一般人・イン・フロントライン   作:全緑小隊

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ようやっと手持ちの妖精が一体レベル100になりました。
知り合いに報告したところ、「マジキチ」「意味不」「頭おかしい」などの祝福の言葉を頂きました。


……良いじゃないか!個人的にお気に入りなんだよ空挺妖精!


一般人・イン・フロントライン・サドゥンリィ11

 

その言葉を吐き出してしまった事で箍が外れたのか、青年の口からは止めどなく言葉が漏れ出す。

 

「ああ、そういう事かよ。そう考えてしまえば納得がいくよ。あいつ、いやあいつらは最初からそもそも生かして帰すつもりが無いからこそ、見た目だけは大層な装備を俺に渡してこんな所に一人放り出して、実際には銃は簡単に撃てなくなるし鎧も兜も簡単に貫通するし。

……ああだからあいつ最初の奴等を倒した時に意外とやるなとかほざいたのか、あわよくば最初の時点で俺を死ぬことを望んでたんだな」

 

呪詛のごとき恨み節は、どんどんと吐き出される。

 

「こんだけ近いにも関わらず助けに行くには時間が掛かるとかほざいてさ。時間が掛かるんじゃない、そもそも助けに来る気が最初っから無かったんだろうが。そりゃそうだよな、自分達の仲間の、身内の筈の人形すらこんな形で見捨てているんだ、完全な部外者の俺なんて存在自体が疎ましいモノ以外の何物でもなかったんだろうな……。

おい指揮官、聞こえてるんだろ?どうせ安全な部屋で人形達と一緒に俺の事を嘲笑ってるんだろ?気分はどうだよ、この下衆野郎っ!」

 

そこまで言ってから、青年は己の耳に掛かっていたイヤホンを鷲掴みにすると、力の限り壁へと投げ付けた。ガギッ、と嫌な音を立ててぶつかると、そのまま下に落ちて舞い上がった土埃の中に埋もれる。

 

 

「……何なんだよ、この世界は。いくらなんだってさ、あんまりだろ、こんなの」

 

そう呟くと、青年は力なく膝から崩れ落ちる。その視線の先には、彼のすぐ傍で横たわり、動くことない少女の人形があった。

 

「……いくら人形だからってさ、いらなくなったら、用済みになったら、見捨てるのかよ。あいつらみたいに、人間のように感情があっただろうに、ただの道具のように捨てるのかよ」

 

先程力任せにイヤホンをぶん投げたその手は、少女の顔に積もった砂や埃を優しく払っていく。

 

「まるで寝てるみたいだな……。腕とかこんなボロボロになって、痛く無かったのか。動かなくなる最後の時は、怖くなかったのか。人形も、人間みたいに恐怖を感じるんかね?あいつは痛みは無さそうだったけど」

 

汚れの無くなったその顔は、青年の言葉通りまるで眠りについているかのように、穏やかな表情を浮かべていた。薄暗い廃墟の中にあってなお、その白い肌はどこか輝いてみえた。

 

「……誰か、悪用したりしない優しい人に、見付けてもらえると良いな」

 

少しの間それを優しげな目で眺めていた青年は、鎧の胴脇部分にある紐へと目を向けた。

戦場に送られる前、指揮官から鎧の説明を受けた際のあるやり取りが彼の脳裏に蘇った。

 

 

 

『まあとりあえず俺でも多分着れて動ける、ってのは分かったけどさ。……この紐はなんだよ?飾りって訳じゃ無さそうだけど、いくらなんでも鎧に対して違和感が凄くね?』

『ん?んーと……鎧を着ている状態でそいつを引くと、パワードスーツについてる装甲が全てパージされる、らしい』

『らしい、って曖昧だなおい』

『やった事ないからな。やってみるか?パージした後の復元方法は全く知らんが』

『いや誰がやるかよ!パージしたが最後使い物にならなくなるじゃねーか!!』

『まあそうだな。とりあえず暑くなったりやばくなったら引いてみると良いぞ』

『いやどう考えても引いたら死ぬだろ!むしろ誤って引かないように注意しんといかん奴だろ!』

 

「……ちっ、あのヤロー、本当は最初から分かっていたんだな。この装甲が簡単に貫通するような代物だったって事を。こんなものデッドウェイトにしかならないから装甲をパージしろってか。ほんとろくな死に方しねぇぞあいつ」

 

舌打ち混じりに悪態をつきつつ、青年は紐へと指を掛け、

 

 

 

 

 

 

「お兄さんは……優しい人じゃ、ないの?」

「んはぎゅっ!?ひ、ひた、ひたかんら……!!」

 

突如聞こえた声に、膝をついたまま飛び上がり驚くという奇妙な芸当をしてのけた。そしておもいっきり舌を噛んだのだろう、涙を流しながら悶絶する姿がそこにはあった。こんな状況で叫ばなかったのは、舌をかんでという悪運の極みともいえるものだっただろうが。

 

「……だいじょうぶ?」

「ら、らいじょうぶ……っていや待ってくれ、生きてたのか!?動けたの!?」

 

完全に動かないと思っていた人形が瞼を開け、掠れ掠れながらも喋っているという事実に完全に度肝を抜かれたのだろう、青年はかなりきょどった様子で顔を覗き込む。少女の紅い瞳が、その黄緑の髪の間から覗く。

 

「……動けは、しないよ。もう、ほとんど、エネルギーないもん。喋れるのも、ほんの少しだけ」

「な、なんで」

「ずっと、スリープモードに、入ってたの。どれくらいかは、記録してないけど。誰か、助けに、来るかなって」

 

小さく、悲しげに笑ったその表情に、青年の心がズキンと痛む。この少女の人形は、やはり見捨てられたのだと。そして彼女自身、それを理解はしていながらも、ここで、ずっと待っていたのだ。何日も、何週も、何ヵ月も。

 

 

いつまで経っても永遠に来る筈のない、仲間達(たすけ)を。

 

 

 

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