傭兵日記   作:サマシュ

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あ、ちょっと別作品も投稿したから見てね(露骨)
ダイナゲート主人公のお話です。
https://syosetu.org/novel/194068/







鉄血の奴らは数を増やすばかりだ。見つかるのも時間の問題だろう。そんな中でうちの隊長は呑気に日記を書いている。こいつに日記を勧めたのは確かに俺なのだがここまでのめり込むことは予想外だった。
まあそれは仕方ない。隊長を補助するのが副隊長の務めだ。それに日記を書いている隊長は随分と楽しそうだ。こんな極限状態でもこうやって精神を安定させることか出来るのは凄いものだろう。これを止めるというのは野暮というものだ。


……紅茶が飲みたいな。






油断はダメだよジャベリンくん!

236日目 雨

 

おかしい、一向に鉄血の集団から逃れることが出来ない。そして不幸な事に俺たちが進むとアイツらも動いていく。非常によろしくない。まるで尾行されているようなくらいに鉄血から逃れられない。地獄かよ……頼むから早く何処かへ行ってくれ。そろそろ脳味噌が湯だってきた。

 

これ以上の義眼の使用は負担が大きいのでさっき岩影に隠れた。未だに居なくならないコイツらに悪態をつきたい気分だが見つかったら危ないのでやらない。

 

……松明は焚かないぞ。

 

 

クソ、いっそのこと方向を変えるしかないのか?

 

 

 

 

 

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曇天の空。

降り頻る雨を眺めながら、俺達は岩影に隠れ息を潜めていた。俺たちが隠れている場所の周囲は、大量の鉄血の人形が闊歩しており、もし見つかればすぐに蜂の巣になるだろう。

 

俺は隣にいるポチを撫でながら、外の様子を伺っているスピアに今の状況を聞く。

 

 

「スピア、アイツらどっか行ったか?」

 

「全然。俺たちを囲むように巡回してやがる。コイツら実は居場所分かってんじゃないのか?」

 

 

縁起の悪いことを言うんじゃねぇ。

 

はぁ。とため息をつきながら頭を抱えていると、ポチが一つの提案をしてきた。

 

 

≪私が注意引きましょうか?≫

 

「出来るのか?」

 

≪一応鉄血側のIFF発することは出来るんですよ私≫

 

 

えぇ……ポチ、君随分と多機能なもんだなぁ……。でもそれバレた時が怖いぞ? お前今の外見だとどうやってもバレるというかなんというか。

 

が、俺の心配は杞憂に終わったようで、ポチが一度身震いをしたあとにポチの体に装着された装甲が一気に外れて地面へと落ちた。久しぶりのノーマルなポチへと戻ったのだ。突然の出来事に固まる俺とスピア。ポチは如何にも得意そうな素振りでいる。

 

 

≪これでなら文句はないでしょう?≫

 

「リフィトーフェン、何で俺に説明書をくれなかったんだ……」

 

 

俺は頭を抱えてポチの生みの親(リフィトーフェン)へ文句を垂れる。

とはいえこれは好機だ。ポチはリフィトーフェンによる改装以降、他のダイナゲートよりも俊敏に動けるように機関部が改造されている。その為囮になったとしても多少は大丈夫だろう。

 

取り敢えずポチを信じて送り出す。

岩影から出たポチはそのまま何処かへ走っていき、続いて暫く経ってから鉄血人形が走っていった。俺とスピアは互いにクリアリングをしながら岩影から移動する。

 

 

「……クリア」

 

「こっちもクリアだ」

 

 

さて、どうしようか。一先ずはお嬢のところへ向かうにしても遠い。一応川を渡れば大分短縮出来るのだがこの雨のせいで増水してしまっている。つまり渡れない。ここは進むべきだろうか?

 

 

「スピア、相談だがこの後どうするべきだと思う?お嬢の部隊と合流すべきか迷ってるんだ」

 

 

俺は隣で双眼鏡を覗いてるスピアに相談を持ちかけた。

 

 

「そうだな……通信は?」

 

「短距離のみ使える。あぁ、それとIFFも微弱ながら確認できるぞ。ここから北東に1kmだ」

 

「そうか……」

 

 

彼は顎に手を当てて考え始めた。俺はその間周辺を見渡してみる。今のところは特に問題は無さそうだ。しかし何故侵入者は俺の目の前に現れたのだろうか。情報が正しければ侵入者はもう少し先に居るはずなのだが……情報に誤りがあったのだろうか? もしそうだとしたらこれは早く帰るべき案件ではあるのだがしかしM4たちも気になってしまう。嘘の情報というのはそれだけ危険なものであり、下手をすれば味方が全滅する可能性もある。

だが……ええいしっかりしろジャベリン。迷ってしまえばそれだけ手遅れになる可能性もあるのだぞ。

 

 

「ジャベリン」

 

「っと、何だ?」

 

「一応進もう」

 

 

俺が少しだけ考え込んでいると、スピアがそう提案してくる。俺はにべもなくそれを承諾して走り始めた。

 

俺は遠くを見据える。すると、遠く、大体500mほど先の丘になっているところに誰かが見えた。俺は隣のスピアにハンドサインを送り止める。近くの木へ隠れて自分の双眼鏡で確認する。

 

 

「……侵入者?」

 

「なんだと?」

 

 

そこには侵入者が居た。こちらには気付いて居ないようだがずっと立っている。

 

……中々やれないな。彼処に立たれると向こうへ進めない。

 

「スピア、こっちに来てくれ。義眼を使う」

 

「おい、大丈夫なのか?」

 

「あぁ、少しマシにはなってる」

 

 

仕方がないので彼女を避ける為にも俺は義眼を起動させて動くことにした。

 

草木をかき分け静かに警戒しながら歩く。だが侵入者には視線を外さず常に見ておいた。

侵入者は相変わらず気づいていない……が、彼女はあの武骨なライフルとガトリングが合体したような武器を持ち上げていた。

 

 

「……ジャベリン」

 

「あぁ、少し怖いな……ん?」

 

 

侵入者は武器を構える。そして俺の居る方向を向いた。あぁクソが、彼女が俺達の目の前に現れたのは()()()()()()かよ。

 

 

「……スピアァ!!!隠れろォー!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は叫んでスピアを押した。

 

 

 

瞬間、俺の腹部に異物が入り込んだ感触があった。








前線指揮拠点にて。。。


いつまで経ってもジャベリンたちとの通信が繋がらなくなった。これは非常に不味い。あの時殴り倒しても止めるべきだったのだろうか。だがあの男はどうやっても頑固に動く男だ。一度ロゼとフェンフちゃんとジャベリンの頑固さをどうしようか議論したぐらいである。

落ち着かない。そう思いながら居ると、隣のフェンフちゃんが私の背中を擦りながら大丈夫だと励ましてくれた。あぁ、なんというか彼女には意外と救われている所がある。私もしっかりしなければ。メグ・コーマックはいつでも元気な女なのだ。このくらいでクヨクヨしてしまうのは恥ずかしい。

……暫くしてM4ちゃん達がやって来た。ジャベリン達は居ない。私はすかさず彼らと出会っていないか問うたが、彼女たちは知らぬ存ぜぬであった。


あの馬鹿野郎は何をして居るんだ。今すぐ捜索隊を向かわせよう。

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