一般人・イン・フロントライン   作:全緑小隊

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小説トップにも記載しましたが、活動報告を更新致しました。

更新をお待ち頂いている方がもしいましたら申し訳ございません。


一般人・イン・メイビーセーフティ2

ぐでー、と再度机に突っ伏しながら諦めたようにソウガは呟く。義肢を作ってもらうという話があったとはいえ、実験台としてI.O.P.(ここ)に来ることを軽く了承した病院での自分の発言を今更ながら彼は後悔していた。

 

「こらこら、こんなところで寝るんじゃないよ。これからそれを外して君の腕を取り付けるんだから、16labの技術室に移動するよ」

「分かったけどよ……、結局何の試作品をベースにしたんだよ。内容如何では即却下だぞ」

「流石に人間に装着させる腕さ、そんな突飛な代物は採用していないよ」

 

机に転がされた義肢を掴み上げながらペルシカは肩を竦める。

 

「今回採用したのはパワーシリンダー内蔵型。ほら、片手で車を易々と弾き飛ばしたりする実験した奴よ」

「あー、俺の右腕の倍位に太くて筋肉ムッキムキな見た目してたあれ?でも今持ってる奴は俺の腕と大して変わらなさそうな感じじゃんか」

 

 

椅子から立ち上がりながらソウガはその時の様子を思い出していた。映画や漫画に出てくる怪人もかくやと言うほどに漲った筋肉を模したその義肢は、見た目に違わぬ怪力を発揮してみせた。人差し指の一本で鉄板に穴を空けてみせた時などは、ソウガのみならず周りの研究者達もおもいっきり引いていたものだ。

 

「いや君、流石に片腕だけパンパンに張ってるのも嫌でしょ。アンバランス過ぎるわよ。それに、日常生活するのにそんな超怪力があったところで一体何をするのよ」

「うーん、なんかこんな世紀末世界だといざという時に役立ちそうじゃね?主に敵に襲われた時とか敵の陣中に放り込まれた時とか」

「うん、言いたい事は分かるけど流石に君のパターンはレアケースだからね?」

「そうである事を願いたいもんだよ、全く」

 

二人して何とも言えない表情を浮かべながら、ソウガが居たしていた部屋を出る。廊下を歩きながら、ペルシカは腕の説明を続けた。

 

「今回君の腕に取り付けるに辺り、最大パワーは試験型の二割にまで抑えさせてもらったよ。代わりに内部搭載型の強化骨格を骨代わりのベースとなる部分の周囲にパワーシリンダーと合わせて仕込んでいる。これでも計算上、片腕だけで60キロ近くの物まで掴み持ち上げ走る事が出来るようになったはずだ。試験型は持ち上げる事にはほとんど対応していなかったからね、あれで持ち上げたら間違いなく君の腰や背中、足が荷重に耐えきれずにグシャッ、てなってた筈だよ」

「だから決して持ち上げるなって念押しされてたのか。つーか60キロでも充分過ぎるだろ、人一人分くらい片腕のみの力で掴んで持ち歩けるってどんな仕組みしてんだマジで」

 

 

軽々と言ってのけたペルシカにソウガは軽く戦慄する。基本重量物を持ち上げるには腕はおろか腰や足の動きも加味せねば簡単に身体を痛めてしまう、それをこの義肢はあっさりとやってのけてしまうと言うのだ。元の時代にあれば間違いなくノーベル賞ものであっただろう、この時代にそんなもの続いているのか彼には知る術も無かったが。

 

「あー、言っとくけど流石に真上にまで上げたら一気に身体へ重量が掛かるから気を付けてね?いくら私達でも重力は無視できないからさ」

「重力とは別に色んな法則を無視している気がしなくもないけど、まあ分かったわ」

 

本当に大丈夫なんだろうな。内心はそんな事を思いつつも、どこか自信ありげな猫耳研究者の姿にとりあえずそんな言葉を呑み込み、ふと思い出したようにソウガは問いかけた。

 

「そーいや実験で思い出したけどさ、ここで何人かの人形と会ってコミュニケーション取れってのがあったろ?あれって結局何だったんだ?」

「あーあれかい?大したものじゃないよ」

 

義肢の話をしていた時とはうって変わり、つまらなさそうな様子でペルシカは返す。

 

「16lab特製戦術人形と君を引き合わせた時に、人形側にどんな反応が起きるのか調べてただけよ」

「へー……でも、その顔だと思ってた通りの結果は得られなかったみたいだが」

「そーなのよ!折角今は亡きニホンの貴重な人間、しかも過去から来た超レア検体だってのにほとんど大した変化が見られかったんだもの、期待外れもいいところよ。ソーガ、君ちゃんと言われた通りにやったんでしょうね!?」

「言われた通りも何も、あんたがバッチリ全方位から監視している中で会話をしてたろうに」

 

謂れの無い言いがかりに反論しつつ、ソウガはその時の様子を思い出す。超小型のスピーカーやイヤホンを仕込まれ、ペルシカらの指定するタイミングで五人の戦術人形と引き合わされたのだ。最初は五人全員と、後はバラバラなタイミングで一人ずつといった具合である。それぞれ個性豊かな人形達で、ソウガにはやはり人間にしか見えなかった。

 

 

「つってもさ、態々何らかの結果を期待して俺に会わせたって事は、それなりの結果を伴った前例があったって事なんだろ?」

「おや、意外に鋭いね。大して気にしてないかと思ってたよ」

 

はっきり言ってのけるペルシカに、流石のソウガもジト目で睨み付ける

 

「ひでぇ物言いだなおい」

「だって君、気付いているか知らないけどさ、I.O.P.(ここ)にきて目元の隈が日に日に薄くなっていってるんだよ。私も人の事言えないけどさ、割りと平和な筈の四十年も前にそれなんだもん、どんな生活を送ってたのか割りと想像つくよ」

「ま、確かにこの世界にきて毎日たっぷり寝かせてもらってはいるけどもさ」

 

目の下に指をあてがうソウガの脳裏に、この世界に来る前の情景が思い浮かんだ。

 

矢継ぎ早に飛び込んでくる仕事。

片付けたと思ったらまた新たに発生するトラブル。

怒鳴るばかりでろくに仕事もしない上司。

毎日のようにクレームを叩き込んでくるカスタマー。

隣で同じように濃い隈を作りキーボードを叩く同僚。

家と会社を行き来するルーチンワークはいつしか数日に一回となり職場に寝泊まりする日々。

しかもその睡眠時間はほとんど仮眠程度……。

 

「ハハハ、まあそれなりに大変ではあったよ?」

「……ソウガ、そんな死んだ目に震えた声でそれなりと言われて納得出来ると思ってる?」

「……正直元の時代に戻りたいかと言われるとあんまり戻りたくないなと思うくらいには」

「……ブラック企業はいつの時代も消えないもんだね」

 

横からの憐れみの視線に耐えきれずソウガは前を向き直す。そこには、目指していた16labの看板があった。




ちなみにタイミングがアレですが、流石に作者の会社はこんな魔境ではございません。リリースされた新システムが糞なんや……!
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