コップやタオルを片付けたペルシカが先程の部屋へと戻ると、ようやく人心地ついたのかソウガは左肩に手を当てながら取り付けたばかりの義肢を軽く回していた。
「取り付けた調子はどう?端から見た感じは問題無さそうだけど」
「おー、大丈夫だぜ。ちょっと痛みがジンジンと残ってるくらいで動きには支障は無いぞ」
ペルシカに返事をすると、ソウガは頷きながら掌を握り、開きを繰り返す。特に違和感は無かったのだろう、満足そうに笑みを浮かべるとペルシカにサムズアップした。
「ん、良かった良かった」
「なんていうか、思ったより普通だよね。あんだけ散々滅茶苦茶な義肢を試してた割には」
「勘弁してくれ……。日常生活送るのにそんな滅茶苦茶な義肢なんて付けてられん」
つまらなそうなSOPⅡの言葉にソウガの瞳から光が消える。実験で取り付けた義肢で過ごす事を一瞬でも想像したのだろう、慌てた様子で頭を左右に振っていた。
「えぇー、私的にはロケットパンチ撃てる奴とか良いなって思ってたのに」
「良い訳あるかい!誤射でもした日にゃ手が使えなくなるだけどころか周りに危害を加えかねねーぞあの欠陥品は!」
「いやーあれは面白かったよ、発射前の水蒸気で狙いのつけようがないというおもっきし失敗作だったけどね」
「見てみたかったなー、ロケットパンチ取り付けたソウガの勇姿」
「嘘だろお前……」
楽しそうに呟くAATにソウガが頭を抱えていると、廊下に繋がる扉が勢いよく開く。
「あーっ、やっぱりここにいた!」
「あれ、みんなどしたの?ROもいるし」
開かれた扉から次々に四人の少女達が部屋へと飛び込んでくる。
SOPⅡとは違う色質の桃色の髪に蒼色の瞳の『ST AR15』、右目に眼帯をつけ長い焦げ茶色の髪を三つ編みにした『M16A1』、橙色と檸檬色のオッドアイを持つ『RO635』、そしてM16とどこか似通った容姿ながらやや明るい髪色に緑のメッシュの『M4A1』。彼女らもSOPⅡと同様に、ソウガがコミュニケーションの名目で引き合わされた戦術人形だ。
だがその表情はバラバラで、先頭のAR15は怒り心頭といったもの。そのすぐ後ろのM4は焦った様子でAR15の腕を掴み、ROは呆れたように頭に手を当てながらため息をつく。そしてM16は一番後ろで笑いながらその様子を眺めていた。
「SOPⅡ、集合時間をおもいっきり過ぎてるわよ!キルハウスで射撃訓練するって言ってあったじゃない!」
「お、落ち着いてー!」
「え、もうそんな時間だったけ?」
M4に抑えられながらも掴みかからんばかりなAR15の言葉に、SOPⅡは壁にかけられた時計を見る。
「……遊んでて忘れてた☆」
「あーなーたーねー!!」
「全くもう……」
「クックック、まあそんなもんだろうと思ってたよ」
「姉さんもROもAR15を止めるの手伝ってよー!!」
テヘペロ、とでも言いたげなSOPⅡの様子にAR15は更に怒りのボルテージを上げる。その様子を見たROはガクリと肩を落とし、M16は楽しそうに眺める。ただし誰もM4に加勢しようとしない辺り、彼女は苦労人なんだろうなとソウガにも見当がついた。
「まーまー落ち着きなよ。さっきまでソウガの義肢交換をやってたんだ、他人の義肢交換なんて中々見られないから忘れちゃってたんでしょ」
「そーそー。ソウガ、すっごい大変そうだったもん」
「だからってねえ……!」
「あ、ソウガさんにAAT、こんにちわ!すみません騒がしくて!」
「よっすM4。大して気にしとらんから大丈夫だぜ」
ペルシカのフォローにも中々落ち着く様子の無いAR15相手に四苦八苦しつつ、律儀に挨拶するM4にソウガは気遣いつつ返事を返す。AATも軽く手を上げて同じようにM4に挨拶すると、AR15に近付く。
「いい加減落ち着いた方がいいよ、AR15。訓練なんていつでも出来るでしょ?それにSOPⅡの遊びに付き合ってたのは私だし、SOPⅡに怒るのなら私も怒られるべきだよ」
「……はぁ。もう、AATに免じて許してあげるけど、今回だけだからね」
「うん、ごめんねAR15。AATもありがと」
「全然いーよー」
にへら、と笑うAATを横目でみつつ、ROは感心したように口を開く。
「んー、何と言うかやっぱり
「お前意外と酷いな……。そいやソウガ、さっきペルシカが言ってたけど新しい義肢を付けたんだって?」
「おうよ。ようやく試験用じゃないちゃんとした腕をつけてもらったぜ」
どこか嬉しそうに左腕を指し示すソウガに、M16はニヤリと笑う。
「なるほどな。
ちなみにその腕に酒瓶は仕込んであるのかい?欲を言えばワイルドターキーだと嬉しいんだが」
「んな訳あるか!?いや俺も酒は好きだけど腕に仕込んでまで飲みたいってほど呑兵衛じゃねーよ」
「流石にそれはないでしょうM16。きっと妨害電波と毒ガスを撒き散らす戦略兵器が組み込まれてるのですよ」
「それも有り得ないぞRO!
電波はともかく毒ガスは間違いなく俺自身が死ぬだろ!ガスマスク常備しろってか!?」
「全く、有り得ないわよ。仕込んであるのはビームマシンガンに決まってるでしょ?」
「お前が一番有り得ねーよAR15ォ!
いや個人的にエネルギーウェポン内蔵は嫌いじゃないがそれが出来るならまずお前らの武器をビームライフルにするべきだろ!!」
「あ、あの……きっと、身体よりもすっごい大きなドリルに変形して突撃するんだよ!」
「M4お前それマジで言ってんの……?」
ペルシカがあんなんだしきっとAR小隊に真っ当な思考をもった奴はいないと思う(偏見)