傭兵日記   作:サマシュ

83 / 131
入院するというのは随分と暇になるということだ。
ただ傷が癒えるのを待つだけで退屈でしかない、とはいえ時折知り合いがお見舞いに来てくれるためそうでもないなと思うときがある。

早く傷が治って欲しい限りだ。






傭兵、困るってよ。

242日目 曇

 

どうやら俺はM16の答えの意味を履き違えていたらしい。M16と雑談をしながら小一時間ほど考えていたら床で寝ていたポチに指摘されて気が付いたのだ。俺の様子をよく観察しているなこいつ本当。あー可愛い。そして恥ずかしい。

 

それはさておき、今日は看護師さんがやって来た。定期検査のようで、手慣れた手つきでやってくれる。

結果は怪我以外は健康体、どちらにせよ安静にしろとのこと。まあ仕方なし。まだ俺は大人しくしておく必要があるようだ。

でも看護師さんは驚いていたようで、傷の治りが早いとかなんとか言っていた。

 

早く治ると良いのだが。

 

 

 

 

 

 

 

243日目 曇

 

M16がM4達に戻ってくるよう言われたらしく、早朝辺りに帰っていった。話し相手が居なくなった以上、ポチとしか会話できないし暇になるな。なんて思っていたが、トンプソンとSAAがお見舞いに来たことによりそれは杞憂に終わった。

 

久し振りに見るSAAは、初めて出会った時より幾分かは明るくなったものの、やはり何処か陰がある。それに人見知りもまだ治っていない。看護師が来たとき一目散にトンプソンの後ろへと隠れた。トンプソンは困ったような顔をしていたが、こればかりは仕方ないだろうに。因みにポチもSAAに近づいてみたのだが、それも失敗に終わる。ポチは見るからに落ち込んでいた。

俺はこの後、検査を終えてトンプソンとSAAとで色々と世間話をした。トンプソンの同僚、スプリングフィールドが怯えるSAAに対して母性を爆発させたり、StGがコーラと称してお酒を飲ませようとしたり、SAAがそれで号泣して皆であやしたりとか……途中からトンプソンの子育てを延々と聞かされることになった。

一瞬だけそれに突っ込もうかと思っていたのだが、SAAが口に指を当てて静かにするようにサインを出してくれた事と、トンプソンが完全にお母さんみたいな顔をしていたので、黙っておいた。面白そうだったし。

 

にしても、トンプソンもああいう母性に満ちた顔をするもんなんだなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

245日目 晴

 

あー外に出たい!やっぱり寝っぱなしってのは辛いな!!そうだ、脱走しよう。

 

というのは冗談で(ポチにドスの聞いた声で脅されたため)そんなことはしなかった。でも本当に外に出て日向ぼっこでもしたいような気分だった。出来るなら看護師さんに頼み込んで外に出たかったぐらいだ。

 

 

 

 

 

目の前にM16と416が居なかったらな。くそう。

 

 

 

 

 

なんでこいつらが居るのかと言うとこれは大体数分前に遡る。

 

俺が外をボーッと眺めていたらいきなり病室のドアが開いて416が入ってきたんだ。416がそりゃもう真っ直ぐな瞳で

 

「看病するわ!!」

 

って言ってきたんだよ。思わずポカンとしてしまった。そしてその背後に45と9と11が立ってたんだよ。焚き付けやがったなアイツら。

45達に文句を言おうとしたらそれを416に防がれて強制的に寝かされてしまった。416が心配する気持ちは分からんでもないが強制的なのは如何なものか。そんな思いも束の間に、あれよあれよと彼女が近くの椅子に座り俺がちょっと上体を起こして、如何にも看病されていますよみたいな構図になった。ご丁寧にお高い果物つきだ。うめぇじゃねぇかオイ。

 

 

まぁそうやって甲斐甲斐しくされてたらね、今度はM16がやって来たわけです。彼女は416を一瞥して「久し振りだな」と言って俺の足がある方の椅子に座ったわけだ。416は勿論彼女を睨み付ける。それに対してM16はどこ吹く風である。

 

こうして暫くの沈黙が続いた後に、今に至るというわけだ。たすけて。

 

416は見せつけるように俺へと果物を食べさせてくるし、M16はM16でのらりくらりと416のアピールを避けながら俺と話すし……ポチに助けを求めようとしてもポチはポチで我関せずだ。

くそう!!退院したら犬のステッカー張ってやるぅ!!!

 

そんな事を考えていると、看護師さんがまた定期検査に来てくれたのだが、M16と416を見て、全てを察したような顔をしながら物凄く手早くやられた。そして帰り際に「頑張りなさいよ、プレイボーイ」とか言われた。

だから俺はプレイボーイじゃないと何度……はぁ、コーヒーが飲みたくなってきたぜ……。思い切り苦い泥水のような、昔飲んだペルシカリアのコーヒーが飲みたい。

で、まあそのあとも彼女達のやり取りは続いていたんだけど、そろそろ風呂に入る時間になったときに事件がまた起こる。

 

416が洗ってあげるとか言い始めた。ポチも俺もビックリした。M16だけが口笛を吹いて416を煽ったけどマジで止めて欲しかった。そして俺が止めろと言っても彼女は聞かなかったし、今度はM16が私もお前を洗ってやるよとか言い始めて誠にカオスな状況へと陥った。

 

……結局男の看護師さんが来てくれたお陰で窮地を脱したのだが、いささか心臓に悪かった。

まぁ俺が寝るときにいきなり二人がベッドに入ってきたんですけどね!!!

 

寝れない!!こいつらなんでこんなに女性特有の良い香りがムンムンなんだよ畜生!!!寝れないからこうやって日記書いてるが本当にやめていただきたく。ポチは助けてくれないしどうすりゃいいんだ。

 

 

 

……本当にどうすりゃいいんだ。









ジャベリンくん……修羅場?
まだほのぼのは続きます。彼が退院した暁にはまた大変になっていきますがね()
次回は未だ行方不明だったあの男が現れる……?

この作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞ、よろしくお願いいたします!それでは!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。