今回はトンプソン目線です。どーぞ。
今日はジャベリンの生還祝いだ、思いっきり飲むとしよう。
229日目 続き
まあ、俺は助かった。剣部隊の隊長、クレイモアが気絶して倒れている俺と傍らで呆然としているSAAを見つけて保護したらしい。クレイモアが愚痴ってたよ、子供の守りは苦手だとかなんとか。そーやって子守りが苦手とか言ってるから好い人がみつ
失礼、アクシデントが起きた。
迂闊に変なことが書けない。
話を戻すが、アントマンのコロニーは剣部隊が破壊した。その上でアントマンの親玉を生け捕りにして正規軍の研究機関に売り渡したらしい。ちゃっかりしてんなぁ……。
それで、俺の任務なんだが、書類上としては成功扱いである。何故なのかっていったらアントマンの生態やら何やらが詳しく判明したからだ。ちゃんと定期的にやってて良かったぜ。
最後に保護したコルトSAAについて。彼女はPTSDにかかっていた。ペルシカに相談を持ちかけたが、彼女曰くトラウマが電脳への負荷が大きすぎる為、無理に記憶の消去をしてしまうと一気に廃人のようになるとのこと。なのでゆっくりそのトラウマを無くしていかなければならないらしい。その上周囲の人間や人形に対して極度に怯えている。幸いとして俺だけ平気であるものの、彼女をうちに連れていくとなったらその……うちに来る奴らが厄介なのばかりだからなぁ……。他に預けたい。
それにしても、何で俺は気絶してしまったのかわからない。今も隣でくっついているSAAに聞いたってただただ謝るばかりだった。……この子に絞め落とされたかな?
まあいい。今日はトンプソンと生還祝いで飲むんだ。嫌なことなんて忘れちまえばいいのさ。ポチはちょっと自宅で休ませておこう。アイツも疲れている筈だからな。
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「乾杯」
カチンと、小気味良い音が響いた。雰囲気の良いBAR……といっても何時もの草臥れたマスターが居る喫茶店だけれども、そこで
「本当、酷い目にあっちまったよ」
「だな、でもジャベリンが生きてて良かったぜ」
確かに、儲けもんだな。と彼は笑いながらマスターにお代わりを頼んでいた。私は何となく酒の入ったグラスを眺めてジャベリンとはぐれてしまった時を思い出す。
あの時の私は随分と取り乱していた。ダミー達が必死になって私を止める中、それを振り切ってまででもE.L.I.Dに追いかけられている彼を助けようとしたのだ。正しい行為といえばそうでもないが、まあやっぱり彼の事を大切に思っていたのだろう。
あの五日間はどうにも不安だった。もしも武器庫の剣部隊が来なかったら私一人ででも行ってたのだろう。あぁ、でもポチもついて来てくれたかな?
「……柄じゃないな」
そう呟いて、その思考を掻き消すようにグラスの酒を飲み干した。喉を焼くようなそれは、少しの酩酊感と芳醇な香りを与えてくれる。
……それにしても、
「今日何だか騒がしくないか?」
それを聞いた目の前のマスターが首肯した。
今日のBARは騒がしい。私が回りを見渡してみたら、見慣れた顔がちらほらと。
「やはりだなヘリアン、こういう時こそ積極的に行くべきだろう」
「むぅ、確かに貴様の言葉も一理あるが……それで成功はしたのか?」
「うっ……そ、それはだな……」
テーブル席にはヘリアンさんとクレイモアさん。あの二人仲が良かったんだな……二人の側にはビールの入った大きなジョッキに、いかにも塩分が多そうな合成食品のおつまみがあった。女子会にしては随分と親父臭いような……。
「むっ、不届きものの気配がしたぞ!」
よし、黙っておこう。
彼女たちのテーブルのもう一つ隣ではちょっとした修羅場が起きていた。
「……なぁスプリングさん」
「はい、何ですかスピア?」
「目の前の二人が怖いから離れてくれないか?」
「……ふふっ」
「……AK-12」
「耐えなさいAN-94。ここで騒ぎを起こすべきではないわ」
私の同僚のスプリングフィールドが同じく戦術人形であろう二人に対して、ジャベリンの同僚スピアにこれでもかと腕を絡ませて妖艶な笑みを浮かべていた。スプリング、アンタそんなキャラクターだったか?
触らぬ神に祟りなしだな、余り気にしないでおこう。
「ふぎゅぅ……」
おっと、そういえばStGの奴が居た。コイツ相変わらず飲んでは潰れを繰り返している。確か私達がこのBARに来た時から飲んでたな。最近仕事で忙殺でもされ続けたのだろうか……どちらにせよ後で労っておこう。
「……ふぅー」
「なんだ、もう酔ったのかジャベリン?」
「いいや?まだ飲めるさ……でも前みたいにお前に頼るのも申し訳なくてな」
そう言って笑うジャベリン。
別に頼ってもいいんだけどな、と声には出さないが口の中で呟いた。というかこれはジャベリンの生還祝いな訳だし彼が甘えて来たって私は平気なんだけどな……。
「なぁジャベリン」
「んー?」
「隣のSAA、どうするんだ?」
「あー……」
私は唐突にそんな事を聞いてみる。彼はちょっと困った風に隣へ視線を落とした。彼の隣では、ちょこんと黙りこくってコーラを飲んでいる『コルト SAA』が居る。
普通、この戦術人形というのは本来であれば元気で活発な少女だ。だがこの子はE.L.I.Dに襲われたせいで大きなトラウマを持ってしまった為に、とても静かである。しかもとても臆病になっているようで、私がこの子を撫でようと手を伸ばしたら直ぐにジャベリンの後ろに隠れられた。
私は子供に好かれやすいって自信はあったのだが、この子は一筋縄で行けるようなものではないのだろう。
ふと彼女と視線が交わったが、すぐに反らされた。こうもあからさまだとやっぱり傷付く。
その様子を見ていたのか、ジャベリンが彼女を撫でながら言い聞かせるように言う。
「はぁ……SAA、余りそんな怯えてやるなよ。トンプソンは安全だぞ?」
「……ほんと?」
「ほんとほんと。お前のキライキライなものぜーんぶ守ってくれるぞ?」
…………ん?ジャベリン、なんでそんな顔を……あっ!!
「ジャベッ!!」
「静かに、SAAはまだ大声は苦手なんだぞ?」
「ぐぅッ……!!」
いや確かに子供の相手は得意だけどさ!いきなりそれを押し付けられるなんて聞いちゃあいないぞ!?してやったりな顔をしやがって!!
私がそう歯噛みしていると、いつの間に近付いてきたのか、SAAが私に恐る恐る手を伸ばして来ていた。私はそれを拒む理由もなく、ちょっと笑って彼女の手をとる。彼女はそれに驚いたものの、そのまま私の手を大切に扱うように何度も握り、そしてこちらを向いてえへりと笑った。
「よろしくね、トンプソン」
「ヴッッッ!!!?」
「……トンプソン、どうした?」
「いや、大丈夫だ」
母性に目覚めそうだった。危ない危ない……本来は元気な子がしおらしくなってぎこちなく笑う姿……ギャップってやつだな。破壊力が凄い。なんでジャベリンは平気なんだ……。
私が考え込んでいたらくつくつとジャベリンが笑い、私の肩に手を置いた。
「交渉成立だな?」
「……あぁもう、後で何か買ってくれよ?」
「勿論。じゃあちょっと外の空気吸ってくる、SAAの面倒頼んだぞ」
「おう。SAA、私の隣座るか?」
「うん」
BARの外へ行くジャベリンを横目に、隣に座ったSAAとまた飲み始める。SAAはやはりコーラを頼み、私はマスターがちょうど手に持っていた梅酒なるものを貰った。香り高いそれは、甘酸っぱく何だか落ち着くような味だった。隣のSAAはちびちびとコーラを飲んで可愛らしい。
何となく彼女の頭を撫でながら、私は酒を飲み続けていった。
ジャベリンもとんでもないものを押し付けて来たものだ、今回ばかりは仕方ないが……うん、SAAの可愛さに免じて一応は許しておこう。
「な、SAA?」
「?」
あ、かわ……可愛い……。
BARの外にて。。。。
ジャベ「……ふう」
スピア「なあ」
ジャベ「なんだよスピア。修羅場ってなかったのか?」
スピア「あの三人には悪いが睡眠薬を飲ませた。暫く起きないよ」
ジャベ「えぇ……」
スピア「それよりもだ、君、あの少女はトンプソンに預けるのかい?」
ジャベ「まぁな。アイツなら何とかしてくれるよ」
スピア「随分と信頼してるねぇ……?」
ジャベ「アイツとも古い付き合いだしな。あと、俺のマンション結構ヤバい奴ら多いだろ?」
スピア「あー……そうだったね」
ジャベ「だからさ、まあ悪影響もあるだろうしトンプソンのところが最適なのさ」
スピア「成る程ね……あ、ジャベリン、私も君のマンションに引っ越すから」
ジャベ「は?」
スピア「流石にあの二人の相手は大変なのさ……なあに、上手くやってやる」
ジャベ「いやそれフラ…」
スピア「それ以上いけない」
次回、何も考えてねぇなぁ……侵入者戦をしようか他をしようか……まあ土日までに更新出来ればいいというスタンスで行きます。
作品への感想及び評価は執筆の栄養です。どうぞ、よろしくお願いいたします!!それでは!