一般人・イン・フロントライン   作:全緑小隊

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序章です。

序章は物語の都合上、あまりキャラの固有名が出て来ない為少々わかりにくい点もあるかと思いますがご了承ください。


序章ー一般人、平和とオサラバー
一般人・イン・フロントライン・サドゥンリィ


「この中に入ってなさい。指揮官が貴方の処遇を下すまでね」

 

「んなっ!?」

 

 

冷たい言葉のあとに、負けず劣らず冷たく重い金属音が背後で鳴り響く。

青年が文句を言おうと振り向くと、既に言葉の主は鍵を掛け終えて踵を返すところだった。

 

「おいっ、待てよ! 何だよ、俺が何をしたって言うんだよ!!」

 

青年は離れ行く背中に叫ぶが、一瞬たりとも気に止められる事もなく、その人は黄緑色のツインテールを揺らしながらその姿を消すのだった。

 

 

「……なんだよ、これ」

 

暗い暗い、部屋の中。

無機質な壁と鉄格子に囲まれた中で、彼は呟いた。

 

「何なんだよ、これ」

 

理解が追い付かないままに、彼はもう一度呟いたのち、己の腕を見やる。

その両腕は鈍色の枷によって戒められており、不快な重さとぐちゃぐちゃになった思考に青年は立っている事も嫌になる。

 

「俺は犯罪者かっての、くそっ……」

 

苛立ちのままに毒づくと、青年は座れる場所があるかと狭い牢屋の中を見回す。

だが椅子のような真っ当に腰掛けられる物はアチコチ罅の入った便座のみ、他は薄汚れたボロ布の敷かれたベッドのような物だけだった。

 

「うわ、ハエが集ってる……。ベッドは……とりあえず何もいない、か」

 

羽虫の舞う便器からなるべく離れるようにし、青年はベッド擬きの隅へと座り込む。

 

「はぁー……っくそー、ほんと一体何だって言うんだよ。そもそも、ここどこなんだよ」

 

ため息と苛立ちを隠すことなく言葉に出しつつ、青年は混乱しっぱなしの考えに整理をつけるべく、とりあえず自分が何故こんな状況に置かれてしまったのか、それを思い出す事にした。

 

 

「……つっても、数日ぶりに会社から出て、のんびり家まで歩いてたらいきなり立っていられないような凄い地震が起きて、しゃがんで頭を抱えてたら、気付いたら何でか荒野のど真ん中にいて」

 

日の沈みかけた無機質な街中のビル群が一転、車や建物の残骸が散らばる荒涼とした日の下に変わったのだ。

場所は愚か、時間帯すらアベコベで混乱しっぱなしだった青年は、まさか今の地震で全てが崩れてしまったのかと戦慄しながら誰かいないかと辺りを歩き回った。

そして、その辺りを歩いていた紅いコートの女性に声を掛けた……そこまでは良かった、だが。

 

「いきなり銃突き付けられるなんて、今時日本じゃドラマでもあり得ねーよ。しかも拳銃ならともかく、あんなやたら長い猟銃みてぇな奴をさ。あんなん持ってどこに狩りしに行くんだよ、猟友会かなんかかっての。しかもこっちの言葉にも聞く耳持ちゃしないし……そもそも街中で堂々持つとか銃刀法違反じゃねーのか?」

 

青年は慌てて敵意が無いことを伝えるが、女性は意に介さず青年を拘束するとそこから数キロほど離れた基地の建物にまで青年を強制連行したのだ。

 

「指揮官?って呼ばれてたけか、あのヤロー……人の所持品むしるだけむしって牢屋にぶちこむとか、ふざけてんのか。周りの奴らはあいつの言うことに従ってたし、実際偉いやつなんだろーな。すっげぇやたら偉そうにしてたけど……あーやだやだ」

 

 

連れてかれた部屋にいた男の顔を思い出し、ため息と共に毒を吐ききった青年は俯き加減に己の手枷を眺める。今でもまだ、彼には今のこの状況を納得出来ないでいた。

 

「意味わかんねーよ、第一地震が起きたと思ったら場所も時間も変わってたなんて、アニメや漫画じゃないってのに。何で俺みたいな一般人がこんな目に遭わなきゃならねーんだよ。

もしかしてどっかに拉致られた?いやいや有り得ねーよ、俺ずっとあの場に居たんだぞ、拉致られたら分かるだろうしそもそもあんなところに放置されるとかそれこそ有り得ないわ」

 

口から出るままにブツブツと自問自答を続けていた青年だったが、扉の開く音が聞こえてその口を閉じる。

荒れ地で彼を捕縛した紅コートとも、先程牢屋に案内……もとい押し込めた緑髪ツインテールとも違う、片眼を銀髪で隠した妙な格好の女性がやってきた。

 

「出ろ」

 

女性は牢屋の鍵を開けると、感情を感じさせない、だが鋭い視線を向けながら今しがた自分が通ってきた背後の扉を親指を立てて示す。

そのぞんざいな扱いに青年の中にまた苛立ちが募るが、彼女の右手に収まっている得物を見て、素直に従う他ないと彼は諦めて立ち上がる。

今まであった女達が持っていたどの銃よりもごつく、重そうなそれを顔色一つ変えずに持っている辺り、到底自分の敵う相手ではない……と、内心青年は嘆息する。

そして、この扱いからして自分の状況が好転するようには、彼にはとても思えなかった。

 

「……着いてこい」

 

そんな様子の彼に、表情にほんの僅かに憐憫の色を滲ませた彼女ではあったが、すぐにそれを消すと青年が着いてきている事を確認しながら歩き出すのだった。

 

 

 

 

「あー、面倒だから単刀直入に聞く。お前どこからきた?目的はなんだ?」

 

青年が部屋につくなり、高そうな椅子にどっかりと座り込んでいる男が部屋中央に置かれたこれまた高級そうな机に足を乗せたまま、面倒臭いといった表情を隠すことなく青年に向ける。

肩に掛かった深紅のコートは、青年が荒野で出会った女性が纏っていた物とはまた別物のように見えた。

 

「どこから、って……さっきも言っただろ!?会社出たらいきなり地震が起きて、そしたらこんなどことも分からん場所にいきなり放り出されてさ!むしろどこだよここ、俺が知りてぇよ!」

「あーあー分かった分かった、煩いから落ち着け、全く」

 

大きなため息をつきながら手で制すような仕草を見せると、男は顎で何かを指し示す。

その方向には、先程牢屋に送られる前に一度この部屋に来た際に回収された青年の所持品が作業机へと並べられていた。

 

 

「部下に念のため調べさせたが、この地域一帯において直近にはっきりと感じられるような地震の起きた形跡は皆無だ。当然俺らもそのような地震は全く感じなかった」

「んな、馬鹿な。……でも」

 

男の言葉に青年は思わず呟く。

しかし、何となく予感はしていたのだ。あれほど建物が倒壊しそうな大地震が起きた直後だというのにも関わらず、出会う人々に慌てた様子は一切見当たらず、逆に壊れた車や崩れた建物は何年、何十年も前に既に破壊された様相だったのだから。

 

「あと、貴様から押収した荷物を調査させてもらった。通信端末については現在解析中だ、そのうち結果が出るだろ……で、身分証明書『らしき』もの等々調べてはみた、が。おい」

「ほらよ、ボス」

「部外者の前ではせめて指揮官と呼べよ……まあいい」

 

サングラスをかけ、煙草らしき物を加えた女性を嗜めると、自分を指揮官と呼んだ男は受け取った資料に軽く目を通してから青年の前に放り投げた。

 

「字体からして恐らく極東……ニホンの物と推察される、だが現行のデータベースからは判別不能だ」

「判別不能、って俺はその日本の人間だよ!っつーか言葉だって通じてるし、そもそもここは日本じゃないのかよ!?」

 

青年は思わず食って掛かった。ここまで普通に言葉が通じていて、それでここが日本ではないとは到底信じがたかった。

 

 

 

だが。

 

 

「何を言っている。ニホンは何十年も前に消えた。ニホンだけじゃない、東アジアを始めとした多くの国がコーラップス汚染と第三次世界大戦で姿を消した」

「……は?」

 

 

返ってきた言葉は、青年の想像を遥かに越えるものだった。




開幕早々理不尽な目に遭っていますが、ドルフロ世界ならよくあることだと思っています。
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