やっぱり6部は最高だ!
教誨師としてG.D.st刑務所に着任してから数年経った時、今の『刑務官』としてG.D.st刑務所にやって来た彼と出会ったのが、初めての邂逅だった。
こう───、なんと言えば、というか、彼をどう表現すればよいのだろうか。
いや、彼自身は所謂小金持ちの息子特有の真面目さと、何事も卒なくこなすことの出来る能力、その点に関しては世間一般の人々に比べ特に何も際立った部分はない。
それは彼自身が生まれ持った
一言でいうのならば、『魅力』───とでも言うべきか。何も『
もしかすると私だけが感じた彼に対する印象だったのかもしれない。彼と会話をする時だけだ。少し、そう、ほんの少しだけ────
なんというのだろうか、────少し、ほんの少しだけだが、彼と話す時は
ひょっとすると、彼は教誨師という面では私以上に、いや彼以上に教誨師という役職に向いている人物はいないのではないだろうかとも思ってしまうほどに、だ。
discにも人と同じく『相性』というものがある。
邪悪な性根の持ち主には邪悪なものを、小心者ものには陰湿で、凶悪なdiscを。しかし何よりも重要になってくるのは、discを埋め込まれた者の本性にいかにdiscが反応するか、尚且つスタンドを持つに値する精神力の持ち主なのかだ。
もし彼にdiscを埋め込んだのならば、あの『』とも言うべきものが彼の本心から生まれてきたものなのか、それともただの上っ面で、貼り付けられた彼の仮面の1部なのだろうか。それを知るために彼にdiscを埋め込むというのも────悪くは無い。
いずれにせよ天国の時はもうすぐだ·····。かの忌まわしき空条承太郎の娘、空条徐倫が留置所からここへ収監されるまであと数日だ。ああDIO──君の悲願は必ず、私が、果してみせる────。
『君は、どういうわけでそれをすることになったんだ?』
最早憂鬱になるほど聞かれたこの言葉。飲みの席や、久しぶりに知己の友人と会ったりして仕事の話をするやいなや、だ。
もちろん、そんな時に返す言葉は決まっている。
『人々を悪から守るためさ』
表面だけを取り繕い、まさしく『正義の人』と思わせる魔法のような言葉。これさえ言えば大抵のヤツは感心したような目を向け、その言い慣れた言葉に、やはり聞き慣れた返答を返す。
『やっぱり、君ならそう言うと思ったよ』
学生の頃の時分を知っている知り合いが口々に言うその言葉に、子供の頃から‘’体裁‘’というものを気にし、息苦しい青春生活を送っていた自分とは打って変わって、今はもう心を痛める自分はいなくなったのだ。いじめの現場や不正行為を見つければ告発し、学年首席で卒業したのは親が敷いた‘’学生の鑑のような息子‘’というレールに従っていただけにすぎなかった。
ただ少し。ほんの少しだけ他人より勉強ができただけ。他より1段上を、一足先に登った。ただそれと、守られた社会を仕切る側の一員になりたいという自分でも気づいていなかった欲望が結びつき『刑務官』と呼ばれる少しだけ位が高い役職に結びついただけだった。
実際の所、自分に『正義の心』なんてものはないのだろう。
自分がもし、刑務官ではなく警察官であったとしても、道路に吸い殻がポイ捨てされる瞬間を見ても止めることはないし、たとえ薬の取引現場を目撃したとしても金を握らされたのならば、自分はそんなもの目撃することはなかったと言うだろう。
それは『G.D.st刑務所』の刑務官である今の自分でも変わらない。
囚人が外から持ってきた金を見つけたとしたら? 分け前を少し貰った後、自分は何も言わず見なかったふりをするだろう。
逃亡のための逃げ穴を囚人が掘っているのを見つけたら?やはりそれも同じく金を受け取り、その逃げ穴の事を口外することはないだろう。
じゃあ、もしも。もしも、だ。
たまたま留置所に向かう仕事があり、たまたま欠勤だった同僚の代わりに任された見回りの際に、たまたま
G.D.st刑務所の囚人、エルメェス・コステロは苛立っていた。
ゴツン───ゴツン────ゴツン────
絶えず繰り返されるこの、何か硬いものをぶつけるような音。
3~4人が1組となり入るG.D.st刑務所内のお世辞にも綺麗とは言えない独房も、より一層彼女の苛立ちを強くさせている。通路には暗闇の中で逃亡の手立てを企てられないよう、蛍光灯とともに看守達が四六時中目を光らせている、まさしく囚人達にとっては地獄のようなその牢獄の中で、硬い何かをぶつけるような音がその石作りの海で何度も何度も鳴り響いていた。
次、もし1回でも鳴らしてみろ─── 1回文句言ってやる。
ゴツン────ゴツン────
「ッチ!おい────ッ 隣で何やってんだ!?」
しかしその声は届いていないのか、それとも鳴らさずにはいられないほどなにか、重要な事をしているのだろうか。エルメェスの甲斐も虚しく、その音が止む気配はなかった。
────ゴツン、ゴツン──!
「何度も言わせるな、イラつく音立ててんじゃね────ッ!!」
────ゴヅン!
やっと音を鳴らす行為を止めたのか。今までより一際大きい音が鳴り響く。すると今まで音が鳴り響いていた方向から今度は1人の女の消え入りそうな声が聞こえた。
「もうダメよ·····昨日の夜見られた·····男の看守に·····もう私、生きてけない·········。もう死にたいわッ!!」
そんな女の悲鳴にも聞こえるその声から、どうやら彼女が音を鳴らし続けているのは看守が関係しているらしい。再び叫び出したかと思うとまたもやクソ、クソッ!と言いながらまた、先程の硬い何かをぶつけたような音を響かせる。
「だから何だよ?頭をどっかに打ち付けてんのか?ヤカマしいからやめろって!一体何を見られたって言うんだよッ!!」
するとまた、女が頭を打ち付けるを止め、重々しい口から文字通り消え入りそうな声を出した。
「つまり·····だからその····マ、で始まる言葉で·····」
「マ?」
────マ。急に喋り出したかと思うと何やらちんぷんかんぷんな言葉を言い出した。先程の自身の苛立ちはどこへ行ったのやら。確か名前は、ジョリーンと言ったか。そのジョリーンは次に思いがけない事を口走った。
「マスター〜〜·····ベー〜〜〜ション····················をよ·····」
思わず。問い詰める言葉を言おうとすると、開けようとした口から、言葉ではなく大量の息が漏れた。
「ちょっ·····ちょっと待てよ········プ···まさか··今 見られたって言ったのか?留置係に
まさか、
エルメェスの他にも様子を伺っていた囚人達も、互いに顔を見合わせる。
「どっどっ·····どの留置係にィィ────っ!? オーーマイガッ!!!」
ポツポツと、話し出す酷く落ち込んでいる様子の当の彼女とは反対に、エルメェスのテンションは最高潮だ。
「──鉄格子の形を見てたら ついムラムラって·····だからふと顔をあげたら、特徴的な白服を着た、若い男がいて、彼が、ウッソーって顔して·····」
ゴツン、ゴツン、ゴツン────!!
「この鉄格子の前に立ってたのよォォ────ッ!もうお嫁にいけないッ!!うぅぅ〜·····」
「ちなみに·····パンティよ!!ズバリ、どこまで────」
「ちょっとそこまで聞くーっ?ぜん·····いや、絶対に言えないわ!」
「オーーマイガッ!!見られたのは一瞬かッ!? それともジックリ───」
「ああ!もう思い出させないでよ───ッ!!....でも多分後者、かもしれな────」
「オーーマイガ───ッ!!」
「ばっか!大きい声ださないでよ!」
「でも、それって半分もう────」
「違───!────!!」
「────·····」
「·····───!!!」
────彼女達は一体いつ、目の前の留置係の席で座っている自分の存在に気づくのだろうか。
適当に書いたからまた書き直すか、消しちゃうかも