一般人・イン・フロントライン   作:全緑小隊

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妖精でガタガタになった資材を何とか溜めようとしてたら、来てしまいましたね……深層映写<DEEP DIVE>の告知ががががが。
前回失温症の時はランキング戦はスルーしましたが、今回は何とか頑張りたいものです。

あとメイドキャリコかわいい(こなみかん)


一般人・イン・フロントライン・サドゥンリィ10

 

 

「っはぁ、はぁ、はぁ……着いて、きては、ない、よな?」

 

ほうほうの体で廃墟に逃げ込んだ青年は、肩で息をしながら物影から外を振り返る。スタングレネードの影響から脱したとおぼしき鉄血人形達が青年の姿を探しているのかキョロキョロと辺りを見回している様子が見えたが、彼が廃墟に逃げ込んだ事を認識した個体はいないようだった。

 

「中もとりあえずは、大丈夫、そうだな……うっ、げほっげほっ……はー、ふー」

 

屋内も危険がないことを確認した青年はヘルメットを外して深呼吸をするが、埃を吸い込んだのか噎せこむ。盾を置き、手で口を覆ってから改めて息を整えると、そこで青年は屋内を見回す。

 

「滅茶苦茶ボロボロ、だな……」

 

いつから人が住んでいないのか、あちこちに砂や埃が積もり、さらに銃撃戦でもあったのだろう、壁の至るところに銃痕が穿たれている。住居というよりは小屋といった風情の部屋はベッドと小型の箪笥位しか家具はないが、そのどちらもが朽ち果てていた。

窓は完全に破壊されそこから陽光は差し込んではいたものの、全体には薄暗いという印象を彼に与える。また床には何やらあちこちに膨らみがあったが、埃が積もっており青年には判別は不可能だった。

 

 

「あんだけ埃だらけだと触りたくもないけどさ……にしても、何とかここに逃げ込んだはよかったけどさ、ここからどうしよ。いくら撃てなくなったとはいえ、銃をあそこに置いてきたのはまずかったかなぁ。ほんとに送ってくれんのか知らんけど、何とか時間を稼がねーと」

 

腰に付けられた残り一つの小筒以外はほぼ完全に丸腰状態となってしまった事を後悔しつつ、盾とヘルメットを置いてから何かめぼしい物、武器として使える物はないかと暗い中で目を凝らす。

 

「……お?何だこれ」

 

すると、埃の中から細長い筒とも棒とも取れるような物が空中に突き出ているのが見て取れた。特に深くは考えず、青年はその物体を掴み引き上げる。

 

「う、わ……なんだこれ、でっかい……銃、いや銃なのかこれ。ライフルともまた違うみたいだけど」

 

彼が掴んでいた物は、全長1メートルはあろうかという程の細長い銃だった。先程まで使っていたキャリコから渡された銃(M110)と比べて明らかに長大、重厚、かつ複雑そうな見た目のそれに持ち上げた青年本人も顔を引き攣らせる。

 

「こ、こんなの俺に使えるのかよ?ていうかそもそもなんでこんなもんが置いて……ひっ!?」

 

口をついてでた疑問と共に銃のあった場所を見て、青年は思わず息を飲んだ。五本の細長い指が、そこに見えたからだ。身体の中を冷たいモノが流れ落ちていくような感覚を味わいながら、見たくないという思いとは裏腹に視線はその先を追っていく。

 

 

 

 

そして、彼は見つけてしまった。

 

 

「に、人間……っ死んでる!!」

 

床に仰向けとなり、眠るように目を閉じて倒れている、長髪のポニーテールの見た目幼い少女がそこにいた。

 

「っ……ぎっ、ぐ、ふ……!だ、駄目だ、叫んだら駄目だ……!!」

 

凄まじい動揺と圧倒的な恐怖で叫びたくなるのを、すんでのところで呑み込み歯を食いしばる。今ここで叫んでしまったら一貫の終わりだと言うことを、混乱する頭に何とか言い聞かせる。そうしてまた呼吸を整えてから、青年は視線を動かない少女へと向けた。

埃だらけの服はあちこちが破れ、肌は砂まみれ。黄緑色の髪の毛の先は黒いゴムで縛られているが、それらも凝視してようやく分かるほどの物だった。そして、腕は左腕が肘から先がなく、足も右足の外側が抉れてしまっている。

 

「な、なんで、こんな年端もいかない少女が、こんな……むごい、むごすぎるだろ……って、あれ?」

 

呟いてしまってから、青年はあることに気付いた。

 

「ちょっと、待てよ。ほんとに、人間……なのか?」

 

惨状とも言うべきその姿に、青年は違和感を覚えた。遺体に埃が積もるほど時間が経っているであろうにも関わらず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()か、と。

意を決して青年は少女の左腕の側まで行き、その切断面を確かめ………。

 

 

 

 

「……や、やっぱり、人形かよ」

 

そこにあったのは、赤い血を滴らせる肉でも身体を支えるべき骨でもなく、見た目に若干の差異はあれども、あのとき司令部でサングラスの女性(トンプソン)に見せられた光景とほぼ同じ、人工の筋肉と鈍色の部品だった。埃がついて色は大きく変わり果ててはいるが、人間じゃないということが分かった事で青年にとっては些末な出来事であった。

 

「なぁんだ、ビビらせんなよほんと、糞……マジで人間が死んでんのかと思ったじゃねーか。てことは、この銃はこいつが使ってた武器って事か」

 

悪態をつきつつ、ようやく多少なりの安心感を得た青年は改めて今自分が抱えている得物に視線を向けた。本当にこんな少女がでかい銃を扱っていたのかと疑問には思ったが、それ以上の疑惑が青年の中に沸き上がり、打ち消した。

 

「ちょっと待てよ……?こいつ、人形ってことはあそこの奴等の仲間、だよな?」

 

少女の残った右腕の袖には、先程までいた司令部にも掲げられていた狗鷲(グリフィン)のエンブレムが付いていた。間違いなく、グリフィン所属の人形で間違いはないだろうと青年はあたりをつける。

 

「だとしたら、なんでこんなところでこいつは放置されてるんだよ。有り得ないだろ。あの司令部から、大して離れていないっていうのに……いや、有り得ない、有り得ないだろ」

 

輸送ヘリで三十分も掛からないほどに近い距離だと言うことは、青年自身身を以て体験している。目と鼻の先とも言うべきこのような近場に戦力となりうる味方を捨て置いているというのが、青年にはどうしても理解出来なかった。

 

 

いや、青年は気付きたくなかったのだ。その事実に。

 

 

「……有り得ない、はずだけど。まさか、見捨てられた、のか」

 

そうでなければ、このような近いエリアに放置、否、破棄されているはずがない。青年は、自分の中で組み立てられた結論に、吐き気を覚えた。

 

「理由なんて知らねーけど、つーかそもそも有り得ない話だけど、あいつは、こいつを、見捨てたんだ。戦って、傷付いたこの子を」

 

明らかに戦闘で失われたとおぼしき右腕に、弾丸で抉られた足がそれを示していた。そしてそれは、彼自身の状況をも示唆していた。

 

 

 

「……あいつは、俺を助けるつもりなんて、端から無かったんだ。見殺しに、するつもりなんだ……っ!!」






現実なんて、そんなもんですよね。
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