傭兵日記   作:サマシュ

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例えジャベリンが入院していようと武器庫は動く、仕事なくして会社は成り立たないのだ。
とはいえ任務ばかりであるわけではない。隊員たちにも日常はあるのだ……。





番外編 武器庫の日常 その2

1.盾部隊の狂信者

 

 

「今日も健やかな日常を……エイメン」

 

 

武器庫の社宅の一室、質素な祭壇の前で修道女のような服装をした長い赤髪の女性が一人祈っている。彼女のコードネームは『イージス』。盾部隊の隊員だ。彼女はいつも決まった時間に何かへと祈っている。その祈る姿は他隊員曰く、“とてつもなく美しく神々しい”とのこと。

 

それだけ彼女が熱心に祈っている“神”というのは随分と素晴らしい神様であるのだろう。

 

 

「全ては貴方に捧げます……マーカス社長、スクトゥム隊長」

 

 

彼女がふとそんな事を言う。彼女の前の祭壇には、二人の男の肖像画と、そして、供物と思われるナニカがあった。

……どうやら彼女の言う“神”とはこの二人のようだ。

 

 

「孤児であった私をここまで育て上げて頂き、感謝いたします……そして貴方方を害する者達を我が身体で絶対に御守りいたします事を誓います……」

 

 

イージスは立ち上がり部屋を後にする。

 

誰かとすれ違う度に挨拶をしていく。柔和な笑みを浮かべた彼女の顔は、まるで聖母のようだった。例えその裏に狂気が宿っていようとも、それを暴ける存在は誰も居ない。この秘密は、彼女のみが持ちうるものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.武器庫の日本人達

 

 

「皆集まったな」

 

「おう」

 

「ああ」

 

「じゃあ今から第45回日本会議を始める」

 

 

ここは武器庫の1号館にある会議室。何故か用意されているちゃぶ台にて、三人の隊員、「ムラマサ」「シラカバ」「シゲドウ」の日本出身の隊員達が集まっていた。彼らは不定期に『日本会議』なるものを開いており、会議と言う名の雑談を行っている。ただ今回は随分と切迫しているようで、皆真面目な顔をしていた。

本日の司会役であるムラマサが口を開く。

 

 

「今回の議題は“米の調達方法”だ」

 

「やっぱりか……そろそろジャポニカ米が無くなってきてるからな……あと一週間持てば良い方だ」

 

「タイ米はいやじゃ……タイ米はいやなんじゃ……」

 

「1年前の悪夢のような事はもうしないぞシゲドウ。二度と兵站部に調達は頼まんからな」

 

 

彼らは深刻な顔でそんな事を言う。

 

……彼らは日本人であるのか米に対する執着が恐ろしい。何せ任務中米を食べるために即席で炊飯器を作ったりどこぞの大昔の帝国軍のような事を仕出かすぐらいだ。

会議が始まる。まず始めにシラカバが提案をした。

 

「俺達が調達すれば良いんじゃないか?」

 

「何ヵ月分?」

 

「3ヶ月」

 

「…………俺達の給料半年は吹き飛ぶぞ」

 

 

却下された。因みにこの時代の米というのは随分と貴重、というか米、しかもジャポニカ米を食べる文化圏となると最早無くなっても久しく、生産者は皆無に等しい。それ故に希少価値が爆上がりして中々手を出せないぐらいの値段となっている。

 

ダメかぁ……と落ち込むシラカバ。今度はシゲドウが提案をする。

 

 

「整備士たちに遺伝子云々でやらせてみては?」

 

「アイツらそれやってE.L.I.D産み出してただろうが却下ァ!!」

 

 

やはり却下される。

シゲドウも見るからに落胆した。どんよりとした空気が漂い始め、議論は平行線へと行くかと思いきや、司会役のムラマサの天才的な閃きによって終止符が打たれた。

 

 

「……俺達が作れば良いんじゃね?」

 

「……」

 

「……」

 

 

皆その発想はなかったという顔をする。一先ずの方針が決まった3人は早速どうするかと話し合うことにした。

 

 

「土地はどうする?」

 

「ジャガーソンさんの所使うか?」

 

「あの人案外ちゃっかりしてるからお金は取られるんじゃね?というかそれ以前に種籾はどうするのさ」

 

「安心しろもう注文した。そして俺の貯金を犠牲に補充分のジャポニカ米を買っておいた」

 

「「ムラマサ有能」」

 

 

こうしてトントン拍子で話は片付いていく。

 

 

後に彼らが武器庫産の農作物を売り出すのは別のお話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.整備士たちの発明品

 

 

「~♪」

 

 

早朝、静かな物置。誰も居ないそこに、武器庫へ所属している戦術人形、『M500』が一人掃除を行っていた。どうにも整備士たちに頼まれたようで、はたきと雑巾を持ってぱたぱたとしている。

 

 

「まっさかこんなところがあるとはねぇ~」

 

 

彼女が掃除をしている物置、ここは整備士たちが作った試作品で一杯であり、彼らに毒された(?)M500にとっては宝の山と言っても等しいぐらいだ。

彼女は早速その試作品を触ってみたりしている。

 

 

「これは……テーザーガン? 電池とかは入ってないから使えないけど……こんなものも作ってたりしてたのかぁ……」

 

「それにこれは…外骨格ね。武器庫の人達が使えるようにしてたのかな? へし折れてたりするし…廃棄品?」

 

「あ、ドローンもある! 機銃みたいなのが着いてるし火力支援用ね!」

 

 

ガサガサと掃除そっちのけで物置を漁り始めたM500、遂には奥の奥まで到達し、とあるものを見つけた。

 

 

「これは……人形?」

 

 

一体の人形である。大事そうに保管されているそれはまるで彫刻のような美しいものであった。

 

彼女はそれに触れようとする。

 

 

「M500、待て」

 

「ひゃっ!?」

 

 

が、いつの間に起きたのだろうか、整備士の一人が彼女のすぐ後ろに立っていた。

 

 

「なんだアーノルドかぁ……もう、ビックリさせないでよ」

 

「それについては謝る。でもその人形からは離れてくれ」

 

「はーい……ところで、この人形ってなんなの?」

 

 

M500は人形へ指を差す。

アーノルドと呼ばれた整備士は、それを無視するかのようにその人形へ大きな布をかけていた。M500はそれを見て思わず口を尖らせた。

 

 

「教えてくれたっていいじゃない?」

 

「……こいつは俺の娘みたいなもんだ。余り触れないでくれ」

 

「……ごめんなさい」

 

 

彼の声色に思わず謝るM500。アーノルドは別に構わないとだけ伝えて物置を出ていった。

M500は一人ぽつんと取り残される。

 

 

「まあいっか。掃除の続きしよっと」

 

 

だがM500は別段気にしていたような様子もなく、またはたきと雑巾をもって掃除を再開する。

とはいえやはりあの人形が気になって仕方がない……が、アーノルドを怒らせてしまうのも嫌なのでやめておいた。

 

 

(いつか分かるときが来るだろうし、我慢我慢。好奇心を働かせ過ぎたら危ないもの)

 

 

M500はまたぱたぱたとはたきを振るう。掃除が終われば、また何かを作ってみようと予定を決めたのだった。

 

 

 








今回の登場人物。

1.盾部隊の狂信者

コードネーム≪イージス≫

盾部隊のやべーやつ。何時も修道女のような服装をしており、仲間からは“戦うシスター”とか呼ばれてる。
社長と盾部隊隊長を盲信しており、彼らに死ねと言われたら喜んで死ぬぐらい。
最近同じ部隊の≪アイギス≫という隊員へ布教しようか迷ってる。



2.武器庫の日本人達

コードネーム≪ムラマサ≫

剣部隊の戦場に立つとやべーやつ。米に対して異常な執着心を持っており、レーションに米がなかったらぶちギレるぐらい。最近というかさっき米のために貯金の半分が無くなった。因みに漢字表記にすると村正。


コードネーム≪シラカバ≫

盾部隊の密造酒作ったやべーやつ。こいつも米に対して異常な執着心がある。即席で炊飯器を作った人間で、盾部隊の奴らがドン引きした。最近は米がプリントされたシャツを作ろうか迷ってる。因みに漢字表記にすると白樺。


コードネーム≪シゲドウ≫

弓部隊の変態的狙撃を達成したやべーやつ。跳弾によって1km先の目標を殺してる。例に漏れず米キチ。自分の身体は米でできてるとか言ってる。最近自分が米を食べるには自分自身が米に成れば良いとかいって整備士'sに突撃したのをスリンガーに全力で止められた。因みに漢字表記にすると重藤。


3.整備士たちの発明品

M500

整備士に毒されて発明ジャンキーになってる戦術人形。未だにコードネームを貰えてないことに少し不満げ。
最近LWMMGが沼に入りかけてるので歓喜している。


アーノルド

この基地にいる二人の整備士のうち一人。何か闇がありそうなそうでなさそうな男。元々は人形の製造工場で働いていたとか噂されている。最近相方が面白いことを思い付いたようなのでそれを楽しみにしてる。







武器庫は変態が多い(確信)
いやー、マーカス社長の人望って凄いなー……すごいよな~(棒)

一先ず次回はちゃんとジャベリンくんのところに戻ります。それでは!!
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