あ、暫く更新三日に一回のペースに落とします()
一先ずジャベリン農園のお話は終わりへ行きます。それではどーぞ。
「待ちくたびれたわ、スケアクロウ」
「それは申し訳ない限りです。そこに立たれると感電しますよ?」
「おっとっと」
前回と場所が変わって野菜畑。スケアクロウが草刈り機片手にそこへ向かえば、獣避けの電柵の傍らに侵入者が立っていた。今の彼女の姿は、デニム生地のホットパンツに黒い長袖のシンプルな姿。見るものによっては何処かのモデルのようにも見えるだろう。
「お気をつけ下さいませ。下手をすれば一瞬で機能停止してしまいますから」
「あら、この電柵は随分と殺意が高いのねぇ」
侵入者は薄ら笑いを浮かべながらスケアクロウへと近付く。スケアクロウは草刈り機を置いた後に、彼女へ防護眼鏡と軍手と水筒を渡す。勿論侵入者は怪訝な顔をするが、すぐにその意図を察した。
「手伝えってことね、何をすればいいの?」
「一先ずは先ほど歩いてきたであろう道の草刈りをお願いします」
はいはい。と侵入者はスケアクロウから草刈り機を受け取る。それを見届けたスケアクロウは農薬を蒔こうと畑の中へと向かった。
「……スケアクロウ」
「ん、何でしょうか?」
「草刈り機、どうやってエンジンを点けるのかしら?」
「…………」
スケアクロウは頭を抱えた。
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「じゃあ、頼みましたよ」
「ええ、任せなさい」
耳に響く小さな駆動音と共に草の刈られる音が聞こえる。スケアクロウはそれをBGMとしながら農薬を用意する。この農薬はメグ指揮官から頂いたもので、年に二回、ドローンで薄く散布するように言われている。
さて、今から彼女はその農薬を撒いていく訳なのだが、ドローンが見当たらない。一体どうやって撒くのだろうか、わからない。だがそこはスケアクロウ。彼女が今からやらんとすることは、感の良い諸氏は何となく分かるだろう。
「さて、やりましょうか」
彼女の付近を何かが飛ぶ。黒光りするそれは、スケアクロウが戦闘時に使用する小型ビットだ。ひゅんひゅんと飛ぶそれと共にスケアクロウも宙へと浮かぶ。彼女がどうやって宙へと浮かべているのか不明ではあるが、彼女にとってはこっちの方が随分と楽であるらしい。
スケアクロウはそのまま畑の上空、大体自身は2、3m上空へ、小型ビットは後方のそれより高く浮かぶ。
「こういう時は本当に楽ですわね…」
ふよふよと進み始める彼女。小型ビットはそれに追従し、農薬を散布していく。万が一にでも吸引してしまえば大変なことになってしまうがそこはスケアクロウ、いつの間にかマスクを着けていた。
「二番機はもう少し左へ、三番機はそのまま、一番、四番は右に」
小型ビットへと的確に指示を出して行きながら着実に仕事を進めていく。
「……中々暑いですね」
汗を一筋垂らしながら飛ぶスケアクロウ。帽子を被っているとはいえ、天高く地上を照らし暖める太陽には中々耐えられないようだ。彼女は服の袖で汗を拭う。S10地区は比較的自然が多く、そしてそれなりに湿度も高い。
「そろそろ休憩を……ん?」
大方の散布を終えて、スケアクロウが汗を拭いながら地面に降り立つ。ふと、後ろから何かが走ってくる音が聞こえてきた。彼女はすぐに振り向くと、そこには、金髪のツインテール、そして眼帯を着けた特徴的な少女がこちらへ駆け寄ってきていた。
「スーさーん!!お手伝いにきたよー!!」
「あら、スコーピオン。基地のお仕事はよろしくて?」
「指揮官に許可貰ったから大丈夫!」
スケアクロウの事を『スーさん』と呼ぶこの少女は、『スコーピオン』。近くのS10地区基地へ所属する戦術人形だ。見るからにわんぱくな彼女はスケアクロウの隣へとやってくる。
「最近の畑はどう?」
「ようやく野菜が元気になり始めたぐらいですわ。一時期萎びててどうなるかと肝を冷やしたのは良い思い出です」
「人形に肝なんてあるかなぁ?」
「便宜上は、ですよ」
なにそれー。と笑うスコーピオン。一先ずは、一緒に木陰へと座り込み、水筒の麦茶を飲む。キンキンに冷えた麦茶は彼女の喉を潤し、心身共にリラックスをさせてくれる。
「あ、スーさんスーさん」
「はい?」
「うちの基地、フェンフちゃん居るじゃん。あの子最近おめかしするようになったんだけど何か知らない?」
「いえ……私は基本そちらには寄らないものでして」
「ふーん、そっかー」
蝉の声に耳を傾けながら畑を眺める二人。スケアクロウは帽子を脱いだ。しかし、なぜこんなにも暑いのか、スケアクロウはそう思う。ここS10地区は崩壊液の影響をそこまで受けていないグリーンゾーンとはいえ、気候自体は熱帯とかそういうものでも無かった気がしてならない。
彼女は、自分の思い違いなのだろうかと考えつつ、農薬散布を終えた後は何をしようかと考える。
「そういえばスーさん」
「なんでしょう」
スケアクロウはスコーピオンに声を掛けられて一旦思考を止める。
「また新しい人来たんだね」
「あぁ…侵入…インティのことですか」
どうやらスコーピオンはもう侵入者と遭遇してしまっていたようだ。スケアクロウは適当に彼女の名前を作りそれをスコーピオンへと伝えておく。
スコーピオンは特に気にすることもなくそれを受け入れた。いや、流石にもう少し疑えとスケアクロウは心の中で苦笑する。まぁ、それはとにかくもう暫く休憩を取ろうかとスケアクロウがまた畑を眺め始めたら、今度はスコーピオンが思い出したかのように言う。
「それにしてもその、インティさんだっけ? あの人結構凄いよ」
「と、言いますと?」
「地面の上で俯せで寝てたもん」
「なんでそれを早く言わないんですか?」
スケアクロウは走り出した。
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…
「あー……まさかこんな些細なことで倒れちゃうなんて……」
「ご自愛くださいませ、侵入者」
所変わってスケアクロウ達が寝泊まりしている小屋。ソファーに濡れタオルを乗せた侵入者と、その隣で椅子に座って氷嚢を作っているスケアクロウが居た。因みにスコーピオンは基地へと帰らせた。
侵入者が倒れてしまった理由、それは単純に仕事に熱中しすぎて自身の排熱を忘れていたという、普段の彼女なら有り得ない事を仕出かした結果である。
「何をどうしたら自分の排熱を忘れるなんてことが出来るのでしょうね」
「そんな皮肉っぽく言わないで頂戴、スケアクロウ。誰にだって失敗はあるって本に書いてあったわ」
「何ですのその自己啓発を促すような本は……」
スケアクロウは呆れ気味に氷嚢を侵入者へと渡した。侵入者はそれを受け取って額へと当てる。
「ふぅ……助かるわ」
「それは何よりですわ」
スケアクロウは立ち上がる。そしてそれと同時に扉が勢いよく開いた。
「スケアクロウ!!飯にしようぜ!!!」
「処刑人……ジャベリンにも言われたでしょう、扉はゆっくりと開くように」
「おっと、すまんすまん」
処刑人だ。どうやら作業を終えて帰って来たらしい。スケアクロウは随分と早いようなと考えながら時計を見ると、もう短針が7の数字を指していた。意外に時間が経過していたらしい。スケアクロウは仕方ないと台所まで行き、食材やら食器やらを用意していく。
「スケアクロウ、今日のご飯は?」
「最近あの基地から野菜を貰ったので、野菜炒めですわ」
「おいおい、肉はねぇのかよ?」
そう言ってゴネる処刑人。まあゴネたところで何か変わるということでもない訳であり、スケアクロウはそれを右から左へと聞き流しておいた。
「処刑人ちゃん~」
「んぁ、どうしたんだ侵入者?」
「今日も一緒に寝ましょ?」
「えぇ……嫌だよ、暑いし」
料理を始めたスケアクロウの後ろでは夜のお誘いのようなものが始まっている。昔の侵入者はこんなことするはずも無かったような気がするが……まあ
「いいじゃないの、暑いのはお互い様よ?」
「お前が良くても俺が嫌なんだよ!侵入者、お前絶対何かの本の影響受けてんじゃん!」
「大丈夫よ処刑人ちゃん、私が読んだのは女の子が絡み合う本だから」
「何読んでんだお前!?」
……そういうわけでも無かったようだ。
侵入者、彼女はどうにも本からの影響を受けやすい。記憶に新しいのはとある漫画を読んで爆破趣味に一度目覚めた時だ。あの時は代理人が居なければ危うく弾薬庫が大爆発するところであった。
「あ、スケアクロウでもいいのよ?」
「突然私に話を振らないでくださいまし!?」
侵入者の突然の発言にわちゃわちゃと騒がしくなっていくこの小屋。侵入者はスケアクロウに絡み付こうとしてくるし、処刑人は処刑人で飯はまだかと催促し続けている。
スケアクロウは、どうにも平和に終わりそうじゃないなと考えつつ侵入者の追撃を避けながら、料理を作り続けるのであった。
侵入者って本に凄く影響受けそうなんですよね。特にうちの侵入者は……だよな?
さてさて次回はまたもやジャベリンくんの病室へ……。
筋肉式治療をば(?)
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