それではどーぞ。
209日目 晴
さて今日は俺が隊長を務める部隊、『槍部隊』への取材だな。
ご存知の通り、うちの部隊は何でも屋な所がある。護衛、強襲、偵察、潜入、支援と色々出来る部隊だ。しかも地域清掃やら子供の相手、時には派遣社員として働くなんてしている。お陰で民間からの覚えが良い。多分武器庫の中じゃ一番民間との繋がりが強い部隊だと思う。昨日近所のおばちゃんに飴玉貰ったよ、最近若い子も入ってきたんだし気張りなさいよってね。
嬉しい限りだ、パイクとパルチザン様々だな。アイツらに何か奢ってやろう。なんて思った。
今回の地域清掃なんだが実は警備も兼ねてる。丁度地域巡回の役が俺達槍部隊だったからだ。
だから箒とかポリ袋片手に銃を引っ提げて歩く野郎共という大変シュールな状況となっていた。でも案外その姿が人気なようで俺達がゴミを拾ってる最中でも子供とかミリタリー好きな人が寄ってきて、ゴミ拾いを手伝ってくれたり撮影をお願いされたり、邪険に扱われることは無かった。
あ、そうそう。うちの部隊にパルチザンって奴が居るだろ?アイツ何に影響されたのか改造されたミニガン担いでたんだよね。ぶっちゃけ過剰火力。でも子供達には大人気でパルチザンがミニガンを構える度に歓声が上がっていた。……まあイメージアップにはなってるのかな?
そんなパルチザンは置いておき、また清掃を続けていたら見知らぬ二人組に声を掛けられた。一人は目を閉じててこっちが見えてるのか分からん銀髪の女性ともう一人は目を開けててまだまともそうに見える女性だった。この二人、どうにもスピアに用があるようだったので後ろに居たスピアを呼ぼうとしたら…………もう既に100m位離れた所に居た。
スピア!?と俺が呼ぼうとするよりも早くさっきの二人が走り出してスピアを追いかける。彼女ら
「AN-94、追いかけるわよ。彼を何としても捕まえてティータイムと洒落こみましょ」
「了解、AK-12」
なんて言ってた。AK-12と呼ばれていたほうは目をかっぴらいていたがなんだったのだろうか……というか、あの二人戦術人形だったのか。
とりあえずスピアの幸運を祈り、また通常業務へ戻る。トライデントやランスは修羅場だ修羅場だと騒いでたので叱っておいた。
……近くの警備ドローンとか清掃用ロボットが急にスピアを追いかけ始めたのは気のせいだろう。うん。
最後に清掃と警備を終えて、休憩をしながら取材を受けた。取材を受けてる間にスピアに連絡を入れて、暫く記者と雑談していると、正に満身創痍なスピアが帰って来た。どうやら彼女たちから逃げおおせれたらしい。さっすが槍部隊副隊長!未だにドローンがお前の近く飛んでることは言わないでおこう!
……取材を再開しよう。まあ聞かれた事といえば俺のグリフィンとの繋がりだとか今の仕事に対しての楽しさとか……色々聞かれたよ。
流石に女性関係の事を聞かれた時は閉口した。ランスが余計な事を言おうとしたのでアームロックをかけて黙らせておいた。
だーれが女性をいとも容易く口説く男だこの野郎。それはスピアのことだろうが。
210日目 晴
社長宛にとある雑誌の見本誌が届けられた。俺とスリンガーはちょっと任務の話で社長と共に居たので見せてもらった。内容は長いので見出しでもここに記しておこう。
先ず表紙なんだが社長のキメ顔と共に『突撃!あなたの街のPMC!~PMC“武器庫”編~』という見出しが書かれてた。この雑誌発行してる会社って結構有名だったはずなんだがこんな変な見出しで売れるのだろうか……?まあいい次だ。武器庫の施設紹介や一般職員の紹介のページ、武器庫の日常風景の写真を読み進めた後に、『隊長達へのインタビュー』っていう見出しと共に各部隊の隊長副隊長の写真と共に文章がつらつらと記されていた。
スピアの写真だけ前にテレビで見た疲労困憊してそうな黄色い電気鼠みたいな顔してたけどこれは狙ってるのだろうか……。
ただ内容自体は何の問題も無く、社長はOKサインを出してそれで終わった。
ふと、社長の机にウェディングドレスを着た女性が表紙となっている雑誌があることに気がついた。何となくそれを手にとって眺めていると、社長とスリンガーが両隣からその雑誌を覗いてきた。
……どうやら顔見知りみたいなやつらしい。社長は正規軍時代、スリンガーは裏社会で活躍していた時代とそれぞれで名前……通り名だな、それを知っているようだ。『スイートキャンディ』だの『伝言屋』だの言ってたが俺にはよくわからなかった。社長曰く軍の清涼剤、スリンガー曰く優秀な運び屋とかなんとか。
今、この表紙の女性はR06地区の指揮官をやっているらしい。幸せそうに戦術人形たちと写る写真を見る限り、彼女は随分と幸せなのだろう。俺は少しだけ羨ましいと感じた……いやあの笑顔見たら誰でも思っちまうよ、“羨ましい”って。
社長やスリンガーに結婚に興味が出てきたか?なんて冗談半分で言われたが、俺は興味無いと言っておいた。好きな人も居ないのにどうやって結婚できようか……あーいや、代理人とかは無しの方向で……。
そういえば盾部隊の演劇がテレビ局に好評だったらしいからドラマ化が決定されたらしい。もちろん出演は盾部隊の皆様です。やったね、収入が増えるぞ!
211日目 曇時々雨
新造部隊の名前が正式に決まった。その名前というのが『鎚部隊』だ。この部隊は軍で言う工兵のようなことをやったり、基地の防衛設備の点検やガンスミスや整備士たちの補助をやるらしい。まるで設立当初の槍部隊みたいだな。俺達みたいに何でも屋の道を行かなければ良いのだが。
その鎚部隊のメンバー、前に言った通り戦術人形だ。始めからそういう専用の民間人形でも導入すればいいと思うが、社長曰く、万が一でも戦えるようにはするべきとのこと。妥当っちゃ妥当。
さてその戦術人形達だが、四人ぐらい来るらしい。リストを見てみれば、
・64式小銃
・M500
・LWMMG
・ウェルロッドMk-Ⅱ
と書かれていた。
これで楽が出来るのかといえばそれは嘘であり、暫くは俺達槍部隊や整備士、ガンスミスの奴らが面倒をみなきゃいけないらしい。技術のインストール?が必要なようだ。俺が彼女たちを世話するのは明日のことじゃあるが、頼むから普通の子であって欲しい限りだ。
ちなみに明日はパイクも俺と行動するらしい。変なことあったらパイクに擦り付けるか……。
212日目 晴
鎚部隊の隊員たちがやって来た。俺とパイクで彼女たちを出迎えたのだが、なんだか白いリボンが特徴的な女性『64式小銃』の様子がおかしい。パイクに熱視線を送っていた。
オッ、これは厄介事だな??とか思いながら彼女たちの案内を始めた。パイクが64式の距離感にタジタジとしている。一先ず俺は自分の隣を歩いていた金髪に小さな可愛らしいツインテールの少女、『ウェルロッドMk-Ⅱ』に彼女がああなった理由を聞いてみたがわからないとのこと。まあ当たり前だよな。
この後は『M500』が整備士たちと意気投合して何か画策しているのを阻止したり、『LWMMG』がガンスミスに色々講習を受けたりとして、時間を潰していった。
一通り案内を終えたら、彼女たちを第二号館、社宅へ向かわせて一日を終える。パイクは随分と疲れていたので食堂で飯を奢ってあげた。
それにしても、新たな新入り達は随分とクセが強そうだった……社長がどんなコードネームを与えるのか楽しみだ。
あとがき劇場 槍部隊
Q.何でも屋というのは本当ですか?
ジャベリン『本当だよ。下手したら子守りとか店番とかやらされるぞ』
スピア『商売敵には家政婦部隊なんて呼ばれてたかな?』
ジャベリン『強ち間違いじゃないから辛い』
スピア『楽しいんだけどね……』
Q.最近はグリフィンとの任務も多いそうですね?
スピア『お陰でね。ボロ儲けだよ』
ジャベリン『その代わり休みなんて無いに等しいけどな』
スピア『そうは言うけどジャベリン、君あと二週間は休めるだろ?本当に大変なのはパイクとパルチザンだ』
ジャベリン『あー……確か住み込みだったか?』
スピア『そうそう、グリフィン管理地区の辺境でE.L.I.D狩り。この前の私みたいだ』
ジャベリン『……お前口調どうにかならない?』
スピア『公私は分ける主義でね』
Q.お好きなものは?
スピ&ジャベ『『紅茶』』
(互いにハイタッチ)
スピア『でもロシアンティーが苦手になってきたかな?』
ジャベリン『なんで?』
スピア『察してくれ』
ジャベリン『あ…すまん』
Q.隊長副隊長共々女性関係で困ってるとのことですが…
ジャベリン『おい誰情報だ?』
スピア『ランスが逃げた!追うぞ!!』
ジャベリン『逃すな!!捕まえてゲロらせろ!』
スピア『了解!!』
210日目の雑誌について。このR06地区の指揮官というのは、笹の船様作『女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん』のシーラ=コリンズという女性です。
この作品、そのシーラさんと戦術人形たちのほのぼの、時々しんみりなお話を読めるのでどうぞ。
さて次回はジャベリンくん、トンプソンと再開します。はてさて何が起きるのか……。
この作品への感想及び評価は心のささえです。どうぞよろしくお願いします!それでは!
※ちょっと軽く社長と裏社会時代のスリンガーについて
社長(ジョン・マーカス)
元正規軍対E.L.I.D撃滅部隊隊長、コードネームは≪
かつて裏社会に存在した工作員もといハッカー。裏社会の人間には呼び名が長いので『インティ』や絶対に人相が判明しなかったので『
この人物の手に掛かればどの強固なセキュリティさえ突破されてデータを引き抜かれてしまう。仮に捕まえようと居場所を突き止めてもそこはもぬけの殻であったなどと、煙のような存在であった。そんな人物であったが数年前に突如としてどこかへ消え去った。その原因は謎に包まれている……だが最近になって名前を変えて活動を再開しただとか、武器庫へ入社しただのまことしやかに噂されている。