やっと面倒事を終わらせた。グリフィンにせよ鉄血にせよ、随分私にご執心のようだ。
まぁいい、マーカスとの約束もある、早くジャベリンのところへ向かうとしよう。
246日目 晴
昨日の事もあってか俺は寝不足である。結局眠ることが出来たのは朝の4時ぐらいで、正直に言っても寝たという感覚がない。M16と416には悪いが俺の健やかなる療養をするためにも帰って貰うことにした。これ以上あの二人に暴れられると、肉体的にも精神的にも中々クるものがある。今の精神安定剤はポチだけだ。
こいつはマジで癒しなのだ。疲れた時にいつの間にか寄り添ってくれている……犬かな?犬だな。しかも今は装甲が着いてないノーマルな状態だからな……これにオスカーも付いてくればそこには
それはそうとして、今日は誰かが来るという訳でもなく、何時もの如く看護師さんが検査に来てくれた。てきぱきと手慣れた手付きで作業を進めてくれる彼女。こういう人がうちの会社に来てくれると案外士気も上がったりするんだよなぁ……美人さんだし。
…………ちょっと恥ずかしい話なのだが上記に記した言葉を無意識に俺は言っていたらしい。幸い、彼女は気にしていない素振りだったので大事になるなんて事は無かったが……気を付けるとしよう。
247日目 曇
じっとりとした暑さを感じながら過ごす病院の一室、俺の目の前には一番会いたくてぶん殴りたくて堪らなかったあの野郎が来ていた。
リフィトーフェンだ。
ある意味俺が片目を失った原因だしハイエンドモデルに目をつけられる原因でもある。蝶事件以降何処をほっつき歩いていたんだと小一時間ぐらい詰問してやりたいところだったが、その前にポチがリフィトーフェンを上部アームで張り倒して、
「何処をほっつき歩いてたんですかこの馬鹿ーーーーッッッ!!!!!ご主人の無茶もありますけどこんなことになったのは八割がたお父さんのせいなんですからねーーーッッ!!!もーーーーー!!!!」
って今までに類を見ないぐらい怒って、ゲシゲシとアイツを踏みつけてた。
……まあなんだ、ポチもやっぱり思うところがあるんだろう。ここまで声を荒げるポチを見たのは初めてだ。まあリフィトーフェンは笑って謝ってたけど。こいつ反省の色全くないな?
そんなリフィトーフェンはポチを小脇に抱えたかと思ったらそのまま椅子に座って、俺に改めて謝ってきた。
まさかここまで酷いことになるとは思わなかった、許してくれ。ってさ。許したよ、非があるとはいえ一応事態の収束に尽力してたわけだし……。
まぁ、
「それはそうとジャベリン、代理人に片目を抉られた時にどれぐらい興奮したんだ? ちょっとそういうデータが欲しくてね」
とか宣ったので思い切り殴ってポチにも渾身のタックルやらせたんですけどね。
頼むからもうちょっと慮れマッドサイエンティスト。そして何でそれを知ってる。
248日目 晴
リフィトーフェンはまだ病室に居る。まあ別にいいんだが……。
一応こいつがお見舞いに来てくれたってのは事実な訳で、ご丁寧にもジャガーソンさんとこの梨を持ってきていた。しかも手際よく剥いていくからちょっとムカついた。ムカつくけど物凄く美味い。
……梨を食い終わったのを皮切りに、リフィトーフェンは怪しい機械を取り出した。義眼をアップグレードするつもりのようで、早速俺の義眼に接続しようとしてきた。ちょっといきなり過ぎて彼の行為を止めて、先ずは何故俺が目を抉られて義眼を埋め込まれていることを知ってるのか聞いた。
彼はさも当然のように「マーカスから聞いた」と言う。よし社長退院したらぶん殴ってやる……と思ってたら、それに続いてリフィトーフェンは
「アイツが私に“ジャベリンの義眼は確実に何かしら手を加えられてしまうだろうからアイツが入院した時に義眼の強化でもしてやってくれ”とも言ってたぞ。愛されてるな君は」
と言ったもんだからその考えはたち消えた。そうか、あの社長にも思いやりはあるんだなって。
気を取り直して、俺は大人しく義眼のアップグレードをしてもらった。リフィトーフェンは俺の義眼を弄りながら、蝶事件以降何をしていたのか話してくれた。元々は死ぬつもりだったらしいのだが、死のうにも死ねず、仕方がないのでそのまま各地を放浪なんてしてたらしい。いや俺のところ来てくれれば良かったのでは?と聞いてみたら
「君はE.L.I.Dやら鉄血やらグリフィンに追いかけられていた状態でこんなところに行けると思うかね?」
……思わないです。何でグリフィンに追いかけられてるのかはさておき、中々大変だな本当。
さて雑談もさておき義眼の強化が終わった。リフィトーフェンが言うには認識阻害はそのまま、追加機能に暗視装置。そして対ハッキングに対する強固なファイアウォール、あと勝手に起動してしまう不具合の修正を行ったらしい。じゃあ眼帯要らないのでは?ってなったのだが眼帯にもある程度のセキュリティを掛けたので着けろと言われた。いやはや、精々30分位しか話してなかったのにその間にそんな機能をつける辺り、とんだ天才だと思う。ペルシカリアと同等なんじゃないかな。
義眼の強化を終えたリフィトーフェンはまた来るとだけ言って帰っていった。ちょっと急いでいるような顔をしていたがそれがどうしてなのか、俺には分からない。
ポチももう少し喋りたそうにしてたのに何なんだろうか。
248日目 続き
リフィトーフェンの野郎グリフィンに指名手配されてやがった。マジでなにしてんだこいつ。
246日目の一幕
「こんな美人さんが居たら会社も元気になりそうだよなぁ……」
「あら、嬉しいことを言うわね?」
「あっ……聞こえてました?」
「全部ね。無意識に口説くってのもプレイボーイらしいわ」
「いや…だから」
「ふふっ、冗談よ」
「……ははは」
「でも、私も案外まんざらでもないのよね」
「はっ!?」
≪はぁ!?≫
「それじゃあね、ジャベリンさん?」
「え、えぇ……?」
≪ご主人、メモが≫
「おう? ……オイゲンさんか」
≪モテモテですねぇ≫
「嫌だよ俺こんなエロゲみたいな主人公…」
看護師さん口説かないの?とか言われたのでやりました(清々した顔)
次回はちょいとスリンガーくん視点に入ります。それでは!