実はこの回にはポチが出てきません()
ポチの登場を楽しみにしていた方々、申し訳ない……日常回になったらまた出してくから……。
それではどーぞ!
数日後、メグはローゼとたまたま彼女の基地に居た『ジャベリン』を連れて目的地であるHUBへヘリを向かわせていた。
専用の自律人形が運転する車内ではメグは楽しそうに、ローゼは静かに、ジャベリンは他人に分からない程度には不満げにしている。メグとローゼは兎も角、ジャベリンが不満げにしている理由は単純で、彼は元々このまま後方へ帰る予定だったのをメグに止められてしまったからだ。とはいえちゃんと報酬はしっかり貰えるので文句は言わずに着いてきている。
「それで、俺はお嬢の護衛でもしておけばいいのか?」
「んー?別に大丈夫だよ、ローゼが居るし」
「俺が来る意味ないのでは……?」
メグの回答に頭を抱えるジャベリン。その様子を見て、メグは笑いながら休日だと思って過ごしたら良いと伝える。それに対してジャベリンがより一層頭を抱えたのは仕方のない事だろう。
またヘリで飛んで行き数十分、目の前には大きな基地が見えてきた。目的地の補給基地だ。強固な壁に囲まれており、防衛能力がとても高いように見える。ヘリポートには何人かの人影が見えた、恐らくこの基地の指揮官と副官だろう。
それを見てジャベリンは一つ呟いた。
「ここの指揮官は二人いるのか?」
「情報によれば、一人が物資管理、もう一人が戦闘指揮を担当しているとのことです」
「なるほど」
三人を乗せたヘリが着陸する。ジャベリンがドアを開けて、二人を先に行かせてからまた自分も降りる。
メグがヘリを帰らせようとしたが、目の前のトンプソンと居る指揮官らしき男性にそのまま置いておけば良いと言われた。
「はるばるようこそ、コーマック指揮官。この基地の司令官、主に物資管理の方を務めているハワード・エーカーだ。気軽にハワード司令とでも呼んでくれ。それと、副官のトンプソンだ」
「トンプソンだ、よろしくな」
ハワード・エーカーと名乗った男性は如何にも前線で指揮を執っているような風貌だが、実際得意なのは物資管理というギャップのある指揮官で、メグは不思議な事もあるよねなんて思っていた。隣のトンプソンという戦術人形には、何だか強そうと勝手にイメージした。
彼と握手を終えた後に、今度はそのそばに居たグリフィンの制服とは大きく違った和服によく似た制服を着ている男性が自己紹介を始める。
「この基地の戦闘指揮を担当しているカズト・ナカムラです。気軽にカズト指揮官とでもお呼び下さい、コーマック指揮官。隣の戦術人形は俺の副官のSPAS-12です」
「よろしくね~」
カズト・ナカムラと名乗った男性には……少し失礼ながら奇抜だとメグは思ってしまった。
その視線に気がついたのか、カズト指揮官は苦笑する。
「やっぱりこの服装気になりますよね」
「え、あぁすみません!結構失礼なこと考えちゃって!」
「いやいや、良いんです。元々は祖父母の暴走でこうなってしまっただけですからね」
謝るメグに、ははは、と笑うカズト指揮官。ちょっと気まずい空気が流れるも、それを掻き消すようにハワード司令が喋り出す。
「まぁ立ち話も何だし、応接間まで案内しよう。トンプソン、行こう」
「了解だ、ボス」
すたすたと、副官であろうトンプソンと屋内へ行くハワード司令。カズト指揮官とSPAS-12、そしてメグたちは慌てて彼らに着いていった。
暫く歩いたら、応接間へ到着する。カズト指揮官は他の仕事が有るため副官のSPASと共に何処かへ行った。メグは何となくジャベリンの方を見て、そちらはどうするのかを目で伝えたところ、自分は残ると彼は行った。
今度はハワード司令へジャベリンも居ても良いかと聞けば、快く承諾してくれた。
応接間へ入り、メグとハワード司令は机を挟んで向かい合うようにソファーへ座る。そして同時に目の前の彼へと話を切り出した。
「早速なんですがハワード司令、私の基地へも物資を融通してくれませんか?」
「……おい、お嬢」
超弩ストレートである。
ハワード司令はそれを聞き少し考える素振りをしていた。ジャベリンが彼女へ苦言を呈しようとしたが、ハワード司令に手で制されて、渋々引き下がった。
彼は再びメグを見つめる。
「ふむ、まあ結論から言うとそれは問題ないよ」
「ということは?」
「ということは……って言われても単なる疑問なんだけどね。コーマック指揮官、君は確か親御さんが経営している農園から支援をしてもらっているだろう?そっちに頼めば簡単に物資なんていくらでも貰えると思うのだけれど」
「あー………それはですね」
ハワード司令の疑問に言葉が詰まるメグ。
随分と意地の悪い質問である。確かにメグの父親は大農園の主だ。彼女を溺愛している彼へ頼めばいくらでも物資は貰える。だがメグはそういうわけにも行かないと考えていた。
「ええと、まあ父に頼めば沢山貰えますけど、それじゃ駄目なんです。一つの手段に頼らず多くの手段を頼る、それが普通だと思います。それに輸送トラックを動かす費用も高いですからね、コストカットだってしたいのです」
「つまり?」
「私が指揮を執っている基地は最前線と言っても過言ではありません。日に日に戦闘は激しくなり消耗率も大きくなっていきます。それなのに物資の輸送費へ費用を費やしていたら本末転倒でしょう。それ故にハワード司令、貴方の支援が欲しいのです」
メグの弁舌を聞いたハワード司令はニッと微笑みで返す。
「……ふふ、そうか。すまないね、意地悪な事をしてしまって」
「いえ、大丈夫です。私だって烏滸がましいのは分かってましたから」
「烏滸がましいなんてとんでもない、君はよく頑張ってくれてるのだろう?」
そう言いながらハワード司令は右腕を差し出す。
メグはそれに確りと応じた。
「交渉成立、とここでは言えばいいのかな?」
「ですね、はい」
じゃあそろそろ解散……というところで誰かの腹の虫がなる。全員が見回したがそれが誰なのか分からない。だがお腹が空いているというのは確かだ。ハワード司令は笑って、「折角だからうちのカフェにでも来てくれ、ご馳走しよう」などと言ってカフェへと案内してくれた。
道中、ハワード司令がジャベリンと言葉を交えた。
「そういえば後ろの君、D08での結婚式の時警備として居たね?」
「ん、あぁ居ましたよ。あの時ハワード司令は隣のトンプソンとイチャついてましたよね?」
「なっ!?」
「ははっ」
ジャベリンの言葉に、今まで黙っていたトンプソンは顔を真っ赤にさせ、ハワード司令は見られてたか……といった風に乾いた笑いをしていた。
トンプソンは慌てて弁明を図る。
「いやいやいやいや、誤解だぞアンタ!?ボスと私はただちょっと楽しんでただけでイチャついてなんてないぞ!!?いや少しボスが彼処の戦術人形と話してたりして嫉妬とかしちゃったけど別にそういうことでも無くて……あれっ?」
「トンプソン、自爆してるよ、自爆」
「俺の知ってるトンプソンと大いに違うなぁ……」
顔を覆ってその場にへたりこむトンプソン。それを見ているハワード司令はとても優しそうな顔をしており、しかと二人の親密な関係が垣間見える。
ジャベリンはふと自分が知っているトンプソンがああいう感じになったらどうなるだろうかなんて考えてた。
メグはと言うと、自分もMP5とかわーちゃんとか、基地の皆とこういう風になりたいなぁなんて思っていた。
「まあ、トンプソンは置いといて、君も結構遊び人な所もあるだろうジャベリンくん?」
「……まさか半年前の社内報とか読んでたりします?」
「読んでるとも。まだ本部勤めの頃に随分と大胆な男が居たものだなんて思ってたさ」
顔を覆って蹲るジャベリン。謎の光景が発生してしまったが、メグとローゼがジャベリンをどやし、ハワード司令がトンプソンを落ち着かせてまた動き始めた。
五人はカフェに到着する。そこでは戦術人形の『スプリングフィールド』が食器を拭いており、そしてそのカウンター席ではカズト指揮官が一人でコーヒーを飲んでいた。彼がこちらへ気が付くと、手を振ってくれた。
「司令、お疲れ様です」
「あぁお疲れ様。SPASちゃんはどうしたんだい?」
「珍しく射撃場に行ってます」
「なるほどね。さ、皆も座って」
ハワード司令に促されるままに座る四人……いや、何故かローゼが居ない。メグが彼女の居場所を聞くと、トンプソンが答えてくれた。
「そっちのG36ならうちのG36のダミーが連れていったぜ?」
メグは何となく嫌な予感がしたものの、まあローゼなら大丈夫だろうと、そこで考えるのを止めた。
彼女が思考を切り替えて手元に視線を落としたとき、目の前にカフェのメニュー表が置かれているのに気がついた。どうやらハワード司令が置いてくれたらしい。彼に視線を向けると、私のおごりだから自由に選んで欲しいと言われた。
早速メニューを眺めて、オムレツとトーストのセットを頼んだ。
ところで隣のジャベリンはと言うと、カズト指揮官に日本の色々を聞いていた。
「ところでカズト指揮官、当時の日本じゃニンジャが居てビル群を飛び交ってたなんて聞いたがそれって本当なのか?」
「いやいや、それはないですって。せいぜいブシがハラキリしてカイシャクしてただけですから」
「ハラキリ?カイシャク?」
「お腹をかっ切ったり、首を切ってもらったりって感じですね」
「狂ってる……」
当然だが彼が教えているのは全て嘘である。ジャベリンはそれを嘘だとは知らずにちゃっかり信じている。カズト指揮官はそれが何だか面白いのでそのままジャベリンで遊んでいた。
……暫くして料理が運ばれてくる。メグはそれに舌鼓を打っていた。
「美味しい……」
「だろう?うちの自慢のカフェだからね」
「あら、司令ったら……ふふっ」
メグが食べ終えたら、もう帰る時間だ。
メグがローゼを呼び、ジャベリンがカズト指揮官に名刺を渡していた。席を立ちカフェからヘリポートまで歩いていく。
途中でローゼと合流した。
彼女のスカートの内にグレネードやC4爆弾が見えたのは気のせいだろう。
「今日はありがとうございました、ハワード司令、そしてカズト指揮官」
「構わないよ。前線で戦ってくれているお礼とでも思っててくれ」
ハワード司令は破顔してそう答える。
ちょうどヘリのローターが回りだした。メグたちはヘリに乗り込もうとするが、ふとメグがハワード司令たちへ振り向く。
「こっちもお礼としてHUBへ父の農場の作物とか沢山送りますねーーーーー!!!!」
彼女は返答を待たずにヘリへ乗り込んだ。今度はジャベリンが声を張り上げる。
「何か困ったことあったらカズト指揮官に渡した名刺の連絡先にお願いしますね!!!うち何時でも仕事受注してるんで!!!それじゃ!!」
ちゃっかり宣伝した後にジャベリンもすぐに乗り込んで行った。最後にローゼがぺこりと一礼して乗った後に、ヘリが離陸を始めた。ハワード司令とカズト指揮官は、ヘリが見えなくなるまで見届けた後に、通常業務へと戻っていく。
それから一時間後、空を飛ぶヘリの内部では雑談が展開されていた。
皆が皆何だか満足そうである。
「そういえばロゼ、なんだか嬉しそうだけど何かあったの?」
「いえ、少し面白いことを学んだものでして」
「ふーん……そうなんだ」
(……ローゼのスカートから時折グレネードが見えるのは言わないでおこう)
この後にあの補給基地へ大量の農作物や嗜好品が送られて処理に困ってしまったのは別のお話。
…………ローゼが鉄血人形の集団に向かって踊るようにグレネードを蒔いてゆき、メグを困らせたのも、別のお話だ。
ロゼ「爆発は芸術です」
メグ「ロゼちょっと病院行く?」
ローゼにスキル爆弾魔がインストールされました。
コラボ回、これにて終了。ちょっとキャラの動かし方に不安が残ってしまいましたが、ソルジャーODST様、コラボの許可をしていただきありがとうございます。これを機に皆さんも『G&K補給基地の日常』見てってくださいね?
さて次回は……多分日常回です。武器庫の面々の掘り下げやら久方ぶりのトンプソンや416との絡みを長めにやっていこうかと。
この作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞよろしくお願いします!それでは!