真・恋姫無双~黒狼伝~   作:ランダムエラー

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私は帰って来たぁぁぁぁ!!!!


第10話

春蘭の号令と共に最後尾を駆ける。

厩舎で馬相手に外敵では無いと刷り込ませようとは試みたが、やはり牙を見せたりするとどうしても怖がる為に俺は最後尾に着く。 

一度先頭を走ってみたが、馬は俺より先に進もうとしない様で騎馬を用いた時は最後尾を駆ける。

 

…若干、何時もより馬達の速度が早いのは気のせいだろう。

 

不意に人の臭いが増える。 直ぐ側に敵が居る。 馬、ニンゲン…生き物なら大抵は臭いと言うものは似ているが若干違う。

本当に些細な違いだが、俺にはその違いが分かる。 犬や狼の特権だろうな…

 

<ワン!>敵が近いぞ!

 

速度を上げて先陣を切る春蘭に追い付くと確りと聞こえていたらしい。 先頭から見ると前方に豆粒程度だがニンゲンの集団らしきモノが見える。

春蘭は直ぐに声を張り上げて全軍に号令を掛けていた。

 

「愚かな賊共に我々の恐ろしさを刻み付けるぞ!!全軍!とつげきぃぃぃぃい!!!!」

 

「「「「おおおおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」

 

此方の雄叫びで流石に感づいたようだ。 黄色い布を身に付けた奴等も此方に向かって駆け始めてきた。

 

<ワン!!>先行させて貰うぞ!!

 

「仕方ない、任せるぞ!」

 

こういう鉄火場での春蘭は話が早くて助かるな…  俺は身体中に力を込めて全力で駆け抜ける。

両肩の得物を抜き、力一杯咬み絞める…あと九十歩…

 

先陣を切る理由は色々あるが、一つは馬が俺より遅いこと…もう一つは…

 

 

 

「化け犬だぁ!!?」  「狼だぞ!?気を付けろ!!」

 

こんな具合に錯乱して足を止めてくれるからだ。

おおよそ、俺を初めて見るニンゲン共は動揺する。 此は戦の最中だろうと関係ない、ニンゲンは理解出来ないモノを見ると動きが止まるのだ。

 

実に隙だらけだ…死ね。

 

先陣を切っていたニンゲンの首を跳ね、勢いを落とさずに群れの中へ中へと食い込む。

賊共を切り裂きながらも思考と足は止めない。 殺し合いの最中に考え事をする余裕が有るほどにコイツらは弱いが、足を止めては囲まれる。

 

しかし、馬鹿だコイツら…槍を持つ奴、剣を持つ奴、弓を持つ奴、鍬を持つ奴、包丁を持つ奴…皆、武器事に整列等していない。

此では、お互いの得物の得意な距離がバラバラではないか…雑魚も同然か…

 

「怯えるなぁ!!狼如き、囲んで殺せ!!」

 

威勢良く仲間を鼓舞するのは良いが所詮は烏合の集なんだろう。悲鳴を上げて逃げ腰の者も居れば、怯えて立ち尽くす者も居る。

殺すのなら大将首…此だけの数が居るのだから、何処かに纏め上げる大将が居る筈だ。

 

「この…ぎゃあぁぁあああ!!!」 死ね。

 

威勢のいい奴、歯向かう奴を重点的に殺す。 味方を鼓舞する奴も殺しておけば、後は勝手に混乱してくれる。

 

剣を振るう奴は振り上げた腕を絶ち切ってやる。 槍で突く奴には身を交わし、腹を裂いてやる。

弓を番える奴は放つ前に両足を落としてやる。 鍬なんて構える奴は大抵逃げ出したな…

 

狩りと一緒だ。 俺は逃げられなくすればいい←戦えなくすればいい

 

「はあぁぁあ!!!」

 

たった一太刀で二人の首を跳ねる。流石、春蘭だ。

俺が開けた穴から、春蘭達が流れ込む。 浮き足だった賊は手も足も出ずに殺されていく。

 

そして、人の感情とは他のニンゲンに移りやすいものだ…先頭が成す術無く死に絶えると、後続のニンゲン共は恐怖に支配される。

 

されど、その膨大な数全員に伝播するには俺たちの人数は余りにも少ない。

 

「黒曜!季衣と流流は見えるか!?」

 

全力で跳躍したら後方に砂塵を確認出来たから、季衣や流流達も上手くやってくれているだろう。

…着地する時に踏み潰すのも忘れない。 この体躯だ、自分で思うのもなんだがニンゲンからしたら相当重いだろう。

 

案の定、声も出せずに絶命している。 

 

<ガウ> 居たぞ

 

「ならば、二人の事を頼めるか!お前のお陰で敵は浮き足立っている。後方の奴等にもお前の牙を見せつけてやれ!!」

 

口に剣を咬えているせいで上手く喋れなかったが、ちゃんとに伝わったようだ。

確かに此処ではこれ以上の混乱は望めないだろう…一度、賊達の薄い所を食い破り、群れから出ると真っ直ぐ季衣達が居るであろう陣を目指す。

 

 

見当たらない?あぁ…クソッタレめ…返り血で鼻が鈍くなってきた…あの娘っ子達はは何処だ?

 

 

「でやぁぁぁぁああ!!」 「はぁぁあああ!!」

 

少し先でニンゲン共が“飛び上がった”。

 

いや…確かに声は同じだが…

雑兵を掻い潜り進むと、彼女達は身の丈とは不釣り合いな武器を振るうのが見えた。

 

おかしいな…見るからに牛より重たそうなのだが…

季衣はトゲのついた鉄球を自在に振り回し、流琉は巨大な円盤(?)を振り回し次々と敵兵を吹き飛ばして行く。

 

あぁ、これが俗に言う“規格外”か…

妙に納得出来た所で、向こうも此方に気づいたようだ。

 

 

「あっ!黒曜…さん?」

 

季衣が首を傾げながら不思議そうな顔をする。

 

敬称は要らないぞ、ニンゲンと年齢で比べるとややこしいしな。

 

「呼びやすいですし、黒曜さんでも良いですか?」

 

好きに呼んでくれ、そろそろ引き返すぞ。

 

「じゃあ、ワンちゃんで!」

 

却下だ! はぁ、行くぞ春蘭が策を忘れる前にな…

 

 




前回の更新から一年近く経過してるってマ?


ごめんなさいです。他に言葉が思い浮かばないです…
詳しい近況報告は書きますので、箸休めにご覧ください。

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