資材の消費量が半端ないですけど……。
装備強化の素材集めにも使えそうですね。
はっきりと言い切った青年は、自分の身体の中に炎が通ったかのような熱い感覚を覚えた。銃を握る手に、力が籠る。
先程までは全く扱える気のしなかったそれが、どうしてか今は簡単に撃てそうな気が彼にはしていた。それは少女から説明を受けたからか、それとも。
「え……?」
「……チョロいもんだよほんと、俺って人間はさ。見たことも聞いたこともない場所でほいほい口車に乗せられて戦場に送られ、信用も出来ない相手から渡された武器と防具を愚直に頼りきって、痛い目を見て、勝手に絶望してさ。それでも生き残れる希望に、すがり付こうとしてる」
愚痴を並べる青年だったが、先の時とは違いその口調はまるで友人に軽口を叩くようなもので。
「……お兄、さん?」
「大丈夫。君のその想い、受け取った。だけど、最期だなんて言わないでくれよ」
だがその言葉には、どこか力が籠っていた。
「もう、無理だ、よ。誰も、たすけ、になんて」
諦めの色を見せる少女のその言葉に青年はかぶりを振る。少女が見たその目には、先程までの心配そうな色は微塵も見られない。あるのは、強い決意の意志。
「俺が君を助ける。君から借りたこの銃で生き残って、君を直せるところまで連れていくよ」
「……え、でも」
「方法なんて知らない、場所なんてわからない、そもそもそんな事が出来る確証すら無い。ないない尽くしのオンパレードだよ、だって俺こんなところ来たことねーし、そもそもこの時代の人間じゃねーからさ。だけどな」
そこで、青年は少しだけ笑みを浮かべる。
「とりあえず今やるべき事はあるし、やりたい事は今見つけた。やるべき事は外の
青年は少女の右手を握る。埃まみれのその小さな手を、大事そうに。
「だから、待っててくれよ。時間は掛かるかもしれんけどさ。俺は君の言葉を信じる。君は、俺の事を信じてほしい」
「……」
少女は青年の顔を見つめたまま、少しの間黙りこくる。そして、口を開き。
「……おにいさん、て、変なひと、だね」
「ぐはっ!?」
待っていたのは辛辣な言葉だった。
「でも、いいよ。まっ、てる。おにい、さん、が、わた、しを、さ、いきど……して、くれる、こと」
ただ、その後に続いたのは、少しだけ希望の色が混じった笑顔と共に届けられた、仄かな期待。エネルギーの限界が来たのだろう、言葉は先程よりも途切れ途切れとなってきている。
「ああ。……だから、少しの間だけ、お休み」
「う、ん。……おきれた、ら……おに、さんの、なま……え……」
少女の最後の言葉が紡がれる前にとうとう限界が来てしまったのだろう、瞼は閉じられ紅い瞳が隠れる。青年がここに逃げ込んだ時と同じ静寂が辺りを包み込む。違うのは、青年の手に握られた得物とその目付き。
「……そっか。名前、聞いときゃ良かったな。ごめん。後で教えてくれよな。
……で、だ」
最後の台詞に若干の後悔を滲ませ、少し謝った後に青年は一瞬だけ外の様子に神経を向ける。彼がここに入り込んでからそれなりの時間が経っているが、未だに廃墟へと攻め入ってくる様子はなかった。
「どういうつもりなのかは知らねーけどさ。俺に時間をくれるってんなら、せいぜい有効活用させてもらうよ」
呟くと、青年は鎧の胴脇部分の紐へと指を掛ける。先程は少女に話しかけられて引くのを中断したそれを、躊躇なく引き絞った。瞬間、ギャリッという甲高い引っ掻くような音がしたかと思うと、カーキ色の大小様々な形をした装甲がバラバラと剥がれ落ちていく。ガランガランと大きな音を立てて床に落ち、土埃を巻き上げる。
「ぶえっ!?」
慌てて青年が手で口を覆う。その間も腕部や脚部の装甲が外れ、鎧に覆われていた青年の身体が姿を現していく。だがその姿は鎧を着込む前の姿とはやや異なっていた。
両の手の甲全体に黒く薄い金属が張り付き、それが肘を伝って肩まで届く。足も同様に踵部分を金属が包み、膝裏を介して腰を支える。それが背中で繋がり、まるでそれ自体が骨格を成しているかのような印象を与える。身体の各部に固定するためなのか、手首と足首、腰の部分で金属がぐるりと一周巻き付いていた。
「これが、パワードスーツって奴か?思ったよりシンプルなんだな」
土埃が晴れたあと、部屋の裂け目から射し込む陽光で己の姿を再確認した青年はそう呟く。脆弱とはいえ相当な重さの装甲を支え纏っていたのだ、それ相応にガッシリした作りを想像していたのだろう。ただ、装甲が外れた事で先程よりも遥かに動きが軽く、スムーズに動作出来るように青年は感じた。
「でも、よくよく考えてみればこの盾だって簡単に持ててたし、銃なんてそれこそ余裕なんだよな。パワードスーツっていうだけの事はあるな……っと」
頷き一人呟くと、埃を舞わさないようにゆっくりと銃を床に置いてから青年は盾を持ち上げ眺める。相当な数の銃弾を受け止めたはずだが、その表面には視認出来るほどの傷は一つも認められない。
片や先程は鎧だった装甲は、と見ると凹みはおろか弾がめり込んでいたり酷い部分は貫通していたり、とその差は火を見るよりも明らかだった。
「……盾がちゃんとした出来で助かったぜ、ほんと。で、ヘルメットは……と」
一旦盾は床に置いた後、彼はその横にあったヘルメットを掴み取る。目の右側部分に弾丸が突き刺さっており一瞬戦慄させたが、装甲を突き破ったのではなく隙間に入り込んだだけでこちらも見た目はほとんどダメージがなく青年を安堵させた。やはり、鎧だけが柔弱な装甲を使われていたようだ。勿論それだけでも彼にとっては致命的なのだが。
「このヘルメットがさっきも耳当て代わりになってたよな、これを使えばいいか。後は、撃つのに固定する為の台みたいな奴だったけか、それがあれば……うん?」
何か代用になるものはないか。青年があちこち見回したところで、あることに気付く。
「そーいやこの盾……ヘリに乗ってた時は気を向ける余裕なんてなかったけどさ、なんで下の方に
先程置いた盾の構造に青年は疑問を抱き、盾を裏返すと。
「……支柱?いや、つっかえ棒みたいな物か?」
盾の裏に埋め込まれているような形で納められていた棒を外す。盾の三分の一ほどの長さのそれを、同じく盾の裏の下部に作られていた円形の窪みへとしっかり嵌め込み立てたまま床に置く、すると。
「……これだ」
見てくれは全然違えども、まるで戦国時代の木盾を彷彿とさせる置き盾が部屋に立った。盾の裏側に回り込み少し屈むと、上部の隙間から盾の向こうを覗き込む事も出来るではないか。
青年は確信する、この盾は単に持って身を守るだけの代物ではない、地面に設置して壁として身を隠し、隙を見て反撃に転じる事も可能なのだと。
「これで、耳当てと台になる物は揃ったか。……ここに逃げ込んだのは、正解だったな」
青年は目を閉じ、握り拳を作って胸に当てる。少し前まで、敵に追われ情けなく助けを求めて絶望していた姿はそこにはなかった。
命からがらにやってきたこの廃墟で、態勢を整えられたことが彼自身信じられなかった。だが、運が良かったのか鉄血人形は追撃を行わず、恐慌状態だった彼のメンタルは落ち着きを取り戻し。身を守る事の出来ない装甲を外した事で、逆に動作は身軽となった。盾とヘルメットは、それぞれ銃を撃つにあたって単なる身を守るためだけでない機能を持っている事に気がつけた。……そして、何よりも。
「この子に、会えた。この武器を、貸してもらえた」
それが一番、青年の中で大きなウェイトを占めた。この世界の非情さを突きつけられた、それでもその中で信じられる物が、自分の生きる目標が出来た。戦い、生き残る覚悟が出来た。
「……ありがとうな」
今はもう動かない少女に小さくお礼を述べ、青年はヘルメットを被る。棒を取り付けたまま盾を左手で持ち上げ、右手で床上の銃をゆっくりと掴む。
「……行くぞ。やってやる、絶対倒すんだ!」
そして、青年は駆け出した。
その言葉は、ヘリから降下した時の自棄混じりの物とは違う、覚悟に溢れたものだった。
途中で区切ると中途半端な事になりそうだったので一気に行きましたが、字数がえらいことに……。
装甲盾に関しては実際どうなってるかはわかりませんが、盾というには明らかに上部と下部に妙な違和感を覚えたので、銃架として採用することに。
……ネタを書いてる時にとあるアニソン聞いててそれのOPの一幕のアレ(もといゲームのアレ)を参考にした訳じゃないです、はい。