皆に教えてもらってましたもんね≫
「まあね。それじゃあたし寝るから」
≪まあまあ、ちょっと待ってください≫
「……何?」
さあ寝ようとするG11を止めるポチ。露骨に嫌そうな顔をする彼女を引き留めたのは何か面倒なことでも頼むつもりなのだろう、ポチの雰囲気はどうにも悪巧みをしているようにしか感じられない。
そんなポチの様子を感じとったG11は無視をして部屋を出ようとするが、ポチの一言で立ち止まる。
≪ご主人の大好物、知りたくないですか?≫
「……あたしがジャベリンの好物を知らないと思う?」
≪それでも貴女は知りたいから立ち止まった。つまりこの取引は成立してます≫
「ふぅん……」
剣呑な雰囲気に部屋が包まれる。だがそれもすぐ霧散してゆき、G11はやれやれといった顔で頭を左右に振る。
「ポチも随分と強かになったよね」
≪へへ、私はご主人と出会った時から強かですよ?喋れるようになってからそれが目立ってきただけですから≫
「あっそ……まあいいや、それであたしは何をすればいいの?」
≪えっとですね__________________________≫
「何でせっかくの休日を運転手として潰さなきゃいけないのかしらね……」
「いーじゃん416だってジャベリンの大好物とか知りたいでしょー……むにゃ」
「確かにそうだけど……って寝るなこの寝虫」
所変わってここは車の中。運転席にはポチに餌でもちらつかされたのであろう『HK416』が座って運転しており、隣で寝ようとしていたG11を小突いていた。その二人の後ろの座席には、ポチと何故か着いてきたオスカーが居る。
彼女達は今とある地区へ向かっている。何故なのかといえば、これはポチがとあるものを買う為である。
「にゃあ」
≪んー?まあ風の噂ですよ風の噂≫
「にゃ……」
「後ろのコイツらはよく分からない事話してるし……ちょっとポチ、あとどれくらい行けばいいのよ?」
≪あ、ここでいいですよー≫
車が停車する。ポチは器用にドアを開けて、オスカーと車から降りた。416が車の窓を開けて、連絡をしてくれれば迎えにくると言い、そのまま発進していく。
オスカーとポチは伸びをして、がま口をぶら下げて歩き始めた。
「にゃー」
≪んー、お金は大丈夫です。この前ご主人がカードくれましたし≫
「にゃん?」
≪使えますよ?≫
ポチとオスカーどうしでしかわからない会話をしながら数分後、二匹は住宅街の一角にある店へ到着した。その店の看板には『アイテムショップ アクロス』と書かれていた。
ここはこの前ジャベリンが銃の修理のために立ち寄った場所である。何故またここに来たのかと言えば、ポチにとって喉から手が出るほどに欲しいものが入荷されたからだ。
≪ラクダのステッカー……今度こそは!≫
そう、ラクダのステッカーだ。入荷されたことをポチが知っている理由としては、グリフィンに保護されているダイナゲート達が秘密裏に開設したダイナゲートネットワークでそれを知ったからだ。
因みに、ポチがラクダを好きな理由、それは荒野をぶっ通しで歩いても大丈夫なその持久力に惚れているからである。
≪いざ行かん!≫
「にゃあお」
さあ行こう、とポチはドアの前に立ち、ドアを開…………
≪…………≫
けない。ゴツリとドアにぶつかる。今度は後ろ足で立って開…………
≪…………≫
けない。隣のオスカーが哀れみの目で見ている。
ぺたんとドアの前に座るポチ。
≪ふええ…………≫
ポチの夢は潰えそうであった。南無。
…………………………………………
「流石に驚いちゃったよ本当」
≪うぅ……助かりました≫
『アイテムショップ アクロス』内にて、オスカーとポチと『M14』、この店では『ヒトヨ』と呼ばれている戦術人形が居た。
どうやってポチが店内に入れたのかと言えば、ヒトヨがたまたま所用で外に出ようとしたときにへこたれているポチを見つけたからである。
ポチの目の前には数枚のステッカーが並べられており、どれもこれもラクダが何処かしらにデザインされていた。
ヒトヨはこのダイナゲート、何でこんなにラクダが好きなのかなぁなんて思いながらステッカーを吟味しているポチを眺める。ふと、その隣に居るオスカーがまじまじとこちらを見ているのに気がついた。
ヒトヨはオスカーを撫でようと手を出すが、するりと逃げられる。
「……意外と警戒されてるのかな?」
≪オスカーは人見知りですからねぇ……ヒトヨさん、これ買います≫
「あ、お買い上げありがとうございます、500クレジットですね」
≪了解です≫
器用にがま口を開けてカードを渡すポチ。それをヒトヨは受け取ってレジで読み込ませて会計を済ます。
彼女は何となくなんでカードを持たされてるのだろうか、なんて考えながらも店の利益になるのは変わらないのでそこで思考を止めた。
ステッカーを受け取った後のポチはとても嬉しさに満ちた足取りで店を出ようとするが、やはりドアが動かない。ポチは気まずそうにヒトヨへ振り向く。
それに気付いたヒトヨは笑いながらドアを開けてくれた。
「お買い上げありがとうございました~」
≪一笑の不覚……≫
「にゃむ……」
アクロスから出た後、ポチとオスカーはまた歩いてゆく。
暫く歩いていたのたが、ふとポチは何だか気持ちが落ち着かないようで、そわそわとし始めた。。
≪うーん……≫
「どうかなされましたか?」
≪え、いやぁ、誰かにつけられてるな…………と≫
突然誰かに話しかけられ、それに応じたポチだが、そのメインカメラに映った姿を見て一瞬フリーズする。
「久しぶりですね、ポチ」
≪え、いや、なんで代理人が……!?≫
ポチの目の前には、髪を団子のように纏めて白のワンピースを着た女性、『代理人』が立っていた。ポチは正に信じられないという顔で彼女を見つめている。隣のオスカーはなんだこいつという顔をしていた。
驚くポチを置き去りに、代理人は話を続ける。
「彼の痕跡を辿ってやって来たのが幸いしましたね……まさか貴方に出会うとは」
≪っ!!!≫
正気に戻ったポチはすぐに逃げ出そうとするが、悲しきかな相手はハイエンドモデル。多少の強化を施されているダイナゲートとはいえ逃れる事なぞ出来るはずもなく、すぐに捕まった。
ジタバタするポチを落ち着かせるように声を掛ける代理人。
「ポチ、落ち着きなさい」
≪お、落ち着いていられますか!!?私まだ覚えてるんですよ!!!何をとち狂ったのか私に変なフリフリつけたりとか犬耳のカチューシャ着けて『これが本当のポチ……ふふっ』って笑いながら私で遊んだり何故か延々と私にドッグショーの動画見せて実際にやらせようとしたりして!!!貴女に捕まったら禄なことにならないじゃないですか!!それとご主人の事がありますから離しなさーい!!!!≫
「なっ!?貴方いちいち録音したものを流すことは無いでしょう!?今すぐ消しなさい!!あと私は別に危害を加えるために貴方に声を掛けた訳ではありません!!!」
普段ならあり得ないぐらい取り乱しながらポチをホールドする代理人と最早必死を通り越して決死の思いで暴れるポチ。その様子をオスカーは興味無さげに見ながらあくびをして、毛繕いを始めていた。
五分ほどの攻防戦の後、息も絶え絶えな代理人とポチが出来上がった。
≪はぁ……はぁ……本当に私にもご主人にも何もしないのですね?≫
「当たり前……じゃないですか……ふう」
オスカーとポチと代理人は、近くにたまたまあったベンチへ座る。
息を整えた後に、代理人が先に口を開いた。
「……ジャベリンについて相談があるのですが」
≪帰って良いですか?≫
「待ちなさい」
立ち上がろうとするポチをがっしりと掴んで止める代理人。ポチはあからさまに嫌そうな雰囲気を醸し出したが代理人にそれは通じていなかった。寧ろポチへ絶対逃げるなというオーラを送り返して、ポチを座らせた。
「結構死活問題なのですよ……私が彼にあんなことをやった手前、どうやっても彼は私から逃げる筈です。それを……それをどうにかしたいんです」
≪いや……自業自得……というか何でご主人に酷いことしたんですか?≫
ポチのもっともな質問に代理人は少したじろいだが、それも束の間。また話を続けた。
「あれは……リフィトーフェンのプログラムのせいです」
≪……お父さんの?≫
「そんな呼び方してるんですね貴方。まあそれはともかく、彼が私たちハイエンドモデルに挟み込んだプログラムは、何かしらの感情を暴走させる代物でして……私はたまたま彼への好意が溢れてしまったということです」
代理人の話は続く。
「あの時、最初はただ彼を連れて何処かへ行きたかっただけだったのに、暴走してしまって彼を傷付けた。ですが何故か彼への罪悪感なんて無く、いとおしい気持ちばかりが募っていく……彼を見てしまうと胸が高鳴ってしまう。彼を手に入れて何処か安全な所へ保護をしてずっと一緒に暮らしていたいとさえ考えています。可笑しい話です、彼を傷付けたのに何も思うところはなく、それどころか彼への渇望が日に日に増していく訳ですから」
≪な、難儀ですね……≫
「ポチ、私はどうすれば良いのでしょうか?」
≪そう言われましても……ねぇ?≫
「にゃーご」
結構危ない話を聞いたポチはオスカーに目配せをするが、知らんがなと返される。
どうしたものか……とポチは考える。正直な所、代理人は一見まともそうに見えてやはり何処かがおかしくなっている。監禁をしたいと遠回しに言ってる時点で危険だ。しかしこういうのは自らの主人であるジャベリンと引き合わせれば済む話なのだろうが、それは無理だ。肝心のジャベリンは時折悪夢に魘されており、それから起きた時はだいたい代理人に対して怨み辛みを呟きながらまた二度寝に入っていたりする。
詰まるところ今のジャベリンと代理人を会わせても確実に殺し合いが始まるだけだ。それは余り喜ばしい事じゃ無いのだろう。
ならばどうするか……一先ずは彼女にそのプログラムを何とかするように伝えるしか出来ない。
≪うーん……取り敢えずは自分でそれを制御できるようにするべきじゃないんですかねぇ……≫
「……まあそんな気はしていました」
代理人は立ち上がる。どうやら帰るようだ。ポチが何かを言おうとしたが、それに重なるように彼女が別れを告げたので、言わずに終わった。
「私もそれなりに頑張ってみます。でも、やはり彼と私が会ってしまえば……大変なことになるでしょうね。ふふっ」
≪……ご主人をまた傷付けたら許しませんからね≫
「分かっています。ですが努力をするとはいえ私も機械です、書き換えられたものを自ら直す手立てなんてありませんもの。それではごきげんよう」
代理人は何処かへ歩いていく。ポチは彼女を呼び止める事もなく、ただその姿を見ているだけだった。
≪……あ、416に連絡いれなきゃ≫
「にゃーお」
なんとはなし、オスカーの鳴き声がよく響いた瞬間だった。
果たして代理人はどうなるであろうか、それを知るのは未来の彼女だけである。
代理人のヒロインムーヴが著しいような気がしますね……何でだろうか……。
いやぁ、真面目に考えてると、ジャベリンくんが誰かと結ばれるのって何だか想像がつかないんですよねぇ……。まあいいか。
次回はジャベリンくん、とある補給基地へ向かいます。とどのつまりコラボです。どうぞご期待くださいませ。
さてこの作品への評価及び感想は執筆の支えとなります。どうぞお願いします。それではまた次回!
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