傭兵日記   作:サマシュ

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ジャベリンは猫を飼っている。その猫はオスカー、ジャベリンの癒しだ。今日はそんな猫の視点で始まるお話である。







オスカーは見た。

 

私はオスカーだ。気高きくろぶちの猫である。あれはいつ頃だったか、極寒の雪原のど真ん中を歩いていたらポチという鉄の犬に導かれた。そして今はジャベリンという人間と出会い、オスカーという名を授けられ、その人間の棲み家を私の活動拠点としている。

あそこは良いものだ。ヘリアントスという人間が私に良くしてくれてるし、何より其処らを出歩いても何にも襲われず、何も言われない。私が好きなようにしていられる。

だが、昨日一昨日辺りに、ジャベリンはもう一人の“11”と呼ばれる、鉄の匂いがする人間を使ってポチと私をジャベリンが勤めているという会社の一部屋まで連れてこられた。昔居たところというわけだから、別に嫌という訳ではないが、私は猫だ。自分の匂いがしない場所というのは慣れぬ。

さて、今日はそのジャベリンが会社の社宅なるものにて私を抱いて寝ていた。

 

「スゥ……フゥ……」

 

ちなみに私の頭を嗅いでいる。なんとも“ていすてぃ”な匂いがするらしい。何故そんな匂いがするのか、私にはよくわからない。ただジャベリンには分かるらしい。人間とは不思議なものよな。そう思いながら顔を洗う。しかしジャベリンの鼻が邪魔で中々やりにくい。少し文句を言ってやろう。

 

「にゃー」

 

「ん?あぁすまんオスカー、邪魔だったか」

 

私の抗議が伝わってくれたのか、ジャベリンの鼻は私の頭から離れた。これでのんびりと顔を洗える。

 

「んふぅ……」

 

…………今度は私の背中に移動した。ポチ、この阿呆をどうにか出来ぬか?

 

≪ご主人は疲れてるんでそこは我慢してください≫

 

このジャベリン至高主義者め。よくわからん人形になってジャベリンに殴られてしまえ。

 

≪あっ、それも中々良いですね≫

 

変態か?お前、変態なのか?

普通、殴られて喜ぶものがあるか。私なら御免だね、ポチ、お前は殴られるのも構わないのか?

 

≪そりゃもう。私はご主人を守るための存在です、ご主人が望むならその通りに≫

 

まるで狂信者だな、ポチ。まぁそれで構わないのであれば何も言うまい。私は顔を洗うので忙しいのだ、あまり相手をする暇もないのでな。

 

「なーににゃごにゃごとポチと喋ってんだよオスカー……俺にもにゃごにゃご鳴いてくれよぉ……」

 

「みゃーお」

 

「ンッフッフッフッフッフッ……可愛い」

 

変な笑いを出しながら私の背中をまた匂い始めるジャベリン。これは私がいくら文句を言っても駄目だな、置いておこう。何、私の心は寛大だ、時には諦めてやるぐらいの器量はあるのである。

 

≪…………≫

 

ポチ、なんだその疑問に満ち溢れたような目は。

 

≪ただ面倒臭くなっただけなのでは……?≫

 

ほう、私の刃に倒れたいのか貴様。私は強いぞ、何せお前に導かれる前はどの猫、どの化け物どもよりも強かったのだ。舐めるでない。

 

≪E.L.I.Dかな?≫

 

知らぬ。ただ奴等は厄介だった、私をその汚い手で触ってこようとしていたからな。この自慢の爪……今は切られてなまくらになってはいるが……まぁとにかくバッタバッタと倒してやったとも。

 

≪へー……≫

 

どうだ、凄いだろう?

 

≪スゴイデスネ、ハイ≫

 

カタコトで私を誉めるポチ。

ポチめ、信じておらんな……まぁ無理もない、私の戦う姿をお前は知らぬからな!

 

「ジャベリン、居る?」

 

≪あ、11≫

 

ふと私が自慢げにしていると、銀髪の気だるそうな人間、“11”がやって来た。どうやらジャベリンに用があるらしい。ビニール袋片手に部屋の入り口近くに立っている。

 

ほら、ジャベリン来客だぞ。

私はそう伝えるために後ろを向いた。

 

「スゥ………」

 

寝ている。

折角の来客だというのに、何をしているのだこやつは。そんな奴には一緒に寝てやらんぞ、私は抜ける!

 

「にゃあーお」

 

「あ、オスカー、そこにジャベリンが………………」

 

私が声高らかに美声を響かせながらジャベリンの腕からすり抜ける。それに気が付いた11が私たちの方を見たが、言葉途中に食い入るように私……否、丁度抜け出たジャベリンの腕の部分を見つめてきた。

どうにもこれは、何かあるぞ。ポチもそれに気が付いたのか、何も言わずに外へ出ていった。気遣いでもしているのかあの鉄の犬は。

 

「…………まぁ、別にいいよね」

 

11はビニール袋を近くの机へ置き、するすると液体が如くジャベリンの腕の中へ入っていく。そしてそのままご満悦な顔でジャベリンの顔辺りまで行く。

 

「さぁて、寝よ……」

 

すぐに微睡みへ向かう11。早いなこいつ、私よりも寝るのが早いぞ。

 

「ん……オスカー……」

 

「ひゃっ……ジャベリン?」

 

「んー、オスカー……」

 

さて、少し面白いことになったぞ。ジャベリンが私と間違えて11を抱き締めている。それに加えてあれは匂いを嗅いでるな?

ジャベリンの勢いは凄いぞ、私を脅かす掃除機に負けぬ劣らぬ強さだ。そんな勢いで吸われたらどうなるだろうか……。

 

「あー……いい匂いだ……」

 

「……寝惚けてるのかな、まぁいいけど」

 

「んへへへへ……オスカーは可愛いなぁ……」

 

……あまり11には効果が無さそうだな。寧ろ幾分か嬉しそうである。お前もポチの仲間か? いやどうなのだ11よ。

 

「違うけどね…えへへ……でもたまにはこんな日もいいのかな……?」

 

ついでに頭も撫でられているぞ、11。その、お前の顔はこれまでにない程にふにゃけている。なんだその顔は、あらゆるパーツがほんやりとしているぞ。

何なのだこれは。ジャベリンが寝ぼけ眼で11を撫でながら匂いを嗅ぎ、その11はふにゃけた顔でそれを受け入れている。もしこの会社にいる人間がそれを見たら、確実に困惑するだろう。というかしている。入り口で赤毛の偉丈夫、“トライデント”だったか? そいつと黒髪の短髪で青目の軽薄そうな“パルチザン”が二人覗いていた。

トライデントは咽び泣いている。

 

「てぇてぇ……てぇてぇよぉ……」

 

「隊長……まさかそっちの気が……?」

 

……何かしら勘違いをしているようだ。まぁ私には関係ない。とりあえずはこの状況を静観するとしよう。私は気高きくろぶちの猫だ。時には何も言わず、ただ見守ってやるのも務めであろうて。

私は箪笥の上に登り、11を抱くジャベリンと静かに見守るトライデントとパルチザンを眺める。

 

「うひ…………んぁ……11……?」

 

「あ、おはようジャベリン」

 

……私はオスカー、どんなときでも同じぬ気高きくろぶちの猫である。例えこの先起きるであろう事にも動じることはないであろう……。






「まぁいいか……」

「……はぁ、また寝ちゃうんだねジャベリン」

「んー11ー……」

「なに?」

「大好きだぞ……くぅ」

「……そっか。おやすみ、ジャベリン」



「てぇてぇよぉ……パルチザンわかるか……このてぇてぇさ……わかるだろ」

「いやわかりませんってトライデントさん……」

≪……眼福≫




※小一時間は続きました。



いやはや、まさか燃え尽き症候群がでるとは思わなんだ。サマシュです。夏は色んな予定があるから中々忙しいものです。まぁどちらにせよ頑張りますがね。

さて、次回こそコラボ消化!楽しみにどうぞ。

この作品への感想及び評価は心の支えです。どうぞよろしくお願いします!それではまた今度!!
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